プロローグ
初投稿です。
拙い所もありますが、楽しんで頂けたら幸いです。
(章毎に投稿する予定なので、投稿は遅めです)
16年前ーーーとある魔界の果ての地
絶壁とも言える断崖と断崖の所々には、上から滝が流れている、断崖と断崖の間を6人の集団が進んでいた。
「・・・もう少しだ!頑張れ!」
集団の先頭を歩く、壮年の男が皆に声をかけ
鼓舞をかける。
「はぁ・・はぁ・・教授ぅ、もう限界です・・」
眼鏡をかけた10代の少年が、息を荒げながら教授と呼ぶ、先頭の男に訴える。
「・・・全く、だからあれほど言ってあっただろう?走り込みでもして体力づくりしておけと」
そう横から声をかけるのは、護衛として教授と長い付き合いの獅子獣人の男で、巨大な斧を武器としていた。
「仕方ないわ、あの子、根っからのインテリよ?」
同じく豹獣人の女がフォローする、彼女は、二本の剣を帯剣していた。
「・・ふふふ・・ほらぁ、言われてるわよぉ
インテリ君?」
栗色の長い髪を後ろで束ねた10代の少女が、少年をからかう。
「ほら、もう少しだから、頑張って」
長い黒髪の優しそうな雰囲気の女性が声をかける。
後ろのやり取りを聴きながら、教授と呼ばれた男は、ちょっと急ぎ足だったなと思い、進む速度を緩める。
教授は、今回の探索にかなりの期待を持っていた。
目的の遺跡は、魔界の果ての地にあるお陰で、
盗掘者や探検家達に手付かずで、誰にも知られていない未知の遺跡だ。
教授の目的は、遺跡に隠されている謎を解明することだ。
教授が遺跡について知っているのは、その遺跡はいつの時代の物か不明な事、遺跡に関連した記述が、どの書物にも記されていない事、全く持って未知の遺跡だった。
〜数週間前〜
泊めてもらった、果ての地の山の頂上にある龍の集落の石碑には、だだ一文字【皇】という文字だけが記されていた。
怪訝に思い、集落の長に「何故?<おう>と言う文字だけしか記されていないのか?>と聞くと、
「やはり興味を示されましたな・・その読みは<おう>ではなく、<ロード>と言うのです。」
「<ロード>?君主という意味ですか?」
「真の意味が知りたければ、この地の谷底にある遺跡に行くといいでしょう、私が語るよりも、直接、見たほうがいい」
場所を教えてもらった教授たちは、準備を整えて出発した。
「よろしいのですか?長、あの場の事を教えて?」
補佐役の龍が長に聞くと
「ここにたどり着いた事で、その資格はあるという事だ、それに裁定するのは、現【皇】たるあのお方だ」
「・・・あのお方、【▪️▪️なる皇】ですか?」
「そうだ、あの方が彼らを判断する・・・それに、彼らが遺跡にたどり着くのは、【真の▪️▪️なる皇】の誕生する日だ」
長は、そう言いながら嬉しそうに空を見上げた。
〜現在〜
「・・・ここか!・・着いたぞ!」
教授たち一行は、大瀑布にたどり着いていた。
そこは、13本の巨大な柱が均等に円を並んでいて、柱の後ろに滝が流れ落ちていて、大瀑布というより13本の滝が集まっている光景だった。
一行はその中心に位置するさらに巨大な柱に向かう、長がくれた情報では、柱に触れて真実が知りたいと願えば、遺跡に通じる転移魔法陣が現れるという。
教授は、柱に手を当てて
(真実が知りたい、【皇】とは何か教えてくれ・・!)
他の皆が見守る中、柱が淡い光を放ち、地面に魔法陣が現れた。
「・・・行くぞ・・・」
教授たち一行は魔法陣に乗り、遺跡に向かった。
〜▪️▪️▪️・▪️▪️の間〜
転送された先は広大な広間だった。
「・・凄い・・綺麗な場所・・」
栗色の髪の少女がそう呟くと
「・・・そうね・・でも・・本当に遺跡なの?」
豹獣人の女が皆が思った疑問を口にする。
「・・ああ、遺跡というより城の広間のような場所だ」
獅子獣人の男も同意する。
男が言うように、遺跡のように風化、経年による劣化も無く、壁や天井には美しい装飾が施され、遺跡ではなく現在も使用されているように感じられた。
「でも、遺跡じゃなくても!大発見ですよ教授!」
少年が興奮しながら教授に声をかける。
「・・教授?」
教授から返事はなく、教授はすでに広間の奥にある巨大な石碑に目を奪われていた。
その石碑には、14の見たことない紋章が描かれていた、13の紋章は円を書くように描かれていて、その中央に、13の紋様より大きく描かれている、1対の大翼と冠のような角を戴く龍の紋章が描かれていた。
14の紋様はそれぞれいろいろな色の光を放っていた。
「・・・ここに描かれているのが【皇】達という事か・・」
「これが長の言っていた【皇】の意味?」
黒髪の女性がそう呟くと
「そう、それが君達が知りたかった”世界の要“だ」
突如、返事をするように広間に声が響いた。
「「・・っ!?」」
すぐさま、護衛の二人が反応して警戒態勢に入る。
一行は、いつの間にか広間の中央に移動させられていた、そして、すでに囲まれていた。
「馬鹿な!?・・いつの間に!?」
「・・気配すら、感じ取れなかった!」
教授も囲まれて強制的に移動させられている事に驚愕しながら、前方を見ると、そこには黒銀色の髪をした20代前後の男が立っていた。
「・・教授、俺達の後ろに」
「ええ・・かなり危険な状況ね」
護衛の二人は、教授と他の3人を後ろに庇いながら本能的に感じていた、周りを囲んでいる者達もそうだが、前方にいる青年は明らかに次元が違いすぎる。気配も佇まいも静かなのだが、底が伺えない、何も感じ取れなかった。
「教授・・3人も、決して離れるな」
獅子の男がそう言うが、二人は、未だ武器を構えることも出来ていなかった。
青年は一行を見据えながら
「そう身構えなくていい。敵対するつもりはない。まあ君達が刃を向けなければの話だが」
いままで黙っていた教授が口を開く
「何が望みなんだ?あなたならば、我々が気付く間も無く排除することも出来たはずだ・・」
青年は笑いながら
「意図くらいは聞くさ・・・それに【皇】とは何か知りたいのだろう?そして、この石碑の意味も」
青年は教授が知りたかったことを教えてくれると言う、その言葉を聞き教授は
「・・あなたが現れて推察出来た、あなたが【皇】なのか・・?」
青年は縁が黒で白いロングコート、左半身を隠すように長い黒マント、そのマントには石碑の中央の紋章が刺繍されていた。
その格好を見れば、誰が見ても位が高い人物だろうと分かるだろう。
「・・まあ、別に隠すつもりは無いからな。
・・だが、その推察は、正解とも言えるが、意味としては一部だけだ、正確には【皇】達だ」
『『!?』』
一行は驚愕した。
「あなたのような存在が、何人もいると言うのか!?」
「その通りだ、“現段階では”【皇】は紋章の数だけ存在している、ここに描かれているのは、【源なる皇】達だ」
教授は疑問に思った、“現段階では”まるでこれから増えるかの様な言い方だ、それに【源なる皇】、原初という意味だろうか?・・・しかし
「・・・ずいぶん、あっさり教えてくれるのですね・・・」
「ここまでの話は、あくまで、ここまでたどり着いた褒美と思ってくれ・・・ここから先の話は、君達の答え次第だ」
「・・・どう言う意味ですか?」
「君は教授と呼ばれていたな、ならば、研究者なのだろう?・・悪いがこの場での見聞きした事は他言無用だ、大多数に知られては困るからな。君達が約束出来るなら、この先についても話をしよう」
教授は緊張しながら
「・・・もし断ったら?」
「大多数もそうだが、特に俺達の【皇】の子孫達にまだ知られるわけにはいかない、断ると言うならば、・・・どうなるかは分かるだろう?」
その瞬間ー六人をとてつもないプレッシャーが襲った。まるで海底にいるかのような濃密な魔力による重圧、誰一人として身動きが取れなかった、発生源である彼の目は色が鮮やかな赤に変化しており淡く輝いていた。
(・・・今まで感じ取れなかった彼の力、我々が感じ取れるようになった訳ではない!・・わざわざ感じ取れるようにレベルを下げているのか!)
魔力を発するだけで周囲の空間が歪む。
(これが【皇】の力なのか⁉︎・・いや恐らく氷山の一角なのだろう・・!)
そして、唐突に重圧感から解放された。
「すまない、脅しではないのだが・・・とにかく分かってもらえたか?」
教授は、息を整えながら。
「・・・ええ・・十二分に理解しましたよ。・・・分かりました、世間にはここで見聞きした事は他言しません」
彼は、微笑を浮かべながら
「良かった、ここに入れた者達を排除するのは本意ではないからな、これで、君達も関係者だ」
「・・関係者・・では!」
「ああ・・・約束した通りこの先の事を話そう・・」
そう言うと彼は石碑の横にずれる、すると石碑の紋章が切り替わった。
その紋章は切り替わる前と違って、全ての紋様が光ってはいなかった。
「・・これは?先程の石碑とは、違うものですか?」
「ああ、そうだ。この石碑に描かれているのは【真なる皇】達だ」
「【真なる皇】?・・・それは、一体?」
「・・・そうだな・・・今から、その話をし・」
突然、彼は何かを感じて言葉を切り、遠くの方を見つめて嬉しそうに笑みを浮かべた。
「・・・良かった・・・無事に産まれたか・・・」
彼の言葉に今まで静観していた、大勢の彼の皇后と思われる美女達や臣下達も嬉しい声を上げる。
「・・産まれたとは?・・・どういう?」
教授が、彼に聞くと、こちらに向き直り。
「・・・今日はあの子の・・・【真の▪️▪️なる皇】の誕生日だ・・・」
そう言った、彼は優しい表情をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーープロローグ・完