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ロード・オブ・ロード〜零白の皇〜  作者: スメラギ・零
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三章-十三節【黒き(シュバルツシルト)皇(・カイゼル)と翠の狩人(レラジェ)】

ーーリリス・ドーム内戦闘フィールド・高度5000メートル

「・・・・」

ーーブォォォォォォォォッ‼︎

レリウスとアスタロトが戦闘開始したその頃ーー地上から遥か高空にて、漆黒の龍の顕鎧(オリジン)を纏った零牙はレラジェと交戦中であった。

レラジェ= XIV(フォーティーン)と名乗った男が纏う初代レラジェ当主の顕鎧(オリジン)に備わるクロスボウ一体型のガントレットより放たれた数十の矢は、高速高誘導ミサイルの如く超高機動で残像を撒き散らしながら飛行する零牙を追いかけ続けていた。

「さあさあ、もっと逃げないと被弾しますよぉ〜‼︎」

迎撃もせずに獲物を追い立てる猟犬の如く矢に逃げ回るだけの零牙の様子に、レラジェは面白そうに挑発した。

「ふふ・・・私の矢はーー・・・⁉︎」

逃げ回るだけの零牙をひとしきり小馬鹿にした様に挑発したレラジェが何かを言おうとするが、そんな事聞く必要は無いと言わんばかり零牙は左手のソードオフショットガンを無言で追い縋る矢の群れに向ける。

ーーチャキ

そう・・・零牙は”直感“でレラジェの矢がどういうもので、どう対処すれば良いのかを分かっていた。

「ハハ、無駄ですよ!たかが至近での威力に優れる散弾程度では、我が矢を撃ち落とす事など不可能です。無論、それがスラグ弾だとしてもーー」

ーーダゥン‼︎

レラジェが言い終わる前に、零牙のソードオフショットガンが火を噴いた。

重い銃声が空に響き、10粒規模の散弾が放たれた。

放たれた散弾は集弾性が高く、ましてや空というほぼ障害物が何も無い戦場で迎撃に使用するには不向きに思われた。

実際レラジェは、零牙が右手に持つ漆黒のデカい銃がショットガンだと気付いて馬鹿にした様に鼻で笑った程だ。

そして今もそうーーいかに一発で広範囲を迎撃出来るからと言って所詮は散弾であり、弾丸が散らばる性質上至近でなければ自分の矢は落とせない。

ミサイルであれば誘爆して全て無力化出来るかもしれないがーー

(ミサイルで無く、我が顕鎧(オリジン)の能力で生成された魔力の矢。万に一つも撃ち落とされる心配などーー)

零牙のショットガンから放たれた散弾が、レラジェの矢の群れの間を縫う様にすれ違った。

その瞬間ーー













ーードドドドドドドドドドドド‼︎

「・・・・・・・・・・は?」

レラジェの矢は内包した魔力の爆発を引き起こし、全て落とされた。

落とされる事は無いと絶対の自身を持っていたレラジェは、敵と交戦中であるにも関わらず理解が出来ないという様にかなり間をおいて、間抜けな声を絞り出した。

「い、いやいやいやいや、有り得ない・・・!たかが散弾程度で私の矢が落とされるなど・・・。そ、そうだ!あのショットガンの他にも、何か攻撃が混じってーー」

「“借り物”の力を我が物顔で振るうお前程度が、余所見をする余裕があるのか?」

「・・・‼︎」

交戦中にも関わらずに茫然自失といった様子で、早口で呟くレラジェに冷たい声がかけられる。

レラジェが声のした方向を見ると、100メートル前方上空から零牙がショットガンの銃口を向けていた。

「な、舐めるな‼︎まぐれで撃ち落とした程度で、調子づくな‼︎」

ーーガガガガガガガガガガガガガガガガガガ‼︎

レラジェはそう吠えながら、両腕のガントレットと一体化したクロスボウから魔力の矢をマシンガンの如く乱射する。

「・・・・」

並の実力者でも警戒して大きく回避機動を取るであろう数百の矢で構成された面の様な弾幕をレラジェが貼ろうとも、零牙は一切回避も防御する素振りを見せず、ただ相手に向けたショットガンの引き金を弾いた。

ーーダゥン‼︎

龍の咆哮の様に大気を震わせる程の重い銃声が響き、先の1射と同じ1発が放たれた。

そして面にも見える弾幕の中心部を貫く様に間を縫い、先と同じ様にーー

ーードドドドドドドドドドドドドドドドドド‼︎

たった1発で、その全ては撃ち落とされた。

「ば、馬鹿な⁉︎あり得ない‼︎」

そしてレラジェはそう言った直後、何故自分の弾幕が最も容易く撃墜されたのかその身を持って思い知る事となった。

零牙の放った10粒規模の散弾は、弾幕を喰い破っただけに飽き足らず、レラジェに降り注いだ。

「ッ⁉︎ーーぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」

散弾はレラジェの全身に着弾し装甲を砕き、一切その威力を軽減出来ていないぞとでも言わんばかりに凄まじいダメージをレラジェ= XIV(フォーティーン)に与えた。

「脆い・・・」

自分の“制限された最小出力”でのたった1発で、顕鎧(オリジン)が全壊寸前まで破壊されたレラジェを見て、零牙は油断無く相手を見据えながら淡々と呟いた。

零牙の視線の先では、レラジェがこれ以上装甲が砕けぬ様に自分の体を押さえながら、鎧の損傷と生身に負ったダメージの回復に必死に努めていた。

「馬鹿な馬鹿な・・・あり得ない‼︎この私の顕鎧がこんな簡単に・・・!あり得ない・・・あり得る訳がない!・・・そ、そうだ!やはりまぐれだ・・・‼︎そうでなければ説明がつかない・・・‼︎この私が、たかが無名の混血の学生如きに遅れを取るなど、ある訳がーー」

「無様だな」

「何・・・⁉︎」

たった1発で鎧を全壊寸前になった事実を正しく認識せず、零牙はただのまぐれであると結論付けたレラジェに言い放つ。

「お前が纏ったレラジェの顕鎧(オリジン)が脆いのは、それがお前本来の“生命の起源”で無いから当然だ。“起源”とは、血脈が受け継ぐ力・本質や個人の思想・理想・心象が形を成したもの。それを纏い、己が力として出力するのが顕鎧(オリジン)だ」

零牙がまるで憎々しげに睨む様にこちらを見上げるレラジェに、白銀の刀身が美しく輝く長刀ーー天羽々斬【(スメラギ)】の切っ先を向けて言う。

「そして我ら龍種や魔族などが生まれながらに身の内に宿る【顕鎧生命体】ーーそれはその者の起源が生物の形を成した己自身。故にレラジェ初代当主でも、ましてや血脈に連なる者でも、初代当主の“起源”すら知らず理解もしていないお前如きが、本来の性能を発揮出来る道理は無い」

「・・・ッ‼︎ーー・・・・・・・・・・・フフ、ハハハハハハハハハ‼︎」

零牙に“起源“の何たるかを言われ、しばしの沈黙の後、レラジェは肩を振るわせながら狂った様に高笑いした。

「貴様如き混血風情が、この私に説教・・・だと・・・?純血の魔族たる・・・この私に?」

レラジェの魔力が内より溢れ、嵐の前の静けさの様に揺らめく。

「思い上がるなよ‼︎混血如きがぁあ‼︎」

ーーゴォ・・・

レラジェが怒りのあまりに吠え、その怒りに呼応する様に溢れて揺らめいていた魔力が天に向かって渦を巻く。

(ほう?感情を爆発させ、魔力を高めたか。しかしこれはーー・・・ああ)

零牙の内に宿る“半身”とでも言うべき【顕鎧生命体】たる【黒皇龍・サイファス】が、やれば出来るじゃ無いかという様な意外そうな口調で言うが、天に向かって渦巻いた魔力を一目見て、呆れる様に察した。

それは零牙も同じであり、悦に浸っている様に魔力を垂れ流すレラジェを冷めた眼で眺める。

「うぉぉぉぉぉぉっ‼︎・・・見るがいい‼︎これこそが私の絶大な魔力だ‼︎」

確かにレラジェの魔力は一応破損した顕鎧(オリジン)の修復を早め、天に向かって渦巻く程に量は多い。

しかしその出力・密度・質が低く、その魔力の色はーー









ーー無色だった。

本来魔力には、色がある。

主にその者の能力をイメージしやすい様な、又は髪色と同色が多い傾向がある。

故に能力が強い者は魔力の色が濃くなり、逆に弱いと薄くなる。

基本的には色が薄くなる事は無いが、例外も存在する。

零牙とサイファスと相対するレラジェが、その例外に該当した。





つい最近同一の魔力を目の当たりにした零牙には、何故無色なのかーーその原因を察していた。

「あの指輪を使用し続けた成れの果てか・・・」

そう、レラジェの魔力が無色なのはーー“金の指輪”や類似品を使い続けた副作用だった。

「成れの果て?何を言っているのです?ああ・・・さては私の魔力を目の当たりにし、勝てないと混血風情の足りない頭で理解しましたか?」

レラジェは、肩を振るわせ嘲る様に言った。

「・・・・」

何も言わない零牙に対して、レラジェは続けて挑発する。

「まあ所詮。混血如きに理解出来る筈も無いですがねぇ。たとえ理解出来たとしても、あなたの死は確定しました。さあ、これでフィナーレです」

そう言ってレラジェは、両腕のクロスボウと一体化したガントレットを向ける。

「・・・・」

「チッ・・・‼︎やれやれ・・・ここまで言われて何も言い返せないとは・・・混血は根性すらも持ち合わせていないのですねぇ」

相変わらず見下す言葉に何も反応しない零牙にレラジェは舌打ちし、最後の嘲りの言葉を発した。

レラジェのクロスボウには、渦巻いていた魔力の全てが集束している。

「ふん、まあいい。もうあなたの相手は飽きました。・・・・・消えなさい、雑魚が︎‼︎」

ーーガガガガガガガガガガガガガガガ‼︎

クロスボウに集束した魔力が歪に爆ぜ、ここまでの零牙との戦闘の最中に放ったものよりも数十倍の数の魔力矢へと変化し、逆再生の豪雨の様に零牙に降り注いでいく。

零牙は静かにショットガンの銃口を向けーー

「馬鹿め‼︎今の私の顕鎧(オリジン)は、さっきまでの物とは訳が違う‼︎我が無尽かつ莫大なーー」

ーーダゥン‼︎

レラジェの言葉を無視して引き金を弾いた。

たったそれだけで、レラジェが放った無数の魔力の矢は零牙の散弾によって全て撃ち落とされーー

「ぐがァ⁉︎」

再びレラジェの体を貫き、修復して先程よりも防御力が上昇した顕鎧(オリジン)の装甲を容易く砕いた。

「ば、馬鹿な・・・あり得ない・・・!私の無尽の魔力で強化されている筈・・・!なのに何故・・・⁉︎」

レラジェは生身にもダメージを負っている事を忘れているかの様に、自身が纏う再びボロボロになった顕鎧(オリジン)を唖然と見つめていた。

「お、おのれ・・・!き、貴様!何をした‼︎」

レラジェが、斜め上空で見下ろす零牙に向かって吠えた。

「何、とは?」

「惚けるなぁ‼︎貴様如き混血風情がーーいや貴様で無くとも、混血風情が純血を超える力を有するなどあり得ない‼︎それこそ、何らかの道具を使っていなければ説明が付かん‼︎」

最初の余裕たっぷりな雰囲気はもはや見る影も無く、若干半狂乱になっていた。

「何も使っていないが?」

「ふざけるな・・・‼︎我等が用いる“指輪”の様な類似品を使っていなければ、この私が混血如きに遅れをとる事などーー」

もはや余裕さの欠片も無くなった様な様子で声を荒げるレラジェの言葉を遮り、零牙は言う。

「そんなガラクタなど論外だ。そんな物に頼らなくても、自分の才に驕らずに鍛錬を怠らなければ良いだけだ」

「鍛錬だと?くだらん、才能こそが全てだ!我等純血が持って生まれたーー」

ーーチャキ・・・

「・・・ッ⁉︎」

レラジェの言葉を最後まで聞かず、零牙は静かに銃口を向ける。

「その大切さも理解出来ず、追い詰められているこの状況すらもまぐれだと喚くお前とこれ以上会話する意味は無い」

「貴様如き混血の小僧が‼︎ーー調子に乗るなぁ‼︎」

レラジェは最優先で修復していた両腕のクロスボウを構え、間髪入れずに連射しようとするがーー

それより先に零牙のショットガンが、火を吹く。

「遅い」

ーーダゥン‼︎

「ぐぁっ⁉︎」

放たれた散弾は修復途中の鎧に破壊をもたらしながら、レラジェの全身に着弾した。

ーーダゥン‼︎

「がぁ・・・⁉︎」

一発目に被弾してくの字となっているレラジェに直撃し、錐揉み回転へと変更する。

ーーダゥン‼︎

「・・・ぐ・・・っ⁉︎」

二発目に被弾し錐揉み回転しているレラジェの背中に直撃し、背面に残った鎧を完全に破壊しながら強制的にこちらを向かせる。




「ーー堕ちろ、レラジェ」

ーーダゥン‼︎

そしてほぼ生身となった状態のレラジェ= XIV(フォーティーン)にもう一発撃ち込んだ。

「か・・・は・・・!」

その一撃によってレラジェは沈黙し、全身から血を噴き出しながら遥か地上へと墜落していった。

零牙はそれを眺めながらショットガンを下ろし、感心する。

「仕留め損なったか。流石は初代レラジェの顕鎧(オリジン)だ。纏ったのがそぐわない者でも、最低限の生命保護は働くか・・・」

零牙が見下ろす先の墜落中のレラジェの顕鎧は、纏った者の魔力を強制的に使用して自己修復を始めていた。

「だが、次で終わりだ」

零牙はウイングスラスターを全開にし、レラジェを追って地上へと向かった。






ーー地上・城塞跡

「テ、テメェは・・・‼︎」

自身が追撃でレラジェを蹴り込んで形成したクレーターの縁より、若干の恐怖で声を振るわせながら自身を見上げるアスタロトを見下ろしながら、零牙はーー





ーー「お前達にはーー視るべきものは無い」



天空から龍の瞳で睥睨する漆黒の龍は、敵対者の終わりを宣告した。





ーー・・・三章-十二節【黒き(シュバルツシルト)(・カイゼル)と翠の狩人(レラジェ)】・終

















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