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救世のカケラ  作者: 長谷川伊織
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第2話:【竜王の冠】〜ドラゴンズクラウン〜

「ほら!イオ君早く!!」


出会って数時間の少女にそう急かされながら、オレは少女の後を追いかけ、街はずれにあるとは思えない程賑やかな建物へと入っていく。


「なぁリツ、本当にこんな簡単にギルドに入れるのか?」


「大丈夫だって、私に任せなさい!」


彼女は得意げにそう言い、ある1人の男(と言ってもオレは数時間にこの男を見かけているが)の前で立ち止まった。


「ねえアイク、マスターはどこ?」


「ん?あぁリツか。マスターなら今日の朝からギルド間のなんとかがどうとかって…」


「ええーマスター居ないの?どうしよう。」


「なんだ?マスターに用でもあったのか?て言うかそいつは何者だ?」


やっとアイクと呼ばれるその男の視界にオレの存在が認識され、彼の形のいい眉がクイッと持ち上がった。

このアイクと呼ばれる男は身長がかなり高く、筋肉質だが人の良さそうな男だ。顔は顎髭を生やした男らしい顔立ちで、ネイビーの髪を後ろに流している。

中性的で、銀色の髪を持つオレとは似てもにつかない。


「この人をギルドに誘ったの。」


「ほぉ、ならマスターの代わりに俺が手続きしてやるよ。」


男はそう言い放ち、近くの椅子に腰掛け、手でオレの事を呼んでいる。リツの方を見ると彼女はゆっくり頷くので、オレは言われるままに男の正面に座った。


「さて、まず自己紹介からだ。俺はアイク・セルグル。このギルドの術者で、魔導士だ。君は?」


「オレはイオ・ハルトフェンゼンといいます。聖者です。」


そう答えると男は少し嬉しそうに問いかけてきた。


「おぉ!お前聖者か、今このギルドには聖者が少なくてな、大歓迎だ。それでお前はどの神の恩恵なんだ?」


「オレはハスター神の恩恵を受けています。」


「んーあまり聞いたことがない恩恵だな。どんな力をなんだ?」


「契約した者の力を体に宿す神気です。」


「でもお前さんよ、同じ力を持つ魔導士なら魔獣やらなんやらに化けられるが、聖者となると契約結ぶの難しくないか?聖獣なんて滅多に出てこないぞ。」


男の言う通りだった。オレの神気は契約を結んだ者の力を身に宿せるが、神気を操る神族とその守護獣達と契約を結ぶのはそう簡単な事ではない。本来、神界、魔界共に自由に行き来はできないが、魔族の中には空間の狭間を無理矢理抜け、下界で生きる者も少なくない。魔導士であればその魔族と契約を結ぶ事ができるが聖者であるオレにはそれができない。


「一応一つだけ強い力と契約を結んでいます。」


「誰の力だ?」


「主天使ラファエルの力です。戦闘系ではなく回復系の力ですが。」


「おお、良いじゃねえか。聖者っぽくてよお。んでどうすんだ?うちのギルドに加入するってことで良いのか?」


「はい!よろしくお願いします!」


「よし、分かった。それじゃあこのリングをお前に授ける。」


男、改めアイクから手渡されたそれは外で見た旗に描かれていた物と同じ紋章が彫られている。


「それを肌身離さず持っていろ。そのリングが俺達、ドラゴンズクラウンの仲間の証だ。」


「ありがとう!」


オレは早速右手の中指にそのリングをはめた。


「ところで質問なんですが、どうして他のギルドは有名な神族や魔族の名前をギルド名にしているのにこのギルドはドラゴンなんですか?」


「もう仲間なんだからそんな堅苦しい話方じゃなくていいぜ?んで、なぜギルド名が神族や魔族ではなく竜なのか、か。お前、どうして神族と魔族が下界の者に力を与えたのか知ってるか?」


「い、いや。知りませ……ンンッ、知らないけど。」


「ならまずその話からしないとな。」


アイクはそう言うと、建物の奥へ消えていった。

しばらくして戻ってきたアイクの手には光る小さな結晶が握られていた。


「こいつはな、救世のカケラって呼ばれる物だ。その昔、まだ神族と魔族が敵対していた頃の事だ。当時神族にも魔族にもそれぞれ悪に染まってしまった者がいてな、それぞれ悪神、悪魔なんて呼ばれていたんだ。最初はそんなのはごく一部の者だけでな、力で簡単にねじ伏せられたんだ。でも次第に悪は勢力を増やし、ついに悪神と悪魔が手を結ぶ事になってしまった。そうなると神族も魔族も自分達だけでは対処しきれなくなってしまったんだ。そこで初めて、今まで敵対していた神族と魔族が手を結ぶ事になる。そして大きな戦争、後にラグナロクと呼ばれる事になる大戦争が始まったんだ。開戦後何百年にもわたる戦いの末、押されつつあった神族、魔族の同盟は最後の手段に出た。神気の源である神玉と魔法の源である魔玉を唯一、神族と魔族に対抗できる勢力であった竜族に託した。あまり戦いを好まない竜族の長、竜王であったが、余りにも長い戦いに終止符を打とうと、2つの玉の力を使い、悪神、悪魔を一夜にして葬り去った。こうして戦いは終わりを迎えるが、神玉と魔玉は砕け散り、下界に散らばってしまった。そして、玉を失った2種族は大幅に力を失い、下界への移動ができなくなってしまった。だから彼らは下界の者の助けを求めることにしたんだ。下界の者に自らの力の一部を与え、玉のカケラを探させているんだ。この世界を救った玉の欠片を人々は救世のカケラと呼ぶ。その一部がこれだ。ここまでは分かったか?」


長い昔話に頭が潰れそうだったが、どうにか内容を把握したオレはまだ答えられていない疑問を再び投げかける。


「う、うん、なんとか。でもそれとギルドの名前、どう関係してるんだ?」


「さっき最後に戦いを決めたのは竜王だと言ったろ?俺達はその竜王の様に、ちゃんとこの戦い、救世のカケラの収集を終わらせる為に結成されたんだ。だから竜王の冠、ドラゴンズクラウンなんだ。」


「へぇ〜そうだったんだ。」


急にリツが入って来た。


「なんだよリツ、知らなかったのかよ。」


「うん、ちゃんと聞く機会がなくてね」



アイクとの話が終わり、オレは外に出た。救世のカケラなんてスケールの大きい話、実際よくわからなかったが、このギルドに入った事でオレの人生は一変する。そんな予感がしていた。

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