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第6話 葛藤する弟くん

現在、笑顔をキープした8歳児の姉にお説教されてます。

8歳児のするお説教じゃない…

うん、俺だって謝りもせずに逃げ出したことは悪いと思う。だから、土下座して謝罪いたしました。

「私もね、ただの七歳児であれば、こんなことは言いません。

でも、あなたは前世の記憶があるのでしょう? 前世が何歳で終わりを告げたのかは知りませんが、言動からして義務教育は終了しているレベルだと考えています。

それを考えれば、謝罪も何もせず部屋へと逃げ帰った行動が不適切な行動だということは理解でるわよね? もちろん、前世の記憶がない七歳児だったとしても、公爵家の長男という身分では、あなたの言動は不適切であり褒められたものではないことも理解できるわよね?」

「でも、足が逃げに動いちゃったんだ…です」

思わずこぼれ出た言葉に、姉さんはテーブルを扇で叩いて何も言わずに、文句でもあるのか?というように笑顔のまま首を少しだけ傾げるのがさらに怖い…

あれ……? あ……

「もしかして姉さんも前世もち!? なら、この世界も知ってる!?」

俺のびっくりした声に、姉さんは扇をテーブルに打ち付けた。

「まだ、お説教は終わっていません」

「は…はい。ごめんなさい」

「なぜ家出をしようという考えに至ったのかは捨て置きますが、なぜ、家出をして平民に混じり生きていけると思ったのですか? 王都の治安は良い方ですが、だからといって犯罪がないわけではありませんし、ましてや貴族の子供が一人で街中をうろついて無事に一日でも生き延びることができるとでも?」

「…そこは…平民のふりをするとかで…」

思い付きを口にしてみるが……

「その服と窓の下に落とした鞄で平民のふりですか?」

た…確かに。鞄は革製の良いものだし、服だって上等のものだ。平民にはもちろん、裕福な商人の子供と見てもらうのも難しいかもしれない。

「家出した貴族の子供の末路など容易に想像がつくと思うのですか?」

問いかける姉の視線に、前世で読んだ漫画に、頭脳は大人、体は幼女の名探偵が悪の組織と戦ってるのがあったから、自分もいけると思ったと答えたら、

「フィクションはフィクション」とテーブルに扇をピシャリと打ち付けられた。

うぅ… だってここも乙女ゲームのフィクションの世界だし、なんとなく大丈夫な気がしたんだよ……。

その後、姉から笑顔で30分は説教された。

なんで笑顔で説教できるの? 怖いんだけど…

それでも、姉さんが前世持ちだとしって、ちょっとほっとした部分がある。

子供なのに、泣くことも、我儘をいうことも、癇癪もおこさず、嫌なことがあっても笑顔でさらりと流す様子や、子供としては賢すぎる様子が不気味に感じる部分があったのだ。

まさか、自分と同じ前世もちだとは考えもしなかったから、自分が知っている子供とは隔たった姉さんを見て、これが貴族という生き物なのか? それともゲームの中の決められたことだから? と怯えていたのだ。


 ※ ※ ※


この世界が前世でプレイしたことのある、乙女ゲームの世界に似ていること。

俺と第二王子のルートの悪役令嬢役が姉さんであることを説明するが、姉さんは、また怪我しても傷はきれいに消せるから問題ないだろうという様子で、不安なのは俺が公爵家を継ぐことで、姉さん自身への危機感を感じていないことに、俺は焦る。

このゲームのメインルートは身分が一番高い第二王子で、妹も第二王子のルートが一番人気だといっていた。

ということは、これから現われるであろうヒロインが攻略するのは第二王子が一番可能性として高いのではないかと俺は考えているのだ。

「公爵家を継ぐことに関しては俺も不安だけどさぁ。それよりもシナリオの強制力とか! 色々なことを不安に感じない? だってシナリオ通りだと断罪されて修道院送りだよ!?」

修道院はダメだ! 

全年齢対象ということで、ヒロインのハッピーエンド、つまり悪役令嬢役のバッドエンドは修道院送りのみだったが、どのルートの悪役令嬢の時も、使いまわしなのだろう修道院に送られた悪役令嬢のスチルの背景には、いやらしい笑みを浮かべた修道士の姿が複数人描かれていたのだ。

ゲームとしては悪役令嬢は修道院に送られたとだけ説明されるが、そのスチルを見る限り、全年齢対象だからその説明だけにとどめてあるような印象を受けたので記憶に残っている。

だからといって、姉さんにそんなこと恥ずかしくて説明できない。妄想力逞しいわね。と言われて終わりになりそうな気もするし。

「まぁ、本当なら姉さんはもう第二王子の婚約者になっているはずだから、まだなっていないことを考えると、ざまぁ展開のとか、似てるだけで別物とかの可能性もあるけど」

 姉さんの傷が綺麗に消えたことと、前世もちであることを考えれば、俺ルートでの断罪は消えたから、第二王子の婚約者にさえならなければ姉さんが断罪されることもないと楽観的な意見を出してみるが…

「あら。私、第二王子の婚約者候補の有力候補ですわよ? すでに王子妃教育も受けていますけど」

 そ…そんな……。いったい俺はどうすれば……。



夕暮れ時、帰宅した父に、姉さんに怪我をさせて逃げたことはもちろん、家出して逃げようとしたことも姉さん以外のルートから報告をうけたらしく、お叱りを受けた。そして、貴族は領民と王族の盾であり矛であることを忘れるなと念押しされた。

―――― 逃げちゃだめだと。












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