第15話「私は私のやり方で」
私には私のやり方がある。
彼が「そういう」つもりだと言うならば私は彼の願いに答えるべく自分なりに守る方法を考える。
普通の生活を彼が送れるように……。
だから、あえて二人には席を外させた。
「それでは交渉を始めましょう、ライナーさん」
名前を呼ばれたリンドヴルム領主代理は一筋の汗を流す。
平常心でいられるわけがない。
リンドヴルム領主が問題を起こした直後に呼び出しがあり、それも私との一対一での会話。
いや、一対一かも分からないはずだ。
本来なら……。
ライナーは何を感じたのか椅子から立ち上がるとすぐ横に土下座してみせる。
「陛下! 我々はどのような処罰だろうと甘んじて受け入れるつもりでおります!」
「顔をあげてください。私はまだ何も言っていませんし交渉がしたいと言ったんですよ?」
「交渉…………ですと?」
ライナーは言葉通りに顔をあげる。
交渉というのはどちらが立場を保つかの駆け引き。既に問題を抱えてしまっているリンドヴルムにとってはどんな交渉であろうと自分等が不利益を被ると理解しているのだろう。
当然だ。
私は危うく守ってきた純潔を汚されるところだった。
私の信頼する者たちが軽重関係なく怪我をした。
この程度のことは当たり前で、むしろ彼からすれば甘すぎるくらいだろう。
私はまだ責任を取らせていない。
未だに椅子へ戻ろうとしないライナーの前に屈んだ私は感情のない声で答える。
「あなた方のしたことは言うなれば侵略行為です。国民を手に掛けなかったことは素晴らしいとは思いましたがパラミナスタ王女を狙い、その上で強姦しようというのであれば……そう捉えてもおかしくはありませんよね」
「しかしあれはアルバート卿が勝手に──!」
「黙っていていただけますか? 私、とても機嫌が悪くて」
あまり迂闊なことを言うとリンドヴルム領をどうにかしてしまいそうだった。
まあ、そのような力はない。
それだけの力を持った者がいるだけ。
「私は国民を巻き込むような政治に興味がありません。この城にいる皆さんも大切な国民です。それを理解してもらった上でお聞きしますがこれはなんですか?」
「っ!」
「たしか私たちの国に限らず大陸の統一事項として魔物は無害なものがD級、そこから害を及ぼす可能性を考慮して格上げにされていきC級以上で討伐を想定しますよね。さらに言えばC級でも人的被害を及ぼさないと考えられる魔物は可能性の話で討伐して仲間や家族の報復を受ける危険性を鑑みて手を出さないようにしているはずです」
「…………」
「そして、パラミナスタの領土には現在この武器を使うに値するような高いレートの魔物はいないはず」
ライナーの顔が青ざめていく。
当然のことながら私の国のやり方のせいもあって彼を除いて近くの森にはほとんど魔物がいない。それこそ無視していてもいいレベルの魔物しかいないためにパラミナスタには冒険者ギルドが存在しない。
つまり、確実性と速効性を求めた武器は必要ない。
このような武器を持った人間がパラミナスタに来たということは使うに値するだけの実力を持った国民を殺すため以外に考えられない。
そうなると論点は最初に戻る。
私は国民を巻き込むような政治に興味はない。
「そ、それは陛下の国に魔物がいるからでしょう!」
「魔物?」
「ええ魔物ですとも! その魔物がアルバート卿に手を出したから報復としてアルバート卿が動いたのでしょう! こ、こちらはパラミナスタが魔物を飼っていると虚偽の噂を流してもいいのだぞ!」
「脅すつもりなら……笑ってください?」
私に顎を捕まれたライナーは言葉が止まる。
脅して立場を取り戻そうと考えたのだろうが脅迫なんて私にとって恐れるに値しないものだ。
何故なら彼は魔物であっても国民。飼っているなど人聞きが悪い。
「交渉の内容ですが、リンドヴルム領は今日をもって私兵の保有を禁止、また勢力は縮小させていただきます」
「私兵の保有を禁止するのはまだしも陛下の言葉だけで勢力を縮小できるものか!」
「できますよ? いま街の方ではあなたがパラミナスタで飼っている魔物だと罵った国民が歩いています」
「なっ!」
「誰を襲うでもなく、ただ一人の少女と買い物や食事をしている。パラミナスタ国民は争いとは無縁に生きてきたのですから二人を見て討伐するべきだ等とは思わないでしょうね」
そして、これで止めだ。
「彼の存在は国民に明るみになりました。そして後日、彼はパラミナスタがリンドヴルム領に侵攻された時に守ってくれた英雄と説明します」
「待て! いやお待ち下さい! そのようなことをすれば」
「ええ、リンドヴルム領は終わりですね」
リンドヴルムの権力は失墜する。
しかし、何度も言うが私は国民を巻き込みたくない。
リンドヴルムの信頼が失墜すればそこに住んでいる領民にも被害が及ぶ。それは優しいものではないはずだ。
「ですから交渉をしましょうと言っているんです。二度と私の国民に手を出さないでください。無論、街を歩いている彼も含めてです。彼はもうパラミナスタにとって大切な国民の一人ですから」
「そ、それに従えばリンドヴルム領はどうなる」
「彼を私がアルバートに襲われた時に救ってくれた騎士と国民に紹介するつもりです。あくまで王女が平民に襲われたのを助けただけの話になります。これでリンドヴルム領そのものが責められることはないでしょうね」
あくまで一人の男が王女を襲っただけ。
それならば領そのものを責める人間はいないしアルバートから各種権力を剥奪し別の領主が責任をとらせたことにすればライナーという次期領主の誕生で騒ぎは小さくなる。
何よりライナーが次期領主ということはパラミナスタに手を出せないのと同義。
「へ、陛下のご厚意に感謝いたします」
「今後ともよい関係をお願いしますね」
アルバートとは違いライナーは素直に従ってくれるだろう。
今回の一件でへたな真似をすれば簡単に国を滅ぼされかねないと知っているのだから。
さて、これで彼の安全は少しだけ保証された。
あとは……。
「リデル、そこにいますよね」
「ライナーの様子を見るに交渉は成功かな? 僕は待機している必要もなさそうだね」
「ちがいます」
え、とリデルは疑問を浮かべる。
「自分一人で戦わずリデルに頼るなんて恥ずかしくてユキさんに顔向けできませんよ。リデルさんを呼んだのは外にいる二人の様子を見たいからです」
「あ~、ああ~なるほとね。誰だろうね、姫様をこんな悪い子に育てたのは」
さぁ、と惚けたふりをする。
別に二人きりだと思っている彼とエリスの様子を見ることが悪いことだなんて教わったことはない。
それに気になるのは普通のことだろう。
私は彼に告白された身なのだから。
「ほら、これでいいかな?」
「ありがとうございます」
リデルはどこからか遠隔映像転送用スフィアを取り出すと先程まで交渉の席だった場所に座る。
机に置かれたスフィアには少しずつ向こうの様子が映し出されていく。
「っ!」
「おお、エリスはかなり積極的だね」
「ななな、なんですかあの服は!」
エリスがやけに丈の短いスカートを穿いている。
ここを出発した時はだらしないと思われない程度の服で出たはずだが途中で買って着替えたのだろうか。
いいやエリスはそんな性格ではないはずだ。
他に思い当たる節と言えば……。
「エリスの着る服を、ユキさんが選んだ?」
「ふむふむ、彼が隣を歩くエリスが平凡な服を着ていたから着替えさせたというわけだね。これはユキが日頃から欲求不満であることの現れだね」
「よ、よっきゅうふまんですか?」
「彼はああしたい、こうしたい、とあまり口に出さないけど実は色々としたいことがあるんだよ」
そ、そうなのだろうか。
たしかに先日の一件では俺の子をどうとかと言って私を押し倒してきたが関係はどうだろう。
もしかしたら欲求不満というものになっていたりするのかもしれない。
「ち、ちなみユキさんはどうして欲求不満に?」
「発散不足、かな」
「発散不足? な、何かを発散しなきゃいけないんですか!?」
「姫様はもしかして欲求不満が何か分かっていないのかな?」
思わず肩がびくっとなる。
た、たしかに何のことか知らないが別に言葉を知らないことはおかしなことではない。
だからこそ私はいつも勉強しているわけで……。
「単純なストレスは人間だったら食事や睡眠、あとは趣味で解消するものだけど彼はそういうのがないだろう? 食事は楽しみの一つと言っても彼にとって美味しいかは僕たちには分からないし睡眠はあまり気にしていないようだから効果は少ない。趣味だって無いだろう?」
「ど、どうしたらいいんですか!?」
「人間の男たちがやってるのと同じことだよ、姫様。まあでもパラミナスタにおいては姫様が禁止したからあり得ないけど」
「えっと……奴隷制度ですか?」
「遠からず正解かな」
そう言ってリデルは映像に視線を戻す。
ユキの視線は明らかにエリスの足に向いている。
「奴隷は働かせる道具、もしくは遊び道具だ。遊びというのは性的な方の話だからね」
「せ、性的な……!」
「まあでも奴隷は汚いとかいう考えを持ってるとそれ専用の女性を作り出すわけだ。所謂、娼婦というものだよ」
「え? じゃあエリスはユキさんの娼婦にされるんですか?」
「…………無邪気な声でさらっと恐ろしいことを言える姫様のことが僕は時々こわいと感じるよ」
彼がしようしてることは少し違う?
いや、そもそも彼がそのような非情なことをするような人だったら私も声をかけたりはしないと思う。
ならば信じるまで。
リデルから帰ってくる言葉が彼を否定するものではないと。
「ユキは魔物とは思えないほど紳士な男だよ。奴隷でも娼婦でもなく隣を歩いている綺麗な女の子がいることを楽しんでいる」
「……それを聞いて少し安心しました」
「たぶん、姫様のお陰だよ」
「え?」
「ユキにとっての一番は姫様だ。だから姫様でなければ襲ってでも行為に及びたいという価値に追い付けない」
つまり以前の言葉は本気……。
「でも、姫様が自分可愛さにユキを頼ったのではなく心から国民を、赤の他人や家族を引っくるめた皆を助けたいと思っているから頼ったと理解しているからこそエリスを大切にしているんだよ」
「そう、なんでしょうか」
「違ったら彼は軽蔑されるのも厭わないよ? その証拠にメアは彼の身内だから扱われ方が雑だしね」
彼は私の考えを考慮している?
どうしてだろう。
信じていたはずだがリデルから聞いて彼への印象が大きく変わったような気がする。
「これで彼を安心して認められるかい?」
「……はい♪ これならきっと皆さんも彼のことをすぐにいい人だと理解してくれると思います」
──それから数時間後、城の前。
「パラミナスタ王女をお守りくださる新しい騎士様にご挨拶申し上げます!」
「え……あ?」
間抜けな声しか出ない。
いや、この状況を当たり前と思って通りすぎることのできる人間などいないだろう。
遊び疲れたエリスを連れて城へ戻ると何故か大勢の人間がジェラの城の前に集まっていて俺の姿を見るなり全員がその場に座り込み頭を下げたのだから。
理解できる者がいるなら説明してほしい。
これはどういう状況なのか……。
「すまない、どういうことだ?」
「王女さまよりいつも私共が困っている時に手助けをしてくださる侍女であるエリスさんと共に歩いている方が今後、このパラミナスタをお守りくださる騎士だと聞いております」
「……っ! あいつ、余計なことを……」
「お話にうかがっていた通りのお方ですね。今後ともお守りいただけますよう」
「あー、口を閉じろ。こういうのを人間は何と言っていたか……そう、おべっかだったな」
分かっている。
ジェラは気を利かせて俺を嫌う人間がいなくなるようにあえて説明して認めさせようとしたのだ。
しかし、万人が従うわけがない。
この内の何人が魔物に家族を、恋人を殺されて恨みを抱えているのか分からない。何人が俺の喉笛に斧を叩きつけたいと思っているのか考えたくもない。
そう、彼らはジェラに従っているだけ。
「ジェラート様の仰った通りよ。やはり騎士様は素直じゃないのね」
「こら!」
「だって本当のことでしょ? でも、そこが人間らしくて関わりやすい所でもあるんじゃないかしら」
「…………!」
そう、か。そういうことか。
お前らには、そういう捉え方もあるのか。
「お前らがどう思おうと勝手だが俺はお前らの期待しているような騎士なんかではないからな!」
俺は人間の間を通ってドスドスと足音を響かせながらあの臭いのする部屋へと入った。
そう、ジェラの部屋だ。
「お前~!」
「ひゃっ、え? ユキさん!? きゃっ!」
ノックもせずに入ったからこちらに気がつくのが遅れて一度飛び上がり俺が掴みかかったからもう一度飛び上がる。
ああ、語弊がある。
胸元に掴みかかったのではなく肩を掴んで押し倒したのだ。
「まま、まだ早い時間ですよ!?」
「何を期待している? それよりお前はよくも俺に相談せず余計なことをしてくれたな!」
「気に入ってくれましたか?」
「そんなはずないだろう!」
「そうですか♪ ユキさんなら気に入ってくれると思いました」
「なっ、誰も肯定してないぞ!」
俺は尻尾を見るまで気がつかなかった。
本当に喜んでいたのか。
こんな人間が考えた程度の下らないおべっかを聞かされるだけの状況を信じて、嬉しいと感じていたのだ。
俄には信じがたいが言葉や態度と裏腹に尻尾は嘘を吐けない。
「お前、俺の扱いが上手くなったな」
「扱ってるつもりはありませんよ。だって私達はあくまで対等な生物であって物ではありませんから。今回の一件だって少しでもユキさんがパラミナスタの居心地が良くなるようにしたかったからです」
ああ、おかげさまで俺は幸いにもパラミナスタが好きになった。
この国にいるやつは嘘を吐くのが下手で全員とは言わないがほとんどが善人。それこそジェラの影響を受けてきた人間だ。
「そういえば俺が素直ではないと言ったのはお前か」
「ぎくっ」
「余計なことを吹き込むな」
「だって本当のことじゃないですか。今日は私に構ってもらえないからってエリスとお楽しみだったじゃないですか」
「何の話だ」
「エリスが逆らえないからって自分好みの服を着せたり、食事の時もエリスがこぼしたとか言って色んなところを舐め回してましたもんね。私にはそんなことしないのにエリスにはするんですね、ってがっかりしました。私には素直じゃないんですもんね」
何故そのことを知っているのだろう。
いや、それよりも拗ねるようなことではないと思うのだが……。
好みの服と言っていたが俺が無理に着せたというよりエリスが選べと言ったからそれとなく雌が着そうな服を選んだだけで無理強いは……してないと言えば嘘になるが最終的に着ると決めたのはエリスの方だ。
それに食事の際の話も事実なのだから文句を言われる筋合いはない。
エリスが口からこぼした肉片が偶然にも彼女の胸元に落ちたのだから放置していればそのうち新しい服を汚してしまうかもしれないと綺麗にしただけだ。
何より胸元とは言ってもほとんど上の方である。
「別にエリスとは何もなかった」
「別に何かあったら怒るなんて言ってませんよ」
「そういう顔をしてる」
「こ、これは関係ありません! 別にユキさんがエリスと仲良くしてたからって怒るわけがないじゃありませんか! あんなに楽しそうなエリスの顔を見たのは久しぶりですし怒る理由なんてありませんよ!」
いや、明らかに怒っている。
今日はやけに顔を合わせようとしない。
「大丈夫だ。本当に何もしてない」
「だから私は何も――」
「俺は何も野蛮な魔物ではない。エリスが雌らしい服を身に着けて美味そうな足をちらつかせていようが俺にはただの可愛い雌にしか映らない」
俺はジェラートの首筋に鼻を近づける。
あれだけ匂いを擦り付けたはずなのにもう匂いが消えている。人間の雌が身体を洗うのに使っている白い塊が強力すぎるのだろうか。
再び自分の匂いを付けるために鼻先や首をジェラの身体に擦りつけながら俺は言葉の続きを発する。
「お前は別だ。お前の美味そうな足を見せられたら俺は理性を保てない。お前という雌の身体を見せられて何も考えていないわけではなく、襲ってしまい二度と触れられなくなるのが恐ろしい」
「ユキさん?」
「このくらいでいいか。だからあまり俺を誘惑するな。本当に俺の子を孕んでくれる気になるまでは普通の雌でいてくれ」
「…………その件で確認したいことがあります」
ジェラは胸の前で両手の指を噛ませ祈るような姿勢をとって真剣な眼差しを見せる。
元々ジェラはいつだって真剣だ。
「私で本当にいいんですか? 許嫁というのは人生においてたった一人の生涯を誓う者を指す言葉です。例えばユキさんが今の立場を守るために言っているだけで他の女性を好きになる可能性があるというならば私なんかに許嫁なんて言葉はもったいない気がします」
何を言うかと思えばそんなことか。
さっきの言葉をちゃんと聞いていたならば俺がジェラを特別視していることくらい分かるはずだが、どうにもこの雌はそういうことに鈍感らしいな。
孕ませたいという言葉だけでは足りなかったのだろうか。
いいやそんなことはない。魔物にとってはどんな軽い感情表現の言葉よりも「孕ませたい」が強い意思表示だ。
自分にとって唯一の雌にしか発言しないようなことだからな。
「そうか、もったいないか」
「…………かもしれないです」
「それは残念だ。少なくともお前は汚れなき純潔の雌で淫乱でもなければそういう感情や立場を大切にするいい雌だと思っていたのにな。そうか、俺の知らないところで既に色々な経験を積んだ雌だったのか」
「えっ?」
「それならば相応しくないか。本当に名残惜しいが他の雌を探す方がいいだろうな」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ジェラは俺の尻尾を掴む。
気持ちが分からないわけではないが毎回呼び止めるのに尻尾を掴んでくるなら説教が必要かもしれない。
「ユ、ユキさんが言ったこと何も間違ってませんよ! わ、私そういう経験ありませんから……逆に困らせたりしてしまうかも、と思って」
「ジェラは何度言っても自信を持ってくれないらしいな。まったく、そういう自覚の足りないところがまた愛しいところでもあるのだがな」
「ふえっ?」
「そうかそうか、俺がはっきり言えばいいのか。俺はジェラのことを愛しているぞ」
「な、ななっ……!」
ここまで直球なら分かるだろう。
俺なりの感謝のつもりだ。
今回の件に限らずジェラはいつも裏で根回しをしてくれていたことくらい承知してる。
「み、皆の前でそんなこと言ったらダメですからね! まだユキさんは国民であり、騎士でもありますけど立場はそこまでなんですからね!」
「ありがとな、色々と」
「……!」
気がついてないとでも思ったのだろうか。
今回、俺を国民に紹介し認めてもらうまでには色々な手順が必要であり、不安の種だったリンドヴルムからの攻撃を抑圧するような姿勢を見せたりしていたはずだ。
それこそ、俺を外に出したのも。
エリスは自警団に赴いて訓練をしているため国民に顔をよく知られていて、そのエリスが俺と歩いているのを見せつければ安全だと思わせるにはちょうどいいだろう。
まあ、エリスの休みは本人が言い出したことだ。
偶然なのかは分からない。
「やれば……できるじゃないか」
俺は部屋を後にして独り言のように呟いたのであった。




