表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/53

第11話 ヒロインちゃん悩む

 前世の記憶が湧いて出たのは、お母さんが倒れた時だった。

 お母さんが倒れてどうしようと気分は焦るし、前世の記憶が出てきたことで、痛感するこの世界の不便さ。

 水道が無い! 電気がない! ガスがない! バスは? 電車は? は!? 馬車? 馬? 乗れるわけないじゃん!! え!? 病院もないの? 診療所は? 無い? 医者はいるけど平民がかかるにはお金がかかって無理だ? 代わりに病気した時は薬屋がある? へ~ ……え? なにこれ?? こんなの飲めるわけないじゃん!!

 そんな世界だからトイレがウオシュレットじゃないのは納得できるけど、このナイナイ尽くしの世界の中で、自宅にトイレがないってことに思い至った時は正気か!? と言いたくなった。

 管理が大変? 個人じゃ無理? だからって国が管理する共同トイレが一定間隔にあるだろ? 病人をそこまで歩かせろと? は? オマルを使って捨てに行く?

 あ――。オマルはあるんだ。

 便利なものはことごとく無いけど、この世界には魔法があった。

 医者は主に治癒魔法を使う人を指すらしい。医者だって名乗っても治癒魔法が使えなければ半人前扱い。

 へー。治癒魔法。ふーん。なら自分で治癒魔法使えばいいじゃん! お金だって稼げるんでしょ? 

え? 適性がないと使えない? 勉強しないと逆に命を奪う可能性もある? もぐりもいるけど、一応、国からの許可制だ?


 あ――。もうお母さんに使っちゃった。だって使えたんだもん。


 なんてことがあったら、父親と名乗る男が迎えに来た。

うーん。ちょっとまって、これってさ、あれだよね。

 私が好きだった乙女ゲーム。

 母親を亡くした少女が貴族の父親に引き取られるという定番のものだったけど、人気イラストレーターと人気声優の起用と前作には無かった癒しを求めて売れたゲーム。。

 ゲームが全年齢対象だったこともあって、その人気から小中学生を対象とした雑誌でときめきを補うように漫画化したけど、ゲームの裏設定が漫画では描けなかったことから小説化していて、ゲームと一緒に堪能して悶えた記憶がある。

 

 私が、そのヒロインらしい!!


 え? お母さん? 病気する前より元気になったよ。

 手当たり次第に病名言って治れ~って念じてみた。

 お母さんの病気を治せたのも前世情報とヒロイン特典が重なったからだよね~。


 ゲームは主人公の名前は自由に設定できていたけど、設定しなければマリア。

 漫画版だと、ルートを一番人気の王子様に固定した為の配慮なのか、別の意図があるのか、名前がユリア。『マ』が『ユ』になっただけだけど……

 小説版だと騎士を目指す伯爵家の次男のエリオットのルートで、また名前が違っていて、マリアンヌ。ゲーム版の『マリア』に『ンヌ』つけただけだけど…… 

 ちなみに、好感度が上がった時の愛称は、全部『リア』

 全部同じ名前でよくね?

 今までなんでヒロインであることに気が付かなかったかと言えば、私の名前が『リリアン』だったから。愛称? お母さんや仲のいい人からは『リリー』って呼ばれてます。でも、攻略対象が呼ぶときは『リア』になるんじゃない?

 でも、『2』のゲームのヒロインでマジよかった。

 この『ガラス細工の乙女たち』には『1』と呼ばれる同じ世界観の前作『線上のガラス細工の乙女』もあって、人気のイラストレーターに、人気の声優取り揃えて発売されたそれを、私も迷わず前世では購入した。そして…… 泣いた。

 精神が病みそうになった。1は年齢制限がDで17歳以上対象だった。

 ヒロインは生粋の庶民で攻略対象は王太子とその側近。で、悪役令嬢は隣国のお姫様から国内の公爵侯爵令嬢たち。そして攻略対象と同時に好感度と信頼度を上げなきゃならないのが、攻略対象を攻略して結ばれるときのために養子先となる候爵家の嫡男。

 このゲーム、ヒロインのバッドエンドが多彩だった。

 事故死、病死に見せかけた毒死、刺殺、処刑、餓死、暗殺。冤罪によっての獄死。攻略対象を庇っての毒死、攻略対象同士がヒロインを争っての決闘に割り込んで切られて死亡。

 薬によって意識を失い、目を覚ますシナリオの時は、これで悪役令嬢たちが断罪されてハッピーエンドと思ったら娼館落ちのバットエンドだった。

 まぁ…… その分、ハッピーエンドは甘々でしたけど。そこに至るまでが攻略情報片手にやらないと無理といった品物だった。

 


 お母さんは元貴族だ。元って言っても、裕福ではない男爵家の4女。貴族としての嫁入り先が見つからず、実家にもいることができなければ、平民になるしかないのが弱小貴族の嫡子や長女ではない子供の運命だ。それでも、男性なら兵士や騎士、高位貴族や裕福な貴族の侍従として。女性なら同じように侍女として勤め先がないわけではない。

 お母さんもマクルメール子爵家の侍女として奉公に出た。そこで、二人の間に恋愛感情があったらしく、私を授かることになったらしい。

 で、正妻さんにまだ子供がいなかったこともあって、お母さんは正妻から家を追い出されたらしい。

 うん、ゲームでも漫画でも、小説でも、ここらへん書かれていた。なのに、なんで全部『らしい』って言い方になるかというと、ゲーム通りなら亡くなっていたお母さんが生きていて、私には子爵家へ行くことを進める癖に、一緒にマクルメール子爵家に行くことを拒否ってるからです。

 正妻は嫡子である、腹違いの私の弟を産んだ後に事故で亡くなっているので、そこらへんが原因ではないと思うから、本当は子爵とお母さんの間に恋愛感情が無くて無理やりやられちゃったか、ゲームの強制力で、本来なら亡くなっているはずのお母さんが子爵家にこれなくなってるかのどっちかだと思うんだけど……どっちだろう? それによって父親である男を見る目が変わるんだけど。

 とりあえず、なんかお母さんと子爵との間で私が引き取られることは決定した。なんでも治癒魔法の適格者が市井にいるのは危ないらしい。

 それならと、お母さんに月々の援助をすることを子爵に私は約束させた。子爵もそれは考えていたとすんなり受けてくれたから……うーん。子爵を見てる限り、お母さんのこと好きっぽいけど。お母さんも子爵と一緒にいるのを嫌がってるというより、まんざらでもなさそうなんだけど……なら一緒に子爵家にきて、子爵と結婚しちゃえばいいのにって思う。そしたら、私も素直にお父さんって呼べるんだけど。

 そんなこんなで子爵家に引き取られ、淑女教育だ、勉強だ、ダンスだと詰め込み教育。ビバ前世!魔法と歴史以外の勉強と淑女教育とダンス以外は楽勝!! これには子爵もびっくりしていたね。

 まぁ…… 対外的にお母さんが亡くなってるってことにされたのはムカついたけれど、市井に残るお母さんの身の安全を守るためにもなるって言われて納得した。

 で、私は思ったわけだ。この『ガラス細工の乙女たち』には逆ハールートが無い。でも、ゲームの世界であってゲームではないココだったら、逆ハーできるんじゃないかなって。

 これくらいのご褒美あってもいいと思うし…… それにね~ 私が攻略対象を攻略した方が良いと思うんだよね。 特に、メインの第二王子ジートルと候爵家の三男のメリル。子爵家嫡男のベイクの三人は特に。オマケで公爵家のディビットと伯爵家の次男エリオットも攻略しちゃおう!! 

 そうと決めれば淑女教育逃げ出さねば!! べつに淑女教育が嫌で逃げ出すわけじゃないもん!!


 無事にディビットにも逢えて、今度の勝負は、王家主催の夜会での社交界デビュー!

 ここで、第二王子ルートとディビットルートの悪役令嬢であり、ディビットの姉でもあるアマリリスから嫌味を言われて、躓いたふりをしてわざとドレスに飲み物をかけられるのが、誰のルートでも共通。

 

 そう…… 共通なんだけどね?

 夜会が始まったのに、アマリリスの特徴である手袋と、顔を隠すベールをつけてる人がいない……。

 ドレスに合わせて手袋をしている人はいるよ? でもベールつけてないし、年齢的にも違う。

 しかも、王妃様が壇上にいない。不思議に思って子爵に聞いたら3年前に亡くなったって。

 え? 亡くなったのって側室じゃなくて王妃様?? なんで?

 まぁ、とりあえず、そのことは置いておいて、アマリリスどこ~ と思っていたら、なんかいきなり隣で飲み物飲んでた可愛い女の子が、血を吐いて倒れたんだけど…… 

 え? なに? どうしたの?

 え!? この女の子がアマリリス?? え!?


 疑問は尽きないけど、まずは人命救助だよね?

 



 

 





 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ