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第26話 イベントが本気モード ⑤

 私が何も答えないことを問い詰めるでもなく、ユリウスは馬を走らせる。

「ここだな」

 ユリウスは手綱を引いて馬を止めると、馬を物陰に隠れるように誘導する。

 使用人街の中で下級貴族に使える者の家が多い場所の中で、一番大きなつくりの家の前にヒロインを誘拐した時の馬車が止まっていた。

「あの女を助けてくればいいのか? ここで待っていろ」

 そういって一人で行こうとするユリウスの腕を、思わず掴んで止めた。

「ユリウス様にそんなことをさせるわけにはいきません。私が行きます」

 私の言葉に、ユリウスは困ったような戸惑ったような顔をする。

「女性を荒事が起こる場所には連れて行きたくないのだが…… 確か、あの女は夜会でお前に治癒魔法をかけた女だな。ディビットの婚約者になったことも聞こえてきている」

 ユリウスは私を頭の先からつま先まで見るように視線を走らせると―――。

「あの女に惚れたのか?」

「…………は?」

「あの女に惚れたからディビットの振りをしてるのだと思ったのだが?」

「はぁ!?」

 思わず出てしまった大きな声に、ユリウスは私の口を手でふさぐと、腰に手を回し、ぴたりと体をつけてくる。

 私の跳ね上がった鼓動と体温にユリウスが気が付いてしまわないか心配になる。

 すぐに口を覆った手は離してくれたが、腰に回された手はそのまま。

「冗談だ。大声を出すなと言いたいところだが、そんなお前をみると昔に戻ったみたいで嬉しいよ。学園で再会したお前は優秀な公爵令嬢だったからな」

 ユリウスの言葉に、奥歯を噛みしめる。

「ウィデント国、第三王子のユリウス殿下に、このような真似をさせるわけにはいきません。私が1人で参りますので、殿下はこちらでお待ち下さい」

「お前に何ができる?」

「…… 王子妃教育として、剣技と武術も一通り修めていますので」

「あぁ。この国は、ブルス国はそうだったな。でも今は王子妃候補からは外れているよな?」

 答えられないとわかっていて聞いているのだろう。

「そうだな。王太子妃の内定も俺が取り消してやるよ」

 ユリウスの言葉に動揺が隠せない。

 彼は隣国とはいえ、王族なのだから、私が王太子妃に内定していることを掴んでいてもおかしくはないが…… 王太子妃の内定を取り消すとは、どういう意味? 自分は、その言葉をどう受け取ればいい?

 解釈ひとつで、どうとでもとれる言葉だ。

 ユリウスが私に気持ちを寄せているともとれるが、自国の高位貴族や王族から王太子妃を迎えさせたいともとれるし………… ウィデント国にブルス国を侵略する意志があるともとれる。

 ただ……、今は意識を切り替えなくては。まずはヒロインを助けなければならない。

「止めても着いてくるのでしょう? 先陣は私が切ります」

 仕方がないとでもいうように、ユリウスは腰に回していた手を放して、肩を竦めた。

「そして、危ないと思ったら自分たちのことは捨て置いて逃げろか?」

「はい」

 肯定する私に、ユリウスは仕方がないとでもいうように頷いた。

「わかった。まぁ、そんな事態にする気も無いけれどな」








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