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2-9 c さいきんの冒険もの(とスポーツもの)

 アリスをスラム街の外に案内するために、タツがアリスの手を引く。

「ねぇちゃん、髪切ったんだね。」

「そうよ。似合う?」アリスはくるっと一回転した。

 綺麗に回るのは良いが、髪云々以前に服が泥だらけで、顔には鼻血をぬぐった跡が残ってるんだが。

「とても似合うよ。」タツがそんなことは一切気にせず答えた。お世辞ではないだろう。

「ありがと。」アリスが素直に笑った。

「ねえ、ねえちゃん。」アリスの手を引いていたタツが、アリスを見上げながら言った。「今日はうちに来てくれないの?」

「うーん。」アリスが少し悩む。「早く帰らないとオリヴァたちが心配するし。」

 ちょ、今更!?

 そーいう考えができるのならさぁ・・・、そもそもさぁ・・・、もっと、こう、こうなる前にいろいろあったじゃん!?!?

 はげしく頭を抱えたい。細菌になって無くなったしまったのが不便だ。

「どうしたの?」アリスがタツの寂しそうな様子に気づいて怪訝そうに訊ねた。

「母ちゃんが調子よくないんだ・・・。」タツが答えた。

 あれ、そうなの?この間の風邪なら治ってるはずだけどな?

 先日、タツの母親の白血球をサポートして、病原菌なら壊滅させたはずだ。


 ともかく、いったんタツの母親へ視点を切り替えてみて、彼女の体の中を探索する。

 うーん?やはり感染している細菌はなさそうだ。

 今度は彼女のステータスを開けてみてみる。

 うわ、低っ。

 もしかして、風邪と自分が戦ったことが彼女に負担を与えたのだろうか?

 もともと疲労と栄養失調がひどかったし。

 前回外から見た様子だと、栄養失調ぎみで胃腸も弱ってしまっているようだったから。吸収の良いものを食べさせ、胃腸を回復させる薬を投与したほうが良い。あと、この世界にあるかどうか解らないが点滴ができればベストだ。

 おそらく、あんあボロいところに住んでいるくらいだから、ロクな食事もとれていないのだろう。

 アルト辺りに見せれば一発だろうが、さすがにここには来てくれんだろうな。アレでも貴族だし。


 タツの母親の様子を確認したので、今度はアリスの元へ取って返す。

「判ったわ。一度、タツの家に寄りましょ。私じゃ何ができるか解らないけど。」と、アリスに戻った瞬間そんな言葉が耳に入って来た。

 やっぱり、こうなったか。

 そんな気はしてた。なんだかんだで、アリスは素直でやさしい。

 タツは喜んでアリスを自分の家に引っ張っていった。

 タツの家に到着しても母親は迎えには来なかった。タツはただいまを言うこともなく家の中に入る。

 家の中では、タツの母親が土気色で横たわっていた。

 顔色悪っ!外から見ると思った以上に体調悪そう。

 アリスが、ふところからハンカチを取り出すと、この間のように水で濡らしてタツの母親の額に乗せた。絞り切れてない水が彼女の額から滴る。

 ちゃんと絞ろうよ・・・。あと、もう風邪じゃないから、むしろやらないほうが良い。

「・・・・??」おでこをびしょびしょにされた母親が目を開いた。「あなたは・・・」

「母ちゃん、王女様が来てくれた。きっとなんとかしてくれるから。もう、大丈夫。」タツが言う。アリスが声には出さなかったもののタツの無茶ぶりに「えっ!?」という顔でタツに視線を飛ばした。

「お、王女殿下・・・。また、このようなところにいらしていただいて、光栄にございます。」母親が身を起こそうとした。が、アリスに制され、そのまま横にさせられた。横になったままで母親が続ける。「こんな状態で何もできませんでまことに申し訳ございません。」

「いいから、寝てて。」アリスがタツの母親に言った。アリスは、タツの母親が掛け布団の代わりにしていたぼろきれのような布を彼女の肩まで引っ張り上げた。

「ねえちゃん。母ちゃん治る?」タツが不安そうにアリスを見つめた。

「う~ん。」アリスが困ったように小首を傾げる。

「アリスねえちゃん、王女様なんでしょ。お願い、助けて。」タツはすがるようにアリスのボロボロになったスカートのすそをつかんだ。その小さな手はわずかに震えていた。

「・・・大丈夫。何とか頑張ってみる。」アリスはタツには目を合わせることなく、彼の母親を見つめたままそう答えた。

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