僕の彼女は美しい
僕の彼女は美しい。
○
軽々とした足取りで坂道を登る。
僕たちの住んでいる地域は山の近くにあるため、短いのから長いの、緩いのから急なのまで、とにかく坂が多い。
そのため坂を登るのは楽勝だ、というのは嘘だけど、平地民よりは脚力は優れている。
長い坂を途中まで登り、右に曲がる。
白の壁が特徴の可愛らしい家の前で止まった。
髪と服装を整え、カメラ付きのチャイムを鳴らした。
「はーい」と中から声がした。
凛とした、綺麗な声。
○
僕には彼女がいる。
玄関の扉が開いた。
中から出てきた女の子。鈴宮流季。
素敵な名前だろう。
長くて綺麗な黒髪は結ばずに下ろしてある。
服装は整っていて、制服を規定を守って着ている。
美しいのだ。溜め息が出る程。
僕の彼女は美しい。美しい。
大事なので2回言った。
もう何度でも言ってやる。
今僕は、リア充爆発しろと言われている時代の勝ち組なのだ。
罵ってもらっても構わない。事実なのだから。
自己満足に浸っていると、彼女が声をかけてきた。
「ゆかりくんおはよう。目がとろーんってしてるけど、眠たいの?」
不思議そうに首をかしげる彼女。
違う、美しい流季に見とれていたのだ。
と言いたいところだが、今は我慢しよう。
「少し、眠たいかな?じゃあいこっか」
歩幅を彼女に合わせて歩く。
僕にももうそろそろ彼氏としての余裕が欲しいな。
○
彼女と初めて話したのは、生徒会の顔合わせのとき。
こう見えて僕は副生徒会長なのだ。
そして、流季が生徒会長。
素敵だろう。
付き合い始めたのはそれから1ヶ月くらい過ぎた頃だろうか。
先に惚れたのは僕の方。一目惚れだ。
必死にアタックしに行ったが、見事に打ち返された。
「今は恋愛をしている暇はないの。ごめんね」
確かにそうだった。
入学シーズンはとても忙しい。
だったらその後なら良いだろうと、今度はゴールデンウイーク明けから再び猛アタックをした。
先に折れたのは彼女の方だった。
困ったように笑い、オッケーをくれた。
無理矢理感がすごいのだが、今こうして隣にいてくれるのが証拠。
朝一緒に登校するのを提案してくれたのも彼女の方だった。
気が付けばいつも隣にいてくれる。
言葉で言わなくてもきっと、お互いが好きでいるのだろう。