第4話 家出を企む弟くん
「着替えと…着替えと…あとなんだ!? お金に換金できそうなものだな。こんなことなら、使う必要がなくてもお小遣いをねだっておくべきだった!」
部屋の中をどたばたと駆け回りながら鞄にモノを詰めていく。
虐められる人生なんて嫌だ。俺は逃げる! 平民として生きるぞ! 前世と今世をたせば20代。見かけは子供でもなんとかなるはず!
俺は自分を励ましながら、部屋の中のもので高そうなものを集める。
悪役令嬢の姉に虐められるフラグを立てないために、魔力暴走を起こした時に近くにいないようにと、できるだけ姉と物理的な距離を置き。
万が一魔力暴走を起こしても、怪我を綺麗に治せればと治癒魔法の勉強に励んだが、治癒魔法は適正があるものが極端に少ないらしくて、使うことができなかった。
フラグを折るためには、あとはもう俺が逃げる手段しかない!!
そう考えた俺が、家出の荷造りのためにと、前世では考えられないような広い部屋の中を走り回っているとドアがノックされた。
「ディビット様。お嬢様がお会いしたいそうです」
ドアの向こうから掛けられた、姉専属の侍女の声に俺は動きが止まる。
しまった…遅かった…
いや、まだ、窓がある。俺は荷物を詰め込んだ鞄を手に取ると、窓を開けて鞄を窓の外へと投げる。
ドスッと重そうな落下音。
次は、俺が…… うん。俺が―――挫折した。
無理。二階から飛び降りるなんて無理。
魔法で空は飛べません。
俺は床に悲しさのあまり崩れ落ちた。
治癒魔法じゃなく、魔法で空を飛ぶ方法を生み出すべきだった。