十七、わたしがたすけてあげる!
ある日のこと。
その時も、なゆはいつものようにいじめられ、俺はいつものように助けた時の事だ。
なゆは何度も俺に謝って、泣いてってした後、俺の顔を覗き込みながら、
「どうして、ゆうくんは、そんなにつよいの?」
と聞いてきた。
別に強くなんかないって俺は返すが、なゆは納得しない。
「つよいよ、すごく! わたしなんかくらべものにならないもの!」
「それは、なゆがよわいんだろ」
俺の反論になゆはうぅーと可愛い声をあげる。
「でもさ、オレだってよわいよ」
「うそ!」
「人のはなしをぜんぶきくまえにさえぎるなよ」
なゆがぶーぶーと文句を言う。
「たぶんだけど、なゆがオレの前からいなくなったり、オレの父さんとかが、いなくなっても、きっとオレはなくよ。なゆみたいによわくなる」
ただの推測だけど、俺はそうなんじゃないかと思った。俺の大好きな両親が俺の前から突然いなくなってしまったら、俺の世界のキラキラは失われ、暗雲が立ち込めるんじゃないか。そんな気がしていたのだ。
「そうなの?」
「たぶんな」
「そっかぁ……」
なゆが小さい頭を振って、頷きを繰り返す。
「じゃあね、じゃあね! そのときは、わたしがゆうくんをたすけてあげる!」
いつも助けてくれてるから、お返ししてあげるのと無邪気に笑う。
「うん、じゃあ、その時はよろしくたのもうかな」
「まかせてっ!」
なゆは自分の胸をドンと叩き、胸を張った。
小さくて泣き虫で、いつも泣いている顔ばかりのなゆが、頼もしく思えたのだ。