魔女4
感想頂きましたレフェル様。並びにこのお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
タグに残酷な描写ありを追加します。
しばらく見守っていると、兵達がボク達に弓矢を射かけてきた。弓矢で射殺すつもりなのだろうか?しかし、弓矢が届くよりも早く水の膜の様なものが砦を覆い矢を通さなかった。
「これはカウスさんが?」
「ええ。」
こうしてみると、魔女が使う異能の力って便利だな。
そう思っていたら、カウスさんは両手を重ねて前につき出してまるで西洋の弓を引いてるかのような動作をする。その時、風がカウスさんに巻きついて弓矢を形成する。
「シッ!!」
カウスさんが放った風の矢が高速で迫り兵隊複数貫通したらしい。兵隊の何人かが貫かれた所を抑え呻いていた。その様を見た他の兵隊の足が止まる。
そこへ火の玉や雷光、風の槌等が雨霰と降り注ぐ。そこにカウスさんの支援も加わり、前線も保てなくなったらしい。
大慌てで兵隊達が退散していく。後に残されたのは手足を怪我して動けぬものや体を焼かれた遺体ぐらいだ。戦いが終ったことに安堵しながら見張り台から降りた時、
「姉様ー!!」
後からカウスさんを追いかけてきた女の子達が駆けつけてきた。
「姉様! 大丈夫ですか!」
「大丈夫よ。スバル達が頑張ってくれたお陰で掠り傷ひとつないわ。」
カウスさんに飛びつきながら問いかける女の子に優しく頭を撫でながら答える。
「それは良かったです。それで、姉様?」
そこまで言った女の子はボクに視線を向けた。
「このゴミ野郎は何者ですか?」
「アタシも聞きたいわよ。人間が何でカウス姉と一緒にいたのか。返答によってはあなたに族長の座を退いてもらうわ。」
大柄な女性がボクに品定めでもするように見ながら女の子の問いに同意する。
「私が召喚した子よ。私達に協力してくれるって。」
大柄な女性はカウスさんの答えに溜め息を吐いていた。
「やるな。とは言わないけど、せめてアタシかデネボラがいる時にやってほしかったわね。」
「それと、裸で寝る癖はともかく男を抱き枕にして寝るのはやめるように………。」
じゃうっ!!
言いかけたボクに赫い焔の槍が襲うので咄嗟に横に避ける。
「殺す!! たとえ視線とはいえ姉様を汚しただけでは飽き足らず、裸で無防備な姉様に抱き着こうとする変態は消し炭にしてやる!! アイシスでさえ姉様のおっぱいを拝めたこと無いのに!!」
なんかどす黒い嫉妬オーラを放ち性癖をカミングアウトしながら焔を集める。その焔が槍の形を取る。
「死になさ………。」
言いかけたアイシスちゃんの頭を誰かが抑える。そして、
ごきゅっ!
そんな音を上げながらアイシスちゃんの頭が真後ろを向く。ただし、体は正面を向いたままで。
「少しは静かにしなさいよ。」
呆れた表情で大柄な女性がアイシスちゃんの頭を放す。その瞬間、泡を吹きながら倒れた。
「ちょ、だ、大丈夫なの!」
「ん? 大丈夫。アイシス頑丈だし。」
頑丈ですむ問題かな?
「それより本気なの? アタシらに協力するって?」
「正直に言って好きになれないんだ。人とは違った力を使えるぐらいでカウスさん達を爪弾きする人達がそっちにつくぐらいならこっちにつこうと思っただけだよ。」
ボクの答えに女性はニヤリと笑い右手を差し出した。
「アタシはスバル。よろしくな。」
「ボクは風宮紅葉。モミジこちらこそよろしくお願いします。スバルさん。包帯と地面掘るものあります?」
「? あるにはあるけど、どうする気?」
「いくつか下さい。」
その言葉にスバルさんは近くにいる女の子に持ってくるように指示を出す。
待っている間に木の枝を折り棒を作る。
包帯とショベルを持ってきた女の子にお礼を言い、兵隊に近づいて手当てをする。
矢で撃ち抜かれた怪我した人には止血して、骨折した人は添え木を当てて、包帯で固定する。
「モミジ? 何で手当てを?」
「殺すつもりで襲いかかったから殺されたとしても自業自得だけど、まだ生きてるならその命を救うべきだと思う。」
ボクの言葉にスバルさんは微笑みを浮かべる。
「モミジさん。私も手伝います。」
カウスさんはそう申し出て手当てを手伝ってくれた。そのお陰で手当ての段階で亡くなる人はいなかった。そしてなくなった人を埋葬した。
「モミジさん。これが私達の戦争です。」
兵隊の亡骸を埋葬しながらカウスさんが口を開いた。
「人は私達を魔女と呼び魔女を殺すために兵隊を送り、
私達は殺されたくないから撃退する。
私達に手をかせばモミジさんは人間の敵になります。」
「全部わかってます。それでも、ボクも一緒に戦います。」
魔女も人も手を取り合い笑いあえる。その為に。ボクはカウスさんの手を取りそう宣言した。