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第17話 悪役令嬢VSヒロイン

 目の前には固まった状態のヒロイン。問答無用で引っ張ってきた彼女は、ソファーに座ることなく立ち尽くしている。その姿に侍女たちが困惑気な視線を送ってくる。

「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと緊張しているんだろう。あとは自分でやるから、もう下がっていいよ」

 私の言葉に、控えていた二人の侍女はギョッとした顔をする。

 まぁ…… ねぇ。 応接室でも、未婚の男女が二人きりというのは褒められたことではないのに、ここ、ディビットの私室だしね。

 これが権勢欲の強い家の令嬢だったら、私室に二人きりになったってことで、婚約ですねって乗り込んでくるレベルだもんね。ディビットは公爵家の嫡子だし身分も容姿も優良物件だし。

 今、侍女の片方がちらりと寝室へ続くドアを見たね。

 ――― なに? そんな風に私が見えてるわけ? 私にそんな趣味無いからね。まぁ、ディビットの姿でそんなこと言ったら、あらぬ疑いかけられそうだけどね。今までの女嫌いの行動から。

「姉の命の恩人に、失礼なことはしないよ。だから、もう下がっていいよ」

 二度同じことは言わせるなよ、って意味を込めて微笑んで見せれば、侍女たちは、しぶしぶとだが部屋を後にした。まぁ、彼女らなりにディビットのことを心配しているのだろう。

 きっと、その足で執事のバーランへと報告に向かうだろうから、あとはバーランが何とかしてくれるだろう。

まぁ、マクルメール子爵なら私室に二人きりになったと聞いても、婚約を! と乗り込んでくることは既成事実がなければしないだろうし。 

 まぁ噂が社交界に出回ったら相談ぐらいには来るだろうけど。

 ヒロインの腕を引いて歩いて屋敷まで来たから、目撃者多数だよね。まぁ、遅かれ早かれヒロインとディビットの噂は出回るかなぁ~。

 うん。ヒロインとディビットが婚約というのも、これから頻繁に会うことになることを考えればありだよね。

 弟が何を持って、ヒロインをビッチと呼んだのかは今のところ分からないけど、彼女そんなに悪い子ではないと思うし。

 私が毒で倒れたふりを装ったとき、悩むことなく治癒魔法かけた一連の出来事から見ても、人間性に問題ないように感じる。

 マクルメール子爵家は中立派なのも好都合だよね。

 陛下の前での態度や、色々見る限り、淑女教育はまるっきり出来てないけど、これからきっちり仕込めばいいし。

 淑女教育さえクリアできれば、ディビットの相手として、ちょうどいいかな。

 ディビットの女嫌いは筋金入りだし、家出している間に、誰か女を作るとも考えにくい。

 私が王太子妃になると、どうしてもディビットの結婚は勢力バランスを取るためにも、中立派の伯爵・子爵あたりからってことになる。できれば伯爵家でも家格が下の方が好ましい。男爵家はちょっと爵位が引くすぎて、どんな状況であっても公爵家の嫡子の相手、しかも姉が王太子妃という条件の中で選べば、なにかしら男爵家に問題が起こる可能性もある。

 それらを考慮するとマクルメール子爵家ってちょうどいいのよね。経済状態は良好だけど、家格は子爵家の中でも中間ぐらいだし。縁戚関係結んでる家も比較的まともな家が多い。マクルメール子爵自身が有能だから、問題も起こりにくいし。

 それに、家出したディビットの趣味嗜好意見の考慮の必要はないから条件面だけなら問題ないよね。

 お父様に相談してみようかしら。

 それに、デイビットもヒロインも転生者だし。まぁ私もだけど、なにかやった時にフォローしあえるだろうから、それもありかもしれないな。と考えていたら、ヒロインが我に返ったように部屋の中をキョロキョロと見回す。

「え!! ここはディビット様の部屋!? 心の準備が…… 今日ってどんな下着を身に着けてたかしら。そんな! 淑女としてそれはダメよリリアン! ディビット様今日はもう帰らせていただきますね」

 頬を染めて言ってるのは良いけど、ヒロイン、棒読みだからね。それで騙そうっての無理だからね。

「リリアン嬢。 まずはソファーに座ってください。そして、なぜ王妃様が毒殺されたと口にしたのかか答えていただきたい」

 私の冷たげな物言いに、ヒロインは『ちっ』と舌打ちして、観念したように、ソファーに腰かけた。

 マクルメール子爵家、本当に彼女に淑女教育してるの? 

 街で、ヒロインの意図通りに、話題転換にのって彼女がディビットが公爵家子息だってことに気づいていることを流してあげても良かったんだよ。

 社交界デビューまだの公爵家の嫡子を、親しくもない家柄でありながら、つい最近まで市井で暮らしてきていた少女が知っているってことは異常だけれど、ヒロインが転生者だと知っているこちらとしては、なんの危険性もないことだと判断できたからね。

 ヒロイン野放しにしておいても、まぁ、どうしてもって時はいくらでもやりようはあるし、公爵家的には問題だけど、私が断罪されようが修道院送りにされようが私的には問題ない。

 まぁディビットがあまりにも修道院気にするから、お父様に、ちょっとお掃除お願いしましたけど。

 でもね、ヒロインが王妃様が毒殺されたことを知っているっていうのは見逃せなかった。

 ディビットが残したノートと現実の一番の違いは、王妃様の不在とジートル殿下が王太子殿下と同腹でないこと。そして、それが今の政局の乱れの元になっているといっても過言ではない。 

 亡くなったのが側妃だと思っていたということも、あきらかに、ディビットの知らない何かをヒロインは知っているということだ。それは、ゲームでは確たる事実であり、えがかれることもなかったが、この世界ではifとして起きていること。その原因をヒロインは知っているということに他ならないのじゃないかって思えばこそ、ディビットの姿でありながら、逃がさないようにヒロインの腕を掴んでここまで連れてきた。

 前世の平成日本とは違い、ここでは、政治が乱れれば民に混乱や飢えが直結する。公爵家令嬢として見逃すわけにはいかない。

「で? 市井でつい最近まで暮らしてきた貴女が、なぜ毒殺の件を知っているのかな? 上位貴族であれば知っている者も多数いますが、それ以外はあくまでも噂話。それでも貴族までです。混乱を防ぐためにも市井にそんな噂は流れていないし、流させなかったはずです」

 私も転生者で、実はディビットではなくアマリリスであることを話せば、トントンと話は進むのだろうが、ヒロイン悪い子ではないし人間性に問題もないと思うけど、悪気なくうっかりと人前で話しちゃいそうだから教える気はない。

 まぁ、教えるとしたらディビットの振りをしたまま転生者であることまでが無難かな。それくらいなら思わずポロッと話してしまうことも、自分と一緒という危機感からなさそうだし。

「あー…… 夢の中で?」

「ごめん。よく聞こえなかったな」

「…………」

「もしかして犯人グループと繋がっているのかな? 俺と出逢ったのも何かの企みがあって? 俺としては、このまま君を近衛に渡して王妃毒殺の件で取り調べうけてもらってもいいんだよ?」

 話を進めるために、笑顔で少し脅してみたら、ヒロイン素早く土下座してきました。

「ごめんなさい~ ちょっとだけウハウハしたかっただけなんです~。ついでにモラハラ野郎を、もてあそんでポイしてみたかっただけです~~」


 ……………………うん? なんだって?







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