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4-7 b さいきんの学園もの

 足を引っかけてきたのはクリスティン。

 まだ、小指は治っていないのか、彼は時折つま先を気にしている。

 ここは、ウィンゼル卿に頑張ってもらうことにしよう。

 ウィンゼル卿と自分は何故かかなり相性が良い。なんというのだろうか、ウィンゼルはこちらの命令をものすごく素直に聞いてくれるのだ。もちろん理解してもらえない命令は無理だが、かなり難しい命令でもこちらの思っているように動いてくれる。ちょうど調教師とその下で長いこと一緒に過ごしてきた動物と言った感じだ。

 アルトがどこかから貰ってきたと言うから、もしかしたらサーカスとか見世物小屋とかでそういうふうに訓練されてきた経緯があるのかもしれない。

 さて、いじめっ子たちはアリスに直で何かをするとよく分からない展開になることに気づいたので、極力アリスには直接手を出さない方向に切り替えてきている。

 そんな彼らが考えたの計画の一つにウィンゼル卿の誘拐があった。

 というか、クリスティンがいたくウィンゼル卿をお気に入りのようで、捕まえて自分の邸宅でペットにしようと目論んでいる。

 そんな彼の前にウィンゼル卿が突如現れた。

 周りにアリスはいない。

 「おいでおいで」クリスティンがゆっくりと近づいてきた。

 もう少しで触れるといったところで、クリスティンが飛びついてきた。が、ウィンゼルは鼻先で華麗にかわした。そして、彼の少し前にたたずんで彼のほうを振り返った。

 「もうちょっ・・・と!」再び飛びつくも、ウィンゼル卿のほうが速い。

 素手の人間に捕まるほどオコジョは甘くない。

 ん?

 素手の人間に捕まるほどオコジョは甘くない。(断言)

 諦めの悪いクリスティンがウィンゼルを追いかけ始めた。

 ウィンゼル卿を彼がギリギリ追いつけない速さで、ギリギリ届かない距離を保って走らせる。

 クリスティンは足のケガも忘れて校舎の外まで全力疾走で追いかけてきた。

 目の前に良い障害物を発見。ほうきが横倒しになっている。

 見え見えの障害物、ま、避けられたら避けられたで。アリスだってクリスティンの足を避けたわけだし。

 ウィンゼル卿を少し減速させクリスティンを引き付けてから、ほうきの直前で加速、そのままほうきの下を潜り抜けた。

 もう少しというところまで、追いついたクリスティンは加速したウィンゼル卿に追いすがろうと自分も限界を超えて加速、足元のほうきを華麗にジャンプしてかわしたところで、ちょうど頭上に伸びていた木の枝に頭をぶつけて失神した。

 足元ばっかり見ていないで、頭上にもご注意を。




 さて、3日間続いた水ぶっかけの昼休みだが、4日目はアルベルトがかなり気をつけて水差しを持つようになってしまった。

 これではこぼさない。

 水を注げないほど器用でなくなるのではなくて、自分の器用さを信用して水差しを扱っていると、思ったようにいかなくてこぼすのだ。余裕をもって扱われるとどうしようもない。

 それ以前に、そもそもゲオルグがアルベルトを近づけさせないのでチャンスがない。

 って、思うじゃん?

 今度はゲオルグのそばに座っていたエドワルドのDEXを急激に下げる。

 そして転がる水差し。

 「お前らふざけんなよ!!」ゲオルグが顔を真っ赤にして叫んだ。

 今日も彼らの昼食は騒がしい。




 さて、自分が報復に勤しんでいる間にも彼らのたくらみは続いていた。

 が、それらがアリスを苦しめることはなかった。

 アリスが気にしなかったからという訳ではない。

 グラディスが活躍したからだった。

 ここ数日の間、アリスが安全な馬車に乗っている間、自分はエドワルドかアルベルト視点になって、彼らがアリスの机にどんないたずらを仕掛けているかを確認するようにしていた。

 いたずらの内容によってはウィンゼル卿でなにか対応できるかもしれないと思ったからだ。

 最初にアリスの机に落書きをした次の日。

 初日の成功に気を良くした彼らは、この日も皆で落書きをした。さらに椅子に一見で解りずらいような茶色い汚れを塗りたくって、アリスが机に気をたられたまま座るとお尻が汚れるようにしていた。

 ニヤニヤとしながらアリスの入ってくるのを待っていたエドワルドだったが、アリスより先にグラディスが入って来た。

 グラディスはつかつかとアリスの机まで最短距離を歩くと、机を拭き、椅子に仕掛けられた汚れを拭き取り、持ってきた座布団を取りつけ、引き出しの中を整理し、アリスが入室する寸前に教室を出て行った。無駄のない洗練された動きで誰も何かをさしはさむ余裕がなかった。

 グラディス、アリスと同時に馬車を降りてるんだぜ?

 日中もアリスが居ない間に座布団が汚されたとみると即座に交換し、次の日はアンドリューがドッヂソン家を辱める文章をクラスに貼りだせば、アリスが見つける前にすべて回収しスペルミスを全部添削して彼の机の上に戻した。

 3日目。今度は彼らは落書きを消されないように、石で机に傷をつけて悪口を彫った。

 やはり、この日もアリスより一足先に入って来たグラディスはポケットから平たいやすりのようなものを取り出すとあっという間に研磨し、今度は分厚い皮を取り出して机をこすった。机はみるみるつやつやになり、元の机のよりもきれいになった。グラディスは別の布で床に散った研磨カスをきれいにすると、素早く椅子周りを確認し座布団を交換、最後に引き出しの中を整理してアリスが入ってくるギリギリに出て行った。

 4日目。少年たちはアリスの机そのものを教室から隠した。

 グラディスが新しい机を抱えて教室に入って来たのにはしびれた。

 グラディス、すごいや。

 ホントはこういう形でアリスを守ってやりたい。彼女に比べて自分のしていることのなんと浅はかなことか。

 のちに、廊下でグラディスに会ったシェリアがグラディスに話しかけたのを聞いた。

 「ありがとうございます。リデルちゃんのこと。」シェリアがグラディスに頭を下げた。「その・・・すごいですね。彼らが何をしても全部完璧に直しちゃって。」

 「私も良くいじめられていましたので、次は何が起こるのかだいたい予想がつくのです。」

 いや、自分もいじめられてたけどそうはならんかったよ?

 「リデルお嬢様と仲良くしてあげてください。」とグラディスがシェリルに向けて優しく微笑んだ。

 「はい・・・」シェリルは少しバツが悪そうにこっくりと頷いた。




 さて、大活躍のグラディスが机を運んできた日の夜

 そのグラディスがオリヴァに忠告をしてきた。

 「明日、王女殿下が脱走いたします。」

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