2-9 a さいきんの冒険もの(とスポーツもの)
ケンvsアリス少年連合。一本目。
そして、本当に何の意味があるか解らない、攻守交替したゲームが始まった。
ケンが攻め。アリスと二人の少年が守りだ。
さっきまでアリスと対峙していたディフェンスの二人は突如アリスの味方にさせられて、どうしたものかと困った様子だ。
ケンが右手でボールをバウンドさせながらアリスと向かい合う。リーチの差があるせいで、ボールとアリスの間に半身を入れてしまえばボールを奪われることはない。アリスもむやみに取りに行こうとはせず、両手を広げて腰を下ろしてケンの進行を止めることを選んだ。
ケンがアリスを睨みつけると正面突破を試みようとした。アリスを吹っ飛ばしてゴールまで行く気だ。
ケンが一歩踏み出した瞬間、アリスが半歩下がって腰を落とし、右手を伸ばす。
その瞬間、ケンは正面ではなくサイドに走り出す。
賢明だ。
正面に来ていたらアリスの左手がテンプルを狙っていた。
ほんの一瞬だけ遅れて走り出したアリスだったが、速さはケンの比ではない。アッという間に追いついて体勢を立て直した。
が、その瞬間、アリスの前に障害物が現れた。
ディフェンスの一人だ。
別に彼が裏切ったわけではない。ケンが上手くアリスを誘導したのだ。ましてや、アリスがディフェンスたちとチームプレーができるとも思えない。
ディフェンスが本気でケンを止めに行っていいものかと躊躇したため、ケンは彼を容易にいなした。
アリスが慌てて進路を修正する間に、ケンはディフェンスを抜き去りゴール前に切れ込んだ。そしてゴール下で大きくジャンプしてシュート態勢に入る。
アリスも少し遅れたもののギリギリケンのシュートのタイミングに間に合った。
アリスが大きく飛び上がってケンのボールに手を伸ばす。
すごいジャンプだ。
しかし、背丈の差はいかんともしがたい。アリスの手は全然届かなかった。
ケンは勢いそのままにアリスを吹き飛ばして、上からダンクをたたき込んだ。
「ぷお。」アリスは奇妙な声を上げて吹き飛ばされた。
「どうだ!!」ケンがようやく一矢を報いて、大声で吠えた。ギャラリーが呼応して歓声を上げる。
「くっそー。」アリスが立ち上がって悔しがる。止めに行った際に肩が当たったせいで鼻が痛い。「やるじゃん。」
「お、おい、大丈夫か?」ケンが直前までの威勢はどこへ、オロオロとアリスに近寄ってきた。意味もなく右往左往する両手が彼がかなり慌てていることを物語っている。
「?平気よ?もう一回!もう一回!」アリスがそうせがみながら、ドレスの裾で鼻をぬぐった。
袖に血がついた。
鼻血だ。
楽しさMAXのアリスはもちろんそんなの気にしている様子はない。
むしろケンや少年たちが心配そうに声をかけてきたが、結局、「あんただって鼻血出したじゃん」と言うアリスの言い分で試合は続行されることとなった。
ケンvsアリス少年連合。二本目。
ケンが鼻血を拭いた跡が鼻の下に残るアリスを見る。さっきまでの睨みつけるような視線と違い、心配そうな表情。やっぱこの子基本的にはいい子のようだ。最初に跳び蹴りこそ食らわせたりしたものの、ゲームを無視して殴り掛かったりとかはしてきてないしな。むしろ、あれ以降はアリスのほうが嬉々として殴打をゲームに取り入れている。
「マジで行くぞ?」
アリスは黙ったまま、左手でかかってこいとばかりにおいでおいでのポーズをした。
ケンは少し強引に中に進んでいく。アリスのほうもさっきので体格差では負けるのを理解したのか、少し、距離をとって隙を狙いながら、じわじわと後退する。
じりじりとケンがゴールに近づいてきて、アリスは合わせてさがる。これ以上さがるとゴール下だ。
ゴールまでの距離をちらっと確認すると、ケンは迷いなく仕掛けた。アリスにぶつかるように前に出る。
ドリブル抜きに来たのではない。シュートだ。
シュートなら、ボールを持てる。ボールを持って高いところにあげてしまえばアリスでは届くことができない。
アリスを跳ね飛ばす勢いで前に出たケンはボールをつかんでシュート態勢に移行した。
ケンの突進の瞬間、一歩下がって跳ね飛ばされるのを回避したアリスはケンがシュートするのを読んでいたかのように大地を蹴っていた。
今度のアリスのジャンプは低かった。
跳んだ瞬間に解った、ボールには絶対に届かない。
しかし、アリスの狙っていたのはボールではなかった。
アリスは上へではなく前にジャンプし、空中でシュート態勢に入ったケンに、両手両足で抱きついた。
アリスの全体重をくらって、さすがにケンがアリスにしがみつかれたまま後ろにもんどりうって倒れる。
ボールはシュートされることなくケンの手から離れ、地面に転がった。
「ボール!!」アリスがケンの上にまたがったままディフェンスの一人に叫ぶ。
「え?あ?」ディフェンスがアリスに突然声をかけられ、転がって来たボールを慌てて拾い上げた。
「どうよ!私の勝ちよ!」アリスがケンを腰の上から見下ろしながら、満面の笑みで勝ち誇った。
てか、この体勢。
「分かった!分かった!降参だ。負けで良いから早くどいてくれ!!」ケンが顔を真っ赤にして怒鳴った。
意外とうぶだ。早くどかないと、どうなっちゃうのかしらん。
「ヤー。」そんなことどうでも良いアリスがケンの上に乗ったまま勝どきの声をあげて、右こぶしを掲げた。




