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第20話 お父さんは途方に暮れる

「確かに、マクルメール子爵家なら、ディビットの婚約者を迎えるにはちょうどいいとは思う。お前に何か考えがあるのだろうと、言われた通り急ぎ正式な婚約の打診もした。だがな、あれだぞ?」

 私の問いに、ディビットの姿をしたアマリリスは気にする様子もなく肯定する。

「えぇ。あれですね」

「何とかなるレベルだと思えないのだが……」

 夜会で一度見た限りだが、その可憐な容姿とは裏腹の、淑女としてのマナーがなっていない様子は、それだけで十分見て取れた。

 理由なく王家主催の夜会を欠席させるわけにもいかず、マクルメール子爵が苦渋の決断で出席させたことも、裏から聞こえてきている。

 可憐な容姿に目をとめた後、マナーに眉をひそめ首を振り、愛妾としてならばと多くに嘲笑されたことも知っている。

 それをディビットの婚約者に? 人格に問題は無いと思うが、あれで公爵夫人が務まるわけがない。

「無理じゃないか? そもそも、正式に打診したあとに言うのもなんだが、リリアン嬢以外に、該当する令嬢がいないわけでは無いぞ?」

「確かに該当する令嬢はいますが、俺に合うのは彼女だと思いますよ。それに、彼女と婚約したことが耳に届けば、怒鳴り込んでくるでしょうし」

 そういって楽しそうに笑う。

 怒鳴り込んでくるってことは、ディビットは嫌がるってことじゃないのか?

「しかしなぁ~。マクルメール子爵家には悪いが、今から断りを入れても……」

「それはダメです。今、彼女を手元から出すわけにはいきません」

 否定の言葉に首を傾げる。

「リリアン嬢にこだわる理由が?」

 ちらりと周囲に視線を走らせるのをみて、大丈夫だと教えるように私は頷く。

 安全の為、アマリリスと二人で話すときは、完全な人払いを命じてある。

「彼女には夢渡りの力があります」

「夢渡り?」

 そんな能力は聞いたことがないが…… 精神干渉系の魔法か?

「何を見るかは本人に選択することはできませんが、過去に限定しての出来事を誰かの目を通してみることです。主に睡眠をとっている間に無意識下で自動的に発動する治癒魔法の資質を持つものの中でも特に力が強い人間の15歳から18歳までの間に現れる能力の一種です」

 そんな能力あったか? しかも期間がやけに具体的とも思うが、治癒魔法は適性のあるものが少なく、適性があったとしても非常に扱いにくい魔法だということは知っているので、絶対にないとも言い切れない。しかし……

「なぜ、それをお前が知っている?」

 私の問いに微笑むだけで答える気はない様子に、息を吐き出す。

「自分の子供の言葉だ。信用しよう。それで、リリアン嬢は何をみた?」

「王妃様のカップに側妃が何かを入れるのを。そのあと王妃様が倒れるところを」

 それは最初から疑われていることであるが、証拠がないため動けないことでもある。

 毒の入手経路も判明しなかった。

 子を産んでいなければ、側妃といえども家に戻すなり、厳しい取り調べをできたが、第二王子を生み落している以上、あまりにも強硬な手段はとれないまま、3年の時間が流れたのだ。

 しかたなく、当時は、その場に居合わせた侍女を一人王城から下がらせることで場を濁したのだ。

「そして、ジートル殿下の父親のことも」

「陛下が側妃と共謀しているとでも?」

 責めるような私の声に、アマリリスはゆっくり首を横に振る。

「ジートル殿下の父親は、王弟殿下ですよ」

「シャルハム殿下だと!?」

 予想外の名前に驚く。 

 ナターシャ側妃の元へ、義務として陛下が訪れることはあったが、子が出来ぬように日を選んでいたのに身ごもってしまったと、こぼしていたことはあった。

 ナターシャ側妃の不貞を疑ったりもしたが、生まれてきたのは王家の資質を継いだ容姿のジートル殿下。日を選んだところで絶対に子をなすことはないと言えないことから、陛下の子だと思っていたのだが……

「この件は、私預かりにする。お前はかかわらないように」

 厳しく告げた言葉に、アマリリスが頷くのを確認すると、私は急ぎ部屋を出た。

 あくまでリリアン嬢が見たのは夢なのだ。それだけで事実と決めつけるわけにはいかない。

 確認を取らなければならない。そして、それが事実であるのなら…… 最悪の事態を招く可能性があるのだ。




主人公はヒロインの乙女ゲーム知識を、夢渡りの力と言って父親に説明しています。

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