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観察者との対話

観察者との対話その2

作者: 真澄

 気が付くと、また白い空間にいた。なんでまたこんなところに来たのか、自分でも不思議に思う。しばらくすると、また福禄寿のような影が現れた。


「お前また来たのか。あまり深酒をすると意識が壊れるぞ」

「はぁ、深酒した覚えはないのですけれど。ところで今回も私一人なのですか。深酒したり変な薬で気持ちよくなってる人って、この時間ならたくさんいると思いますけど?」

「分身の術、えい! 」

「いえ、いいですよぉ。子供向けの忍者番組みたいなことしてくれなくても。福禄寿様に囲まれてもうれしくないです」

「楽しくなかったか。理由は無意識はつながっているからじゃ」

「ここで、ユング心理学の講義が始まるのですか」

「いいんや、言ってみたかっただけじゃ。ここで多くの意識が入り乱れて喧嘩されてもかなわんからな。対話するのは、一対一じゃ」

「確かに、一対一のほうが沢山いろんなことが聞けて嬉しいですけど。ところで、なんで福禄寿様が観察者なんですか? 」

「別に儂は福禄寿ではないぞ。お前の中で世界を見つめている存在のイメージが福禄寿だったのだろう。希望があればなんにでもなれるが・・・」

「わー、なんで形成前のコンニャクみたいになってるんですか。いいですよぉ、小さい頃から見慣れている福禄寿様でいいですよ」

「そうか、残念じゃ。何ならギリシャ彫刻みたいな存在にでもなれたのに」

「観察者様も美男子になりたいのですか」

「見目麗しい存在になりたくない者がおるのか? 」

「それは、どうですかねぇ。それはそうとまたここに来れたのですから、別の世界の話を聞きたいのですけれど」

「生き残った者が、先に死んだものを羨むような世界の終末戦争の話とかはどうじゃ」

「どこかで聞いたようなセリフですが。いいです、そんな怖い話。昔その怖い話を聞いて、『黙示録』なんてものを著した人いませんでしたか? 」

「儂から聞いた話をその後どうしたかまでは、知らんがなぁ」


「そうですか。もっと何か別な世界がいいです。未来に希望が持てるような話はないのですか」

「未来に希望を持ちたいじゃとな。生まれたものは、いつかは消えるのじゃ。宇宙もその中の星々も、もちろん太陽も地球も。種としても寿命もあるのじゃ。人にも種としての寿命がある。種としての寿命が尽きるのが先か、外的要因で消えるのが先か。それは観察者である儂には分からん。お前たちの世界の話をすれば、ティラノサウルスは種としての寿命をもう少しで終えようとしたいた。あれは、弱い肉食恐竜だったのが、いつの間にやら生態系の頂点になった種じゃ。ところが一番の存在になったらどうじゃ。縄張りや獲物の取り合いで、お互いに殺し合い共食いを始めた。その頃隕石が落ちてきて、絶滅したがな」

「なんだか、人も種としての寿命が尽きようとしているのですか? 」

「儂には何とも言えん。今まで観測してきた世界の人は、このまま争って滅亡してしまった世界もあった。また、話し合いで争いを避けた世界もあった。滅亡しかけて、種としての最後の期間を力を合わせて過ごした世界もあった。お前たちの世界がどの道を進むのかは、儂にはわからん」

「そんなこと聞いたら、深酒の回数が増えるじゃないですか」

「二日酔いで日々を過ごしていても、悔いがないならそれでも良いがな」

「はぁ・・・」

 ため息のような返事をすると、周りが暗くなっていく。


 目覚まし時計が、起きる時間を知らせていた。観察者が言っていたように、未だに来ないことを憂いていても仕方がないのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品を読んで なるほど!こういう書き方もあるのか! と思いました この観察者は、一体何故観察者になったのか? そして何故一人きりなのか? 色々と裏設定を考えてしまいますね~~
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