第28話 イベントが本気モード ⑦
ちょっとまて。状況を整理しよう。
1、私ことリリアンは淑女教育に嫌気がさして公爵家から脱出。
2、脱出に成功。どこかでお茶でも飲もうとウキウキしていたら誘拐される。
3、イベントだと安心してたら、なんか違うかもな予感。そして、誘拐犯の覆面男にやられちゃう!? と危機感を持つも、意外に親切で紳士だった覆面男に二階の部屋に閉じ込められる。やっぱりイベントかも?
4、なんかディビットじゃなく、イケメンが助けに来た。しかもこの顔、アマリリス断罪ルートの時に背景に居たイケメン。隠しキャラかと噂になったけど、隠しキャラではないことが後に判明して物議をかもしたイケメンモブ。
5、私ヒロインだけど、眼中にないらしく、無事を確認されると手を引っ張られて階段を駆け下りて……… 今ここ。
目の前で繰り広げられる光景に、脳みそがついて行けない。
覆面男と、ディビットが戦っていたのはわかる。うん。
で、最後の最後でディビットが切られて怪我したのもわかる。うん。
覆面男が逃げるのをイケメンモブが追いかけようとしたのをディビットが止めたのもわかる。うん。
結局、ゲームでも小説でも犯人はわからずじまいだったからね。
ディビットが治癒魔法を使えたのには吃驚したけれど……… 問題はそこじゃない。うん。
ディビットとイケメンモブがいちゃついているようにしか私には見えないのは気のせいだろうか……。
「もう痛くないのか?」
治癒魔法のかけられた腕を取り、心配そうに見つめるイケメンモブ。
心配そうに見つめて、傷跡だったであろう部分を指でなぞっているんだけど……
これっていちゃついてるって言っていいよね? 傷を負ったときは凄い青ざめて駆け寄っていたし。
っていうか互いに恋愛感情が成立していないのに、こんなことされたら、同性異性関わらず気持ち悪いの一言だと思うんだけど。
ディビット、なんか嬉しそうというか、恥ずかしそうというか……
――――― うん。見なかった事にしよう。そうしよう。
もしかして、私が知らないだけで、BL版があって、そこではヒロインが悪役令嬢役だったり?? なんて疑問もよぎったけど、ディビット転生者だし酷いことにはならないだろうと。
それに、嫌いじゃないのですよBLも。
「リリアン、怪我とかはないか?」
いちゃいちゃがひと段落したらしく、ようやくディビットが私に声をかけてきた。
「大丈夫。意外に親切だったから覆面男」
私の言葉に、ディビットは苦笑いする。
「だろうね」
まるで犯人を知っているかのような口ぶりに首を傾げる。
「第二王子殿下だろ?」
イケメンモブの言葉にディビットは眉を寄せた。
「狙ってるって情報が入ってきていたから、俺は気を付けてたんだぜ。もっとも、狙いがディビットではなく、この女だってのは予想外だったが」
こ…… この女扱いですか! イケメンモブ!!
あ、でも犯人? 実行犯は王子じゃないだろうから、黒幕? がジートル殿下ってのは納得かも。
だから、ゲームでも小説でも犯人が明らかにならなかったんだなぁ。
「さすが微ヤンデレだわ」
「なんだ、それは?」
私の言葉に、イケメンモブは首を傾げた。




