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第39話 それぞれの事情 ①

 さて、困ったことになった。

 領主館の応接室で、私とディビット、ヒロイン、ユリウスの四人が顔を突き合わせているのだけれど、言い方を変えれば、転生者3人の、そうでない者1人。

 ここに来るまでの間に、なんで1のヒロインが!? とプチパニックを起こすヒロインのリリアンに、唯一事情を知っているらしいディビットがユリウスや他の存在を警戒して落ち着くように説明しようとするが、ディビットの謎もあった!! とさらに喋り出したので、加齢によって痛みが出てきてしまっているであろう産婆さんの腰の治療をヒロインに無理矢理任せ、私は、どうやら1のヒロインであり現在は当家の下働きをしているプリムラの、気を失ったままでいる夫の治療に回った。

 それらを微笑みを浮かべながら何も言わずに見ているお母様が微妙に怖かったけど。

 後はヒロインの治癒魔法によって腰の痛みなど消え去ってしまった産婆さんに後を任せて、プリムラの家を後にしたあと、少し話し合ってらっしゃい。というお母様の一言で、四人一纏めで応接室に入れられたのだけれど…… ヒロインの質問に、ユリウスを気にしながらも答えていくディビットのおかげで微妙な雰囲気になっている。

 ヒロインは私がディビットに成り代わっていた話を聞いた後、なんだBLじゃなかったのかと一人で騒いだあたりからユリウスの存在を忘れてしまったようで、ディビットと私に質問をガツガツしてくるのだけれど、プリムラのことからディビットも転生者だろうと決めつけたらしく―― 実際、ディビットも転生者なのだが―― 姉弟で転生者ってありなの!? とかディビットのそんなヒロインの様子に、なんだ、ユリウスも転生者か事情知ってるのかな? と勘違いしたディビットが、途惑いながらも応じた結果……


「とりあえずね。下働きとして働いているプリムラという女性が、王都に留まっていたら王太子の目に留まって城へ召し上げられてしまう為、それを嫌がった彼女に頼まれてディビットが領主館の下働きとして匿ったという経緯は分かった。

 知識を借りようと彼女の元を訪ねたものの、彼女が産気づいた為、産婆を迎えに行った夫が中々戻ってこないことから、公爵夫人に相談したところディビットに扮したアマリリスが領地に向かっていることを知って、前世とやらで医者だった彼女を迎えに行こうとディビットが考えたこともわかった。

 さて、ここで質問なんだが、今までの会話を総合すると、プリムラを含め、ディビットにリリアン嬢にアマリリス。全員が通常なら持ち得ることのない、前世と呼ばれる共通する世界の何らかの記憶を持っていると言うことでいいのかな? そして、そういった君たちを転生者と呼ぶということなのかな?」


 笑顔でありながらも、どこか恐ろしさを感じさせるユリウスの様子に、ヒロインが今更とでもいうように、「あ……」と言って固まった。

 ディビットには至っては、え? 転生者じゃなかったのかよ! とでも言いたげに、ヒロインとユリウスの顔を交互に見ているし。

 なんで教えてくれなかったんだ的に、ディビットが私を見たけれど、止める暇もなくヒロインが失言しまくったから……

 まぁ、ユリウスだし良いかなとと途中からは傍観したけれど。


 それにしても、場に落ちる沈黙が痛いわ……

 説明すれば、ユリウスは忌避することもなく理解はしてくれると思うのだけれど…… この場合の説明って私がするのが一番なんでしょうけれど、私、説明って得意じゃないのよね。

 いつまでも沈黙している訳にはいかないと、口を開こうとしたとき、ユリウスが深いため息をついたため、思わずびくりとしてしまう。


「正直に言うとね、前の生…… 君たちがいう所の前世というものに馴染みがないわけじゃないんだよ」

 ユリウスはそう言うと、膝の上に置いていた指を組みなおして、話を続ける。

「俺ではないけれどね、身近に似たような人がいるからね。もっとも、君たちのように、別の人間の人生を生きた記憶があるわけでは無く、同じ人物の人生の記憶だけれどね」

 ユリウスの言葉に、ヒロインが首を傾げる。

「それってループして同じ人生を繰り返してるってこと?」

「ループ…… と言ってもいいのかな。 繰り返してるというか一度自分の人生を歩んだ記憶が、そのまま残ってるということらしいんだけれどね。正直、夢物語だと思っていたんだよね

君たちの先ほどの話を聞くまでは」

 にっこりとヒロインに笑いかけるユリウスに嫌な予感が走る。

「それって誰ですか!?」

 嬉々として聞いたヒロインに、ユリウスが笑顔で答える。

「俺の姉姫だよ。

 さて、我が国にとって重要な秘密を知ってしまったのだから、もちろん俺の計画に協力してくれるよね」

 私はもちろん、ディビットとヒロインも顔を引きつらせた。









 

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