十三、
俺の両親は世界を飛び回るのが大好きな人達だった。そんな両親の出会いも面白い事に二人とも日本人であるのに、日本ではなく、旅行先の海外で出会っているのだから、そういった星の巡り合わせという他ない。
二人は新しい事に出会うのが大好きだった。知らないものを知ることで視野が広がることを至上の喜びとしていた程だ。新しい知識を得ることで世界にキラキラが満ちてワクワクが湧き上がるのだとか。だから、二人は未知のものへとどんどんと果敢にも挑戦し続けた。
俺はそんな両親が大好きだったのだ。
二人が世界中を飛び回っているせいでいつも人がいない家で、よく寂しい思いもしたけれども、そんなこと屁でもなかった。帰宅した後の二人のキラキラした目で語る話が楽しくて仕方がなかったから。最高のお土産をいつも持って帰ってきてくれたから。
だから、毎日がとても楽しかったのだ。
そんな日常がある日突然、何の予兆もなしに壊れたのだ。
事故だった。
久々に帰宅して、あまり一緒に過ごすことも出来ず、二人は次の目的地へと忙しなく出かけて行った。今度の行先は国内。海外での仕事を終えた二人は、なゆの両親も交えて旅行と称して出かけて行ったのである。向こうに着いてすぐ、四人の乗ったレンタカーは事故に遭う。後ろから前方不注意の車に衝突された。即死だったという。死ぬ時に痛みはほとんど感じなかったであろうことが救いだろうと言われたが、そんなの何の慰みにもなりはしなかった。
両親が死んだ。その事実は変わりようがなかった。俺の希望に満ち溢れていた世界が暗転した瞬間だった。
俺の世界は崩れ去ったのである。