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ロード・オブ・ロード〜零白の皇〜  作者: スメラギ・零
29/49

三章ー七節【漆黒と煌蒼の円舞曲・前編】

待ってくれている方はいないかもしれませんが、お待たせしました。


大会開始から数日が経過した。

この数日は、残りの第一試合消化と共に前倒しで第二試合の一部が、第一試合のある試合の前に行われた。


ーー大会・三日目

ーーチーム・ベリアル:【アルタイル・K・ベリアル】対 チーム・ブエル:【ライド・G・ブエル】

ーー戦闘フィールド・森林

ーー襲撃側チーム・ベリアル、防衛側チーム・ブエル

ーーガァン‼︎

「ぐあぁぁっ‼︎・・・クソッ!こんな筈じゃ・・・⁉︎」

強力な斬撃を食らって、もんどり打つ様に地面に叩きつけられたライドが、一族特性である【超回復】で受けたダメージを回復させながら、認められないといった表情で唖然と呟いた。

「全く・・・回復力だけは突出してるな。流石にブエルだけはある・・・が、それ以外は大口叩くだけの事は無いな」

肩に自身の身の丈を超える程に巨大で禍々しく仄暗い紅を基調とした両刃の大剣を担ぎ、仄暗くも煌めく紅髪の美少女【アルタイル・K・ベリアル】は、少し面倒くさそうな口調で言った。

「また全回復か・・・たくっ、こっちは早いとここの試合を終わらせたいんだがな・・・」

アルタイルは、憎々しげにこちらを睨むライドの全身を確認して言った。

「降参しろ、お前のチームメンバーは既に全員戦闘不能だ。加えてお前は戦闘開始から私にかすり傷すら負わせられていないが、私は何度もお前に戦闘不能のダメージを与えた。いくら一族特性で完全回復出来ていても、お前じゃ私には届かないぞ?」

「降参だと・・・⁉︎馬鹿を言うんじゃねぇ‼︎テメェは俺様に屈服する運命にあるから、わざわざ傷つけない様に手を抜いてやってただけだ!だがお前は俺様と言う未来の主に向かって刃向かった。今からは躾けの時間だ、この俺様の本気をーー」

ーードシュウン‼︎

ライドが言葉を言い終える前に、一条の禍々しい紅い光がフィールドを横断した。

ーー「く、クラウン破壊により試合終了‼︎勝者、チーム・ベリアル‼︎」

ーーシュウゥン

光条が横断した後、リーダー同士の戦闘場所に立っていたのは、禍々しい紅い大剣の切っ先をライドがいた場所に向けているアルタイルだけであった。

「口だけのお前の本気なんてたかが知れてんだろうが・・・!相手する価値もねぇ。後な、女を舐め過ぎなんだよお前」

アルタイルは流れる様な動作で大剣を納め、遠くで負けたと言う事が理解出来ずに呆然と膝をついているライドに目もくれず、フィールドから退去していった。



ーー三日目・二試合目

ーーチーム・クラス・ゼータ:【長門】 対 チーム・アイム:【カーラ・D・アイム】

ーー戦闘フィールド・海上城塞

ーー襲撃側チーム・クラス・ゼータ、防衛側チーム・アイム

ーードオオン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎

重々しい砲撃の音が絶え間無く響き、無数の砲撃が城を瓦礫の山へと変えている最中であった。

「か、カーラ様このままでは持ちません‼︎」

「そんな事言われなくても分かってる‼︎お前たちもさっさとあの忌々しい下民どもを倒せ‼︎」

チームメンバーの弱々しい言葉に、カーラは冷静さと余裕を失い叫んだ。

既に準備した防衛兵器は沈黙し、城壁は砲撃によって粉微塵となり、防衛や待ち伏せに出ていたメンバーの数十人は全員戦闘不能。

リーダーを入れて40人と言う最大規模の人数だったチーム・アイムは、試合開始から僅か2分で10人以下にまで追い込まれていた。

しかもそれら全ては、“前線拠点から”の超長距離砲撃だけで為されたものだった。


ーー戦闘フィールド対岸・前線拠点


ーー部分顕現。

それは【起源顕鎧(オリジン・メイル)】又は【魔導顕鎧(クラフティ・メイル)】の武器や鎧の一部だけを顕現させる高等技術だ。

リーダーである長門を始めとする同世代の軍人家系出身の者達で構成されたクラス・ゼータは、この部分顕現を通常仕様として組み込まれた軍用兵器をモチーフとした、最新型の【戦争顕鎧(ウォー・クラフティ・メイル)】を与えられていた。


「そのまま撃ち続けろ、反撃の機会を与えるな‼︎」

軍刀を地面に突き立てて柄に両手を置いた仁王立ちで、自らも両側に部分顕現した“小型化された近未来的なデザインの41センチ連装砲“で間断なく砲撃しながら、自分を中心とした陣形で砲撃を続けるチーム・メンバー達10人に、タイトスカートの軍服に仕立てた学生服に身を包み、長い艶やかな黒髪の少女【長門】は檄を飛ばし、随時相手の動きを見極めながら指示を出していた。

彼女の周囲には、口径は小さいものの小型艦に搭載される連装砲又は単装砲を小型化した砲門を同じく部分顕現したメンバー達が、互いのリロードを補う様に砲撃を行なっていた。

「大和、“プロトタイプ”はいけるか?」

長門は後ろで、自身の所有する特殊な【戦争顕鎧(ウォー・クラフティ・メイル)】を顕現させるべく集中している少年に声を掛けた。

「もう少し・・・!もう少し砲門だけなら・・・‼︎」

目を瞑って集中しながらそう言ったのは、軍服に仕立てた黒髪の少年【大和】。

彼の右側の空中には、サイズダウンされているがそれでも長大な砲塔が顕現しつつあった。

【大和】が所有する【戦争顕鎧(ウォー・クラフティ・メイル)】は【プロトタイプ・クラフティ】と呼ばれる物。

遥か古代の魔導科学で製作されており、“一部”者達以外は同じ物を製作出来ず、数多くプロトタイプが世界中の研究機関で解析されているが、その全ては未だ解析されていない。

プロトタイプをリバースエンジニアリングする事で多くのロストテクノロジーが詳らかになり、その技術で“この時代”からすれば数多くの超高性能顕鎧が製作されている。

プロトタイプは発見された全てが使用可能な状態ではあり、既存の物や最新鋭の【魔導顕鎧(クラフティ・メイル)】を遥かに超える極高性能である事が判明しているが、完全に“鎧の状態”で使用できた例は極小数だけだった。

その理由は、材質である未知の超金属が発生させる固有の魔力周波数だ。

この周波数に一定の数値以上の適合しなければ、プロトタイプは一切使用出来ない仕様になっており、また適合しても数値が低ければ性能と機能が著しく制限されてしまう。

「・・・・ッ‼︎」

長門やチームメンバーの砲撃が続く中、大和は額に汗を浮かばせながら、必死にプロトタイプを顕現させようとしていた。

大和の所有するプロトタイプは、自身のコード・ネームとなっている【大和】。

完全に顕現出来れば、“人型の戦艦”と呼べる戦闘能力を纏う事が出来るが、適合はしているものの大和はこれまでその一部しか顕現出来ていなかった。

しかもその顕現すらも、所有者の未熟故か非常に集中しなければならず。

基本的にクラス・ゼータは、大和以外が相手を寄せ付けぬ制圧砲撃でフォローし、大和の顕現が完了次第プロトタイプと“トップ・セブン”の長門の全火力を持ってして殲滅する戦術を旨としていた。

「やはり城は頑丈だな・・・流石にコストを防御に振っているな。あのヒステリックな女・・・確かカーラだったか。あの手の女は自分最優先で動くだろうから、この砲撃の中で自ら動く事は無いだろうが・・・。こうも戦い甲斐の無い戦闘が長引くのは、時間の無駄だな・・・」

長門の目的としては、この大会であらゆる戦い方の同年代の強者達と戦い、メンバーのあらゆる状況下での戦闘経験を詰ませる事にあった。

特に長門が望んでいるのは、砲撃による中遠距離戦を得意とする自分達が不利になる、近接戦を得意とする相手との試合だった。

「まあ、これも経験か・・・。ひたすら引き篭もる敵軍を、如何に短時間で落とすかのシュミレーションとでも思えば良いか・・・」

砲撃を継続し続けながら、そう長門が独りごちた時ーー

「ごめん、長門姉さん。待たせた・・・!」

大和の側には、長大な砲塔を有する大型ライフルの様な重砲が顕現していた。

ーーガチャン‼︎

大和は上部に展開されたグリップとフォアグリップを握り、引き金に指をかける。

「フ・・・待ちわびた!」

ーーガチャン‼︎

大和の言葉を聞いた長門はニヤリと笑いそう言うと、部分顕現していた二門の41センチ連装砲と同じ物を更に顕現させ、四門へと増やした。

「総員、斉射用意‼︎」

長門の言葉と共に豪雨の様な砲撃がピタリと止み、メンバー達は遠方の海上城塞に狙いを定めて待機する。

「大和、荷電粒子兵装じゃなく通常弾を使用しろ」

「了解!」

ーーガチャコン‼︎

長門と大和、それぞれの砲門に重々しい音を立てて弾頭が装填された。

「「魔力供給及び魔力圧縮開始・・・」」

二人は自身の魔力を流し込み、それを圧縮機構を備えた砲門の薬室で急速に圧縮し、装填された弾頭に送り込まれる。

「さて・・・終わらせるぞ。このつまらん試合をな」

長門は右手を挙げ、一呼吸置いて号令を出す。

「総員、撃ち方始め!」

ーードドドドドドドドドドドド‼︎

ーードォウン‼︎

大和と長門の重砲が特に重く響く砲撃音を響かせながら、魔力が圧縮された大口径弾を城塞に向けて撃ち放った。


ーーフィールド・城主の間

「もっとシールドは出せないの⁉︎」

絶え間無く砲撃の雨にさらされた城では、カーラがヒステリック気味に苛ついた口調で怒鳴っていた。

その声は、砲撃の影響で幾つもの大穴が空く城主の間の外にまで響いた。

「まだコストが回復していません‼︎あと6分経たないと新しい物は召喚できません‼︎」

「そんな事!貴方達がなんとかしなさい‼︎」

「そう言われましても・・・」

部下の少女の返答は最もだった。

防衛兵器召喚や強化にはコストがいる。

戦闘開始直前にチーム・メンバーの大半を戦闘不能されたカーラは、真っ先に残るメンバーを連れて城主の間に立て篭もり、コストをフルで使って防衛兵器を召喚した為現在回復中であった。

しかし、反撃も出来ぬ程の砲撃の雨にさらされたカーラは焦燥感に駆られ、最大20コストの中で15も使うEシールド・ジェネレータを召喚し、更にコストを5使用する大盾を持った騎士型ミニオン一個大隊を、城主の間を守る様にびっしりと召喚・配置し、コストは枯渇していた。

だが大盾ミニオンは大柄とは言え人型サイズ、小型戦艦というべき【戦争顕鎧(ウォー・クラフティ・メイル)】の砲撃の雨により数秒で一掃され、直径五キロに“一般的な”戦術クラスの攻撃にも数回は耐えられる強度を誇るドーム状のエネルギー・シールドは、砕ける寸前にまで追い込まれていた。

しかも、試合開始から誰一人として直接相対する事無く追い詰められているのだ。

その様な状況も相まって、カーラの焦りは増すばかりであった。

「もう壊れる寸前なのよ⁉︎このままあの下民共にいい様にやられて、この私に負けろとでも言うつもり⁉︎」

「い、いえ、そんな事は・・・」

迫る敗北の予感から、カーラはさっきからチーム・メンバーに怒鳴りっぱなしだった。

「ならなんでもいいから、さっさと私を守るためのミニオンを召喚しなさい‼︎純血たるこの私が敗北する事などあってはならないのよ‼︎」

「ですが・・・!」

自分の力を信じて疑わず、純血至上主義で自分以外の他を見下すカーラは、追い詰められていると言う事が認められず、冷静な判断が出来ずに取り巻きであるチーム・メンバーに“なんとかしろ”と声を荒げて言うばかりであった。


そして、敗北の時が訪れた。

砲撃の影響で轟音と震動で震えていた城は、突如静寂に包まれた。

「砲撃が、止んだ・・・?」

「弾切れか・・・?」

あれ程間断無く降り注いでいた砲撃が、突然何事もなかった様に止まった事にチーム・アイムの少女と少年が困惑した声を上げた。

「ふふふ・・・ハハハハハハハハハ‼︎」

突然カーラが高笑いを上げた。

「やはりあの下民共に私を倒す事など出来ないのよ!私の思惑通り、あんな高威力の攻撃を長時間続けられる訳は無いのよ‼︎」

カーラは我が意を得たりとでも言う様に、先程の怒りっぷりは何処にいったのかと興奮した様に言った。

そして自分の武器である、茨の様な鞭を取り出して高らかに言う。

「さあお前たち、手加減の時間は終わりよ‼︎下民共が私に勝る事など無いと思い知らせるのよ‼︎」

カーラがそう言い、チーム・メンバーも今までの仕返しが出来ると息巻いてそれぞれ武器を取り出した直後だった。


ーードォォォォォォォン‼︎

さっきまで降り注いでいた砲撃の威力を遥かに超える砲撃が、限界だったエネルギー・シールドを砕いて着弾し、大穴だらけで辛うじて原型を保っていた城の残りをカーラ以下残りのチーム・アイムのメンバーを巻き込み、凄まじい轟音と衝撃が発生しながら完全に瓦礫の山へと変えたのだった。


ーー「リーダーの戦闘不能及びクラウン破壊を確認‼︎勝者、チーム・クラス・ゼータ‼︎」



ーー・・・三日目・三試合目

ーーチーム・ヴィネ:【レグリナ・K・ヴィネ】 対 チーム・ミカエル:【ライラ・S・ミカエル】

ーーフィールド・天空

ーー襲撃側チーム・ヴィネ、防衛側チーム・ミカエル

大小様々な浮島が無数に浮かぶ蒼穹の空。

その中でも、まるで無数のスペースデブリの様な小さな浮島に囲まれる様にしてその中心には、この戦闘フィールドで一際巨大な浮島の上に防衛側の拠点である城が建てられていた。

そしてその城の位置から、約千キロ離れてた位置に襲撃側の前線拠点が建てられている浮島が浮かんでいた。

三試合目のこの試合は、実力差が歴然の為短時間で決着が着いた二試合に比べ、かなりの長時間に及び、両チーム拮抗した白熱の試合展開を見せていた。

基本的に高空が戦場になる天空フィールドは、常時飛行でき機動戦闘を行う事が出来る者が、有利に戦う事の出来るフィールドになっている。

天族・堕天族・魔族は基礎技能として、魔力を簡易的な翼として圧縮形成し飛行する技術を、ほぼ全員が習得している。

その為、飛行の有無に関しては両チーム共に優劣は無く、チーム・個人の連携・実力そして戦闘センスが、勝敗を左右していた。

戦闘開始からチーム・ヴィネが総攻撃を仕掛け、レグリナの重砲の制圧射撃による援護を受けながら、他のヴィネのメンバーが一気に突撃するという戦術を展開した。

その戦術に対してライラは真っ向から迎え撃たせ、自らは支援砲撃を続けるレグリナに仕掛け、試合開始から五分後には両チーム入り乱れる空中戦が繰り広げられる様相となった。

そして現在ーー両チームのメンバーが戦闘を繰り広げる空域から離れた場所で、リーダー同士の戦闘が行われていた。


ーー戦闘フィールド・中央空域

ーーズザザァ

ライラの攻撃を空中でバックステップで躱したレグリナは、小さな浮島に地面に滑る様に降り立つ。

ーーガォン‼︎ガォン‼︎ガォン‼︎ガォン‼︎

獣が短く吼える様な重い砲撃音を響かせながら、右脇に構えたレグリナの重砲が砲火が迸る。

レグリナの重砲の名は【ハウリングレグルス・オリジン】、妹の【アサルトレグルス・オリジン】と同シリーズの姉妹銃の関係だ。

鋭角を多用した洗練された美しくも勇ましさを感じさせるデザインと、高貴なイメージを兼ね備える黒金基調の大型ランチャーで、全長は2メートルを超える。

一対のコ型バレルを縦に重ねた長大かつ太い砲身を備え、その砲身下部には斧の様な刃が備わっている。

アームガードを備えたグリップは、その部分を全周にわたって覆う様にクリスタル状の菱形パーツが浮かび、まるで息をしているかの様に胎動しており、グリップ真上のアームガード上部に黒金の粒子が渦巻く宝玉が備えられていた。

コ型のバレルは、内部で真球状に圧縮した荷電粒子弾を更に加速・増幅させる機能を有しており、発射された荷電粒子弾は、バレルから放たれた瞬間に二倍に膨張し、巨大な砲弾へと姿を変えて撃ち出される。

連射性能は基本的に遅いものの、それを補って余りある威力と砲弾の膨張化による面制圧能力に秀でており、獅子の咆吼の様な砲音と共に撃ち出される荷電粒子弾は、相対する相手に威圧感を与えている。

しかし現在相対している【ライラ・S・ミカエル】は、その咆吼にも臆する事無く背中に形成した光の翼で、四発の巨大な砲弾の間をすり抜ける様に飛行する。

「流石の砲撃能力だが、この程度の連射では私を捉える事は出来んぞ‼︎」

「流石は天族・・・!空中戦はお手の物か!」

相手を称賛する言葉は吐くレグリナだが、強敵との戦いに笑みを浮かべていた。

「ハァァァッ‼︎」

弾幕を抜けたライラは一気にレグルナに肉薄し、鍔に折り畳んだ様な翼の装飾に格納される様に金色の粒子渦巻く宝玉が埋め込まれた純白の大剣を、袈裟懸けに振り下ろす。

ーーギィン‼︎

レグリナは銃身下部に備わった刃で、ライラの斬撃を受け止めた。

「やはりその刃は飾りでは無かったか!私の【フリューゲル・オリジン】の斬撃を受け止めるとはな!」

「流石にこの現代戦において、射撃一辺倒ではいかんさ。まあ、元々備わっていたものだがな‼︎」

ーーギィン‼︎

レグリナはライラを弾き、バックステップで空中に後退する。

だがーー

「ッ⁉︎」

レグリナは斜め上に後退しようとしたのだが、その途中で何故か真上へと上昇した。

「これは・・・⁉︎」

(私が意図したものじゃ無い。・・・“強制”、された⁉︎)

「ーー!」

レグリナが下方からの気配を感じ取って下を見ると、ライラが迷い無く大剣で斬り上げながら急上昇して来るところだった。

「させるか!」

ーーガォン‼︎

レグリナは即座に銃口を向けて撃った。

レグリナの重砲から巨大な荷電粒子弾が放たれるが、その砲弾は膨張せず逆に破裂した。

ーーババババババババババババ‼︎

破裂した荷電粒子弾は、無数の散弾に変化して豪雨の様に降り注ぐ。

「ーー⁉︎・・・クッ‼︎」

真っ直ぐ上昇していたライラは、大剣を振り回して散弾の迎撃と回避に専念する。

大剣で縦横無尽にその場で斬撃を繰り出し時に鋭い飛行で回避しながらライラは、散弾の雨の切れ間を窺っていた。

だがライラが回避と迎撃に専念して上昇速度が落ちた事を確認したレグリナは、重砲から散弾の雨を絶えず追加し、ライラの動きを制限する。

接近戦ではライラの方に分があるが、遠距離戦においては複数の射撃モードを切り替えられる重砲を持つレグリナに圧倒的に有利であり、更に意図せずライラよりも高所を取った事により、射撃戦によって動きの制限を強いるのが容易な状況となった。

「ッ!これではキリが無いな・・・流石に遠距離では分が悪い!」

ライラは回避機動を取りつつ、身の丈を超える大剣を軽々と振るって荷電粒子散弾を捌きながら言った。

(まさか我が剣の能力が裏目に出るとは・・・私とした事が迂闊だったな・・・)

ライラは左手に魔力を集束し始める。

(遠距離では圧倒的に私が不利・・・ならば、私も手の内を晒すとしよう!)

「ヘブンズ・コール・・・」

ライラは左手を上空のレグリナに向けてかざし、その左手に身体の前面を覆う魔法陣が展開された。

魔法陣は盾の様な役割もこなし、降り注ぐ荷電粒子弾の雨を防いでいた。

「ーーフレア」

魔法陣上に鞭の様な焔が集束していき、巨大な真球が形成された。

「行け‼︎」

その言うと共に、右手の大剣で形成した焔球を斬りつけて放った。

放たれた焔球は散弾の雨を掻き分け弾いて、高速でレグリナに向かっていた。

「散弾では無理か!だがーー」

ーーガシャン‼︎

レグリナは重砲のモードを“照射”に切り替え、焔球に狙いを定めて構え直した。

「その速度であれば、撃ち落とせるぞ!」

高速で動く標的をも容易く狙える程の射撃の腕を持つレグリナ、だが彼女が引き金を引く寸前にーー

「翔け・・・‼︎」

ーーバシュン‼︎

ライラの言葉が引き金になったかの様に、突如焔球は翼を羽ばたかせる様に焔を撒き散らし、上昇速度を急激に上げた。

「ーー何ッ⁉︎」

(急加速した⁉︎・・・流石に間に合わん!)

レグリナは迎撃をやめて重砲の宝玉から粒子を放出し、その勢いで右側に回避機動を取った。

その直後に急加速した焔球が、回避した際に靡いたレグリナの長い髪の毛先を焦がしながら通り過ぎていった。

レグリナはそれを横目で確認し、急加速の原因を見極めようとするも、急速に近づく気配にそちらに視線を向ける。

「ハァッ‼︎」

レグリナが視線逸らした一瞬の隙にライラは肉薄し、速度を乗せて斬り込んだ。

ーーギィン‼︎

「くッ!」

レグリナは再び銃身下部の刃で受け止め、二人は鍔迫り合う。

「流石の遠距離性能、そのデカさは伊達では無いな!」

「フ、そちらこそ。その大剣の能力・・・実に厄介な物だ!」

話しながらの鍔迫り合いは両者一歩も譲らない、全くの互角だった。

そしてレグリナの能力看破を示唆する様な言葉に、ライラは感心する。

「ほう?流石は黒き獅皇。我が剣の能力を二回しか見ていないというのに、大方の予想をつけていると見える!」

「予測はな。だがあくまで予測、確証は無い。それに、それが能力の全てでは無いだろう?」

「想像に任せるさッ!」

ーーギィン‼︎

二人は互いに弾き返し合い、距離を離す。

お互い相対したままで距離を離なす中で思う。

(このままではラチがあかんか・・・)

レグリナは小さい浮島の一つに降り立った。

(今のこの状況は、完全に拮抗している。いや・・・お互いに手の内を早期に晒すまいとして決め手に欠けている)

ライラは、浮島の一つに建てられていた神殿の残骸と思われる円柱の上に降り立った。

((なら・・・‼︎))

レグリナとライラは、同時に武器を持っていない方の手を胸に当てる。

ーーゴォウウ‼︎

二人の魔力が内側から高まっていき、膨大な魔力が溢れ、天に向けて渦を巻く。

レグリナが顕現の言の葉を紡ぎ始める。

「我が身に宿るは黒き獅皇」

そして、続く様にライラも顕現の言の葉を紡ぐ。

「我が身に宿るは紅き輝天」

二人の魔力が背後に集束していく。

「世界に響くは魔の咆吼」

「世界に響くは天の咆吼」

二人の背後の膨大な魔力が、それぞれの起源を形取っていく。

レグリナの背後には、巨大な黒い獅子。

ライラの背後には、大翼を羽ばたかせる紅金色の鳥。

どちらの起源も天を轟かせる咆吼を放つ。

「千里を轟かせし獅子の皇よ」

「焔で裁く天の使徒よ」

それぞれの起源が鎧となって、二人の全身を包み込んでいく。

「「我が身に纏て顕現せん!」」

そして二人の顕現が同時に完了する。

「ピラー・オブ・ザ・XLV(フォーティーファイヴ)。ジ・ヴィネ‼︎」

レグリナの顕鎧は彼女の髪の色の様に黒を基調とし、所々に金の差し色が入った黒金の全身鎧。

全身が鋭角状の装甲となっているがスラリとしており、頭部には牙を彷彿とさせるモールドがマスクに刻まれて、側面には二対の菱形の装甲が鬣の様に備わって獅子の頭部を模していた。

胸部装甲にはヴィネ一族の紋章が円形のレリーフとして刻まれており、その紋章を中心に多数の菱形の装甲で獅子の鬣を思わせる多重装甲が構成されている。

肩部は可動域を重視し、装甲は極めて軽装となっていおり、重砲を両手で保持して構えた時の射角を制限しない様な作りとなっている。

腕部も軽装のガントレットではあるが胸部と同じ様な菱形の多重装甲となっており、一見軽装に見えるがかなりの防御力を秘め、内部には武装も格納されている。

脚部も動きに合わせて連働する軽装甲が用いられており、一見するとタイツの様に見える。

そして尾のある起源を持つ顕鎧の特徴である尻尾は、先が鋭い杭の様になっており、地に突き刺し様々な反動を軽減する事も、先端を射突して相手を攻撃するいわゆるパイルバンカーとしても使える多種多様な応用の聞く兵装となっていた。

全身の各所に軽装ではあるが連動稼働する多重装甲を多数用いられたこの顕鎧は、見ようによっては一見重装にも見えるが身体に抜群のスタイルが見て取れるくらいスラリとしたシルエットとなっており、それでいて気高い獅子の威を感じさせ、レグリナの得意とする機動砲撃戦を極限まで高める様に構成されている【起源顕鎧(オリジン・メイル)】だ。


「ヘブン・オブ・ザ・セラフィム。ジ・ミカエル‼︎」

神々しい紅い光が弾け、顕鎧を纏ったライラが現れる。

美しく輝くような紅を基調とし、所々に金の差し色が入った全身鎧。

頭部には二対の翼を模した角を備え、鳥の頭部を鋭く模している。

近接戦闘を想定している為、肩部装甲は軽量バックラーの様になっており、両腕部のガントレットは軽装甲だが密近接戦闘を想定し、羽根を模した刃が装備され、小口径の銃身が内蔵されている。

胸部にはミカエルの紋章が刻まれ狙われやすくなる様な意匠が施されているが、この部分は軽量の多重装甲である為、他の部位よりも防御力に優れる部位となっている。

背部には大翼を模した一対の大型のスラスターが装備されており、龍の翼の様に多量の魔力を使用し残像機動を可能にする物では無く、鎧の翼でありながら柔軟性に優れて身体を覆える程の大きさを誇り、全身を包むことにより圧倒的な防御力に優れる。

このウイングスラスターは羽根状の小さなスラスターが重なった積層構造になっており、羽ばたく挙動が必要になるが、その際に一気に長距離を高速移動する事が可能となっている。

また龍の光翼と違ってウイングスラスター自体に高い飛行能力が備わっており、少ない魔力消費で加速する事が可能であるが光翼の様な万能性は無く、ウイングスラスターを利用しての攻撃性能は無い。

脚部は軽装ではあるが、腰部には武器を内蔵した楕円形の装甲が二対備わっており、その装甲がロングコートの様に脚部を覆っていた。

また全身の各所に羽根の装飾が施され、紅と金色という目立つ色も相まって目視しやすくなっているが、常に最前線に身を置き誰よりも先陣を切って突撃し、自分にヘイトを向かせるライラの戦闘スタイルと、セラフィム足らんとする”覚悟“に合わせた作りとなっている、翼の生えた騎士の様なシルエットを持つ天族の【起源顕鎧(オリジン・メイル)】である。

ライラの顕現も完了し、フルヘルム越しに彼女の紅の眼とレグリナの金色の眼が一瞬強く輝き、二人は再び相対する。

二人の魔力とプレッシャーは先程とは比べ物にならない程に高まっており、お互いに本気である事が誰の眼から見ても明らかだった。

ーー黒い獅子と紅い聖鳥

静かにお互い見据え、お互いのチームメンバーが激闘を繰り広げる光芒の音のみが聴こえるだけとなった瞬間ーー

「「いくぞ‼︎」」

ーーバシュン‼︎

同じ言葉を同時に言ったその時、二人は同時に高速移動した。

ライラはウイングスラスターを羽ばたかせ、レグリナは“空を蹴り“、二人は一気に上昇した。

更に高空へと駆け上がった二人は、遥か眼下に浮島を小さく見える程の上空でーー

ーーガチャン‼︎

レグリナは脚部から魔力を放出して滞空しながら、砲口をライラに向けて構えーー

ーーチャキ

ライラは大剣の切っ先を向けて構えーー

「「ハァァァ‼︎」」

ーーガォン‼︎

ーーザン‼︎

同時に放たれた荷電粒子弾と、斬撃波が激突しあった瞬間ーー

ーーバシュン‼︎

互いの攻撃の激突を合図にする様に、二人は姿が掻き消える程の高速機動で戦闘を再開した。

ーーガォン‼︎ガォン‼︎ガォン‼︎ガォン‼︎ガォン‼︎ガォン‼︎

レグリナが一撃毎に高速機動で黒金の軌跡を残しながら、重砲を連射して流星群かと思わせる程の弾幕を張る。

ライラは複雑な高速機動で弾幕を掻い潜り、時に翼で軌道逸らし、レグリナを追う。

「この程度の弾幕では、私を止められんぞ‼︎」

(やはりそうか・・・この砲撃は膨張する事で威力を最大限に高めている!)

目の前に迫った荷電粒子弾を大剣で一刀両断しながらそう言うと、更に加速する。

レグリナは顕鎧によって増大した膂力で“空中”を蹴って後退しながらライラから距離を離し、得意な戦闘距離に持ち込もうとするがーー

「遅い‼︎」

それに気づいたライラは更に加速し、新たに放たれた荷電粒子弾を両断し、躱し、逸らしながらレグリナに肉薄していく。

「・・・!」

そしてレグリナの真正面まで接近したライラは大剣を振り上げながらーー

「貰ったぞ!ここまで詰めればその砲の最大威力は発揮出来まい!」

レグリナの重砲から放たれる荷電粒子弾は、必ず膨張するかもしくは散弾の場合は破裂するか、必ず真球状態を経由していた。

故に最大威力を発揮するには、膨張や破裂を経由しなければならないのでは無いか?とライラは考えたのである。

「確かに最大威力は発揮出来ん。だがーー」

ーーガォン

ーーババババババババババ‼︎

「なッ⁉︎ク・・・ッ!」

至近距離で放たれたのは、破裂を経由しない散弾だった。

無数の散弾を至近距離で放たれライラは、反射的に大剣を逆手の防御体勢で身体の前方に構え、鎧翼で全身を覆った。

ーーガガガガガガガガガ‼︎

無数の荷電粒子散弾がライラに直撃する。

完全に防御に徹した為に防ぎ切れるが、至近距離で放たれた散弾の強力な威力に詰めた距離を押し返される。

「流石に正式なプロセスを得ていない為に威力は落ちるが・・・我が砲はこういった融通も効くさ」

ーーガチャン‼︎

「さあ、これをどう凌ぐ?天使よ!」

そう言いながらレグリナは、散弾の雨で防御体勢を解けないライラに向かって重砲を構え直し、黒金の紫電を迸らせながら瞬時に膨大な魔力と粒子を砲口にチャージし、間髪入れずに解き放つ。

ーーガォォォン‼︎

ーードシュウ‼︎

長めの咆吼の様な砲音が響くと、膨大な魔力と粒子が解放され、レグリナの重砲から照射ビームが放たれた。

迫る荷電粒子ビームを見ながら、ライラは防御体勢の大剣の機能を解放する。

「我。ミカエルの御名において、お前の機能を解放する・・・」

ーーガチャ・・ガチャ・・・

ライラの大剣【フリューゲル・オリジン】の鍔に施された、宝玉を包む様に折り畳まれた翼の装飾が少しずつ広がっていく。

「翔けよ、フリューゲル‼︎」

ーーバサァ‼︎

その瞬間ーー広がっていた翼の装飾が、3対の荘厳な6枚翼となって大きく広がり、翼に抱く様に包み込んでいた紅金色の粒子が渦巻く宝玉が姿を現れた。

広がった3対の翼の装飾は羽根の部分が放出口となっており、宝玉を顕にした瞬間から膨大な圧縮粒子を放出する。

ーードォォォォォォォン‼︎

大剣より放出される膨大な6本の粒子の奔流が、黒金の荷電粒子ビームを押し留める様に防いでいた。

「成る程、制限が掛かっていたのか・・・。だが粒子障壁とて、我が咆吼を防ぎ切るのは容易では無いぞ!」

そうレグルナが言うと、ライラは逆手に持った大剣で下に突き刺す様な挙動をした。

その瞬間ーー

ーーギュイン‼︎

「何・・・ッ⁉︎」

ライラが突き刺す挙動をした直後、レグリナの放った荷電粒子ビームはその軌道を直角に曲げた。

軌道を強制的に下方に向けさせられた荷電粒子ビームは、直下の浮島群を消滅させながら徐々に細くなり消えていった。

レグリナが驚愕で、射撃した体勢で少し動作を止まった所を見逃さず、ライラは翼を羽ばたく挙動で急加速し、再び距離を詰めながら斬り込んだ。

「・・・くッ‼︎」

寸前で接近に気付いたレグリナが、銃身下部の刃で防御体勢を取るがーー

ーーキィン‼︎

ライラは銃身を掠める様に斬りつけた。

(距離を見誤った・・・?いや・・・そんな筈は無い!であれば・・・)

レグリナはそう考えながらもすかさず空を蹴って距離を離しながら、射撃体勢を取ろうとした。

ライラの斬撃の軌跡が、粒子の線として銃身に残っていた。

「さあ、舞え!」

ライラがそう言った瞬間、ガクンと体勢を崩す様にレグリナは、強制的かつ急激に”下降“させられた。

「・・・ッ⁉︎」

(これはさっきの・・・‼︎)

必然的に頭上の優位を取ったライラが、大剣の切っ先をレグリナに向けて言う。

「ヘブンズ・コールーー」

ライラの大剣の切っ先に魔法陣が展開される。

「私が頭上を取られるとは・・・‼︎しかしーー」

ーーシュウゥゥゥ‼︎

レグリナも身体を仰向けにする様に重砲をライラに向け、急速チャージする。

「射撃戦で私にッ‼︎」

ライラが展開した魔法陣の色が青へと変化した。

(青だと・・・⁉︎)

ライラは大剣を一度振り上げて、斬撃を放つ様に振り下ろす。

「ーースプラッシュ‼︎」

ーーゴォウウ‼︎

「何ッ⁉︎・・・クッ‼︎」

ライラが展開した魔法陣から膨大密度の水が放たれ、大瀑布の如き勢いでレグリナに押し寄せ、彼女を押し流していった。

「・・・ぐはッ!」

大瀑布によって更に高度を落とされたレグリナは、浮島の一つに強制的に叩きつけられた。

「くぅ・・・ッ!火たるミカエルが・・・水とはな・・・!しかもこの水圧、即席では無いな・・・!」

レグリナは強大な膂力で、押しつぶされそうなほどの水圧に抵抗しながら立ち上がる。

しかし、それ以上の身動きを水圧によって封じられていた。

ライラは遥か上空から強力な一撃の準備の為、魔力と粒子を圧縮し高めながら言う。

「この現代戦において、一つの属性だけでは対応しきれない事もある。複数の属性を学べば、それだけ戦術の幅も広がると言うものだ。流石に水たるガブリエル程とはいかんが・・・我が剣の能力であればそれを補える。ーーさて、いくぞッ‼︎」

「ーーッ‼︎」

ライラは大瀑布に沿って急加速をかけ、レグリナに突撃した。

「決めさせてもらうぞ!黒き獅皇よ‼︎」

ライラは羽ばたきを強め、更に加速をかける。

音速にも迫る速度で、大質量の水で身動きが取れないレグリナに斬り込んでいった。

「ハァァァ‼︎」


ーー・・・実況席

「なんとライラ選手。虚を突いた水属性の術でレグリナ選手の動きを完全に封じ込めたぁ‼︎これは見事な奇襲と言った所でしょうか?」

「まあ普通ミカエルであれば、当然火属性の攻撃を仕掛けてくると予想するだろう。しかし正反対の水とはな。ミカエルの娘が一枚上手だが・・・」

レクリエーナが興味深そうに言って、急速下降して斬り込んでいるライラを見る。

「だが、なんでしょうか?」

「天轟の獅子と称されるヴィネの者相手に、そう簡単には行くまいよ・・・」



ーー・・・戦闘フィールド・中央空域

「ーーハウリング」

ーーガォォォォォォォォォォォン‼︎

レグリナから天を震わせる咆吼と共に、全方位へソニックブームが放たれた。

「何ッ⁉︎これは・・・くぅ!」

ソニックブームはライラの大瀑布の如き大質量の水を容易く吹き飛ばし、超速度で飛行中だったライラをも吹き飛ばし、立っている浮島をもズタスタにし、レグリナは拘束から完全に解放された。

「・・・ッ!ソニックブームだと⁉︎」

体勢を大きく崩され錐揉みしながら吹き飛ばされたライラは、立て直しながらレグリナを見る。

レグリナは、自身が放ったソニックブームによって崩壊した浮島の残骸に立ち、ライラを見上げていた。

ライラもレグリナを見据えるがーー

「ぐっ・・・⁉︎」

一瞬視界がぐらりと揺らぎ、ライラは体勢を崩しそうになった。

「平衡感覚を乱された・・・⁉︎ソニックブームの影響か・・・」

ーーガォォォォォォォォォォォン‼︎

ライラが頭を振り乱された感覚を整えると同時に、再び轟音が天に轟き、ソニックブームがレグリナから放たれた。

「ぐっ・・・これは・・・!」

ライラは空気を出鱈目にかき分け、不可視で迫り来る超広範囲ソニックブームを感覚で察知した。

「この攻撃範囲・・・最小限で避けるのは無理だな」

ーーバサァ‼︎

ライラは大きく羽ばたいて急上昇し、ソニックブームを回避した。

レグリナが放ったソニックブームは、ライラが寸前までいた場所を超えても勢いが弱まらず、フィールドの端のシールドまでの直線上の全てを破壊もしくは薙ぎ倒していった。

その距離およそ10キロ。

「威力もさることながらこの轟音・・・直撃したら、完全に感覚を失うだろうな」

ライラは、通り過ぎて行ったソニックブームを見ながら言った。

ーーガォォォォォォォォォォォン‼︎

「ーーッ!」

再び咆吼が聞こえ、ライラがレグリナに視線を向けた瞬間ーー

「ーーなッ⁉︎」

遥か下方の崩壊した浮島にいた筈のレグリナが、目の前にいた。

(馬鹿な・・・!いつの間に距離を詰められた⁉︎だがーー)

「間合いを見誤ったな。黒き獅皇よ!」

ライラは一瞬驚くも、直ぐに自ら自身の間合いに入ってきたレグリナに向けて大剣で斬りあげる。

だがライラは、斬撃がレグリナに当たる刹那に思う。

(果たしてそうか・・・?彼女程の実力者が不用意飛び込むか?)

そう疑問に思うも、ライラの斬撃はレグリナに当たる寸前だった。

ーー(ライラ)

「ーーハウリング」

ライラの内に宿る存在の警告と、静かに呟く様に言ったレグリナの声が同時にライラに聞こえた。

ライラは“内の”警告に従い、寸前で途中で止める事が困難な斬撃を強引に引き戻し、盾の様に身体の前面で構えた。

その瞬間ーー

ーーガォォォォォォォォォォォン‼︎

「ぐぅ・・・っ‼︎」

レグリナを中心にして破裂する様に轟音と衝撃波が巻き起こり、ライラは凄まじい勢いで吹き飛ばされた。


ーー・・・戦闘フィールド防衛側・城空域

天空に浮かぶ防衛側の城での攻防は、佳境を迎えていた。

「ハァァァッ‼︎」

「ぐはッ⁉︎」

焔の様な赤毛の髪をした少年【ルーク・K・バラム】は、城主の間に通じる吹き抜けの大扉前の大広間で、執事服の様な制服を着たキリッとした金髪のショートポニーテールの少女を倒した所だった。

ルークの右手には、全ての部位が灰色の”無銘“の長剣が握られていた。

「・・・見事だ、バラムの者よ。まさか剣技で私が倒されるとはな・・・。剣技には自信があったのだが・・・まだまだ未熟だな」

少女の右手には、レイピアが握られていた。

「いえ、紙一重でした。貴女が俺の剣に気を取られなければこっちが負けてました。・・・しかし、何が貴女の気を逸らしたんですか?」

「その剣だ」

彼女は、ルークの持つ剣に視線を向けて言った。

「その剣。宝玉が備わっている事から、ライラ様が持つ【フリューゲル・オリジン】や、神話・伝説に残る武具と同系統の物なのだろう。だが見た所・・・“宝玉が機能していない”。そして刃を交えて分かったが、能力といった物が無い様に感じた。

その言葉を受け、ルークは自分の灰色の剣に視線を落とす。

退場の転移陣が直下の地面に展開され、その光に包まれていく中で、彼女は言う。

「・・・その疑問がどうしても拭えなくてな。それが私の剣を鈍らせた。その剣は一体・・・?」

「自分もよく分かっていないんです。うちの一族に代々伝わる物としか言われてなくて・・・能力もそうですけど、名称すら分からないんです。一族の長からは、「時が来れば分かる」と」

「そうか・・・その剣が全性能を機能させた暁には、また剣を交えたいものだ」

「こちらこそ、その時には是非・・・」

彼女は視線で、自分の背後の扉を示す。

「この扉の向こうにクラウンがある。行くがいい。お前達の勝ちだ・・・」

そう言って彼女は退場させられた。

ーー「チーム・ミカエル!一名、リタイア‼︎」



ーーゴゴゴゴ・・・‼︎

重い地響きの様な音を立てて、ルークは玉座に通じる観音開きの大扉を開いていった。

「・・・あった」

ルークの視線の先には玉座があり、その上に【王冠(クラウン)】が置かれていた。

激化する戦闘音を聴きながら、ルークは足早に玉座に近づき、灰色の剣を振り上げる。

「・・・ハァ‼︎」

ーーバキン!

ルークは即座に剣を振り下ろし、クラウンを両断した。

ーー「【王冠(クラウン)】破壊を確認!勝者、チーム・ヴィネ‼︎」

「ハァァァ〜・・・」

そのアナウンスを聞いて、ルークは気の抜けた様に地面にへたり込んだ。

「な、なんとか出来た・・・。会長から「単独潜入して破壊しろ」と言われた時はどうなる事かと思ったよ」

ルークが天を仰ぎながら一人呟いていると、“内”の存在が語り掛ける。

ルークの内に宿るのは“バラム”ーー即ち、三頭龍だ。

だが彼は頭が三つあろうとも、意思は一つであった。

しかし口は三つある為、話すと声が三重に聞こえる。

ーー「「「よくやった、ルークよ。初めての隠密にしては上出来だ」」」

「ハハ・・・まあ、気配や魔力を抑えるのは昔から得意だったからな。それに乱戦だったし、たまたまそれが刺さっただけだよ」

ーー「「「だとしても、これはお前の手柄だ。ヴィネの娘も、それを見越してお前を指名したのだろうな」」」」

ルークも最初は、自分がこの作戦をこなせるとは思っていなかった。

と言うのもルーク自身、特にこれと言った得意分野が無かった。

バラム家が72柱の貴族に含まれている事すら最近知ったばかりであり、更に本来なら知っている筈の“一族の魔力特性”すら現在でも“知らされていない”のである。

「別に隠密が得意って訳でも無いし、剣術が秀でている訳でも無いし、魔術に関しても基本が出来る程度。自分で言うのもなんだが、正直“全部そつなくこなせる”程度なんだよなぁ・・・」

ーー「「「まあ何にしても、今はこの勝利を喜んでおけ」」」

「ああ分かったよ。でもお前のおかげでもあるんだからな“ヴァールハイト”」

ルークの内に宿る【起源(オリジン)】であるヴァールハイトは、嬉しそうに鼻で笑った。


ーー・・・勝利アナウンス前・フィールド中央空域

ーーブン・・・

「・・・う・・・クッ・・・」

レグリナが放ったヴィネの一族の魔力特性【ハウリング】によるソニックブームで吹き飛ばされたライラは、山の様な浮島の上で目を覚ます。

「・・・数秒間ぐらいか・・・?完全にブラックアウトしていたな・・・」

ライラは顕鎧のフルヘルムを左手で押さえて、頭を振って完全に意識を覚醒させた。

「ハウリング・・・【獅子の天吼】。指向性・全周囲共に自在かつ、全てを薙ぎ払う程の威力と感覚阻害・・・。噂に聞いていたが、これ程とは・・・」

ーーバサ・・・

ライラはひと羽ばたきして宙に浮く。

「顕鎧越しでも意識を喪失させられる。至近距離で受けるのはもう避けた方がいいな・・・墜落させられかねん」

遠くの方でレグリナが、重砲を構え膨大な魔力と粒子を集束し始める。

ーーシュウゥゥゥ・・・・

「さて、“時間”もそう無い。この試合、最後の力比べと行こうか?ライラ・S・ミカエルよ」

重砲の銃口付近に紫電が迸り、真球状に力が圧縮されていく。

「・・・・良いだろう」

ライラは大剣の切っ先を天に向け、身体の前に両手で構える。

「ハァァァッ・・・」

ライラもレグリナと同じ様に、大剣の剣身に粒子と魔力を圧縮・集束していく。

ーーゴォウウ‼︎

圧縮された力は、魔力と粒子によるエネルギー状の剣身となる。

更に大剣の能力によって“縦方向”へと加速され、更なる高出力化を果たして剣身より形成された。

「行くぞーーレグリナ・K・ヴィネ!」

そう言うと同時にライラは、下方で銃口をこちらに向けているレグリナに向けて突撃をした。

鳥が急降下する様に高速で迫るライラに向け、レグリナは重砲の狙いを定めーー

「【爆ぜる咆哮(ハウリング・バースト)】‼︎」

ーーガォォォォォォォォォォォン‼︎

咆哮と共に、ソニックブームと紫電を伴う“荷電粒子“ビームの奔流が放たれた。

膨大な魔力と粒子が集束・圧縮したライラの大剣にも紫電が迸り始める。

ライラは高速で突撃しながら、横凪の斬撃を放つ構えをとった。

「ハァァァッ‼︎」

ライラが全霊の力を込めて、迫り来る荷電粒子ビームに向けて大剣を振るう。

レグリナの放ったハウリングを伴った荷電粒子ビームと、ライラが振るう荷電粒子で大剣に形成された刃。

両者の荷電粒子は共に、膨大な魔力で威力・集束率が強化されたものだった。

故にその破壊力は、通常の荷電粒子だけのものより遥かに強力なものだ。

両者共に試合である為、“殺す”意思も無くそこまでの威力では無いが、それでも周囲・五キロ程度なら軽く焦土と化す程の威力を誇る。

互いの荷電粒子の奔流と刃がぶつかり合う寸前ーー

ーー「【王冠(クラウン)】破壊を確認!勝者、チーム・ヴィネ‼︎」

「「ーーッ‼︎」」

そのアナウンスを聞いた二人は、同時に自身の攻撃を逸らした。

ライラは大剣を思いっきり振り上げて全ての力を斬撃波として飛ばし、レグリナは奔流で薙ぎ払う様に左側に重砲を振り、お互いの攻撃がぶつかり合わない様にした。

ーードォォォォォォォォォォォン‼︎

逸らした互いの攻撃はそれぞれ巨大な浮島に直撃し、紫電を撒き散らしながらドーム状の爆発で消し去っていく。

その破壊の余波は衝撃波を生み、周囲の浮島やこれまでの戦闘で砕けた小山程の破片すらも粉砕していった。

二つの巨大な爆発が収まった後、レグリナとライラは無事だった浮島の一つに降り立ち、向かい合っていた。

「やられたな。まさか我が従者が抜かれるとは・・・倒した彼は相当な実力の持ち主なのだな」

「いや、はっきりいって実力的には我がチームの中では中堅と言った所だ。だが彼の能力的に私の策に最も適任だと思ったのでな」

ライラとレグリナは激戦を繰り広げていたとは思えない程に、消耗の色を微塵も見せずに穏やかに会話していた。

「しかし悔いが残るとすれば、我々の決着が付かなかったことだな。“まだ全力では無かった”のだろう?」

ライラの問いに、レグリナは微笑で答える。

「そうだな、まだ全霊では無かった。だがまだ戦闘が続いていれば、全てを見せていたさ。それに全力では無かったと言えば、そちらも同じだろう?」

「うむ。お互い様という訳だ」

一拍置いて、レグリナが右手を差し出した。

「次の機会があれば、全霊を見せると約束しよう」

ライラは差し出された手を取って言う。

同時に、二人の足元に転移陣が展開された

「ああ、こちらもだ。次は”ミカエルの焔“を見せよう」

握手をしたまま、お互いの控え室へ転送されていった。


ーー・・・夜

すっかり日が落ち、スタジアムの照明が眩しく感じる頃。

満月と満天の星空が広がる漆黒の夜空に、実況のモイラの声が響き渡る。

「さあ、この日最後の試合はーー急遽試合を組まれたにも関わらず、その圧倒的な実力を示した注目選手!襲撃側、凰月零牙選手率いるチーム・クラス・アルファ‼︎」

既にスタジアム中央には位相空間の戦闘フィールドが展開されており、零牙たちクラス・アルファは既にフィールド内にいた。

スタジアム中央に浮かぶ複数の投影モニターに、フィールド内の各所の様子が映し出されていた。

ちなみにフィールドは、前の試合のヴェネ対ミカエルで使用された天空フィールドの夜間版だ。

「そしてーー学生でありながら既にカオス・コンバット・ワールドランキングにおいてランクAー11に位置し、そこに至るまでの戦績は驚異の無敗‼︎故についた異名は絶対無敗の【蒼き皇帝】‼︎防衛側、シリウス・K・ベリアル率いるチーム・ベリアル‼︎」

ーーオオオオオオオオオオオオオオ‼︎

ーー皇帝!皇帝!皇帝!皇帝!

スタジアムを揺るがす歓声と共に、主に魔界の観客達から皇帝コールが響き渡った。

城主の間の外に備えられた広いバルコニーで、優雅な立ち姿で胸の下で腕を組んだシリウスとそのチーム・メンバーが、モニターに映し出された。

「さて今回のフィールドは、先の試合のフィールドでもあった天空の夜バージョンです。無敗を誇る【蒼き皇帝】と、驚異的な実力を見せた【黒き皇】。注目の試合はまもなく開始です‼︎」

ーーオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎




ーー・・・戦闘フィールド・天空。防衛側・天空城

「いよいよだな・・・」

高空に吹く風で靡く、煌めく様な蒼い髪を手で軽く押さえながら、シリウスは感慨深げに言った。

「フッ・・・アンタがそうも楽しみにしていたとはな。余程、アイツを気に入ったと見える」

艶やかな黒髪をポニーテールにし、クールな佇まいの少女【ブライア・D・アムドゥスキアス】が言った。

「ん?ああ、楽しみで仕方がないさ。魔界以外の強者と本気で戦える機会は稀だからな。ワールド・ランキングもあるが、Sランクに行く為にはAランクのトップ10を倒さねばならない。それは必須ではあるが・・・あの連中には正直言って関わりたくも無いからな。“今”はAランク11位に甘んじるさ。ーーと、始まるぞ」

そう言ってシリウスは、遥か遠くの襲撃側方面を見据える。

その蒼い瞳にこれからの戦いへの昂りを宿らせながら。

ーー「それでは・・・襲撃側チーム・クラス・アルファ対、防衛側チーム・ベリアル」

「それで作戦はどうするんだ?まさか無策で、各々好き勝手にって訳じゃ無いよな?」

拳をポキポキと鳴らして準備運動をしながら、ブライアは聞いた。

「フフ・・・そのまさかだ。だが護りは必要だろう。ルグア」

シリウスは後ろを少し振り返りながら、自分のもう一人の従者に呼びかけた。

「ハッ」

ブロンドセミロングの少女【ルグア・D・フラウロス】が即座に応える。

「君と何人かに城とクラウンの護りを任せたい。頼めるだろうか?」

「もちろんです。我等の事は気にせず、どうか存分に楽しんで下さい。ーーブライア。お嬢様の事は頼むぞ」

「了解だ。と言っても、私も気になる事があるからな。今回はそっちを優先させて貰う」

「おい!」

ブライアにルグアが抗議の声を上げるが、シリウスはそれを制する。

「いや構わないさ。恐らくかの“大狼”殿の事だろう?」

「大狼・・・成る程、そうだったな」

ルグアの納得した言葉を聞いて、ブライアがいう。

「なに。我等が皇帝様は護衛が無くとも、そう簡単にやられんさ」

ブライアがそう言うのを聞いて、シリウスは言う。

「話しはここまでだ。ーー皆、行くぞ」

『はっ!』



ーー「試合開始‼︎」

「フッ!」

シリウスはバルコニーから跳躍し、上空に躍り出た。

そしてオリジンを纏う為の、言の葉を紡ぐ。

「我が身に宿るは蒼き龍帝。世界に響くは龍の咆哮」

シリウスの背後に膨大な魔力で型取られ具現化した魔力体の、しなやかな煌めく蒼い西洋龍が顕れた。

ーーオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎

具現化すると共に天地を震わす様な咆哮を上げ、その際に周囲の雲を消し飛ばす。

「煌星を御す蒼き魔龍よ」

蒼き龍が、シリウスを巨大な両翼で包み込んでいく。

「我が身に纏い、顕現せん!」

シリウスの膨大な魔力が形状を変化させていく。

「ピラー・オブ・LXVIII(シックスティーエイト)。ジ・ベリアル‼︎」

ーーゴォウウ‼︎

蒼い魔力の波動が顕現の余波によって、シリウスを一瞬隠す程の光帯となり、幾重も折り重なって乱舞した。

シリウスの顕鎧は全身の装甲が鋭角状になっているが、身体にフィットする様になっている。

龍の鱗の様なその装甲の一つ一つは刃の様に鋭く、不用意に触れた者又は攻撃にも使える武器にもなるその装甲は、短剣が幾重にも重なった様な構造をしていた。

翼状のウイングスラスターも同様の構造で構成されており、巨大なその両翼は大剣の様な装甲が重なって歪な様ではあるが、鋭く洗練された形状をしていた。

前腕部には武器内蔵型の小型ガントレットと、三対の刃が備わっている。

頭部ヘルムには二対の大角を備え、形状は正しく“龍の頭部”を模したものである。

魔族ーー特に七十二柱の一族の顕鎧は、“獣”のオリジンである事がほとんどであり、純粋な“龍種”を模すオリジンは三柱の一族しか確認されていない。

故にその【起源顕鎧(オリジン・メイル)】は、ベリアル一族が“龍”であり“魔”でもある事の証明でもあった。

月明かりを浴び、煌めく蒼い光翼を出力したウイングスラスターを広げた蒼い魔龍が顕現する。

オリジンを纏ったシリウスは、天に向かって右手を挙げた。

「堕ちよ。宙に煌めく黒き帝剣よ」

シリウスの直上、フィールドの頂点部ギリギリの空間が開き、流星の様に見える粒子の塊が真っ直ぐに彼女の挙げた右手に目掛け、粒子の尾を描きながら高速落下する。

ーーゴォオオオオオオオオオオオオオ!

空気を切り裂く轟音を立てて落下する粒子の流星を、彼女は苦もなく掴む。

「壊滅の光を従え、仇なす界敵を滅せよ‼︎」

そう言った彼女は更に左手も、未だ粒子状の塊の中へと突っ込んだ。

彼女が左手を突っ込んだ瞬間に、粒子は二振りの剣へ 

と高速で形を変えていく。

「君臨せよ、【グラム・オリジン】‼︎」

帯の様な粒子の波動を撒き散らしつつ、巨大な大剣と短剣が顕現する。

二振り共にコンバットナイフの様な形状の刀身を持ち、短剣の方はその刀身の根本に宝玉が埋め込まれている。

そして大剣はシリウスの身の丈を遥かに超える全長を誇り、左右非対称の鍔に宝玉と刀身に散りばめられる様に小型の宝玉を15個備えていた。

大剣と短剣共に夜空の様な色をしており、まるで天空に輝く星座をそのまま武器にした様な外見だった。



ーーチャキ・・・

シリウスは大剣の鍔部分に短剣を合体させて、切っ先を遥か前方に向けて両手で構えた。

「先手を獲らせて貰おうか・・・」

シリウスが纏うヘルムのツインアイが強く輝き、魔眼【ベリアルの瞳】を発現させた。

ーーガチャン!

魔眼の発動と同時に大剣の刀身が縦に一対のバレル型に展開され、鍔部分に備わる大口径の砲口が顕になった。

ーージ・・・ジジジジ・・・!

大剣の鍔部分の宝玉が強く輝き、砲口に粒子と魔力が急速にチャージされていく。

遥か遠方からでも目視出来る程に蒼い紫電が迸り、真球状に粒子と魔力が砲口に圧縮形成されていく。

もちろんシリウスが攻撃態勢に入っている事は、チーム・アルファに察知されている。

シリウスの【ベリアルの瞳】は、複数の膨大な魔力を感知していた。

シリウスはその中の一つ、一目惚れしたと言っても過言では無い黒銀の魔力に狙いを定めた。

「ふふ・・・やはり美しいな・・・」

【ベリアルの瞳】は魔力を感知する。

たとえそれがどんなに抑えた物でも、たとえそれが巧妙に隠されていようとも、魔力であれば見透せる。

更に言えば、魔力の“詳細”や“使用痕跡”も看破する事が出来る代物だった。

オールラウンダーではあるが、シリウスは【ベリアルの瞳】による感知をレティクルの様に使用しての機動砲撃戦を得意としていた。

「さあ、始めようか!ーー見せてくれ零牙。お前の力をっ‼︎」

ーーゴォウウ‼︎

煌めく蒼い荷電粒子ビームの奔流が、流星の様に天空に放たれた。


ーー・・・三章ー七節【漆黒と煌蒼の円舞曲・前編】・終
























































































































































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