三章-異説【”▪️”の名を持つ“▪️▪️▪️”。決して交わる事の無く、表でも裏でもある世界の一巡目】
今回と次回は前回の続きでは無く、重なり合った世界の同一人物の話しです。
何処までも拡がる雲ひとつない蒼穹の空。
しかしそんな美しい空のとある場所は、そんな美しさとは対照的な淋しさに彩られていた。
大海に面した広大な荒野、ある大陸の実に十分の一を占めるのではないかと言われる無人の大地。
この地は危険な魔獣が跋扈し、EXランクの傭兵ですらここに生息する生物には手を出したく無いと語り、開拓しようにもあらゆる機関が危険すぎると判断していた為、無名のこの地はーーーーーいつしか【最果ての地】と呼ばれる様になっていた。
いつもであれば魔獣達による弱肉強食の世界が繰り広げられている【最果ての地】だが、この日はーーいやこの1年間、魔獣達は生命の危機を本能的にそして理性で理解し、“戦場”から逃れる様に姿を隠していた。
魔獣達の息吹きが消えた大地に“人”がいた。
その左側にはその“人”の得物が突き立てられていた。
しかしその人は只人では無く、“巨人”だった。
その巨人は、魔術と科学の両方を組み合わせられた“魔導科学”の産物である全長約6メートルの夜の様な漆黒に彩られた機械仕掛けの人型兵器だった。
その機体は龍を模した頭部を持つがその全体像は騎士の様でもあり、先端に鋭い刃を備えた尾を持つその姿は、鋭い刃の様な装甲に覆われたその姿はまさしく“龍騎士”であった。
龍騎士の周囲ーーいや、この最果ての地の至る所には、龍騎士とは別の人型兵器の残骸が無数に散らばり、激しい戦闘の痕跡が刻まれていた。
「・・・・・・」
ーーブゥン・・・・
後方へ伸びる4対の角と前方に伸びる角を戴く龍騎士の頭部のバイザーアイ、そこに光が静かに灯る。
それは龍騎士が起動した証であり、内に抱く搭乗者が休息から目覚めた証でもあった。
「来たか・・・」
コックピット内で、“黒銀の髪”の青年がそう呟く様に言いながらメインモニターを睨む。
その動作に呼応する様に右膝を立てた待機姿勢のまま、龍騎士が地平線に視線を向ける。
地平線には何も見えなかったが、しばらくそのまま見つめいると、やがて多量の土煙と共に地平線を覆い尽くす程の機影が現れた。
「敵戦力感知。総数ーー5000。機鎧兵4000。内、戦闘艦艇を1000確認。機体積載を想定しーー敵戦力の1.5倍の増加を予測」
コックピット内の後方に設置されたスペースに搭乗している、”鴉“とも”西洋龍“とも取れる姿の機械生物が低く腹の底に響く様な声で、主である青年に報告した。
コンソールのレーダーが赤い光点で埋め尽くされた。
「・・・・・・」
青年はちらりとレーダーとサブモニターに表示される敵機の解析情報に視線を一瞬だけ向け、すぐに向き直る。
青年は乗機を操作し、機体をゆっくりと立ち上がらせた。
「戦闘モードに移行」
“使い魔”の声が淡々と響く。
後方から巨大なトレーラーの様な装甲車が迷彩を解除しながら近寄り、龍騎士の側に止まった。
牽引していた重厚なコンテナが開いて整備アームが、中の装備を持ち上げて龍騎士に装備していく。
10秒と経たず、龍騎士はフル装備状態になった。
右腕に折り畳む事も可能な身の丈程の長大な砲塔が装備され、背部には大型1対と小型1対のウイングスラスターを備えたバックパックを装備した。
敵軍との交戦距離までおよそ十数秒、龍騎士は側に突き立てられていた得物ーー身の丈を超える程の荘厳かつ神々しくもありながら禍々しい漆黒の騎士槍を掴む。
龍騎士の周囲は、“空間が揺らめいていた”。
ーージャキ・・・
ーーブォォンッ‼︎
龍騎士が騎士槍を薙ぐ様に振るうと荒れ狂う暴風が吹き荒れ、砂塵が巻き起こる。
吹き荒れる砂塵の隙間から、龍騎士のバイザーアイが爛々と輝きながら敵軍を見据える。
「いくぞ・・・殲滅する」
「了解」
龍騎士はぐぐぐと力を貯める様に低く身構え、大地を踏み込みーー
ーードゴォ‼︎
スラスターを全開にし、突撃した。
遅れて踏み込まれた大地が捲れ上がり、一瞬で音速を超えた為に発生した衝撃波が、周囲の一切を吹き飛ばす。
龍騎士は銀色の噴射炎によって、銀の軌跡を進行上に残しながら敵軍に突撃していく。
龍騎士が先程までいた地点の遥か後方には、大都市のビルや建物が確認できた。
接敵まで刹那ーー
敵軍は5000強に対して龍騎士はただ一騎、普通に考えれば多勢に無勢だ。
各国のエース級でもこの数を相手に単独で戦えて言われたら、難色を示すだろう。
しかし夜色の龍騎士を駆る青年は、一切臆する事なく突っ込んでいく。
何故なら青年は、各国のエース級を遥かに凌駕し影すら踏ませない程の無双かつ無敵とも言える実力者だった。
そしてこの規模の攻勢は“この一年間、ほぼ毎日“の様にあった。
そんな侵略者の攻勢をたった一機で退け続けながらも、“無傷”であった。
青年からすればそれくらい自分が出来て当たり前だった。
自惚れや調子に乗っている訳ではなく、“世界を守る”ーーこの使命を背負っていた為、それが青年にとって普通だった。
故に青年は臆する事無く、大群を相手に向かっていく。
たとえそれが“永遠”に続く孤独な戦いであっても、 大切な物を守る為にーー
ーードォォォォォォォン‼︎
敵軍の最前線目掛け突撃した龍騎士は、直線上にいた敵機の胴体をコックピットごと貫き、機体をバラバラに四散させた。
しかしただ一機を撃破しただけで無く、音速を超える機動性から放たれた騎士槍の一撃は、隊列を組んでいた10数機を攻撃の余波で放たれた衝撃波により、質量兵器に殴られたかの如くひしゃげさせて吹き飛ばした。
「こ、コイツっ⁉︎」
「ば、馬鹿な‼︎一撃で⁉︎」
「敵は単騎だ!捻り潰せ‼︎」
ファーストコンタクトで10数機を撃破され動揺していた敵兵だったが、すぐさま龍騎士に攻撃を仕掛けながら包囲しようと隊列を崩す。
「後ろがガラ空きだぁ‼︎」
体勢が攻撃直後のままだった為にそれを隙と見た一機が、龍騎士の背後から剣で斬りかかる。
ーーヒュン‼︎
「ガハッ・・・⁉︎馬鹿な・・・⁉︎」
斬りかかった機体の搭乗者は信じられないといった様子で、自身の下半身を見る。
下半身は巨大な刃で機体の胴体部ごと貫かれていた。
貫いたのは龍騎士の尻尾だった。
しかもーー
「こっちを見て・・・ない・・・だと・・・⁉︎・・・ガハッ・・・」
夜色の龍騎士は一切背後に視線を向ける事無く、尻尾で迎撃していたのだ。
搭乗者が吐血し命が消えるよりも先に、龍騎士は尻尾を振り払い、撃破した敵を投げ捨てる。
「きさーー」
敵が何か言葉を発するよりも先に、龍騎士が騎士槍を薙ぎ払う様に振るう。
ーーゴォォォォゥ‼︎
漆黒の軌跡を描いて振るわれた騎士槍によって衝撃波が生まれ、それが機体に搭載された動力炉が生み出す高密度の“バリオン粒子“を纏い、更に破壊力を増して周囲に波及した。
『うぁぁぁぁぁぁ⁉︎』
銀色波動は周囲の地形すらも破壊しクレーターを形成し、半径50メートル圏内の敵機を撃破した。
「馬鹿な・・・100以上をただの一振りで・・・‼︎」
「たかが原住民如きの機体がこんな性能を⁉︎」
「怯むな‼︎所詮は単騎!我等帝国のーーッ⁉︎」
帝国と発した敵の眼前に、龍騎士が躍り出る。
「はや・・・ッ⁉︎」
龍騎士の騎士槍が凄まじいエネルギーを螺旋状に纏いながら、眼前の敵に突き出される。
超高圧縮された螺旋状のエネルギーが放たれ、眼前の敵機を消し飛ばしながら軸線上の敵を一掃する。
「今だ、一斉攻撃‼︎」
大技を放った直後の龍騎士をまたも隙ありと見た敵軍が、一斉に銃火器を斉射した。
ーーダダダダダダダダダダダ‼︎
放たれた銃火は龍騎士に着弾し、跳弾して大地を穿った弾丸が土煙を巻き起こし、龍騎士を覆い隠す。
「やったか⁉︎」
一人の敵の言葉で斉射が中断し、やがて煙が腫れていき龍騎士の状況が顕になる。
龍騎士は優雅な直立姿勢で騎士槍を下ろし、微動だにせずに敵軍を見据えていた。
龍騎士の周囲は“空間が揺めいており“、全くの無傷だった。
「む、無傷だと⁉︎」
「あれだけの攻撃を受けて・・・⁉︎」
敵軍の中で部隊長クラスの敵が、空間の揺らぎに気付く。
「あの揺らぎ・・・。まさか、障壁か⁉︎」
「ならば、もっと高火力の攻撃でーー」
その瞬間、龍騎士の姿が消えていた。
その場には、龍騎士が数瞬前まで存在した事を示す様に、銀色の粒子が舞っていた。
ーー・・・数刻後・夜
最果ての地には撃墜された侵略者の機体の残骸が更に増え、凄まじい破壊の痕跡が新たに刻まれた大地で、龍騎士は未だに敵を屠り続けていた。
しかし今屠っている敵は先刻の軍勢ではなく、新たに上陸を果たした援軍だった。
新たな軍勢は先の軍勢の約2倍。
何時間も休息なしで戦い続ける龍騎士のキルペースは、落ちるどころかむしろ速くなっており、疲れを知らぬかの様に戦闘を継続していた。
「ぐぁ・・・」
大剣か大太刀の如く巨大な騎士槍を薙ぐ様に振るい、一度に10機近い敵機の胴体と下半身を泣き別れさせ。
「この原住民風情がぁぁぁ‼︎ーー・・・ッ⁉︎」
叫びながら近接戦を仕掛けた敵は、騎士槍に搭載されている大小“13”の牙の様な遠隔操作兵装によって、周りの数機諸共に一瞬で細切れにされた。
“牙”は数機だけを細切れにしただけでは飽き足らず、龍騎士の周囲を縦横無尽に翔けて半径数百メートル圏内の敵を“喰らい尽くす(斬り刻む)”。
ーーガチャン・・・
牙の暴威を振るう嵐の中心で、龍騎士は右腕に装備された火砲を右腕を持ち上げる事で前方に向けて構え、長大な銃身の大口径の銃口を向ける。
ーーシュゥゥ・・・ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼︎
一瞬のチャージの後極大のビームが敵軍を薙ぎ、射線上の敵を消滅させた。
龍騎士はゆっくりと右腕を下ろすと、10数機の敵機が一斉に近接攻撃を仕掛けた。
龍騎士は優雅な立ち姿で敵を睥睨すると、なんの防御も取らずに攻撃を受け止めた。
「な、何・・・っ⁉︎」
「馬鹿な・・・!」
敵の攻撃は全てーー不可視の障壁によって防がれていた。
正確には、攻撃を受け止めた接着面は銀色の粒子が対流しているのが視認出来た。
龍騎士の各部の装甲の一部が迫り出す様に展開され、周囲の粒子が引き絞られる様に全身に纏いながら圧縮していく。
「バリオン兵器、エネルギー充填ーー完了」
「消えろ・・・」
ーードゴォォォォォォォォン‼︎
龍騎士を中心に銀色の爆発が巻き起こり、半径100キロ圏内を消し飛ばした。
爆発による衝撃波が波及して爆発半径外の大地を抉り上げ、隕石でも落ちたかの様なクレーターを形成した。
爆発の余韻たる銀色の粒子が広範囲に舞い散り、幻想的な風景を作り出した。
ーー数刻後・夜明け
未だ戦闘は続いていた。
侵略者の残骸は更に増え、龍騎士の攻撃の余波で細分化もしくは完全に消滅させられるか広範囲に散らばった。
敵軍の増援は間断無く送り込まれており、休み無く戦い続ける龍騎士を繰る青年のキルスコアは50000を超えていた。
それでも一切の疲労の色さえ見せずに、戦い続ける。
ーー数刻後・昼
撃墜数が70000を越えた頃、最果ての地に数十人の集団が現れた。
その時、龍騎士は全高15メートルのキメラの様な機械兵器と交戦中であった。
キメラ型の機鎧は、その巨大な獅子型の体躯にミサイル・機関砲・ビーム兵装を多数内蔵し、2本備わる蛇型の尻尾にも全距離対応型のビーム兵器を装備している。
しかしキメラ型は、龍騎士と交戦して僅か10秒後には2本の尻尾の内一つを喪失し、その30秒後には展開した兵装の大半を破壊されていた。
そんなキメラ型と多数の直衛機との戦闘の最中、青年の乗機たる龍騎士が、馴染みの声を拾い上げた。
「▪️▪️▪️ゥーーーーー‼︎」
涼やかな女性の声を龍騎士は主へと伝える。
「・・・・・」
しかし青年は戦闘に集中している為か、声に反応しない。
ーーブゥン‼︎
キメラ型が残った尻尾を蛇の口からビーム刃を発振させ、身体を回転させながら周囲を薙ぎ払うかの様に龍騎士に向けて振るう。
ーーザンッ‼︎
龍騎士は空中へ急上昇しながら大太刀や大剣で斬り払う様に騎士槍を振るい、蛇型の尻尾を半ばから両断した。
ーーオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎
尻尾を切断されたキメラ型が咆哮を上げて口腔内に備わる砲口を展開し、エネルギーを充填しながら龍騎士に向ける。
ーーガキィンッ‼︎
しかしキメラ型が開けた口は、龍騎士が頭部にメイスの様に叩きつけた騎士槍によって強制的に閉じられた。
ーードォォォォォォォン‼︎
解放先を失ったエネルギーがキメラ型の口内で炸裂し、その衝撃を持ってキメラ型は沈黙した。
重い地響きをたてて倒れるキメラ型に警戒しながら、龍騎士は一旦仕切り直す為、敵軍との距離を取った。
無意識か意識的にか、龍騎士が着地したのは数十人の集団の前方であった。
眼前に後退して来た機体を見上げ、数十人の集団の一人ーー大太刀を腰背部に差した絶世の美貌を持つ銀黒髪の美女が大声で青年の名を呼ぶ。
「▪️▪️▪️ゥーーーーー‼︎」
「・・・!」
近くで名を呼ばれ、ようやく青年は集団の存在に気付く。
龍騎士が振り向き、眼下の集団を見下ろす。
「何故ここにいる⁉︎」
「▪️▪️▪️・・・無事でよかった・・・」
普段は天衣無縫な振る舞いの銀黒髪の美女も、一番大切な存在たる青年の無事な姿に、目に微かな涙を湛えながら安堵の表情を浮かべる。
集団は二つの集団の集まりだった。
一つは青年と銀黒髪の美女が率いる遊撃傭兵団、もう一つは銀黒髪の美女達が某国で知り合った集団だ。
その集団の代表者と思われる青年が一歩前に出て、胸に手を当て龍騎士を見上げながら話し出す。
「自分は、【▪️▪️▪️・▪️▪️▪️▪️▪️】という者だ。依頼を受けて、あんたを捜していた」
「依頼?何処から?」
青年はそう聞き返すが、前方の敵軍を警戒する様に龍騎士の頭部はチラチラと動いていた。
「フィンブル市だ。あんたが魔獣討伐で、最果ての地に向かって一向に戻って来ないから探してくれってな」
「ああ、そうだったな」
実は青年は一年前、最果ての地近くの都市・【フィンブル】に立ち寄った際に都市を襲っていた魔獣を討伐し、その腕を買われて1週間という短い期間だったが、フィンブルの警備隊に客員将校扱いで雇われていた。
最果ての地という大陸最上位の危険地帯近くという立地の為、フィンブルは太古から魔獣の脅威に晒されやすく、その為他の都市の様な経済や観光中心で無く、軍事力に重きを置いた軍事要塞都市であり、生態系の乱れから生じる極大錯乱ーー【魔獣乱進】を食い止める防波堤でもある。
それが無くとも最果ての地は、最上位ランクの【EXクラス】の魔獣や幻獣が多数生息する魔境である為、暗黙の了解の様に各国から物資支援が行われている。
青年が通り過ぎ様とした日も小規模なパレードが発生していた為、見過ごす事が出来ずに加勢し無双の活躍をしたのだ。
その活躍を見た都市の最高責任者が助力を乞い、1週間の防衛後に原因となった魔獣討伐を引き受ける形で、最果ての地へと青年は向かったのだ。
恐らく、一年経っても戻って来ない青年を心配した最高責任者が依頼を出したのだろう。
一応青年は原因の魔獣を早々に討伐していていたが、侵略者を迎撃する方が重要であった為、戻るつもりは無かった。
「フィンブルの人達はアンタを心配してーー」
「今はそれどころじゃ無い‼︎」
某国の青年の言葉を、龍騎士を駆る青年が強く遮った。
「此処が最果ての地だと分かっているのか‼︎機鎧にも乗らずに生身で来るな‼︎ーー白雪‼︎」
青年は強い口調で集団を咎めると、何者かの名を呼ぶ。
程なくして、光学迷彩を解除しながら巨大な特殊装甲車が集団の側に現れるーーその運転席に座るのは、狼型の純白の機械だ。
「ここに」
銀黒髪の美女は龍騎士を心配そうに見つめていたが、現れた機械獣の方に向く。
「白雪・・・」
「お久しぶりね、姫。でも悠長に会話している時間は無いわ。直ぐに全員乗りなさい!」
白雪の言葉に某国の青年は食い下がる。
「俺たちもそれなりに修羅場を潜っている。魔獣討伐なら手を貸せるがーー」
その言葉を白雪がピシャリと遮る。
「論外よ。姫達は別だけど、状況も理解出来ておらず、機鎧も持って来ていない貴方達では足手纏いよ。主の邪魔する前に言う事を聞きなさい。話は後よ」
「・・・ッ!何がどうなって・・・︎⁉︎」
その時だったーー
「攻撃を検知」
「ーーッ‼︎」
共にコックピットに乗る機械龍の警告に反応した青年は、前方に視線を向けるとーー
大破寸前のキメラ型が口腔内の砲口を向け、鋭い何かを発射する瞬間だった。
ーーバシュンッ‼︎
桁違い反応速度を持つ青年は、機体を操作して回避しようとするがーー
(今俺の側には▪️▪️▪️達がいる。ここで避ければ・・・!)
機体の側にいる者達に被害が及ぶ事を瞬時に把握した青年は防御する事に切り替えるがーーその一瞬の逡巡が命取りになった。
ーーザシュンッ‼︎
『ッ‼︎』
破裂する様な金属音が響き渡る。
その音に側の者達が見上げるとーー
今まで自分達を守る様に立っていた龍騎士が、左脇を巨大な杭が貫通して真上を吹き飛ばされている姿が目に映った。
「▪️▪️▪️ッ‼︎」
銀黒髪の美女が声を上げた。
無傷で70000もの敵を単騎で一蹴した龍騎士は遂に被弾し、抉る様に仰向けに大地に叩きつけられた。
『・・・・・・・』
青年や狼が言う様にここの状況を理解していなくても何故龍騎士が被弾したかは、某国の青年達は理解した。
しかし理解出来ていても言葉を発する事は出来ず、ただ呆然と龍騎士を見ている事しか出来なかった。
「▪️▪️▪️ッ‼︎」
「姫、危険よ!」
倒れたまま沈黙した龍騎士に向かって銀黒髪の美女が駆け寄ろうとするが、いつの間にか外に出て来ていた白雪が立ちはだかるように引き止める。
「手こずらせやがって!続け!あの原住民風情に我々の手を煩わせた事を後悔させてやる!」
無敵とも思われた龍騎士を倒した敵軍がオープン回線で歓喜の声を上げ、丁度合流した援軍と共に龍騎士にトドメを刺そうと進軍を開始する。
「姫、ここは危険です。白雪殿の言う通り、機体を持って来ていない我々では若様の邪魔になります!」
フードを目深に被って顔を隠した黒づくめの女性が、銀黒髪の美女の肩を掴み、装甲車に退避させようとする。
銀黒髪の美女は後ろ髪を引かれる思いで、それに渋々従う。
「貴方達もです!機体のない状態で今我々に出来る事はありません‼︎こちらの指示に従って下さい‼︎」
「だが・・・」
某国の青年が率いる集団は迫る軍勢を迎撃しようとしていたのか、それぞれ武器を構えて戦闘態勢を取っていた。
その様子に龍騎士の青年が率いる傭兵団の一人である、目付きの悪い青年が言う。
「状況も分かってねぇのに聞き分けがねぇのかよ、お前らは‼︎今の状況を一番理解してんのは“アニキ”なんだよ‼︎そのアニキが下がってろ言ってんだ、大人しく従えよ‼︎」
「・・・・・確かにそうだが」
躊躇いを見せる某国の青年に、従者の女性が更に言葉で促そうとした瞬間ーー
「外にいたいのであればそこでじっとしていろ・・・」
龍騎士を駆る青年の声が響いた。
『・・・ッ‼︎』
「▪️▪️▪️ッ⁉︎」
「アニキ⁉︎」
『若様⁉︎』
全員が声の主である龍騎士に視線を向けるとーー
夜色の龍騎士のバイザーアイが爛々と輝き、黒銀色の燐光が迸りつつあった。
ーー・・・三章-異説【”▪️”の名を持つ“▪️▪️▪️”。決して交わる事の無く、表でも裏でもある世界の一巡目】・終
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