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第16話 ヒロインちゃん迷走する

 夜会の翌日、イベントをこなさねば!! と厳しくなった淑女教育を抜け出した。

 なんで淑女教育厳しくなったかな。

 最初に比べれば上達してると思うんだけどなぁ~

 今日のイベントは、男性に絡まれている女性を助けるってイベントなんだけど、昼間なんだから人もいっぱい居るんだし、私が助けるまでもなく、他の人が助けても良いと思うんだよね~

 でも、それじゃイベントにならないから助けなくていいのかなぁ。なんてことを考えながら歩いていたら、前方に男性二人に絡まれている女性を発見!! 

 もう!! まわりに大勢、人がいるのに怯えて誰も助けないだなんて信じられない!! 

 ダッシュで女性と男性の間に体を割り込ませて手を広げる。

「ちょっと! あんたたち男二人で女性に対して何してんのよ!!」

 私の登場に怯む男達。そんなに強そうに見えるのかな私。あ、それとも貴族令嬢としてのオーラに押されているとか?

 視線をさ迷わせたあと、急に逃げ出した男たち。

 逃げるの早くない?イベントだからこんなもんなの?? とにかく追いかけなきゃ。

「待ちなさいよ! 衛兵につきだしてあげるんだから!」

 足の速さには自信があるんだからね!! 

 逃げる男たちが意外なほどに足が速いから夢中になって追いかける。絶対衛兵につきだしてやる!

 ―――― ん? ちょっとまって捕まえたらイベントじゃないよね? ここってゲームだとすぐに転んでなかったっけ?

 っていうか、かなり最初の場所から離れちゃったんだけど…… 心配になって立ち止まって後ろを見れば走ってくるディビットの姿。

 おぉ! さすがイベント!! あとは私が転ぶだけだね。

 ちょっとわざとらしいかな? とは思ったけど二、三歩進んで転んでみる。

 すると、差し出される手。

 おおぅ。これこれ! スチルであったよね~

 「勇気と無謀は違うよ。またあったね貴族の御嬢さん」

 そういって困ったように笑うディビット。ん? ゲームだと普通の笑顔だった気がするんだけど……

 まぁ、いいか。

 デイビットの手を握り立たせてもらう。ヤバい!! ゲームより、最初に逢った時よりディビットがかっこよく見える! なんか色気が!!

 思わず悶えそうになる理性を引き留めるように、「…… あぁ よかったわ」と女性の声。

 さっき絡まれていた女性の人。もしかして、心配して追いかけてきてくれたのかな。

「助けてくれてありがとう。 追いかけて行くからびっくりしちゃったわ。親御さんが悲しむような危ないことはしないでね。でも、さっきは本当に助かったわ。どうしようかとおもったから」

 そんな感謝されると照れちゃいます。スカートの土ぼこりまで丁寧に払ってくれて、さらにお礼を述べて去っていく女性。うふふふふ、素敵な女性を助けられたと思うとさらに嬉しくなるね。


 はっ! なにかディビットに話しかけないと。

 このままだと、すぐに『屋敷に送ってくよ』とか言われそうだ! 

 ゲームでは助け起こされたあと、屋敷まで送ってもらって、バイバイするストーリーだったから、それって黙ってたら、危ないよとか何とか言われて、屋敷に送られて今日のイベントおしまいってことだよね? それはダメだ!! ゲームには無かったけど、お茶とかお茶とかお茶とかしたーい! だって、まだ屋敷から抜け出したばかりなのに送りかえされてたまるか!! 

 しかし…… 共通の話題ってなに? ゲームのシナリオにないことだと何話していいかわからないよぉ。共通の話題…… 共通の話題? あ~ あるじゃん!

「あ…… あの! お姉さんは、その後大丈夫ですか!?」

 しかもさりげなくお姉さんを心配する優しさと、実は私が完全に治せなかったけど助けたんだよ! 的なアピール! アマリリス、傷跡残ってなかったし、良い子だったし、ってことは姉弟仲も良いってことだよね? アマリリスから聞いていて、姉を助けてくれたのは~~ なんて話題が広がって、立ち話もなんだから、お茶でも! みたいな流れになって~ 

 うふふふ~ アピールアピール ………… あれ? なんかディビットがこっち凝視してんだけど?

 なんで??


 しまった!! 今の私、ディビットが公爵家の子息だなんて知らないはずじゃん!! たしかこの後にあるお茶会のイベントで貴族だってことを知って、公爵家の子息だってことを知るのはディビットが学園に入ってきてから……

 最初に逢ったときだって、シナリオ通り、私、ちゃんと商家の息子だって勘違いしたやりとりしてたよ……

 やばい…… ヒロイン枠から不審人物に私なりかけてるんじゃ!?

「あ! ごめんなさい!! ちょっと勘違いです!!」

 慌てて首を横に振るけど…… そうだよね…… 無理だよね。

 ということは! これよりも更にインパクトのある話題で、さっきのことは忘れてもらう方向で! 

 っていっても、そんな話題に心当たりないよ~~ っていうか夜会で毒殺未遂なんてものよりインパクトのある話題って何!? だいたいなんで毒殺なんてしようと思うんだよ~ 

 アマリリス狙ったのか、偶然アマリリスだったのかはしらないけど、毒殺なんてこと考える時点で貴族怖いよ~

 アマリリス無事だったから良いけどさぁ。 時間かかるけど毒で爛れちゃったところも治るみたいだし。

 そうか!! 毒殺未遂よりインパクトのある話題って言ったら毒殺だよね!?

「そういえば、夕べ、夜会に参加した時に壇上に王妃様がいなかったので、不思議に思っていたら、3年前に王妃様が亡くなったって聞いてびっくりしましたわ。国中が喪に服していたのは知っていましたけど、その頃、母が体調を崩し始めたものですから、誰の喪に服してるかだなんて気にも留めていられなくて…… ですから、てっきり側妃様が毒で亡くなられたとばかり思っていましたわ」

 おし!! 貴族令嬢な話し方かつ、母親を心配する心優しき娘アピール! しかも遠まわしに王妃様毒殺されちゃったよねのインパクト! どうだ! 3年前だけど、この話題に食いついてくれ!! そして、さっきの話題はわすれて…… く ……れ?

 あれ?? もしかして…… 墓穴を掘った?

 あ! でもディビット超良い笑顔。

「こんなところで立ち話もなんだから、ぜひ、屋敷によってお茶でもいかがかな。大丈夫、マクルメール子爵家には使いの者を出すし、帰りは馬車で送っていくから、遅くなっても問題ないよ」

 ―――― ですよね~ シナリオ以外の言動を取った数分前の自分を全力で止めたい。無理だけどさ……



 

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