4-3 a さいきんの学園もの
ついにアリスが再び学校に登校した。
早速、待合室でシャドーボクシングを始めているアリスに不安しか感じない。
「リデル様。緊張をほぐすためとはいえ、このような場所で武術の練習などはしたなくございますよ。」グラディスがアリスをたしなめた。
今回からグラディスが学校についてきてくれることとなった。とても心強い。そしてもちろんオリヴァ。部屋の中には入ってきていないが焔の英雄ヘラクレスが今回もついてきてくれている。ヘラクレスはこのままアリスのおもりをすることになるのかねぇ。二つ名もあるというのに。門番とか衛兵とかするよりはマシなんだろうけどさ。
なんか、すごい強い護衛が来てくれたように思えるけれど、名前が解ってなかっただけで前回もいたからなぁ。実際のところ増えた人員はグラディスだけだ。
人間では。
今回は人間以外の人員(?)が増えている。
まず、レディ・ウィンゼル。ちっちゃなウィンゼル卿は移動中はアリスのドレスのポケットでおとなしくしていて、アリスが落ち着いて外に出て遊んでも良いかなと思うと外に出てきてアリスの周りをちょこちょこと駆け回るのだった。
当然すでに感染済みだが、特に【操作】しなくてもアリスに懐いているので、だいたいの場合自分がなにか【操作】することはほとんどない。ただ、登校前の朝に少しだけ【操作】して学校に連れていってもらえるようにおねだりした。
ネオアトランティスは新参者が優遇されてかなり不服そうだった。
学校では常時はだいたいウィンゼル視点で過ごす感じになりそうだ。上手いことウィンゼルを操ってアリスとクラスメイトとの仲を取り持ってやろう。可愛いは正義だ。
次に5匹のネズミたちが学校の近くの下水道に潜んでいる。ゴリも何匹か操れる状態だ。あとは、偵察用に蛾を一匹操作できるようにしてある。完ぺきには程遠いが、前回より立ち回りの効く状態にはなった。
アリスが初登校を迎えるまで少し時間があったので、ここからスラム街や城までの道のり(下水道等含む)も頭の中に入れてある。
「別に緊張なんてしてないわよ。」グラディスの進言を無視してシャドーを続けながらアリスは答えた。「ただの、準備運動よ。」
何の準備!?
頼むよ?ほんと。
なんか起こさないかとハラハラする。
と、待合室の扉が開いて人が入って来た。
小柄で可愛らしい女の子と老執事だ。
あ、この子。アリスと一緒に前回学校に通った時、アリスに脱走の案を出した子だ。
「まぁ!リデル様」女の子が嬉しそうにアリスに近寄ってきた。アリスはちょうど右ストレートを繰り出した後だったが、彼女はアリスが何をしていたのかよく分かっていないようだった。
「あっ。前のクラスの!」アリスが喜びの声をあげる。
「やっぱり、名前憶えていませんでしたのね。」女の子はわざとらしくほっぺたを膨らませた。「私はシェリアと申します。」
「シェリア、また、よろしくお願いしますわ。」アリスがスカートをつまんで膝を曲げた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」名前を憶えてもらった女の子がとても嬉しそうに礼を返した。「急に上のクラスに進級が決まって不安でしたの・・・。リデル様とご一緒できてとてもうれしいです・・・!?。」
シェリアと話すアリスの肩にウィンゼル卿が駆け上ってきた。シェリルを見つめて何度か小首を傾げる。
「!?・・・???」
「ああ、この子はレディー・ウィンゼル。オコジョって生き物なんですって。」
【操作】を使って、ウィンゼルに愛嬌をふりまかせる。自分はウィンゼルの中に居るので、彼女がどんな動きをしたのかは分からないが効果はてきめんだったようだ。
「可愛い!!」シェリアの瞳のなかにキラ星とハートマークが浮かんだように見えた。
ウィンゼル卿はアリスとシェリアを交互に見やる。
「触ってみる?」
「い、いいのですか?リデル様」
「シェリア、私のことも様なんてつけなくてよろしくてよ。」
「じゃあ、リデル・・・ちゃん。」さすがに呼び捨てにはできないと感じたシェリアは少し考えてからそう呼んだ。
アリスが嬉しそうにはにかむ。
アリスがこんな顔をグラディス以外に見せたのは初めてだ。ウィンゼルに入っていて良かった。
よし、ウィンゼル卿。サービスしたれ。
ウィンゼル卿は恐る恐る伸ばされたシェリアの手をつたい、彼女の肩口まで駆けると首筋を器用にぐるっと一周してから、顎のあたりに体ごと頬ずりした
「んふふっ、くすぐったい。」
「ウィンゼル卿、貴女の事、好きみたい。」
「あら、レディーは貴族ですの?」シェリアがウィンゼル卿を指先でそっと撫でて訊ねた。ウィンゼル卿がシェリアの指を小さな両手でつかんですりすりと頬ずりした。ウィンゼル卿はホントにシェリアのことが好きなようだ。
「そうよ。ウィンゼル侯爵よ。」アリスがウィンゼル卿の謎設定を明らかにした。「彼女が侯爵の地位にたどり着くまではそれはそれは長い長い苦難の道のりがあったのです。」
「そっか。苦労いたしましたのね。ウィンゼル卿。今後とも良しなにお願いいたしますわ。」シェリアは少しアリスを見た後、ウィンゼル卿に丁寧に挨拶した。
たぶん、シェリアは子爵から侯爵まで上り詰めたドッヂソン家のことを想像したのだろう。素直にウィンゼル卿の設定を受け入れた。
実際は一切関係ないけど。




