5-4 b さいきんの学園もの2
テスト結果発表の後の昼休み、アリスたち4人はアリスとシェリアの机をくっつけて食事をしながら話していた。
自分もシェリアとアリスの間でウィンゼルと一緒に会話に混ざる。ウィンゼルは誰かが話すたびに鼻を引くひくさせながらそちらのほうを向くので、中に居る自分としては非常に助かる。
「さすがリデル様ですわ。」とキャロル。今日のテスト結果の話だ。「アピス様の悔しそうな顔みました?」
アピスは自分専用の食堂に行ってしまって居ないが、他のアピス派の女子に聞かれるのはかまわないのだろうか?
「あまり、そういう事を言うのは良くないわ。」アリスがキャロルをたしなめた。アリスはこの頃このメンツだと敬語は忘れていることが多い。逆にキャロルはアリスに敬語のままだ。「だいたいキャロルン、アピス様より点数下じゃない。」
「そうなのですけれど、アピス様がやり込められているのはちょっと気持ちが良かったのですの。」
「どうどう、キャロルン。めったなことを言うもんじゃないのよー。」とスラファがキャロルをなだめた。「でも、まあ、気持ちは少しだけ分かるかな。」
「いちいち、うるさいもんねー。」アリスも同意する。
「それもあるけど。アピス様、ミンドート家であることをちょいちょい匂わせてくるから、逆らえないのよー。」スラファは言った。
「アピス様にそのつもりがなくても、実家の上下関係があるからどうしてもちょっとね。」キャロルもスラファに賛同した。
最近口数がとても少なくなったシェリアが少しうつむいた。シェリアはアピスと仲良くするように父から強く言われている。そして、父からもアピスからもリデルと距離を置くように言われているのだ。
「その点、リデル様はすごいですわ。アピス様をものともしないんですもの。」
「その・・・ドッヂソン家的には大丈夫ですの?アピス様と揉めてしまって。」
「ん?えーと・・・。何とかなるんじゃないかしら?」アリスは適当な感じで答えた。「それに、公爵がたなんて国の大事で忙しすぎるから、私たちのちょっとしたいざこざなんて話題にも上らないわよ。気になんてすることなんてないわ。」
まあ、王城での公爵たちの会議を見ている限り、アリスの言ってることは大方正しい。公爵たちがいちいち子供同士のちょっとしたいざこざに介入してくるとは思えない。
が、この間、ちょっとしてない暴力沙汰を起こして公爵たちの間でも大問題となり、実家を侯爵から男爵まで降格させた人間がそんなことを言ってもなんら説得力がない。
「ドッヂソン家はどこの派閥ですの?ミンドートにもベルマリアにもつかないとなると、やはりエラスティアに強いコネでもあるんですの?」キャロルが訊ねた。
「うーん・・・?強いて言うなら、アリス王女派?」
「アリス殿下!?」3人が顔を見合わせた。
「あれ?アリス殿下は何派ですの?エラスティア?ベルマリア?まさかモブート?」スラファが困ったように虚空を見ながらつぶやいた。
「馬鹿ね、アリス殿下はアリス王女派なんじゃないの?」キャロルが言った。
「でも、ジュリアス様はベルマリア派閥だし、アピス様はミンドート派閥、それこそ王子であるアミール様もエラスティアの派閥よね?アリス様にもどこかの後ろ盾があるんじゃないの?個人ってことはないでしょ?」
「たしかに・・・。」キャロルが考えこんだ。
「そういえばそうね・・・。」と、アリスも眉をひそめる。
え、本人が今更それ考えるの?
「でも、ほら、アリス殿下が王様になれば派閥も何もなくない?」キャロルは言った。
「そういうものなのかな??」スラファが言った。「やっぱ王になっても派閥じゃないけれど諸侯との協力体制って大事なんじゃない?王様とエラスティア公爵みたいに。エラスティア公だけじゃなくてもミンドート公もベルマリア公もモブート公も、もともと王とは仲の良い貴族でしたわよね。」
「そういうものなの?」アリスが訊ねた。
「例えばわたくしとスラファの家はアキア公の公領の内部にあるので、アキア公とのつながりが大きいのですわ。アキア公爵はほかの4公に比べるとやはり見劣りしてしまいます。なので伯爵と言えど、王領の近くに領地を持ち、4公や王家とコネクションのある伯爵たちと比べてあまり大きな力は持っていませんの。やはり4公とコネクションを持つ貴族は男爵や子爵といえどもそれなりの力を持っているものですわ。そう言った関係性は重要ですのよ。」キャロルが言った。「ですので、私は学校には学びに来ているというよりコネクション作りに来ていますのよ。」
「私はできればエラスティア派閥に入れれば良かったんだけれど、残念ながらエラスティア系の有力な貴族の関係者が今は学校にいないのー。もともと、エラスティア公ってあまり公の場には出てこないみたいだからコネを作りにくいのよねー。だからミンドート派閥なんよ。」
「?なんでエラスティアがダメだとミンドートなの?ミンドート公じゃなくても、ジュリアス様やモブート公の関係者もこの学校にはいるじゃない?」アリスが訊ねた。
たしかに、たまたま学校に公爵の子供が彼らしかいなかったからって、男ならジュリアス、女ならミンドートって振り分けられるのも少しナンセンスな気がする。それに、女性のための派閥を広げているとはいえ王位継承権の低いアピスがジュリアスよりも人数の多い派閥を形成しているというのもちょっと疑問に思っていたところだ。
「だって、ねえ。」スラファがキャロルを見た。
「普通に行けば、アピス様がアミール様のお后様でしょ?」スラファに促されたキャロルがとんでもないことを口にした。
「!?」アリスがビックリする。「!?」声も出ない。
「ネルヴァリウス陛下みたいなパターンもあるけどね。」とスラファ。
「でも、ネルヴァリウス陛下も最終的にはエラスティア系の侯爵令嬢と再婚なされたじゃない。」キャロルが反論した。
「!?!?」アリスは未だにアミールとアピスの話から頭が先に行っていないようだ。目を白黒させている。
「だから、アピス様はミンドート派でありながらエラスティア派でもあるんよ。」
「私もうまく中央の有力貴族の元に嫁ぎたいものね。」キャロルはぼんやりと宙を見ながら言った。
「アリス殿下かー。今まで考えてなかったわねー。」スラファが脱線していた話を元に戻した。
「そういえば王女殿下はもう元気なのですか。ご病気だとうかがってましたけれど。」キャロルが訊ねた。
「え?ええ。それはもう。」まだ、心の一部がアピスとアミールの結婚に脱輪したままのアリスが条件反射だけで答えた。
「アリス殿下が王様になったらどうしたらいいのかしらねー。」スラファがほっぺたに片手を当てて考え込むようなポーズをした。
「どうやって、渡りをつけたものかしら・・・あ。」といいながらキャロルがアリスを見た。ほかの二人も気が付いたようにアリスを見つめる。
「?。!!。まかせなさーい!」アリスはハッと気が付いてこぶしで自分の胸を叩いた。まあ、王女本人が言ってるわけだから、その場の勢いだけの約束に見えてもこれ以上ない手堅い約束だ。
「お願いね。リデルン!」
「リデル様さすがですわ!」
「リデルちゃん、私も、できればお願い・・・。」
まさか王女その人が確約してくれたとは思ってもみない三人が期待を込めてリデルに念を押した。
現金な話ではあるが悪くはない流れだ。アピスやジュリアスがやっているようにアリス派が学校内に勃興するのは今後のアリスのためになるに違いない。できれば有力な貴族たちを取り込んでいきたいところだ。
アリスも友人が増えればうれしいことだろう。




