幕間 ブルス国王の憂鬱
隣国ウィデント国の王族が学問や芸術に傾倒するというのなら、ブルス国の王族は愛の重い一族であるといえる。
身分が愛を妨げ、乗り越えられないなら、王族という身分を捨てていく王族がそれなりにいた。
幸にも、自分の婚約者候補の令嬢たちの後押しもあって身分差があったものの意中の相手と結ばれることができた自分は幸運だったのだろう。
視察に出て自分の顔を見た子供が泣く、引き付けを起こす 。通常であれば不敬とも取られる出来事も、まぁ…… 仕方ないよね。という、近衛の生温い視線。
孤児院は視察先から外され、視察の仕事は別の王族に回された。
私としてもデビュタントの令嬢と目が合い気を失われられること多数。それに比べれば子供に怖いと泣かれることのがまだ良い。
心の傷口が多少広がった位である。
それに、歳を重ねたら、強面も和らいだらしく、デビュタントの令嬢が気を失うことがなくなった。
まさか、老化に感謝する日がくるとは思わなかった。
デビュタントの令嬢、時折令息を失神させている国王など風聞が悪い。
たとえ、城下では笑い話であっても、どのようにねじれ曲がって他国に届くのかは分からないのだから。
若い頃は、顔を合わせた令嬢は気を失う、令息を固まらせる。すぐ子供にも泣かれる。
お忍びて城下に降りて過ごすことも出来なかった自分の容貌に鬱々としたこともあったが、それが幸いとなって愛した令嬢との身分差という障害がなくなったのであるからこれほどラッキーなことはない。
もっとも、一目見て気を失うことがなかったという理由だけで婚約者候補になっていた高位貴族家の令嬢たちが、積極的に私の恋の後押しをしてきたことには感謝しつつも少しだけ傷ついたし。
同じ理由で彼女にも厭われてしまったらと弱気にもなったが、強面の容姿を気にすることなく、彼女と愛を育むことができたのは人生で一番の幸運だろう。
王妃となった彼女の美貌を受け継いだ我が子には安心した。
自分に似たら、2代続けて嫁取りの危機である。
我が王妃のような奇特な女性はなかなかいない。
密偵から届けられた人相書きに、胸の奥に重い固まりが落ちる。
我が子であるミュリアル。
第二王子であるジートル。
共に愛が重いのは知っていた。
その辺りは抑制すると暴走しかねないので、ある程度は見逃すようにしている。
そして……
弟である、シャルハムの愛も重いのである。
これから起こることを思えば、ミュリアルやシャルハムに比べたら明らかに自分は脳筋だと呼ばれる部類なのだろうが、最愛の王妃も自分も、あそこまで性格は捻くれていないと、この先の場で出すことのできない分、大きなため息を吐き出し、侍従の時間がきたことを知らせる言葉に、王家とカプレーゼ公爵家の婚約式の場に向かうべく重い腰を上げた。




