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第3話 治癒魔法

 植込みから出してもらって、刺さった板はそのままで、テラスに置いてある椅子に浅く座らせてもらった。

「お嬢様、横になられた方が…」

 顔を青ざめながら、頬と腕の傷を布で圧迫止血しながら、私付きの侍女エルザが応接室へのソファーへと促すが、太ももに板が刺さったままじゃ横になれないからね~

 でも、エルザは公爵家に採用されて、まだひと月も経っていないのに、これだけ対応できるんだから優秀なんじゃないかな。だって、自己紹介の時、彼女、13歳って言ってたし。

 13歳で侍女!? って思うけど、この世界では普通のことみたい。

 15歳から通うことができる学園はお金もかかるらしく、長男なら男爵家子爵家あたりでも必ず通わせるらしいんだけど、長女や次男次女以降になってくると、その家の経済状況次第。

 通わせることができないなら、女の子なら侍女奉公に出させて、男の子なら学費のかからない兵士学校に行くらしい。ただ、この兵士学校、平民でも貴族でも学費はかからないが、当然のように卒業後20年間は兵士として勤務しなければならないし、死亡や病気、怪我以外で20年経たないうちに辞めたり、在学中に辞めたりすると、無料にしてもらっていた学費を返済しなければならない義務が発生するものだったりする。

 それでも、能力次第では、騎士への道も開けるし、20年間は兵士として勤務しなければならないが、お給料も、しっかりとでるので人気のコースらしい。

 そんなことを考えてると、侍女長のアンが頼んでいた鏡とお湯とタオルを持ってきてくれた。

「お嬢様、お待たせいたしました」

「アン、ありがとう。エルザ、腕を抑えている手を外してもらってもいいかしら」

「…はい」

 おそるおそるといった感じで外された腕は血で真っ赤に染まっている。

 エルザが息をのむ音が聞こえたが気にせずに、汲んできてもらったお湯を外だからと遠慮なく腕にかけて血を洗い流して患部の確認。

 本当なら、出血の危険を考えれば、頬や腕より先に太ももの治療を優先したいところなのだが、自分で治癒魔法をかけるのに、頬と腕の傷がこのままってのは不便だから仕方がない。

 念の為、異物除去と殺菌の魔法を腕にかけて治癒魔法をかける。

 ちなみに、移動させてもらった時に、痛みを取り除くレベルの魔法をかけてるので、自分で自分の治療ができているだけであって、痛みに耐性があるわけでも、痛みを喜ぶタイプの人間でもない。

 腕が済んだので次は頬。エルザに目配せすれば、頬を圧迫してくれていた手を外してくれる。

濡らしたタオルで頬を拭いて鏡で患部の確認。腕と同じように、念の為の異物除去と殺菌の魔法をかけてから治癒魔法をかける。ちなみに、異物除去と殺菌の魔法は私のオリジナル魔法である。魔法を教えてくれている家庭教師にさえも内緒にしているけどね。説明めんどくさいし。

うん。前世の時、先輩に言われた。お前ほど、性格面以外で後輩指導に向いてない奴はいないと。

遠まわしに、性格は良いと褒めてくれたんだと理解している。うん。

「う~ん。やっぱり、傷跡残りますわね~」

 頬も腕も、目立つほどではないが治癒魔法をかけても傷跡が残っている。

 皮下組織までパックリいった感じだったからなぁ…まぁ、ここまで目立たなくなってれば合格ラインかなぁ…

「では、次に足の治療を行いたいので、どなたか、刺さっている板を抜いてくださらないかしら?」

と視線を上げると、周囲の人間がお通夜のような状況になっていた。

え? なに? やっぱり刺さってる板を抜くなんてグロイことしたくないのかしら?

「お嬢様の美しい顔に…傷が…」

「おいたわしや」

 何人かの侍女が泣き崩れていた……。うん。気持ちは嬉しいんだけどさ、一番酷い状態の足がまだ未治療だからね。

 うーん、どうしよう。自分で板を抜くのもできなくはないけど、血管傷つけてる可能性あるから、自分で抜きながら治癒魔法ってのも微妙なラインなんだよね。板を抜いたことで出血がひどくなって、治癒魔法をかける前に出血多量で意識失ったら、どう考えてもこの世界の医療レベルだと私、確実に死ぬよね。

 救急車ないし、輸血ないし。

 異物除去の魔法使うにも、ちょっと大きいしなぁ…

どうしようかと迷っていると、門から直接、時間を短縮する為になのか、庭からテラスへと小脇に白衣を着たおじいちゃん、カプレーゼ公爵家の侍医のモーラン先生を抱えた父親が馬に乗ったまま到着した。

「リズ!!」

 侍従が走り寄り、父親が馬から飛び降りると同時に、手を離されたモーラン先生を受け取る。

 侍従ナイスプレイだ。さすがは公爵家の侍従だ。

 モーラン先生高齢なのに大丈夫かしら…私の診療で呼ばれて、モーラン先生が亡くなったなんてことになったら笑い話にもなりません。

「あぁ…可愛いリズの顔に傷が…あぁ腕にまで!!」

 うん…なんだろうね…まだ一番酷い状態の足がまだだからね!?

 みんな、私の足の状態見えてないのかな? それとも、足に板が刺さっているのが見えるのは私だけがみてる幻覚なのかな!?

「お父様! モーラン先生に対して、なんてことをなさるんですか。私を心配して駆けつけて下さったのは嬉しいですが、モーラン先生を脇に抱えて騎乗なさってくるなんて、モーラン先生に対して失礼ですわ」

 私の言葉に、モーラン先生がコクコクと青ざめた顔で声もなく頷いている。

 それでも医者としての責任感がなせる技なのか、侍従に支えられながら、私の元へ来ると、治療済みの腕と頬をちらりと見ただけで、足の治療に取り掛かろうとしてくれた。

 よかった、足に板が刺さっているのか私にだけ見える幻覚じゃなくて。

「公爵殿、お嬢様の足の治療をさせてくだされ。今は、お嬢様の意識もしっかりしておりますが、大きな血の巡りを傷つけている恐れもあります。治療が遅れれば命にかかわります」

 モーラン先生の言葉に、お父様は、足の怪我は現実だったのかというような顔をしています。

 いくらなんでも、命にかかわることで、現実逃避はしないで欲しいです。

 モーラン先生は、侍従のエドに、刺さってる角度のまま、まっすぐ下から板を抜くように指示しています。エドが板を抜くとモーラン先生は、大きな血の巡り、つまり前世でいうところの血管の大動脈や動脈。今怪我しているのは太ももなので、大腿動脈を繋げる治癒魔法をかけてくださいます。

 そうしましたら、侍従や執事などの男性には席を外すように促して、居なくなったのを確認すると、冷めてしまったお湯で患部を洗浄。鞄から取り出した高濃度のアルコールを開いたままの傷口に遠慮なく振りかけてくれます。

 さらに、そこに治癒魔法をかけようとしてくださいましたが…

「ご自分の腕と頬の傷に治癒魔法をかけたのはお嬢様ですかな?」

「はい」

「それならば、大きな血の巡りは繋ぎましたので、足の傷もお嬢様が治癒魔法をかけた方がようございましょう。儂が治癒魔法をかけるより、お嬢様がかけた方が傷跡が目立たなく綺麗ですからの。女性に目立つ傷跡は酷でしょうし」

前世、この世界より遥かに進んだ医療技術をもった世界で医者をしていた私が、モーラン先生を尊敬して治療を任せることができるのは、彼のこういった患者第一な姿勢だとおもいます。

「ありがとうございます。モーラン先生」

 私はお礼を言うと、腕や頬のように、異物除去、殺菌の魔法をかけた後に、治癒魔法をかけます。ただ、腕や頬と違って、念入りにイメージします。そうなんです。魔法で大切なのは想像力。

 モーラン先生が大腿動脈を繋いでくれましたが、大腿静脈は繋いでないので繋いで…筋肉組織にも傷がついたはずですので、大腿四頭筋、中間広筋、内側広筋、大腿直筋、外側広筋、ハムストリングなどなど太ももにある筋肉をイメージして修復。神経も傷ついているだろうから、大腿神経、外側大腿神経、閉鎖神経などなど神経もイメージして修復。皮下組織に真皮、血管、神経、皮脂腺、汗腺、も忘れずに、そして四つの層からなる表皮。イメージイメージ。

患部を確認してみると、あらあら。傷跡が綺麗さっぱりありません。

 それをみて、モーラン先生も驚いています。

 ならばと、私は腕と頬にもさらに治癒魔法をかけてみました。最初に治癒魔法をかけたときは傷口を縫合するイメージでかけたのですが……

ふむ… 同じように、皮下組織、真皮、血管、神経、皮脂腺、汗腺、も忘れずに、そして四つの層からなる表皮。を修復するイメージで治癒魔法をかけると頬と腕の傷跡も綺麗になくなりました。

 そのことに、侍女とお父様が涙を流して喜んでいます。

 そんな中、侍女長のアンがそっとモーラン先生に近寄り、お母様が、私が怪我したことを聞いて失神してしまったので見て欲しいと伝えて、モーラン先生を案内していきました。

 うん。お母様が失神してくれて良かったかもしれません。失神せずに、あの怪我を見てしまったら、寝込んでいたきがしますので。











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