三章-異説二【”▪️”の名を持つ“▪️▪️▪️”。決して交わる事の無く、表でも裏でもある世界の一巡目。ーー皇の眠り】
“王”を意味する名と“▪️”の名持つ青年とともに、コックピットに登場する小型の漆黒の機械龍が淡々と告げる。
ーー「“メサイア”・システム、フェーズ・ワン始動」
龍騎士の眼が爛々と輝いて銀色の燐光が迸り、超加速する粒子は嵐を構成する暴風の様にスラスターから噴出し、龍種が唸り声を上げる様に動力炉は稼働していく。
ーー「“メサイア”・システム、フェーズ・ツー始動」
龍騎士の動力炉である無限動力機関【インペリアル・ドライブ】“10基”を完全同調させたウロボロス・ドライブ・システムが最大稼働し、莫大な極圧縮粒子が生成され即座に完全解放されて機体各部に行き渡り、龍騎士の出力は桁違いに上昇していく。
「コレは・・・ッ⁉︎」
「▪️▪️▪️、システムを完全解放して・・・」
次元違いの力を纏い始める龍騎士の様子に某国の青年と銀黒髪の美女が呟き、その他の面々は唖然と龍騎士を見上げる。
ーーバキン‼︎
龍騎士は既に立ち上がっており、左脇腹を貫いている杭を右手で引き抜きその膂力で握り砕く。
そして、身構える。
全身のスラスターから銀色の粒子を溢れさせるその姿は、龍が大翼を羽ばたかせて今にも敵に突撃せんとする様な低く力を溜める様な姿勢だった。
「いけるな、▪️▪️▪️▪️▪️?」
「損傷軽微。戦闘行動に支障無し。メサイア・システム解放率“50%”。粒子生成率、通常時の25倍を確認。【理想化】・システム起動。【ドラグロードグリント・オルタナティブ】“オーバー・ロード”」
黒銀のオーラを帯びた極高出力状態の龍騎士がそこに存在するだけで、空間に歪みが発生し軋み始める。
「行くぞ、殲滅する」
「了解」
龍騎士は前方をゆっくりと見据え、今まさに攻撃を仕掛けようとしている“獣”に狙いを定めーー
ーーフォン・・・!
その姿はかき消え、一拍遅れて龍騎士が立っていた地面が抉れ上がる。
次の瞬間には、再度口腔内に備わる射出型パイルバンカーを放とうとしていたキメラ型大型機鎧の側面に肉薄していた。
いきなり自機の側面に現れた龍騎士に遅れて認識し、パイロットは機体をそちらに向けようとするがーー
ーーザシュンッ‼︎
反応する事が出来ず、巨大な漆黒の騎士槍で側面から頭部を貫かれた。
周囲に展開する多数の敵が龍騎士の存在に気づくも、既に龍騎士の姿は無く、銀色の粒子が舞うのみであった。
「クソッ、どこに行った⁉︎」
「ーーッ!おい!前方から何か来るぞ‼︎」
慌てて龍騎士の姿を探すも、レーダーで反応を捉えられたのは、前方から迫り来る極高エネルギーの奔流だけだった。
「いつの間にッ⁉︎」
「た、退避を・・!」
だが退避する間もなく、いつの間にか放たれていた粒子ビームの奔流に、キメラ型の周囲超広範の軸線上を飲み込んだ。
龍騎士の姿は上空にあった。
一瞬姿がブレる様な超高速機動で縦横無尽に瞬間移動の如く天を翔けながら、騎士槍の穂身に備わる6連装重機関砲から凄まじい連射レートで、眼下の敵軍に向け弾丸を放つ。
龍騎士の騎士槍から放たれた無数の弾丸は豪雨の様に降り注ぎ、しかも縦横無尽に瞬間移動かと見紛う程の極音速機動で動き回りながら射撃する為、超広範囲のあらゆる方向から弾丸の豪雨が降り注ぎ、多数の敵を蜂の巣に変えていく。
ーードォォォォォォォン‼︎
自らが降らせた弾丸の豪雨が止まぬ中、龍騎士は地上の敵機に騎士槍で突撃をかけ、反応も認識すらも相手にさせずに大地に突き立てる様に貫いた一機をバラバラにし、その衝撃によって銀色の粒子が斬撃波の如く攻勢エネルギーとなってリングの様に波及し、辺り一体の多数の敵機すらもバラバラに引き裂いた。
龍騎士はすぐさま飛び立ち、敵軍の只中を極音速機動で翔けていく。
龍騎士は巨大な騎士槍と備わった尻尾で斬り・薙・突くたび、そして右腕の長大な砲から高威力の実弾と粒子ビームを撃ち放ち、左腕下部のレーザーブレードで斬り、右手下部のショットガンを撃ち、ある時は騎士槍を投擲して両手の爪で引き裂き・貫き、サイドアーマーに懸架された専用ライフルとアサルトライフルを用いて敵を撃ち抜き、騎士槍の穂身に搭載された遠隔操作兵装である“13の牙”が縦横無尽に蹂躙し、バックパックに備わったマイクロミサイルで爆撃する。
敵にほぼ一切の反撃を許さぬ極音速機動戦闘を繰り広げる龍騎士の軌跡には、敵の残骸しか残らない。
「く、クソッ、どうなっている⁉︎」
「お、落ち着け・・・‼︎我等は誇り高き上位人ーー」
「たかが原住民如きにこんーー」
「奴は、どこーー」
「ハッ!捉えーー」
「馬鹿なこの短時間に・・・ッ!ーー」
「あ、当たらーー」
両眼から銀色の燐光を迸らせて一切動きを止めずに極音速で暴威を振るう龍騎士に対し、認識・反応・対応出来る者は敵軍おらず、一人もしくは数十・数百単位で一撃もしくは纏めて狩られていき、まさしく龍騎士の独壇場ーー鎧袖一触・一騎当千とはこの事だった。
そんな様子を、銀黒髪の美女や共に率いる傭兵団の面々は心配そうに見つめ、某国の青年と率いる集団は桁違いの戦闘能力を唖然として見ていた。
ーー・・・半刻後・夕暮れ時
戦場である最果ての地は、龍騎士が暴威を振るった後が刻まれていた。
至る所にクレーターや攻撃によって隆起した大地、粒子ビームによって軸線上に大地を抉った跡、至る所に散乱する侵略者の残骸、平野だった最果ての地の地形が変える程の戦闘を経て、今回投入された十数万の帝国戦力を龍騎士は単騎かつ一度被弾した程度で殲滅しきっていた。
ーーズン・・・ズン・・・ズン・・・ズン
侵略者が沈黙した大地に、重い足音が響く。
「▪️▪️▪️・・・」
銀黒髪の美女は青年の無事を確認し、安堵の言葉を漏らした。
地平線に沈む太陽をバックに、夜色の龍騎士が悠然とこちらに向けて歩を進めていた。
「なんて奴だ・・・」
「ええ。各国のトップエース級の機鎧乗りでも、最小の被弾かつ単騎であの数を全滅させるのは無理でしょうね。しかもその被弾も、私達を庇ったもの。それが無ければ、恐らく・・・」
「ああ。無傷だろうな・・・」
某国の青年とその幼馴染である金髪の女性が、龍騎士を見つめながらそう会話していた。
龍騎士は依然として歩みを進めていたが、銀黒髪の美女達がいる場所まで残り約10キロという所でーー
ーーズゥン・・・・!
悠然としていた龍騎士は突如ぐらりと前のめりにフラつくと、そのまま膝から崩れ落ちる様に騎士槍を逆手で大地に突き立てて片膝立ちで沈黙した。
「▪️▪️▪️ッ‼︎」
銀黒髪の美女が叫び、龍騎士に向かって走り出した。
龍騎士まで距離は10キロあるにも関わらず、銀黒髪の美女は縮地を遥かに超えた歩法を用い、1分と掛からずに龍騎士の側まで駆け寄った。
銀黒髪の美女は龍騎士の機体に飛び乗り、コックピットの入口である流線形の胸部装甲の上まで登った。
「▪️▪️▪️!▪️▪️▪️!▪️▪️▪️▪️▪️、ここを開けて!」
搭乗者の青年を読んでも反応が無い為、銀黒髪の美女は彼のサポートメカの名を読んだ。
その言葉に応える様に胸部装甲がスライドし、コックピットへの入口が開いた。
「▪️▪️▪️・・・?」
銀黒髪の美女は、入口からコックピット内を窺う。
「久しぶりだな、姫」
「▪️▪️▪️▪️▪️・・・▪️▪️▪️は?」
「入って来てくれ。主を運び出すのに手がいる」
銀黒髪の美女は入口から降り、広いコックピット内に入り込んだ。
「▪️▪️▪️・・・どうしーー・・・ッ‼︎」
心配そうに青年の名を呼ぶが、直接自分の眼で確認した搭乗者の青年の様子に息を飲んだ。
”黒銀髪“の青年は座席に項垂れた様に身を預け、意識を失ったまま微動だにしていなかった。
「▪️▪️▪️・・・ッ!」
銀黒髪の美女はすぐさま青年を抱き寄せ、無事を確かめる。
青年の胸に手を当て、眼を閉じて意識を集中する。
ーードクン・・・ドクン・・・
「息はある・・・良かった・・・」
安堵の表情を見せる銀黒髪の美女に、漆黒の機械龍は告げる。
「生きてはいる。だが姫達と逸れてから一年もの間、帝国の侵略を感じ取った主はほぼ休み無く戦い続け、単騎で敵の侵攻を完璧に食い止めていたのだ。流石の主でも限界だ。当分は目を覚まさぬだろう」
「▪️▪️▪️・・・」
銀黒髪の美女は、胸元に抱き寄せた青年をギュッと優しく抱き締める。
(某国の事件なんて興味本位で関わるんじゃなかった・・・何よりも優先的に▪️▪️▪️との合流を急ぐべきだった。1人で何もかも抱えようとするのは、わかっていたのに・・・!)
銀黒髪の美女は深い後悔の念と共にしばらくの間、青年を強く優しく愛おしそうに、静かに涙を流しながら抱き締めていた。
ーー・・半刻後
「姫、客人だ」
静寂に包まれていたコックピット内に、機械龍の声が響く。
「客・・・?」
掠れた様な美声で、銀黒髪の美女が顔を上げながら答えた。
「うむ・・・主に関わる重要な案件だ。今後の我等が目指すべき道の話だ。大丈夫だ、”やり直せる“」
「やり直し・・・?」
「そうだ。まずは主を外に運び出し、話を聞こう」
「うん・・・分かった」
銀黒髪の美女が青年を抱え、コックピットの入口によじ登ろうとするとーー
「姫様、兄貴をこちらへ!手伝います!」
青年を兄貴分と慕う目つきの悪い短髪の青年が、銀黒髪の美女に向かって手を差し出していた。
「ありがとう。▪️▪️▪️を引っ張り上げて、ゆっくりね・・・」
「もちろん、重々承知してます」
短髪の青年は黒銀髪の青年の身体を、ゆっくりとコックピットの外へ運び出した。
「いいか、ゆっくりだぞ?兄貴にこれ以上、負担を掛けんじゃねぇぞ!」
『応!』
外では黒銀髪の青年が率いる傭兵団が龍騎士の側に既に待機しており、装甲車から取り出した専用ストレッチャーを準備していた。
機体の各部で構えていた団員達が、順番に黒銀髪の青年を降ろしていく。
それを追う様に、銀黒髪の美女が長い髪を翻しながら地面に飛び降りる。
ストレッチャーに乗せられた青年に駆け寄ると、フードを目深に被った団員の女性が銀黒髪の美女に耳打ちする。
「姫、客人です。“ウロボロス”という組織が、姫に伝えたい事があるそうです」
「ウロボロス・・・大陸各地で暗躍している目的不明の組織・・・」
団員の女性に銀黒髪の美女が促されて眼を向けると、漆黒のローブを纏った集団が、足元まで伸ばした純白の髪の美女を戦闘にこちらに向かって来ていた。
お付き又は部下と思われる面々が、純白の髪の美女に恭しく一礼をして側に待機する。
そして純白の髪の美女は、銀黒髪の美女に臣下の礼をとりながら透き通った声で話し始める。
「お初にお目に掛かります。ウロボロスの長を務める【▪️▪️▪️▪️】と申します。以後お見知り置きを」
「挨拶はいいよ。何の用?」
銀黒髪の美女は、少し強めの口調で言った。
「はい。ーー全ては、“メサイア”の為に」
その言葉と共に差し出されたメモリースティックにより銀黒髪の美女は、彼女達がどう言った組織なのかを理解した。
メモリースティックは、起動した者しか内容を確認出来ない仕様になっている空中ディスプレイが展開する仕組みだ。
「・・・・・・・そういう事か・・・」
記録されている内容を確認した銀黒髪の美女は、得心した様に静かに呟いた。
記録されていたのは、メサイアの青年と銀黒髪の美女達傭兵団のこれまでの動向。
そこから導き出された複数の結末と可能性、そして最悪の状況に至った場合の今後の計画についてだった。
「成る程・・・確かに“槍”の力を使えば可能だね」
銀黒髪の美女は、短く息を吐いてメモリースティックを閉じた。
「なんでウロボロスがここに・・・?それにメサイアって・・・?」
状況を静観していた某国の青年が、たまらずに声をかけてきた。
「▪️▪️▪️、悪い事は言わない。今すぐに国に戻って国の指導者に警告して戦争に備えるんだ」
「戦争?何言って・・・?ーーまさか⁉︎さっきの奴等が攻めてくるのか?」
銀黒髪の美女は後は自分達で考えろとでも言わんばかりに答えずに、右膝をついて沈黙する全高6メートルの夜色の龍騎士ーー【ドラグロードグリント・オルタナティブ】の周囲に集まっている傭兵団全員に振り向き、決意に満ちた声で告げる。
「これより我等は皇国に帰還し、ウロボロスがもたらした計画を実行する!出発は30分後!総員、行動開始!ーー全てはメサイアの為に、▪️▪️▪️の為に!」
『はっ‼︎ーー全てはメサイアの為に、▪️▪️▪️様の為に!』
銀黒髪の美女の号令に、傭兵団とウロボロスの面々が応えた。
「▪️▪️▪️。▪️▪️▪️さんの言う通り、国に戻りましょう?もし彼女の言う戦争が、さっきの敵軍の侵攻の事を言っているんだとすれば・・・」
金髪の女性の言葉に、某国の青年は頷く。
「ああ、そうだな。ウロボロスの計画は気になるが・・・今はそっちの方が最優先だな。ーーよし!俺たちも戻るぞ!」
『了解!』
某国の青年は仲間達を引き連れ、この場は急いで去っていった。
銀黒髪の美女が副団長を務める傭兵団も、迅速な行動によって30分とかからずに帰還準備を終え、皇国への帰路についた。
ーー・・・三章-異説二【”▪️”の名を持つ“▪️▪️▪️”。決して交わる事の無く、表でも裏でもある世界の一巡目。ーー皇の眠り】




