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ロード・オブ・ロード〜零白の皇〜  作者: スメラギ・零
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三章-十一節【ゴエティアの欠片】

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

お待たせしました。

ーーザン‼︎

銀黒の軌跡が煌めき、巡洋艦を一刀両断する。

ーードォォォォォォォン‼︎

凄まじい爆発が大気を揺らし、周囲に展開していた、飛行能力を備えた【魔導顕鎧(クラフティ・メイル)】を纏ったレメゲトン兵や、簡易的な鳥の形状の戦闘ドローンを多数巻き込んだ。

近くに布陣していた巡洋艦の艦橋で、クルーが焦りながら報告する。

「よ、四番艦、轟沈‼︎」

「クソッ、なんて女だ‼︎とっとと奴を仕留めろ‼︎たかが一人など囲んでーー」

未だ収まらぬ爆炎が斬り裂かれると同時に、ロングコートの様な陣羽織と銀黒の髪を靡かせた女性が艦橋の眼前に現れた。

絶世の美女と言っても足りない程の美貌を誇るその女性は、漆黒の大太刀を左側へ鞘に納めない居合いの構えをとりながら、狂気的とも取れる好戦的な笑みを浮かべながら、彼女ーー【凰照澪凰(おうしょうみお)】はこちらを見据えていた。

「ヒッ・・・・⁉︎」

自分の絶対的な死を予感させるその笑みに、艦長の男は恐怖した。

しかも絶世の美女がそんな表情をしているのだから、恐怖もひとしおだった。


ーーザン‼︎

そして、一閃。

澪凰は逆袈裟に斬り払って艦橋を両断し、更に流れる様に大上段から唐竹を放ち、巡洋艦を一刀両断した。

ーードォォォォォォォン‼︎

程なくして巡洋艦が爆発を起こし、凄まじい爆炎が自身を呑み込む前に、澪凰は空を蹴って高速で離脱した。

上空1000メートル付近に躍り出た澪凰は、何らかの力によりその場に滞空し、前方に鏃を象る様な魚鱗の陣で布陣するレメゲトンの艦隊を見据える。

「ふふ・・・まだまだいるね。もうだいぶ戦力を失ったと言うのに、随分と頑張るじゃないか」

澪凰は少し感心した様に言った。

前方の艦隊の規模は、巡洋艦10隻と鳥や小型ヘリの様な戦闘ドローンやクラフティを纏ったレメゲトン兵。

独自開発した【魔導顕鎧(クラフティ・メイル)】により飛行能力を得る事は成功しているが、敵との間合いを詰める程の速度を出せない為かあるいは母艦との連携を重視している為か、レメゲトン兵の装備は銃火器か魔法増幅用の装備で武装していた。

「やれやれ・・・連携重視とは言え、懐に入られたら同士討ちの可能性もあると言うのに、白兵の重要性を理解していないなんてねぇ・・・」

数多の砲門・銃口・魔力を収束する手が、自身に向けられた事を澪凰は感知した。

澪凰は霞の構えで、リラックスして下ろしていた大太刀ーー【天羽々斬・極皇(きょくおう)】を構えながら言う。

「ま、どうせまだまだ来るだろうし、君達如きに構ってる暇は無いんだよね」

澪凰は一度眼を閉じ、ギンと眼を開く。

その瞬間、【龍眼】と澪凰のプレッシャーが合わさった凄まじい重圧と龍の気配が膨れ上がり不可視の波動となって、空域全体に波及する。

その威圧は、クラフティや戦艦の装甲によって護られていても影響を及ぼし、レメゲトン兵達や更にはドローンにまで自分の死や破壊を錯覚させた。

「消えて貰おうか」

そう言った瞬間、澪凰の姿が掻き消えた。

艦隊が辛うじて捉えられていた澪凰の存在を、艦載レーダー・魔力探知・気配察知等のあらゆる感知から見失ったと気付いた瞬間には、既に一番前方に布陣していた巡洋艦の直上に澪凰は肉薄していた。

「ば、馬鹿な⁉︎この距離を一瞬で詰めただと⁉︎」

艦の周囲で直衛に当たっていた兵士が、遅ればせながらに気付いて動揺の声を上げた。

数瞬まで澪凰が滞空していた地点と艦隊との距離は、優に数十キロを超えていた。

それを澪凰は、自身の力を“1割未満に抑えた状態”で瞬時に詰めたのだ。

兵士が気付いた時には、既に澪凰は大上段に漆黒の大太刀を振りかざしていた。

「きさーー」

「遅いよ」

自身に気付いた兵の言葉を遮る様にそう吐き捨て、澪凰は大太刀を振り下ろす。

ーーザンッ‼︎

巡洋艦の直上より放たれた斬撃はその刃ではなく、剣気によって一刀の下に戦艦を斬り捨てた。

澪凰の動きは止まらず、瞬時に撃沈した巡洋艦から掻き消える様に離れた。

数瞬の間の後に爆発を起こし、ろくに反応出来ぬままに母艦の撃沈を許した直衛の兵士やドローンを巻き込んだ。

移動した澪凰の姿は、撃沈した艦の斜め右後ろに布陣する巡洋艦の真正面にあった。

澪凰を左半身に弓弾くように霞の構えを取りーー

「三の太刀・・・ーー龍穿(りゅうせん)破空(はくう)

ーーバシュン‼︎

手首を捻る様に放たれた刺突は空間を歪ませる程の速度と威力で抉る様に放たれ、極圧縮された魔力による切っ先状の衝角と螺旋状に周囲を渦巻く剣気による不可視の斬撃で構成される。

澪凰の放つ三の太刀は魔力と剣気がの区別がつかない程に融合しており、放たれた力の全てが不可視だった。

ーーゴォウウ‼︎

嵐の如き螺旋状の刺突の暴威が、前方の巡洋艦に襲いかかる。

不可視の刺突螺旋が進む度に大気を抉り、空気を押し退け、軸線上の広範囲に真空を生み出す。

放たれてから刹那ーーレメゲトン兵士と戦闘ドローンを蹂躙する。

直衛で展開する兵士達やドローン群は反応する事すら出来ずに、穿たれ・削られ・抉られ・斬り刻まれ消滅していく。

巡洋艦は刺突の先端に触れる前に細切れされながら艦首より消滅していき、塵すら残らない。

更に刺突はその後方の巡洋艦にまで襲いかかり、展開する直衛の戦力ごと消滅させた。

そうして右翼の戦力を殲滅した澪凰は、既に左翼の戦力に襲いかかっていた。

「一の太刀・・・雲耀(うんよう)・零式」

巡洋艦の側面にまで肉薄していた澪凰は、鞘に刀を納めた居合いに構えから静謐の一閃を放つ。

その一閃には斬撃から巨龍の爪の如く乱雑に発生する斬撃ーー【二の太刀:龍爪(りゅうそう)残心(ざんしん)】が付与されている。

放たれた一閃は巡洋艦を両断し、そこから発生した二の太刀による狂乱する斬撃によって直衛の戦力すらも周辺空域ごと斬り捨てた。

そして一の太刀を放った瞬間、澪凰の姿は消えていた。

澪凰の姿は、左翼の後方の巡洋艦の直上にあった。

澪凰は眼下に展開する艦隊最後の戦力を見下ろしーー直後に澪凰の姿が掻き消える。

「四の太刀・・・ーー龍閃(りゅうせん)抱翼(ほうよく)

そう静かに言った澪凰の姿が掻き消えたと同時に、巡洋艦とその直衛戦力を包囲する様に、あらゆる角度の全方位から無数の斬撃波が“寸分の狂い無く全く同時に“放たれた。

「な、なんだコレは⁉︎ーーぐぁぁぁぁぁ‼︎」

「ば、馬鹿な⁉︎いつの間にーー」

「避け切れーー」

「ぼ、防御をーー」

無数の斬撃波が四方八方から間を縫う隙間すら無く襲いかかり、包囲した巡洋艦と直衛戦力を斬り刻んでいく。

斬撃波の一つ一つが次元違いの速度と威力を誇り、並の者では認識・反応・回避・防御が不可能だった。

やがて瞬く間に全てが斬り刻まれると、一拍置いて巡洋艦が爆散した。

「さてーーあっちはどうかな?」

巡洋艦の爆散を上空で滞空して眺めながらそう言った澪凰は反対側、遥か後方のリリス・ドーム南口方面の戦場に視線を向ける。


ーーズガァァァァァァァァァァァァァァァン‼︎

純白の閃光が奔り、空間ごと全てを震わせる轟音が響く。

閃光ーー純白の雷は降り注ぎ続けている。

「ああ・・・“まだ”続いているんだね」

その戦場を蹂躙する雷が何か、澪凰は知っている。


澪凰は南口方面の戦場に意識を向け、自身の従姉妹である“雷の主”を感知する。




ーー・・・リリス・ドームより南

雷の主ーー【凰雷龍姫(おうらいるき)】は、雷の暴威の只中で滞空していた。

一本だけで都市を灰燼に帰す事も容易な純白の雷ーーそれが龍姫の周囲で乱舞し、豪雨の如く無数に降り注いでいた。

既にこの戦場に到来したレメゲトンの艦隊は、ものの数秒で全滅していた。

それでもなおレメゲトンは絶え間無く新たな艦隊を送り込んでいる為、こうして雷は降り注いでいるのだ。

しかしこの雷は、新たに放ったものでは無くーー“【皇の太刀: 八雷神(やくさのいかづち)】“の白雷なのだ。

皇の太刀:八雷神は、極限の空間切断を有する雷状の斬撃を“八百万“もの数を放つ極広範囲殲滅術技だ。

先のリリス・ドーム南口での戦闘で龍姫が使用した際、敵を全滅させるまでに降り注いだ数は50にも満たない。

故に皇の太刀は今なお続いており、龍姫も新たに攻撃を繰り出す事もせず、敵を全滅させた後に一旦止め、新たな敵に対して再び降り注がしているのだ。

「ふむ・・・これだけ被害を被っているというのに増援が途絶えませんね」

龍姫は万雷の雷の只中で少し眼を閉じ、感覚を広げ索敵する。

「・・・・・・やはりまだ来ますか」

龍姫は類稀なる感知能力で、転移中のレメゲトンの戦力を多数感知した。

「これ以上零牙の邪魔をされたくはありませんし、龍域を拡げておきましょうか」

そう龍姫が言った直後に彼女から白金の波動が放たれ、背後のリリス・ドームを覆う様に拡がり、途端に純白の雷で空間が帯電する。

「これでこれ以上は、メイン会場に戦力を送り込む事は出来ないでしょう。さてーー」

龍姫は前方の空に出現した新たな艦隊を見据え、天羽々斬を構え直した。


ーー・・・リリス・ドームより北

「ふふ・・・龍域を拡げた様だね。流石は龍姫だ。私の龍域は、此処で拡げるには少々勝手が悪いからね」

澪凰は新たに出現した大規模艦隊を見据え、天羽々斬を構える。

「私の龍域はーー」

そう静かに呟く様に言った瞬間、澪凰の姿が音も無く掻き消える。

次の瞬間ーー

「き、貴様、いつの間に・・・⁉︎」

澪凰は出現した艦隊の只中に移動していた。

澪凰が瞬時に移動した地点にいたレメゲトン兵が、驚愕し動揺の声をあげた。

「ふふ・・・遅い」

その兵士の様子に一切視線を向けず、澪凰は不敵な笑みを浮かべ、眼下の艦隊旗艦と思わしき戦艦の見下ろしながら力を解放する。

「さあ・・・消えると良い」

いきなり現れた澪凰に艦隊が迎撃態勢を取り始め、数多の砲口・銃口等が一斉に彼女に向くーーが、既に遅すぎた。

禍々しくも神々しい銀黒の波動と桁違いの威圧感と共に、空間を“巣”に変貌させる領域が拡がる。

澪凰の龍域は瞬時に艦隊全てを包み込み、強制的にその影響下に置いた。

龍域は澪凰を中心にスフィア状に展開され、半径200キロ圏内は敵対者を融解させ氷結させ滅却し尽くす彼女の世界で塗り潰された。

彼女の世界でその空域が侵蝕された瞬間、丁度太陽を隠す形になり、一帯は皆既日蝕の如く闇にと静寂に包まれた。


澪凰の龍域が現出して十秒と経たず、彼女は龍域を瞬時に縮小し消失させた。

「実に容易い・・・この程度でクーデターを起こすなんて、見積もりが甘いね」

少し嘲る様に言いながら優雅に滞空する澪凰の周囲には、先刻まで展開していたレメゲトン艦隊の姿は龍域によって滅却され、影も形も無かった。

「ーーと言うのに、まだ来るみたいだね」

澪凰も龍姫と同様にその類稀な感知能力を持ってして、転移中のレメゲトンの戦力を感じ取った。

澪凰は後方のリリス・ドームに視線を投げかけ、“繋がり”を通じて零牙の無事を確認するから

「ふふ・・・まあ、分かっていた事だけどね。流石は零牙だ。さてーー」

澪凰は前方に出現した、新たなレメゲトンの2個艦隊を見据える。

澪凰はスウッと、流麗な動作で霞の構えを取る。

「これ以上零牙の邪魔はされたくは無いし・・・何より晴れ舞台を邪魔された恨みもある。ーー徹底的に・・・露払いをさせて貰おうか!」

そう言った瞬間に眼を見開く様に好戦的な笑みを浮かべ、澪凰の姿が音も無く掻き消えた。





ーー・・・リリス・ドーム会場内・戦闘フィールド

フードを目深に被り身体を覆い隠す黒い外套を着た闖入者(ちんにゅうしゃ)四人によって、試合は台無しにされていた。

ちなみにレメゲトンの襲撃から、まだ30分しか経っていない。

「ったくよぉ、待つ意味あんのかよ?俺の攻撃でとっくにくたばってんだろ」

胡座で地面に座り込んで脚に肘をつき、(じれ)った大男が瓦礫と化した城を眺めて退屈そうに言った。

「まあまあ、そう言わずに。我々の任務はレリウス・K・バエルの始末。彼の死亡をこの眼で確認する事が重要なのです」

穏やかな声音の男が、大男を嗜める様に言った。

「だったらよぉ、あの瓦礫どかして確認すりゃあ良いじゃねぇか」

大男は“ガン、ガン‼︎”と言う金属同士の激突音を拳同士を打ちつけるて響かせながら意気揚々と立ち上がる。 

「まあそれはそうなのですが・・・つまらないでしょう?せっかくの“力‘を試す間もなく終わってしまうなんて」

男は、ニヤリと笑った様な声音で言った。

「へへっ、それもそうだな」

大男も男の言葉に賛同し、再び地面に座り込んだ。

「しっかしよぉ、一向に起き上がってこねぇな。もう死んでんじゃねぇか?」

「ふむ・・・確かに遅いですね。・・・どうやら期待し過ぎたようですね。仕方ありません。死亡確認をして、獲物をーー」

ーーゴォウウ‼︎

その瞬間、城であった瓦礫の山から黒と白の二つの膨大な魔力が天高く渦巻いた。

「おや、どうやら生きていたようですよ?」

「へ、そう来なくっちゃなぁ・・・!」

嬉しいそうに言う彼等の視線の先でーー

ーードォォォォォォォン‼︎ ガラガラララ‼︎

純白の魔力が渦巻く下で瓦礫が吹き飛ばされ、残る瓦礫を掻き分ける様に白き麒麟の騎士が起き上がる。

ーードォォォォォォォン‼︎

再びの轟音が響き渡り、もう一つの膨大な魔力の下で瓦礫が巻き上がる。

壁にめり込み埋もれた者が放った漆黒の奔流が、邪魔な瓦礫を粉砕しながら巻き上げて吹き飛ばし、壁から這い上がる様に黒き皇が起き上がる。

「「・・・・・」」

黒き皇と白き騎士はその眼を銀と碧に爛々と輝かせ、それぞれ利き手と反対側に身の丈程の鋭利な杭を砕かん程に握りしめながら、闖入者を睨んでいた。

二人からは膨大な魔力が立ち昇っており、渦巻く魔力は周囲の瓦礫を粉砕し、圧倒的な重圧を放っていた。

レメゲトンの男と大男は、並の者がたじろぎ戦慄する程の魔力を目の当たりにしていても平然としており、むしろ嬉しそうに好戦的な笑みを浮かべていた。

余程の余裕があるのか、それとも“感覚が麻痺”しているのかーー

「これはこれは・・・おはようございます。まだ息があり安心しましたよ」

「は!この俺の一撃で死なねぇとは、少しはやるじゃねぇか。ま、手加減してやったんだがな」

男はわざとらしく紳士的な一礼をしながら言い、大男は揶揄う様に言った。

どちらも零牙とレリウスを格下に見ている感じがダダ漏れだった。

「それはどうも。・・・で、お前たちは何者だ?」

零牙が極めて静かな口調で問う。

しかし口調と反比例する様にヘルムの両眼は光を他靡く様に燐光が迸り、膨大な魔力は荒れ狂っていた。

その様はまるで龍が尾で薙ぎ払うかの如く、漆黒の暴威が意思を持ってのたうち回っていた。

零牙から5メートル程左手側、その位置にいるレリウスはその眼を爛々と輝かせ、純白の魔力を溢れさせたままにしていた。

「いや・・・コイツらが何かは知っている。よくも邪魔をしてくれたなーーレメゲトン・・・!」

極めて静かだった零牙とは対照的に、レリウスの声音には怒りが滲んでいた。

男がは肩を揺らし、笑いながら言う。

「ふふふ・・・おや、ご存知でしたか。では名乗るとしましょうーー」

「ーー私は【XIV(フォーティーン)】と申します。お見知り置きを」

男は大仰な一礼をしながら言い、次いで大男が自身の存在を知らしめるかの様に胸を拳で叩きながら言う。

「俺様は【XXIX(トゥエンティナイン)】‼︎テメェらを捻り潰す男だ!」

零牙はその名に疑問を感じると共に、直感が違和感を訴える。

「・・・・本名では無いな。コードネームか?」

「ええ、その通りです。このコードネームの由来は、実際にお見せしますよ。何せ我々は、早くこの”力“を試したくてうずうずしておりますので」

男は零牙の言葉を肯定するとともに、目深に被ったフードから見えている口元にニィッと好戦的な笑みを浮かべる。

そして隣の大男は、準備運動とでも言う様に拳をボキボキと鳴らしていた。

「“力”?ーー・・・・ッ⁉︎ま、まさか‼︎貴様らのコードネームの由来は・・・ッ‼︎」

由来の意味を悟ったレリウスは、ハッと息を呑む。

「流石は”バエル“。第一柱の者である貴方には、我らのコードネームは馴染み深いものでしょう。ーーでは、お見せしましょう‼︎魔界をあるべき姿に戻す、我らの力をっ‼︎」

男・【XIV(フォーティーン)】と大男・【XXIX(トゥエンティナイン)】は、彼等のコードネームが刻まれた大きめのカードを懐から取り出した。

そのカードを見たレリウスが驚愕する。

「馬鹿な、それは・・・‼︎」

「ふふふ・・・」

「へへへ・・・」

レメゲトンの二人は、勝ち誇った様な笑みを浮かべてカードを掲げる。

起源(オリジン)擬似解放(リリース)‼︎ーー我が掲げるは腐矢の狩人!世界に響くは魔の咆哮!」

瞬時に魔力を帯びたカードから文字が刻まれた魔法陣の縁の様な魔力帯が、うねりたなびく様に4本出現し、【XIV(フォーティーン)】と名乗る男の全身に纏わりついていく。

「必中なる弓魔よ!我が身に纏いて顕現せん‼︎」

魔力帯は鎧へと形状を変えていき、男の姿を変貌させていく。

「ピラー・オブ・XIV(フォーティーン)!ジ・レラジェ‼︎」

巨大な魔力が【起源顕鎧(オリジン・メイル)】“そのもの”から放たれ、顕現が完了した。

その顕鎧は、身体にフィットした軽装の装甲で構成された全身(フルプレート・)(メイル)

両腕部にクロスボウと一体になったガントレットと全身を覆うマントの様な外套を装備し、翠色の装甲と三角帽の形状のヘルムを有するレラジェの【起源顕鎧(オリジン・メイル)】。


大男がニヤニヤと笑みを浮かべ、自身のカードを前方に掲げる。

起源(オリジン)擬似解放(リリース)‼︎ーー我が掲げるは毒拳の闘士!世界に響くは龍の咆哮!」

毒々しい紫の魔力帯がカードから溢れる様にたなびき、【XXIX(トゥエンティナイン)】と名乗る大男の全身を覆っていく。

「剛拳振るいし龍魔よ!我が身に纏いて顕現せん‼︎」

男の巨躯を覆う程の巨大な鎧へ魔力帯が変貌していき、大男を毒々しい光で覆う。

「ピラー・オブ・XXIX(トゥエンティナイン)!ジ・アスタロト‼︎」

大男を覆う光が弾けると共に巨大な魔力が顕鎧そのものから放たれ、顕現が完了する。

ーー顕現した鎧は特に巨大だった。

2メートル近くある大男の巨躯を覆う全長3メートル前後ーーもはやパワードスーツか人型ロボットに乗り込んだかの様な威容を誇る。

全身を構成する龍鱗の様な鋭利な装甲は、一目見ただけでわかる程の堅牢さを有するであろう重装甲。

腕部は特徴的な程、特に重装甲かつ通常よりも一回りも二回りも大きく、拳はメリケンサックを握っているかの様に重厚であり、腕部の大半を構成するガントレットからは鋭利な(パイル)の先端が見えていた。

そして臀部からは先端がハンマー状になっている巨大な尾と、龍を模した鋭くも重厚な頭部ヘルムを持つ全身(フルプレート)(メイル)

紫の差し色が能力を示唆するグリーン迷彩の装甲で構成された龍種の起源(オリジン)ーーアスタロトの【起源顕鎧(オリジン・メイル)】。

アスタロトの起源(オリジン)を纏った【XXIX(トゥエンティナイン)】は、具合を確かめる様に拳同士を打ち鳴らす。

顕現の様子を黙って見ていた零牙が、驚愕する。

「龍種の起源(オリジン)・・・なら奴は、アスタロトの血族か?」

「いや、違う」

零牙の言葉をレリウスが即座に否定した。

レリウスはヘルムの眼を細めながらレラジェとアスタロトを見つめてに静かに語る。

「昔から魔界に言い伝えられる伝説において72柱と言う総称が作られる際に初代当主達の“力”を詳細に記録した書物が存在する。・・・それは我々だけで無く、天界の72の“力”をも記録しているという・・・その書の名はーーーーーーーーーーー“レメゲトン”」

「奴等の組織名・・・いや、それを用いるからこその名か」

「ああ。そしてレメゲトンは、魔界と天界のそれぞれに保管される二冊を合わせての総称だ。一つは天界に伝わる【テウルギア】、もう一つは魔界に伝わる【ゴエティア】」

「書の機能は?血族では無い者に、その一族の起源(オリジン)を纏う事は無理だ」

零牙とレリウスの前方でレメゲトンの二人は、余裕そうに鎧の具合を確かめていた。

「いや・・・レメゲトンであれば可能だ」

「何?」

「レメゲトンは超古代遺物であり、ロストテクノロジーで作られた記録媒体の塊だという。そこに記録された“力”は召喚し、使役する事が出来る。そして恐らく、正しく用いれば・・・」

「血族や宿体者で無い者でも記録されているものであれば、【起源顕鎧(オリジン・メイル)】を纏う事が出来る・・・か」

「ああ。そして書のページはこう呼ばれているーー」

レリウスは言葉を切り、レメゲトンの二人に視線を向けて言う。






欠片(ピース)ーーゴエティア(ゴエティック)の欠片(・ピース)





ーー・・・三章-十一節【ゴエティアの欠片】・終


















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