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ロード・オブ・ロード〜零白の皇〜  作者: スメラギ・零
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三章ー八節【白騎士(ヴァイスリッター)と要塞騎士(バスティオン)】

今回は短めなので、早めに投稿する事が出来ました。

拙い文章ですが、お楽しみ頂けたら幸いです。


ーー【Sランク10位】、強者ひしめくワールド・ランキングでこの数字は、学生の身でありながら前代未聞と言わざるを得ないだろう。



ーーしかしこのランクに至る過程は簡単だった。



ーー不戦勝・棄権・不調と、例を挙げればキリが無い。


ーー中でも一番酷いと思うものは、目の前の相手がいきなり降参する事だろう。


ーー全力を出し尽くした上での降参ならば、十分に納得出来る。

しかし、さあ戦うぞと遭遇した瞬間に降参されるなどたまったものではない。

お陰で全力で戦った事のある相手は、同じ【魔界九皇族(デモンズ・ナイン)】の同年代の者達ぐらいだった。


ーーそう・・・S ランク10位は自分の力で登り詰めたものでは無い。

カオス・コンバットの試合において、純血派の連中に忖度され続けた結果のものなのだ。




ーー何故かって?

理由は分かりきっている。





ーーこの俺、レリウスが・・・・【バエル】だからだ。







ーーだから今回の大会も、純血派が何かするのだろう。





ーーそう、思っていた・・・。










ーー・・・会場・VIPルーム

各界の重要人物専用の控え室であるこの部屋は、絢爛豪華に誂えられていながら、軍用装甲で造られた壁や扉、そして全体に各種防御術式が完備され、この部屋一つで最高神クラスが乗る軍用戦闘艦に匹敵する堅牢さに仕上げられていた。

その部屋の椅子に脚を組んで座る、長い金髪をアップに纏めた軍服の美女【レクリエーナ・K・バエル】は携帯端末から空中投影画面を展開し、会話中であった。

「試合形式の変更?」

「いえ、形式はクラウン・ブレイクのままで構いません。人数制限を設けてほしいです」

そう話すのは【テオ・SIN・ベルゼブル】ーー【バエル】出身の現魔王にして、レクリエーナの実の孫だ。

「レリウスの為か?」

「はい。人数制限を用いれば、通常より狭いフィールドを使用する事が出来ます」

カオス・コンバットで使用するのは、主に1000キロ以上からなる広大なフィールドだ。

これはカオス・コンバットが、主にチーム戦かつ人数制限がない為、大規模軍団戦闘を想定しているからだ。

しかし、少数精鋭のチームや何らかの事情により人数が少ない場合、“数”による彼我の戦力差を公平にする為に人数制限を設けられることがある。

その際に用いられるフィールドは、通常のものよりも狭くオブジェクトも少ない。

したがって、早期に総力戦を挑める仕様となっている。

「レリウスはこれまで、【魔界九皇族(デモンズ・ナイン)】の同年代以外のチームとの試合において全力で戦った事がありません。いずれも相手チームのリーダーが何らかの理由で棄権・降参・不調での決着です」

テオは画面越しで目を伏せながら語った。

「分かっている。純血派が何を期待しているのか知らんが、レリウスに忖度した所で我等バエルが融通を利かす事など無い」

レクリエーナは、どこからとも無くドリンクの注がれたグラスを呼び出し、一口飲んだ。

「しかし人数制限か・・・そこまでする必要があるのか?なにせレリウスの相手は、他ならぬクラス・アルファだ。ここまでの試合はお前も見ている筈だ。彼等は全力で試合に臨んでいる。それにいくら奴等とて、凰月に手を出す事は無いだろう?」

「万が一です。これまでのレリウスの試合での事から、試合が長引く程に何らかの工作を仕掛ける事は予想されます。それにーー」

テオが言おうとした言葉をレクリエーナが言う。

「レリウスに全力を尽くさせたい、か?」

「はい。先のシリウス嬢の試合を観て思いました。あいつにも・・・あんな戦闘を経験させてやりたい」

テオの表情は魔王としてでは無く、弟を思う兄の思いやりに満ちた表情だった。

「・・・良いだろう。人数制限の件、私の方で伝えておこう。“タッグマッチ”で構わないな?」

「お婆様・・・!」

驚いた様子のテオに、レクリエーナは厳格な表情を少し綻ばせて言う。

「なに、孫の考えぐらい私にも察せられるさ。私もレリウスには、まともな戦闘を経験させてやりたいしな。さて、そうと決まれば準備しなければならん。お前もコントロール・ルームに戻っておけ」

「分かりました。感謝します、お婆様!」

テオは嬉しそうにそう言って、通信を閉じた。

「やれやれ・・・魔王たる者が“廊下”でそんな表情をするとは、まだまだ小僧という事か・・・ふふ」

そう呆れる様に言いながら、レクリエーナはどこか嬉しそうであった。

窓際まで歩きながら、レクリエーナは通信をかける。

「私だ。次の試合に人数制限を設ける」

快活そうな女性が答える。

「に、人数制限ですか・・・⁉︎次と言う事は・・・お孫様の試合ですが・・・?その・・・宜しいのですか?」

通信かけた相手は実況のモイラだった。

「構わん。どうせ今回は特例尽くしだ。大規模戦闘ばかりではつまらんだろう?1試合だけ趣向を変えるだけだ」

「・・・分かりました。その様に通達します」

通信が切れ、レクリエーナはドリンクを飲みながら窓の外に映る魔界の首都・サタナエルの夜景を眺める。

「まあ確かに、殺し合いでは無い全力の戦闘を経験させてやりたかったが・・・そうはいかんだろうな。今回は“不穏分子”共で我慢してくれ、レリウス・・・」

そう呟き、レクリエーナはグラスを飲み干して空にした。











ーー・・・翌朝、戦闘フィールド

雲一つ無い晴天の空に、モイラの声が会場から響く。

「さあ皆様、お待たせしました‼︎いよいよ、チーム・バエルの登場です!対するはチーム・クラスアルファ‼︎更に今回のクラウン・ブレイクはタッグマッチ形式となっております!さあ、まもなく試合開始です‼︎」

既にフィールド内には、両チームが対峙していた。

「まさかタッグマッチとは、ね。正直、予想していなかったな・・・」

何処か落胆した様にそう言うのは、白と金の王族の儀礼服姿の金髪碧眼の少年、【レリウス・K・バエル】だ。

その隣には、軍服の上に軽装の鎧を身に着けたいかにも騎士といった佇まいの長い金髪ポニーテールの美少女、【シーグリンデ・MA・キマリス】が控えていた。

二人と対峙しているのは、零牙と刹那の二人だ。

そして零牙は、レリウスの言葉を聞いて口を開く。

「気に入らないのか?」

「いや・・・そんな事は無い。ただ・・・」

言い淀むレリウスに、零牙は言う。

「君が何を不安に思っているかは知っている。魔王ーー君の兄から知らされたからな」

「兄上が・・・⁉︎そうか・・・」

尚も落胆の色を隠せていないレリウスの様子に、零牙は怒りを滲ませた声音で言う。

「まさかとは思うが・・・俺が忖度して降参するか、もしくは手を抜くなんて思っているんじゃ無いだろうな」

「ーーッ!い、いや、そんな事は・・・!」

レリウスは即座に否定したが、その言葉から少なからず思っていた事は明白だった。

「・・・・・・言葉で言っても、“諦観”したお前には意味が無いだろうな。だから行動で示す」

そう言った零牙の内から、膨大な魔力が立ち昇る。

そして零牙に呼応する様に、隣の刹那も魔力を解放し始めた。

誰の目から見てもわかる様な、【起源顕鎧(オリジン・メイル)】を纏う予兆だった。

「確かに昨日、脅迫めいた事を見知らぬ連中に言われたが・・・そんな脅迫など聞く価値は無い」

零牙と刹那の魔力は高まり続け、周囲の地面にヒビが入り、空気が震える。

背筋が凍る程の空恐ろしい魔力を目の前にしても、レリウスは唖然とするばかりで、全く戦闘態勢をとろうとしない。

そんな様子を見た零牙は、眼を【龍眼】にして睨む。

先程よりも怒りを顕にした、静かな声音で言う。

「・・・まだ構えないのか」

それもそうだ。

起源顕鎧(オリジン・メイル)】を纏うと言う事は、少なからず全力でいくという意思表示なのだ。

にも関わらず、まだ諦観とも取れる表情を見せるレリウスは、その気は無くとも相手を侮辱している事と同じだった。

「見くびられたものだな。良いだろう・・・この後に及んでまだ構えないのであれば、そうしていろ。そのままーー」

零牙の背後に、黒き龍が大翼を広げて魔力で具現化した。






「その諦観を抱いたまま、堕ちるがいい・・・」

失望の念と怒りを込めて、零牙は告げた。

【龍眼】による圧倒的なプレッシャー共に、強大な龍の気を放ちながら、黒き皇は顕現する。








「ーーシュバルツシルト・ジ・カイゼル・・・!」

ーーゴォウウ‼︎

黒き龍が大翼で零牙を包み込み、顕鎧へと変貌していく。

莫大過ぎる漆黒の魔力が天を貫く程に渦巻く。

莫大な魔力の影響により、周囲の草原が禿げ上がり、零牙を中心としたクレーターを形成し、放射状に地割れを引き起こす。

そして、零牙に続いて刹那も顕鎧を纏う。

「ーーカタストロフ・ジ・カイゼル・・・!」

禍々しい黒緋の魔力が天に向かって渦巻き、周囲に漂う零牙以外の魔力を“無効化”する。

零牙と刹那、二人の魔力が周囲一帯を漆黒と黒緋に禍々しくも神々しく照らし出す。

天に渦巻く魔力が周囲に撒き散らされて顕現が完了し、禍々しくも神々しさを兼ね備える黒皇龍の顕鎧を纏った零牙と、天羽々斬を仕込んだガントレットと鉤爪が特徴的な禍々しい黒緋色の禍皇龍の顕鎧を纏った刹那の姿が顕になった。

零牙は天羽々斬を呼び出し、上空へと10メートル程飛翔した。

なお、刹那はその場で待機していた。

零牙は上空から、レリウスとシーグリンデを見下ろす。

「10秒やる。その間にーー」

「・・・・ハハハ」

零牙が最後の警告を告げる前に、レリウスが乾いた笑いをこぼしていた。

怪訝そうに視線を向けた零牙に、レリウスは言う。

「すまない。君を笑ったわけじゃ無いんだ。ただ・・・自分に呆れただけだ」

レリウスは俯き加減に語り出す。

「俺は今まで、同年代の【魔界九皇族(デモンズ・ナイン)】以外とはまともな戦闘など出来なかった。どう言う意図かは知らないが、必ず“奴等(純血派)”が手を回していた。Sランク10位も、俺の実力で上り詰めた訳じゃ無い。全部“忖度”された結果だ・・・!だから・・・諦めていた」

「「・・・・」」

「レリウス・・・」

零牙と刹那は静かにレリウスの言葉を聞き、シーグリンデは心配そうに呟いた。

「この大会も開催される事は嬉しかった。だが一回戦二回戦と降参に棄権、いつもの事が起こった。ああ結局か・・・と思ったよ。結局俺は、また戦えないのかと諦めていたよ」

その声音には、失望と諦めが込められていた。

チーム・バエルの一回戦と二回戦は、どちらも不自然なまでに相手の動きが悪く、ワザと負けようとしている様だったのだ。

「凰月の事は知っている。そんな事する筈ないと、だが長年抱いていた諦めの念で、君に疑惑を抱いてしまった。本当にすまない・・・」

レリウスは頭を下げ、謝罪した。

「決め付けて曇り切っていた自分が情けない・・・。君達から発せられる魔力に嘘は無い。全力で戦ってくれるのだとーー今、本当に実感している・・・!」

レリウスは胸の前で、右の拳をギュッと握りしめた。

喜びを噛み締める様な仕草だったが、それと同時にレリウスの魔力が高まり始めていた。

「ずっと君と戦いたかった・・・!だが“工作”があるかもしれないと心の奥で諦めていた。だが君は、その態度で示してくれた!もう諦めは無い!疑いもしない!今この試合に‼︎今まで出せなかった俺の全てを出し切る‼︎」

心の底から喜びを吐き出すかの様に、レリウスは叫んだ。

ーーゴォウウ‼︎

レリウスの内から膨大な純白の魔力が、天に向かって立ち昇る。

「シリウス、君の試合は震えたよ!最高の戦いだった!だからここに誓おう・・・俺は、君の試合を超える戦いを繰り広げよう‼︎ーー行くぞ、黒き皇よ‼︎」

レリウスは右手を天に翳した。

「我が身に宿るは白魔の騎士。世界に響くは魔の咆哮!」

レリウスの背後に魔力により、面長な頭部の騎士が具現化し、両刃の長剣を逆手に両手で掲げてから地面に突き立てた。

「嵐を纏う白き魔よ。我が身に纏いて顕現せん‼︎」

巨大な騎士がレリウスに覆い被さっていき、鎧へと変貌していく。

「ピラー・オブ・I(ワン)。ジ・バエル‼︎」

ーーゴォウウ‼︎

魔力が渦を巻き、レリウスに集束していきながら覆い隠していく。

魔力の渦はやがて雷を伴う暴風へと変わり、レリウスに集束し切った瞬間に弾け飛ぶ様に霧散した。

起源顕鎧(オリジン・メイル)】を纏ったレリウスが、姿を現した。

全体の印象は騎士の全身鎧だが、各部は鋭角状であり、通常の騎士鎧の防御重視した重厚なものでは無くスラリと身体にフィットしたものになっている。

各部には隠し武装や固定武装は無く、装甲はある程度の防御力を兼ね備えつつ軽量化され、徹底的に速度と反や運動性を重視した作りだ。

背部には、ツバメの様な一対のL型の大型ウイングスラスターを備え、無駄な装飾が一切無い。

面長の頭部はまるで“龍”を模した様な形状であり、頭頂部に一対の大型の角を戴き、マスク部には牙の様なモールドが入っている。

前述の様に、全体の印象はスラっとしている王道な騎士ではあるが、所々の意匠が刺々しく悪魔を彷彿とさせるデザインとなっており、色が暗い色であれば禍々しいまさしく暗黒騎士の様な姿だ。

しかし真逆の純白と差し色に金色で彩られている為、荘厳な聖騎士の様だった。

その姿はまさしくーー







「ーー【白き騎士(ヴァイスリッター)】・・・」

顕現の様子を静かに待っていた零牙が呟いた。

【白き騎士(ヴァイスリッター)】ーーレリウスの二つ名ではあるが、正確にはバエル一族の二つ名である。

バエルに生まれた者は、龍を模した生物の頭部を持つ騎士の【オリジン(起源)】を宿す。

そして基調とされる色は、全員純白であった。

大昔、近接武器で敵を斬り伏せる当時のバエルの長の戦闘を見た味方や敵が、畏怖と畏敬の念を込めて【白き騎士(ヴァイスリッター)】と称したのだ。

以後、この二つ名はバエル出身の者のみが名乗れるものとして受け継がれている。

ーーブン・・・

顕現したバエル顕鎧のフルヘルムの眼に光が灯り、【起源顕鎧(オリジン・メイル)】の顕現が完了した。

その姿を見て、零牙はサイファスと話す。

「まるで龍騎士の様な姿だな・・・」

「いや、あれは龍を模したものじゃない。アレはーー“麒麟”・・・正確には、白毛の“索冥(サクメイ)“種だ」

麒麟ーーこの世界において、数多の獣種の頂点に君臨し、その力は雨風や雷に操り嵐を生み出し、天候すらも自在に操作すると言われる程の生物だった。

「ああ、そうだ。バエルは伝承においてネコやカエル、またはそれら全てを合わせ持った姿だと言われる。だが実際には、顕鎧生命体と進化した万獣の頂点たる麒麟と融合した騎士ーーそれがバエルだ」

レリウスはそう言いながら、右手を前方に翳す。

「現れよ。宙に奔る雷剣よ」

レリウスの右手に稲光が走り、紫電を散らしながら一本の剣へと集束していく。

「無尽の刃を持って、仇なす界敵を薙ぎ払え!」

レリウスは剣の形に集束した雷を掴み、右側に振り払う。

「現出せよ、【カラドボルグ・オリジン】‼︎」

払った瞬間に雷が弾け、常時帯電したクリスタル状の剣身を持ち、鍔に金色の粒子生成宝玉を備える長剣が姿を現した。

続け様にレリウスは、左手を前へと翳す。

「現れよ。宙に輝く光剣よ」

光が集束し、一本の剣を形取っていく。

「絶当たる一撃を持って、仇なす界敵を撃滅せよ‼︎」

レリウスは剣を形取った光を左手で掴み、左側に振り払う。

「現出せよ。【クラウソラス・オリジン】‼︎」

レリウスの左手に、透き通ったクリスタル状の剣身と、鍔に碧色の粒子生成宝玉を備える長剣が姿を現した。

レリウスは上空の零牙を見上げ、歓喜に満ちた叫びをあげる。

「行くぞ黒き皇ーー凰月零牙よ‼︎俺の全霊を持って挑ませてもらうっ‼︎」

「来い、【白き騎士(ヴァイスリッター)】‼︎」

ーーブォォォォォォ‼︎

零牙は応えて超加速をかけ、一気に上空へと残像機動で飛翔した。

ーーゴォォォォォ‼︎

レリウスはL字型の大型ウイングスラスターを拡げ、スラスター部より急圧縮された魔力を一気に解放し、まるで音速を超えた戦闘機の様な轟音を響かせ、初速から一瞬で音速へと達する機動性で、零牙を追いかけていった。

ーーギィンッ‼︎

上空から金属音が鳴り響いた。

上空にて、レリウスの両手の長剣を上段から振り下ろし、零牙は長刀で右薙で斬り結んでいた。

最初の一合を終えた二人は、何度も離れては互いに斬撃を繰り出しあって斬り結びあいながら、そのまま空を縦横無尽に超高速で飛び回りながら戦闘が開始された。

取り残された刹那とシーグリンデは、二人を見届けた後にお互いに視線を交わす。

「さてーー私達も始めましょうか?」

「うむ。まずは感謝を。あれ程喜びを爆発させて戦うレリウスは初めて見た」

空を超高速で飛び回って零牙と斬り結ぶレリウスを、シーグリンデは優しい笑みを浮かべて見ながら言った。

その表情と声音から、彼女がいかにレリウスを大切に思っているかが窺えた。

シーグリンデは刹那に視線を戻し、表情をキッと引き締めた。

「私も競い合う戦いは好きだ。故に私も、我が“婚約者”に倣いーー全霊を持って挑ませて貰う‼︎」

「ーーッ!」

禍々しい龍の顕鎧姿の刹那が、息を飲んだ。

それほどまでに、シーグリンデの内より膨大な魔力が膨れ上がったのだ。

やがて彼女の魔力は溢れ出し、アメジスト色の魔力が天に向かって立ち昇った。

「我が身に宿るは紫紺の騎士。世界に響くは魔の咆哮」

馬を模した頭部を持つ騎士が、大型の騎士槍を地面に突き立てながら魔力で形取られ、シーグリンデの背後に具現化した。

「霊魂を繰りし紫紺の魔よ。我が身に纏いて顕現せん!」

騎士はシーグリンデに覆い被さっていき、鎧へとその形態を変えていく。

「ピラー・オブ・LXVI(シックスティーシックス)。ジ・キマリス‼︎」

ーーゴォウウ‼︎

アメジスト色の魔力の柱が立ち昇り、シーグリンデの姿を呑み込んだ。

やがてシーグリンデが腕を振るい、自ら立ち昇った魔力の柱を散らし、【起源顕鎧(オリジン・メイル)】の顕現が完了した事を知らしめた。

彼女の顕鎧は、バエルの顕鎧と比べると全体的にかなり重厚だった。

本人が纏う顕鎧はスラリとし、脚部装甲が重厚である以外は、シーグリンデの身体にフィットしたものだ。

しかし特徴的なのは本体と別でに、腰元に増加装甲の様に装備されているドレスアーマーだ。

このドレスアーマーは、サイド一対、リアに大型一枚の計3枚で構成され、所々にスラスターが備わっていた。

どちらも地面につく程に大型でありながら、本体の動きを妨げない様に滞空追従する形で装備されている。

背部にはウイングスラスターは無いものの、副腕の様なコネクターが折り畳まれていた。

頭部は鋭い形状をした馬を摸倣して形成されており、頭頂部から、ポニーテールの様な一房の鬣が背中側に流れていた。

シーグリンデの顕鎧はスラリとしていながらも、まさしくタンクとしての役割を重視している事が見て取れた。

顕鎧のヘルムの眼鏡光と共に、シーグリンデは右手を前方に翳した。

「来たれ、災厄をもたらす黒き魔槍よ」

翳した右手の直下の地面から地響きと共に、全長2メートルを超える大型の騎士槍が柄から迫り上がる。

柄には、紫の粒子生成宝玉が備わっていた。

紫と黒の騎士槍は、4本の黒い鎖によって雁字搦めに拘束されていた。

「呪われし枷をもたらし、仇なす界敵を呪滅せよ!」

シーグリンデは黒い鎖ごと、騎士槍を地面より引き抜いた。

「顕現せよ・・・【魔槍バルムンク・オリジン】‼︎」

細目の大剣の剣身を円状に複数束ねた様な形状の穂身を備える、紫と黒の禍々しい騎士槍がその姿を現した。

相次いでの伝説の武器の出現に、観客は沸いていた。

会場の実況席では、実況のモイラとレクリエーナがバルムンクについて説明する。

「カラドボルグにクラウソラスに続いて、バルムンクまで‼︎神話や英雄譚に名高い武器が勢揃いです!しかし、バルムンクとは剣であると伝承には語られていますが・・・レクリエーナ様、これは・・・?」

「確かに伝承においては、魔剣または聖剣として語られている。しかし我等バエルが、“表”においてその姿を偽りで語られる様に、伝承にも“裏”と言う真実がある。と言っても、バルムンクに関しては単純にもう一振りーー語られていない“魔槍”が存在していたと言うだけだ。ちなみに、ちゃんと魔剣のバルムンクも存在している」

「成る程・・・」




フィールドでは刹那とシーグリンデが互いに得物を構え、戦闘開始秒読みとなっていた。

刹那は両腕のガントレットに格納された【天羽々斬・絶皇】を射突して刀身を抜刀し、シーグリンデは右手に持つ【魔槍バルムンク・オリジン】を矢を番える様に構えた。

「「・・・・・・・・」」

二人の間に流れる一瞬の静寂。

静寂の中ーー遠方から聞こえた、零牙とレリウスの戦闘音を合図に同時に動く。

二人が踏み込んだ地面が捲れ上がり、超高速で相対する相手に向かって突撃した。

ーーガギィン‼︎

黒紅の長刀と鎖で拘束された紫黒の騎士槍が交わり、その衝撃で所有者二人を中心にしたクレーターを引き起こし、衝撃波を周囲に撒き散らした。

そのまま二人は、その場で密近接戦を繰り広げる。

鍔迫り合った状態から、刹那が騎士槍の穂身を平行してから逆立ちし、身体を捻ってオーバーヘッドキックを繰り出す。

シーグリンデはそれを左腕で防御し、騎士槍を右側に引き戻す様に振るって刹那を宙に飛ばす。

宙に浮いた刹那に対し、シーグリンデは引き戻した流れで騎士槍を矢を番える様に構え、即座に鋭い突きを繰り出した。

刹那は左回転で身を捩る最小限の動きでそれを躱す。

そしてそのまま回転斬りの要領で、右腕で左薙、左腕で斬り上げ、剣気による不可視の斬撃波を飛ばした。

シーグリンデは槍を引き戻す途中で穂身を盾にする様に構え、迫る斬撃波を弾いた。

その前方では、地に脚をつけた刹那が地面を踏み締め、天羽々斬の刀身をガントレットに格納し、両腕をクロスした構えをとる。

ーードゴォォ‼︎

次の瞬間には地面が捲れ上がる程に蹴り込み、超高速で突撃した。

向かってくる刹那に対し、シーグリンデも騎士槍を盾の様にした防御態勢のまま、同じく地面を蹴り込んで突撃した。

ーードォォォォォォォン‼︎

凄まじい衝撃音を響かせながら再び激突し、その衝撃でクレーターを生み出して破壊の余波を巻き起こしながら、二人はそのまま鍔迫り合った。

歯軋りの様な擦れ合う金属音を響かせ、両者一歩も譲らずに鍔迫り合う。

その際、バルムンクから黒い霧の様な魔力が刹那に纏わりつこうとするが、すぐに弾かれる様に霧散した。

(やはり、効かないか・・・)

バルムンクの“能力”が弾かれる様子を見て、シーグリンデは内心で納得した。

5秒程迫り合い、【龍眼】と【魔眼】で互いを睨み合った。

ガントレットに格納しつつも切っ先が露出している天羽々斬の刀身を、刹那はシーグリンデの顔に向けた。

「・・・・!」

その切っ先を見つめ、怪訝そうにしつつもシーグリンデは警戒する。

その瞬間ーー

ーーシャリン‼︎

ガントレットに格納された【天羽々斬・絶皇(ぜつおう)】の刀身が、パイルバンカーの様に高速で射突され、シーグリンデの頭部に向かって放たれた。

「・・・ッ!」

警戒していたシーグリンデは、咄嗟に顔をずらした。

射突された天羽々斬の刀身は、シーグリンデの顔が寸前まであった場所を貫いていた。



ーー会場・コントロール・ルーム

パイルバンカーの様に射突された刀身を躱す所まで攻防を、腕を組んでモニター観戦している冬華が感嘆の声を上げる。

「ほう?あの騎士槍では刹那の密近接戦闘への対応は難しいと思っていたが、やるじゃないか。まだ“ウォーミングアップ“程度とはいえ、しっかりと奇襲にも対応出来ている。流石は、”【要塞騎士(バスティオン)】“と言った所か」

その声に、フィオナの隣で観戦しているテオが言う。

「ああ。シーグリンデの得意分野は攻勢防御。相手の攻撃を受け止め、隙を探り合間を縫い、絶大な攻撃を叩き込む事を主軸にしている。更にキマリス一族の【起源顕鎧(オリジン・メイル)】は、あらゆる攻撃の防御と受け流す事を重視したものだ。いくら皇龍の顕鎧とはいえ、そう簡単には落とせないさ」

「・・・ふむ、確かに探り合い程度の攻撃では難しいな」

冬華は顎に手を当てながら言った。

その視線は、シーグリンデを観察していた。

(だがーー刹那の本領はここからだ)

冬華が見つめるモニターの中では、刹那が一瞬でシーグリンデの背後に回り込んでいた。



ーー戦闘フィールド

刹那がペースを上げ始めた。

背後に回り込んだ刹那に対し、シーグリンデは振り返りながら騎士槍を薙ぎ払う。

攻撃を繰り出そうと左の鉤爪を振り上げていた刹那は、攻撃を中断して後方へと飛び退く。

薙ぎ払われた騎士槍によって、衝撃波が発生する。

後方へと回避する途中だった刹那は、サマーソルトで先端に二本の長刀を背中合わせにした様な刃を持つしなやかだが鎧の尻尾を、シーグリンデの放った衝撃波を斬るようにして振るった。

「・・・・!」

自分の放った衝撃波を斬り分け、こちらにまで届く龍の尾の刃をシーグリンデは、バックステップによって眼前スレスレで回避した。

お互いに距離を取る形となった二人は、互いに構えながら会話する。

「やるわね。その大型の槍で私の得意レンジについてくるなんて、感心したわ」

「“向かってくる攻撃の全てを受け止め受け流し・・・常にバエルの矛であり盾として共にあれ”、我等キマリス一族の誇りであり家訓だ。故にゼロレンジでの戦闘も想定している」

「成る程、どうりで・・・」

「私こそ驚いたよ。“魔力無効化”・・・噂には聞いていたが、実際対峙してみると実に厄介だ。我がバルムンクの能力が通用しないとはな・・・」

「残念だけど私には、たとえ雀の涙程でも魔力が使用されていればーーその全てを無効化する。だから私と戦り合うには、完全に物理でないいけないわよ?」

最後に挑発する様に言って、刹那は構える。

その挑発に応える様に、シーグリンデも構える。

「成る程・・・やはり厄介だ」

両者同時に踏み込んで、再び密近接戦を更に速度を上げて繰り広げていく。






ーー・・・フィールド・上空

ーーブォォォォォォォォゥ‼︎

ーーゴォォォォォォォォォ‼︎

防衛側の拠点である城郭の上空で、羽ばたきが連続する様な音と戦闘機の様な轟音が鳴り響いていた。

ーーギィン‼︎ ギィン‼︎


ーーダゥン‼︎ ダゥン‼︎


刃を交える金属音が響き渡り、断続的な銃声が轟く。

主戦場が空中でありながら、地上には幾つものクレーターや斬痕が至る所に刻まれており、戦闘の激しさを物語っていた。

残像を撒き散らす超高速機動で空を翔る零牙に、レリウスは轟音を響かせる音速機動で追い縋る。

ーーダゥン‼︎

背後から迫るレリウスに向かって、大型ハンドガンの様な銃身を持つ大口径ソードオフショットガンを、零牙は振り向きざまに撃った。

レリウスは急制動をかけ、上空へと一気に上昇する。

「速いな・・・」

戦闘能力もさる事ながら、機動性最高峰を誇る龍の顕鎧を纏う零牙がそう呟く程に、レリウスの上昇速度は凄まじかった。

(ああ。直線での機動性ならば、龍にも勝るかもしれん)

零牙の内で、サイファスが感心していた。

零牙は上昇するレリウスに向けてショットガンの銃口を向け、偏差射撃を数発行う。

ーーダゥン‼︎ ダゥン‼︎ ダゥン‼︎ダゥン‼︎

しかしその予測射撃を裏切る様に、レリウスは直角に方向を小刻みに変え、L字の軌跡を繰り返す様な回避機動でその全てを躱して上昇し続けた。

「成る程。直線での機動性に長けている分柔軟な回避が難しいが、それを直角に曲がる事で補っているのか・・・。しかもあの速度・・・普通の予測射撃では当たらないな」

上昇をやめたレリウスは、零牙よりも遥か高高度で右手のカラドボルグを振り上げる。

「ハァァァ・・・」

レリウスはカラドボルグの剣身に魔力を集束しーー

「彼方を裂けーーカラドボルグ‼︎」

レリウスはカラドボルグで、その場を斬る様に振り下ろした。

斬撃波を飛ばす訳でも無く、ただその場で斬撃を繰り出す様に振り下ろした。

レリウスがいる場所は零牙の遥か直上の高高度、普通であれば届くはずの無い斬撃だったがーー








その瞬間ーーカラドボルグの剣身は、極大規模に“伸びていた”。






「・・・ッ!」

零牙は龍眼によってレリウスの状況を把握していた。

しかし流石に超高高度から動かずにここまで届くとは想定外だった。

だが攻撃自体は予測していた為に即応し、身体を半身に捩る最低限の動きで回避した。

零牙の眼前スレスレを通り過ぎたカラドボルグの剣身は、凄まじい風圧を発生させながら防衛側の拠点である城を含めた地面を一閃した。

「カラドボルグの伝承は知っていたが・・・まさか、高度1万メートルから地上を斬れるとはな・・・」

零牙は綺麗に半分に両断された城郭を、チラリと視線を向ける。

「クラウン破壊のアナウンスが無い・・・という事は、城には無いかもしくは上手く隠し場所には当てなかった、か・・・。まあどっちにしろ、クラウン破壊で終わらせるつもりは無いが」

そう言って零牙は、上方のレリウスに視線を戻す。

カラドボルグの極大化した剣身は、未だ消えていない。

「さあ、次はどうーーッ‼︎」

言い終わる前に、凄まじい轟音を響かせて急降下するレリウスを感知した。

「頭上の有利を捨てるのか!」

零牙は天羽々斬を構え直し、ショットガンの照準を定める。

零牙は真っ向から迎え撃つつもりだった。

しかしーー



ーーバリン‼︎



「・・・・・⁉︎」

不意に、零牙の近くでガラスが割れる様な音がした。

零牙が音のした方向に視線を向けると、カラドボルグの剣身が粉々に砕けていた。

粉々に砕けた欠片が、通常の長剣サイズの剣身へと再構成されていく。

その数ーーおよそ1000。

高速急降下中のレリウスが、左手のクラウソラスを一振りして波動を飛ばす。

波動は零牙をも包み込む様に地上にまで伝播し、

零牙は警戒を強めるが、波動自体には攻撃性能は無かった。

しかしーー

「ッ!これは・・・!」

クラウソラスから放たれた波動が影響を与えたのは、再構成されたカラドボルグの剣身だった。

レリウスは急制動を行い、零牙より五百メートル上空で滞空し、クラウソラスの切っ先を向けた。

「彼方まで追え、クラウソラス‼︎」

クラウソラスの波動の影響を受けた無数の剣身が、その切先を一斉に零牙に向けて殺到する。

「・・・・!」

零牙は弾かれる様に飛翔し、回避機動を取る。

無数の剣身から逃れる様に飛び回る。

「何処までも誘導するのか・・・!」

ミサイルの様に追い縋る刃群は、音速飛行で撒き散らされる残像を捉えて爆発を起こす。

零牙は振り切ろうと縦横無尽に飛行するが、障害物にぶつかろうとも何処までも追い縋った。

ーーダゥン‼︎ダゥン‼︎

ショットガンを連射し、刃を迎撃する。

現在追い縋る刃は全て撃ち落としたが、直ぐに別の刃群が迫り来る。

「キリが無い・・・ならば!」

零牙が飛行をやめ、左半身に霞の構えを取る。

【天羽々斬・(スメラギ)】の刀身に、鋭く研ぎ澄まされた剣気を纏わせる。

「【二の太刀・龍爪残心】!」

零牙は長刀を大きく薙ぎ払う様に一閃し、剣気による不可視の斬撃波を飛ばす。

ーーザザザザザザザザザザザザザザザザ!

斬撃波は迫る刃群の只中を駆け抜け、斬撃波より発生した魔力と剣気による無数の剣閃が、カラドボルグの剣身を斬り落としていく。

【二の太刀・龍爪残心】は、斬撃に付与する技だ。

付与された斬撃は敵対者または対象の接近に応じて、まるで龍の爪が斬り裂くが如く五つの剣閃を無数に自動発生させる。

ーーダゥン‼︎ダゥン‼︎ダゥン‼︎

二の太刀ですら取りこぼしたカラドボルグの剣身は、ショットガンを連射して撃ち落とした。

地上に刻まれた巨大な斬撃痕の上空で、零牙とレリウスは距離をとって再び対峙する。

「極大化した一撃は当たらないとは思っていたが・・・まさか“必中”化した剣身すらも全て捌き切るとは。流石だ、凰月零牙!」

「カラドボルグは伝承において、剣身を瞬時に伸ばして山三つの山頂部を斬り裂いた。クラウソラスは一度抜き放てば、何人もその攻撃から逃れる事は出来ないとされている」

零牙は、静かに語る様に言った。

零牙はそれぞれの剣によるものと思わしき攻撃を思い返しながら、言葉を続ける。

「カラドボルグの能力は圧縮粒子によるリーチの切り替えと、生成した剣身の分離と再構成。そしてクラウソラスは攻撃の必中と、”総ての攻撃への必中付与“」

レリウスは感心の声を上げる。

「流石だ・・・‼︎簡単に看破されるだろうとは思っていたが、まさかこの短時間で全て見切られるとは予想外だ!」

「よく言う。まだその二つの剣の全てを出した訳じゃ無いだろう?」

レリウスは肩をすくめ、答える。

「まあ、確かにカラドボルグとクラウソラスの性能を全て見せた訳じゃない。だが・・・先にこちらの手の内の一部でも晒しておかないと、要求するのは失礼だと思ってね」

「・・・要求?」

レリウスは、零牙の左手の白銀に輝く刀身を持つ長刀ーー【天羽々斬・(スメラギ)】に視線を向ける。

「君の刀ーー天羽々斬・皇の能力。対象の全てを空間そのものごと斬るために、耐性もあらゆる防御手段も特異体質も全てを無意味なものにする。空間干渉能力の一つ頂点、【空間切断】。全ての剣の道を歩みし者達が夢見る斬撃の極致」

レリウスはまるで謳う様に言った。

零牙はその様子から納得した。

「成る程・・・自分の剣の能力を先に晒したのは、俺に【(スメラギ)】の能力を使わせる為か・・・」

「君は最初から全力だと言った。だが君はここまでの戦闘において、一度も刀の能力も自らの【起源(オリジン)】の能力も使用していない。このまま斬り合うのも楽しくてしょうがないが・・・君が全力で来てくれなければ、俺はこれ以上の全力を出す意味が無い」

「・・・・」

レリウスは、カラドボルグの切っ先を零牙に向けて言う。

「凰月零牙。君の本当の全力を望む!その暁には、我等がバエルの真髄を“深淵”を見せよう!」

レリウスからそう言われ、零牙は暫し沈黙した。

沈黙の後に零牙は息を吐き、天羽々斬の柄を強く握りしめ直しながら言う。

「そうだな。強力過ぎる能力だから、少し躊躇っていた・・・だがーー」

零牙は天羽々斬に魔力を纏わせ、白銀の刀身に漆黒のオーラが縁取った。

「そんな宣言をされたのでは、魔力切れを考慮している場合では無いな。全力で応えよう、レリウス・K・バエル!」

零牙は左腕を上げ、天羽々斬の切っ先を左側に突き付けた。

「我が天羽々斬よ、その全てを解放せよ。其は、全てを裂断せし皇たる龍刃ーー」

その瞬間ーー【天羽々斬・(スメラギ)】から、凄まじいまでの魔力と重圧が放たれた。

「これは・・・ッ!」

レリウスは息を飲んだ。

その重圧は、いきなりもう一体の皇龍が出現したかの様な、並の者では這う事すらおぼつかなく成る程の圧倒的な龍の気配だった。

零牙は最初に顕鎧と共に天羽々斬を喚んだ時に簡易召喚ーー即ち、能力を使用しない制限をかけた召喚をしていた。

しかし顕現の中文を謳った事で、天羽々斬の力は完全に解放された。

天羽々斬が放つ龍の気配で、フィールドの大気が震える。

「いくぞ・・【白騎士(ヴァイスリッター)】」

零牙がそう告げて静かに魔力を高める事によって、戦闘態勢が整った事を知らせた。

「この感覚・・・これを待っていた・・・!来い、【黒き皇】よ!」

対峙する“龍”の高まり続ける魔力と気配に、レリウスは“本気”を感じ、応えた声は歓喜に震えていた。

二人は身構え、ウイングスラスターに膨大な魔力を供給する。




遠くで刹那とシーグリンデが奏でる戦闘音以外は、二人の間と周囲に一瞬の静寂が満ちる。


ーーブォォォォォォォォオ‼︎

ーーゴォォォォォォォォオ‼︎


桁違いの超加速により、その場の大気を打ち震わせながら、黒い龍と白い騎士は同時に飛び出した。


刃を交える為、互いに何の牽制もしない真正面からの突撃。


零牙とレリウスも、全力で戦う為に相対する相手以外には意識を向けていなかった。


互いに飛び出して数秒もしない時間、誰もが斬り結ぶ音が聞こえるだろうと思っていた。


しかしーー





ーーバリンッ‼︎



突如、位相フィールドを囲む結界が割れた音が響いた。


結界を破った2本の“ソレ”は真っ直ぐに標的に向かって飛んでいく。


飛来する二本の“ソレ”の正体に、一部の者達が刹那の時間で気付いた時には既に遅く。



警告の声を上げる間も無く、長い2本“杭”は音速で飛行しーー



「「ーーッ⁉︎」」

“標的”である、零牙とレリウスが感知して視線を向けた時には、眼前にまで迫っていた。


そしてーー







ーーガァァン‼︎


2本の杭は同時に着弾し、二人を撃墜した。



ーードォォォォォォォォォォォォォォォォン‼︎

零牙とレリウスは、杭ごと防衛側拠点である城郭へと叩きつけられた。




「ハッハァーッ‼︎狙い通りだぜぇ‼︎」


男の大声がフィールドに響くと共に、城郭は騒音を立てて崩壊していき、瓦礫の山へと姿を変えていった。





ーー三章ー八節【白騎士(ヴァイスリッター)要塞騎士(バスティオン)】・終
























































面白い・続きが読みたいと思って頂けたら評価をよろしくお願いします。


次回は、澪凰と龍姫の無双回です。



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