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お姫様は『へんな奴』を平気で連れてくる  作者: 厚狭川五和
第3章「動き出す者」
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第11話「レティノイ洞穴」

「あなたは弱い」


 懐かしい声が俺の神経を逆撫でした。

 強いか弱いかの尺度で測られたことはなかったが孤独を飼い慣らしてきた俺には弱いという言葉ほど軽蔑されたように感じる言葉は他にない。

 弱い……即ち守れない。

 守れないということは、孤独を続けることを意味し、死が遠くないことを意味している。


「雌の胎を裂いて産まれた悪魔。あなたに幸せを望む権利はない」

「触れるな……!」


 憎悪にも似た吐き気が気分を不快にする。

 撫でるように耳を触られ頬を擦られただけだが俺には我慢のならない嫌気を与える。

 何より、その指の体温が感じられないのが気持ち悪い。

 それに俺の意思に関係なく指はあちこちを汚していく。


「この身体は私が与えたもの。この大きな耳、高く美しい鼻もあなたを構成する全ては私のもの」

「やめろ」

「ここを撫でられるのが好きだったはず」



 ──パラミナスタ近郊の森、北東方面。


「触るなぁッ!」

「おっと」


 俺は仮眠していたが勢いよく身体を起こしたが誰も触れようとなどしておらず勘違いだったのかもしれないと息を整える。

 むしろ心配させてしまったようだ。

 体温が高く気持ち悪い。

 先程までの感覚が本物だったのかは分からないが確実に俺の精神に影響を及ぼしてきたのは間違いない。


「ユキ殿、顔色は分からないが気分が悪そうだ」

「………………」

「何か悪い夢でも?」

「いや、気にしないでくれ」


 あの声は聞き覚えがあっても俺は誰かの所有物に成り果てたことはない。

 ただ、恐ろしかった。

 俺の全てを知っているかのように言葉を投げ掛けてくる何かの存在に俺は恐怖していた。

 あれは夢だったのだろうか。

 とても、何もなかったとは思えない記憶には無くとも身体が震えてしまうほど嫌な雰囲気を感じとれるものだった。


「ユキ、良かったらこれを飲んでください。少しは気分が落ち着くはずです」

「これは?」

「秘密です」

「得体の知れないものを他人に飲ませようとしているのか。まあ信じると言ってしまったから断りにくいが」


 ティアウスが革の水筒を差し出してきたので受け取った俺は飲み口付近に鼻を近づけて中の匂いを嗅ぐ。

 中身の内容については分からないが甘い蜜の香りがする。

 おそらく何らかの飲み物に蜜を足して精神安定剤としての効果を持たせているのだろう。

 俺にも効果があるかは知らないが。


「団長、申し訳ありません。お花摘みに行ってきます」

「…………ユキ殿の過去を詮索するつもりではないのだが──」

「俺は他人に触れられることを恐れていたらしい。特定の人物だけなのか共通なのかは知らない。ただ何者かに身体を弄られた経験があるのかもしれない」

「ユキ殿、仮にだが探索しようと考えているレティノイ洞穴にユキ殿の過去を呼び覚ますような何かがあったとしても平静を保っていられるのか?」


 分からない。

 レティノイ洞穴という名も森で行き倒れていた冒険者の地図を預かった結果であり記憶にあるわけではない。

 そういえば魔鉱石は暗いところで作られるのだったか。


「何者だ! 某の安息の地に足を踏み入れようとする人間、名乗れ!」


 ん、それなりに離れた位置で問題が発生したらしいな。

 この場にティアウスがいないことを考えると巻き込まれた可能性は当然のように高い。

 それに花を摘むと言っていたが……。


「ユキ殿」

「ああ。口振りからして人間ではない。俺が離れてから住み着いた魔物がいるらしい。それに言葉も話せるか」

「問答しているということは今すぐに危害は無さそうですが急いで確認した方がいいと思われる」


 どこまで行ったのかは分からないがティアウスの臭いが強い。

 これならばすぐに追い付けるだろう。


「なぜ名乗らない!」

「ど、どうして魔物に名前を言わなくてはいけない!」

「ただの侵入者を葬ったところで某の糧とならん! そこな人間が騎士であるというならば誉れ高い勝利となろう!」

「ちょいと私の部下へ悪戯が過ぎると思うがね」

「援軍?」


 やはり魔物、それも牙獣族。

 尖った耳に口を開くと見える鋭い牙、全身から隈無く生え揃った見事な体毛がそれを物語る。

 たてがみが無いのは雌の証拠だ。

 言葉が流暢なことを考えると下級の魔物ではない。三人でならば負けることはないだろうが人間の名前を聞き出して武功を立てようとする辺り手練れと見ていいだろう。

 しかし、どうしたものか。

 なるべくならば立場的に魔物を許すわけにはいかないし同胞であるならば手にかけたくはないのだが……。

 ん、いま俺と目が合っていたか?


「主君! どうして人間などと居られるのですか!」

「なんっ……!」

「このような者共と居てはなりませぬ! まさか主君の弱みを握り従わせているのか!?」


 早い展開に俺はついていけない。

 主君も何もこの魔物は俺が森に居た頃には見たことがないし流れ者なのは間違いない。主従を結んだ誰かということはないだろうし必然的に俺が話を合わせてやる必要もない。

 まあ、毛並みが綺麗だとは思わなくもない。

 あれだけの艶を保っているのだから撫でればジェラートの城の毛布よりも柔らかいのだろう。


「っ! ああ、我が主君……それほどまでの寵愛を賜ってしまっては某、とうとう諦めがつかなくなってしまいます」

「ユキ殿、この魔物は一体何の話を? 私には理解が叶いませんが」

「勘違いしてるのかもしれないな。他の国から連れてこられたのか、長旅で記憶すら失くした哀れな奴か……」

「滅相もない! あなた様こそ至高の御方! このガゥ=フェンラスがお仕えすべき存在!」

「…………ティアウス、お前は面倒ごとを連れてくる天才だな」

「申し訳ないです……」


 しかしまあ、ティアウスが完全に悪いとは言わない。

 先の族に関しては周囲への警戒を怠ったティアウスが全面的に悪いがこの魔物に関しては俺が気づくべきだった。

 やはり夢の言葉を引きずってしまっているのだろうか。


「ガゥ、と名乗ったな。お前は牙獣族が一人、誉れ高い戦士ではないかと見受ける」

「まさに! 主君の仰るとおり!」

「この雌はアルティオスという国の騎士だ。喧嘩を売るということは牙獣族とティアウスの国は戦争をするということになるが?」

「先に喧嘩を売ったのはそちらの雌で──」

「黙れガゥ=フェンラス!」

「っ!」


 俺を主君と慕うならば従わざるを得ない。

 この雌には匂いを嗅がせるまでもなく主従関係が成立しているのだから脅迫するような命令は絶対服従だ。

 何より、勘違いは困る。

 ティアウスが花を摘むことは仕方のないこと。

 匂いで分かる。何をしていたのかくらい、な。


「雌が()()()()()だけのことを愚痴愚痴と騒ぎ立てるな! 俺を主君と呼んでおきながら考えを察することも叶わないと?」

「主君!? よもやそこまで人間どもに操られてしまわれるほどの恐怖をお受けになられたのですか!? ならば危険分子は即刻処分いたしま──」

「雌狗風情が」


 俺は対話を不可能と考え武器を構えていた二人には先を越されまいとガゥを全力で突き飛ばし急斜面を下り、彼らから無理やりではあるが距離を開くことに成功する。

 これで少しは二人きりで話せる。

 ガゥは神経質だ。

 俺が人間と行動を共にしていることが気に食わないの一心で言葉に耳を貸そうとしない。

 それほど、恨みが募っている。

 だからこその二人きり。


「お前は耳が弱そうだな」

「しゅくっ……そんなところ噛んでは、いけまっ……せん!」

「…………ふん、これでティアウスと同じだな」


 ガゥは顔を覆って啜り泣いている。

 俺がガゥの弱点であろう耳を甘噛みし抵抗する間も無く脱力させた結果としてガゥは粗相をし、それを主君と慕う俺に見られたことが屈辱でならないのだろう。

 魔物の雌はそういうものだ。

 雄に付き従いながらも己の醜態など見られようものなら自害するほどに恥ずかしくなる。


「殺して……くだされっ」

「それには及ばない。お前は俺の前で粗相はしたが雌として当然の反応をしただけだろう」

「…………?」

「主君と慕う者に貞操を汚されたとでも思うといい。お前は綺麗な毛並みをしている。それを戦士ではなく雌として見たくなったが故に乱暴なことをした。許してほしい」

「主君……」


 本音ではない。

 俺が求めるのはジェラート一人のみ。他の雌が付け入る隙はない。

 だが、あのままティアウスやルドルフと殺し合って綺麗な毛並みが血で汚されることがあれば、ましてや俺が称賛するほどの毛皮を人間に剥ぎ取られようものなら悔しくてたまらない。

 俺は我が儘でこのようなことをしたのだ。


「俺はいま一人の人間と契約している。この森で《彼の地を統べし王》などと呼ばれた俺が一国の王女と契約したのだから同盟を結んだにも等しい」

「何故、人間と同盟など……」

「守るためだ」


 口を開くと嘘しか吐けない自分が愚かしい。

 何が守るためだ。自分が守るべき土地と仲間を捨て人間と同じように生活していて何を守れる。

 本当はジェラートを選んだだけだ。

 でも、あの雌が俺に約束してくれたのだから信じている。

 必ず守ってくれるのだと。


「人間は同盟した国は不可侵とする。つまり、俺は人間の国を襲わず、人間も森という領域を侵さない」

「しかし連中の口約束など……!」

「口約束ではない。自分の国を救うためと女王が自ら身体と命と心を差し出した。そこまでされて信じなければ紛い物であっても王と呼ばれた者としての恥だ」

「…………理解が及ばず無礼を。主君、改めて某を側に置くことを考えてはいただけないか。このガゥ=フェンラス、御身をお守りするため遥々と海を渡り流れ着いた所存に」


 それを信じるかどうかは別だが嘘はない。

 ガゥからは雌の匂いの他に塩の香りがしているし森に居た者がわざわざ俺のために戻ってくるわけがない。


「ガゥ=フェンラス、お前の申し出を受ける」

「主君に最大の感謝を」

「戻るぞ、二人がいる場所に。お前のことは俺が二人に説明するから敵意がないこ、と……を?」


 忘れかけていたがガゥをこのまま二人の前に連れて戻っていいだろうか。

 涙は落ち着いて止まっているが乾いていない場所がある。

 粗相をしたのにそのままではガゥ自身が嫌だろう。


「その前に毛繕いだ。綺麗にしてやるからもう一度さっきのように横になれ」

「ささ、さすがに主君にしてもらうなど!」

「俺の側にいるのなら毛繕いしてもらわないと困る。別に耳を噛まれたのだから抵抗することもないだろう」

「自分で致します故に!」


 そう言ってガゥは少し離れると自分の足を舐めて綺麗にし始める。

 耳を噛むという行為は人間でいう愛撫をするようなものだから柔肌を触れられた後で今さら恥ずかしいなどと言うのは奇異な話である。

 それに毛繕いだ。あくまで毛繕いの意味合いだ。

 と、さすがにルドルフとティアウスが追い付いてきたな。


「お~い! 大丈夫かユキ殿~!」

「心配はいらない。ガゥとも話がついた」

「ご迷惑をお掛けした。主君の友人と知らず無礼を」

「友人ではないが……」

「まあいいじゃないか! 我々を守ろうと一触即発の空気に割って入ってガゥ殿の誤解を解いてくれたのだ。ユキ殿と我々は友人ということで何ら問題はないじゃないか!」

「某は主君らが探しているという洞窟を知っている。お詫びとなるか分からないが案内したい」



 ──レティノイ洞穴。


「地質的には異常なし。おそらく奥が我々の目的でしょう」

「ああ。懐かしい匂いがする」


 即ち、俺などの魔物にとって力の源であり身体を構築する根源とも言える魔力が大量に存在しているということ。

 ティアウスの言うように地質は他と同じだ。

 問題は魔鉱石を自然生産しているとされる奥まで行かない限りは情報を得られないということだろう。


 特に危険な匂いはしない。

 しかし、大きな魔鉱石が生産されるならば引き寄せられた者がいないとも限らないのだ。

 可能ならば危険は排除しておきたい。


「そういえばユキ殿、牙獣族と先ほど言葉にしていたが」

「人間と同じような種族分けだ。俺やガゥのような獣そのままの姿をしている魔物をそう呼んでいる」

「しかし主君と某でも異なる」

「異なる?」

「主君は血筋が違うというか特別な存在なのだ。某のような雑種ではなく純粋な血筋であられるがために力も強く仲間想いなところがまた憧れたもので──いたっ!」

「おい、話を盛るな。仲間想いなつもりはない」


 と、俺の発言に何を思ったかルドルフがにまにまと気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


「な、なんだルドルフ。文句でもあるのか?」

「いいや? ただ我々はユキ殿がガゥ殿へ突撃していった時には守るためだったのだと思ったのだがな」

「ちがう! 他の連中などどうでもいい! 俺は自分が危険だと判断したから間に割って入っただけだ!」


 そう、あのままでは俺の()()が危なかったのだ。

 もう俺の話はやめてもらわなければ居心地が悪い。


「私もユキは優しいと思う。我々はパラミナスタに対して友好かどうかを示さずに協力しろと言った非常識な人間だ。それでもあなたは協力してくれたので」

「勘違いするな。ジェラートが興味を示したら付いてきたがるから協力してやるだけだ。目当てのものを手に入れたら帰れ」

「友として会いに行くぐらいは許してくれるのだろう?」

「…………それくらい、なら」


 俺は他人との馴れ合いに飢えていた。

 こうして遠慮のない話をできる相手がいることを幸せに感じているのは事実であり、今日限りで終わりというのは酷だ。

 でもやはりジェラートが一番だ。

 楽しい時間もそうだがあの雌が誰よりも愛しい。

 あの雌の広すぎて花でも咲き乱れているのであろう心は俺の飢えを満たしてくれる。あの明るい笑顔を見せてくれる愛しい人間が居てくれるだけで救われる。


「ユキ殿、何者かが入り込んだ痕跡がここに」

「…………。足跡の大きさと抉れ方からして人間だ。何名か争っている者がいたらしい」

「そこらの壁に何やら攻撃を受けたと思われる損傷が見られます。魔法による交戦でしょうか」


 そこまでは断定できない。

 しかし、ティアウスの言う壁の損傷は武器が弾かれた際にぶつかったという状態ではなく、どちらかといえば攻撃を外してしまい威力が有り余ったままぶつけられた感じである。

 これを人間同士の争いで?

 周囲に魔物の気配はない。人間が他の侵入者を葬るためだけに使ったのだろう。


「この先も道が別れている。音の反響からしてどこも広い場所に繋がっているな」

「主君、しらみ潰しに探しますか?」

「いや、時間がかかるし挟み撃ちにされた場合にあの威力の攻撃をされれば確実に誰かは当たる。悪ければ全員が一撃で殺される可能性もある」

「ならば散ろう。幸いにも声が響くお陰で叫べば駆けつけるのにも問題はないだろう」

「ルドルフの意見に賛成だ。それぞれが別の道を進み何かあれば叫んで知らせる。叫べなかった場合は……悪いが助かる可能性は低いと心得てほしい」


 ここまで来たからには皆が覚悟していることだ。

 手に入れれば国を裏で牛耳ることもできるようなものがある場所には危険な者が集まる。

 だから、覚悟しなければならない。


「と、別れたはいいが……」


 明らかに敵の気配がある。

 他の道にも確実に存在していたが俺が選んだ道が一番危険な匂いが強いような気がした。

 もちろん率先して選んだつもりはない。

 ただ俺以外にこの危険な匂いが分かる者がいないから仕方なく選択しただけで他に理由はない。


「視界は良好、嗅覚も異状なし。これなら探す上で問題はなさそうだな」


 夜目が利くとは言っても岩影やら水が溜まり込んだ窪地の中身などは確認できないから嗅覚が頼りだ。

 もし、俺が怪我をしたら皆は無事に出られるのだろうか。

 たぶん大丈夫だ。

 ルドルフは勘が鋭いし騎士としての腕もたしかだ。

 ティアウスも頼りないように思えてもルドルフの側にいるだけあってセンスは悪くない。

 ガゥとて牙獣族の戦士だ。心配ない。


「大丈夫ではないのは俺か」


 あの雌はきっと泣くだろうな。

 わんわん泣き喚いて涙が枯れる頃には心が荒んで食事もまともに取らなくなって……。

 あの侍女達にも迷惑をかけてしまう。

 ジェラートが発言したとはいえ、それを信じて俺が城にいることを許してくれた気のいい連中だ。


「は~いこんにちは♪」

「能天気な雌か」


 だから負けるわけにはいかないだろう。

 ここで叫んで皆を危険な場所へ呼ぶわけにはいかないし、怪我をしてジェラートを怒らせることもしない。

 無事で帰らなければいけないのだ。


「地獄行きの舟はすぐに出港ね」

「言葉遊びに乗ってやるつもりは……ッ!」

「はいおしまい。ね、すぐって言ったでしょ?」


 首筋付近に鋭い痛み。

 痛み?

 何かをされたと判断すらできない。痛みを感じる前に意識が一気に遠退いていくような感じだ。

 これは、本気で死ぬ。



 ──その頃のジェラート。


 嫌な予感がした。

 彼が城を出た際に言い残した言葉を聞いて侍女たちに相談した私はすぐさま対応したはずなのに不安が拭いきれない。

 騎士が不在になる。

 その危険な状態を彼は理解しているからこそ言い残した。

 ()()()()()()()()()()()、と。


「おやおや、ジェラート様。今日はお一人ですか?」

「アルバート様……」


 根本的におかしい。

 今日は彼の忠告があったから門は開かず毎日のように交わしていた国民との謁見も省いたというのに、どうしてこの男は城内にいる?

 そもそも侍女も側にいない。

 狭いとは言わないがある程度見晴らしのいいと思っている城内を誰にも見つからずにここまで辿り着くことなどできるはずはなく、まず私が一人だと考える時点でおかしな話だ。

 彼がいないことを、知っている?


「彼は城内の掃除をしているんです。ですから見かけなかっただけでしょう」

「本当に?」

「っ!」

「ジェラート様、あなたは嘘が上手ではない」


 アルバートは乱暴に私の顎へ手を添えた。

 優しさの欠片も感じない男の手。彼の力強い抱擁の方がいくらも痛みを感じない。


「あなたの責任を、ここで償ってもらいましょうか」


 嫌な予感は正しかった。

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