一部 ー二章[神と影の槍] 二章ー零節 〜二章ー一節[朧の苦悩]
ー軍神は進軍す 龍の都へと
ー影の皇は降り立つ 漆黒の皇の元に
ー空海は揺れる 龍と神の力により
ー蘇るは亡き神姫 龍刀と神槍を携えし蒼き皇と神姫は並び立つ
ーーー【■■の書】二項目
ーー朧、これを・・・。
ーーそんな顔しないで。
ーーまた会える。それまで、私の槍を預かっておいて。
「ーーーッ!」
私、【蒼月朧】は、零牙を中心にした冬華姉さん・刹那・アンジェ・アイナス・織火・私、そして新しく加わったアリシアさんとモルガンさんの9人が、更に多くが余裕で共に出来る特注のベッドの上で、目を覚ます。
「はあ・・・またあの時の夢・・・」
ヴォーティガン討伐より、一ヶ月。
最近、よく夢に見る。
私達の友人が亡くなった時の光景。
「・・・スルカ・・・」
私は胸に手を当て呟く。
皆が起きるまで、まだ時間はある。
(こんな沈んだ気持ちでは、零牙に心配をかけてしまう。零牙は鋭いから、取り繕っても見抜かれる。気持ちを変えねば)
私はベッドから出て、鍛錬場に向かった。
寝室を出て行く、自分を見つめる視線に気付かずに・・・。
ーー鍛錬場
朧は、静か佇んでいた。
四方向から、仮想の敵が形成される。
形成された仮想の敵はそれぞれ、剣、槍、銃、盾を持って、朧に同時攻撃を仕掛ける。
ーダァン!
銃から、魔力弾が放たれる。
朧は魔力弾を、最小限の体捌きで躱し、背後から迫る槍の切っ先を、背後に向きながら瞬時に呼び出した天羽々斬で受け流して、胴体を斬り捨てる。
次いで振り下ろされた剣を、身体を横にずらして躱し、敵の背後に身体を回転させながら回り込み、斬りつける。
続いて、大盾を正面に構えながら突進してきた敵の直上に跳躍する。
空中の朧に再び魔力弾が撃ち込まれるが、刀で斬り払う。
朧は自由落下に身を任せながら、刀を逆手に持ち、大盾の仮想敵の頭部に突き立てる。
残った銃兵が、大盾兵の肩に立つ朧に魔力弾を連射する。
朧は大盾兵の頭部から刀を引き抜き、足場にして再び跳躍する。
銃兵が空中の朧に照準を合わせようとする。
朧は刀を順手に持ち直し、空中で手放した。
朧は空中に浮いた刀の柄頭を蹴り込んで、銃兵に向けて蹴り放った。
銃兵は高速で飛来する天羽々斬に向けて、魔力弾を放つが、魔力弾は天羽々斬の切っ先で斬り裂かれてそのまま銃兵を貫いた。
仮想敵の全滅でシュミレーターが終了した。
「・・・ふう」
朧は息を吐き、鍛錬場の地面に突き刺さった天羽々斬の元に向かい引き抜いた。
(どう?気は晴れた?朧?)
朧の内に宿る【蒼皇龍・アズラル】が聞いた。
「少しな・・・。だけど・・・」
胸に手を当て自身の内に意識を向ける。
アズラルを感じ、自分の天羽々斬を感じるが、それは当たり前だ。
朧が探すのは、自分に託された、彼女の象徴。
「朧」
不意に呼ばれ、朧は入り口を振り返ると、近づいて来ている女性がいた、冬華だ。
「冬華姉さん・・・」
「やはりまだ、呼び出せないか?」
「はい、でも顕現出来ないのは私の・・・」
「自分の今の状況が原因だと?」
「・・・⁉︎」
朧は冬華に次の言葉を言われて驚いた。
「顕現出来ないのはもしかしたら、まだお前に馴染んでいないからかもしれないな」
「・・・・・・」
「フッ」
冬華は朧に頭をクシャクシャと撫でられた。
「そう考えこむな。あいつはお前に預けたんだ。焦らずに慣らしていけ・・・」
冬華は笑みを浮かべ、朧に優しく言った。
「さあ、そろそろ朝食の支度をしなくてはな」
「では冬華姉さん。急いでシャワーを浴びて来ます」
そうして、朧はシャワールームに向かった。
「・・・少しは、いつも通りに戻ったか」
(・・・冬華)
「アルジェか。どうした?」
(言わなくてよかったのか?)
「まあ、あくまで推測だからな。希望を持たせて、落胆させたくない。・・・あの時から疑問はあった。・・・そもそもスルカは本当に“死んだのか?”・・・あの時あいつは光になり、槍に吸収されて朧の中に共に入っていった。そして、あいつは預かってくれと言った。・・・まるで後で取りに戻るかの様な言いようと、何かを確信してるかの様な目だった」
アルジェも冬華に自分の考えを告げる。
(ああ、私もそれは思った。それに彼女も極めて特異な血だろう?だとすれば死を回避する術を持っていたとしても、おかしくはない)
「“神と龍の娘”としてか・・・」
この世界には、一般的なハーフのほかに、異能的ハーフが存在する。
異能的ハーフは大きく5つに分類される。
【龍血(ドラゴン・ブラッド】、【神血】・【魔血】、【天血】,【獣血】。
この異能的ハーフは、基本的外見は人間と同じだが、身体能力や魔力が総じて強力になりやすく、それぞれの血に基づいた多様な能力が発現する。
零牙や冬華、婚約者達、龍護や影刃は【龍血】で、アリシアとモルガンは、先祖であるアーサー王が赤龍の化身といわれていた為、また彼女達の才能も抜きん出ているので、おそらくは【龍血】だろう。
そして彼女ーースルカは“神と龍の娘”、【神血】でもあり【龍血】でもある希に存在だ。
ただこれは零牙と冬華にも該当するが、ツクヨミ曰く、あくまで【龍血】だそうだ。
「だが、スルカの【神血】の能力は、私も知らないからな。本人からも聞いた事がない。死を回避する能力でも不思議はないな・・・」
冬華は少し考えた後、呟く。
「今日当たりに朧の為に、模擬戦を組んでみるか・・・」
ーー・・・シャワールーム
朧はシャワーを浴びながら考えていた。
(この間の戦闘も・・・私は皆と共に戦えなかった)
スルカが亡くなってから、一年半が経つ。
あの時から、朧は実戦で戦う事が出来なくなった。
この前のヴォーティガンとの戦いの際も、皆に守ってもらうばかりだった。
“神槍”はそんな自分の状況に呆れてるからこそ、顕現出来ないのではないかと、最近考えていた。
(このままじゃ駄目だ!・・・私も零牙や皆と共に戦いたい。スルカの想いにも報いる為にも!)
朧は強く決意した。
ー・・・一説・[朧の苦悩]




