表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

心の声

作者: 西田 智哉

9周忌


桜が舞う季節、高校二年生になった俺は墓に花を添えて手を合わせていた。


「姉ちゃん。元気…?」


風が桜を綺麗に舞わせ、俺を前に進めと言うかの様に吹いていた。

線香の火が消え、俺は目を瞑って思い出すのだった。




あれから9年がたった。

学校に掛かってきた一本の電話は俺を病院へと向かわせたのだ。

まだ小学二年生だった俺は何も知らずに先生に連れられて、ある病室の前に着いた。

ドアをゆっくりと開けると、そこには姉が寝ていたのだった。

心拍数が低く、病院の先生曰くとても危険な状態らしい。

両親が先に着いており2人とも泣いている。


「杏。目を開けてくれ!」

「お願いっ。目を開けてっ」


2人は姉の手を握りしめながら懸命に声をかける。

その時の俺は只々、立ち尽くしていた。

死と隣り合わせの今の状況に対して、どの様に接すれすれば良いのか分からなかった。


すると突然モニターのアラームが鳴り出したのだ。

病院の先生が必死に蘇生を開始する。

一気に病室が慌ただしくなり始めた。


「杏さーん。杏さーん 。」


看護師がずっと声をかけている。

でも、姉が目覚める気配がしない。

両親が邪魔にならない様に後ろに下がってきた。


「ねぇ、お母さん。お姉ちゃん死んじゃうの?」


母に問いかけるが、ギュッと抱きしめられて返事は返ってはこない。

だけど、今になってわかる。

死を受け入れたくないという思いを…

だから母は答えず泣きながら俺を抱きしめていたのだと。


「ピーーー」


モニターの心拍数の表示が0になり、先生が瞳孔の確認をする。

そして、暗い顔をして告げる


「残念ながら…杏さんの死亡を確認しました…」


その言葉を聞いた瞬間、母は泣き崩れ俺を更に抱きしめる。

父も泣きながら俺と母に寄り添う。

俺は2人に抱きしめられながら涙を流す。

少しして2人は立ち上がり姉のもとへと寄る。


姉の顔は幸せそうだったという。

俺は大切な家族を失った恐怖と悲しみで両親が死んだ姉に別れを告げているのを見ることしかできなかった。

それは小学二年の俺の脳裏に焼き付く出来事だったのである。



そして俺は墓を後にした。




* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *




「ただいま」


家へと帰宅した。

両親は共働きで夜まで家を空けている。

玄関を上がりすぐ右にある階段を登って自分の部屋に行く。

部屋に入るとそのままベッドに横になった。


「明日は学校か…」


机の上にある幼い頃の写真に目を向けながら眠りについたのだった。

そしてその日は、眠りから覚めた後夕食をとり風呂に入って明日の新学期スタートに備えるのだった。






「「「おはよー」」」


教室に響く声、友人同士が交わすあいさつ。

俺にとってはそんなのくだらないが…

友達なんていないからだ。


「廉さーん、おはよーう」


馴れ馴れしく『あいさつ』してきたのは同じクラスで幼馴染の伊藤 真季だ。

そして、廉とは俺の名前でフルネームで藤村 廉と言う。

幼馴染と言うだけあって本当にこいつだけが俺に関わってくる。


「おはよ」


まぁ、あいさつされたら返すべきだ。


「もー、暗いなー。元気だそうよ!1日1日を大切にしないと損するよ?」


背中をビシッと叩かれる。

これが以外に痛いのである。

真季は毎日が太陽のように眩しい。

俺にとっては照らされると困るんだよな。


「今日の放課後空いてる?図書委員会の仕事手伝って欲しいっ!お願いっ」


「あ…うん」


真季はバドミントン部に所属しており、その上クラス活動もしている。

忙しいのかな?

お願いを断ることができずに俺は放課後残ることとなった。

部活に入っていない俺は家に帰っても特にすることが見つからないからな。

そうして、授業中にある誰かさん視線を感じつつも6時間目まで耐えきったのだ。


「キーンコーンカーンカーン」


放課のチャイムがなるとともに各クラスがにぎやかになり、部活に行くものや帰宅するものそして、図書室へ行くものもいた。


「何をすればいい?」


図書室へ入り奥にある読書スペースの椅子に腰掛けり、単刀直入にそう言う。


「んんーちょっと話があって…」


「なに?」


真季がいきなり真剣な顔つきになった。

俺、何かしたかな?


「あのさ、何でそんなに距離を置くの?」


俺は何も言えなかった。

実際に言えばそうなのである。

真季がそのまま続ける


「お姉ちゃんが亡くなったから?それとも女の子が嫌い?私はもっと話したりしたいよ…ねぇ、なんで?」


真季が言いながら俺に寄ってきて手を握ってくる。

俺は真季の顔を見ることが出来なかった。

多分…泣いていた…


「ごめん…姉ちゃんのことが忘れなくて怖くて仕方ないんだ」


俺はいつからだろうか、女の子が怖くなっていたのだ。

いつ大切な存在が消えていなくなるかもしれないという恐怖が俺の心をくすぐるのだった。


「じぁ、私が忘れさせてあげる」


俺が顔を上げ真季の顔を見ると涙目で真剣な表情であった。

俺は言葉が出なかった。


「明日、赤木駅前に9時!待ってるから」


そう言い残して真季は足早に図書室から出て行った。

おれは唖然として動けなかった。

真季の言葉と表情には心が痛くなった…

そして俺も図書室を後にするのだった。





次の日の朝

今日は真季との待ち合わせの日だ。

昨日はあれから色々と考えたが真季の『忘れさせてあげる』の意味がわからなかった。


俺は朝食をとり歯を磨き寝癖を直し私服に着替え準備完了である。

いざ、赤木駅へレッツゴー


着いて見るとまだ真季は来ていない。

まぁ、当たり前と言えば当たり前である。

だって予定時間の1時間前に来たんだもんな。

来てたら逆に気合入りすぎだろ?

ん?俺?それは男だから仕方がないんだよ。

女を待つのがジェントルマンって訳だよ。


すると、前から綺麗な人が来た。

ん、あれは…はいまさかのまさかであったのだ。


「待たせてごめんね」


「俺も今来たところ」


嘘をつくけど、1時間前にきて10分しか経っていないぞ?少し引いた。

気合入りすぎだろ!

そう思いながら楽しい楽しいデート?がはじまったのだった。



続きは書きます。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ