表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
double blood  作者: 優緋
中学編 当たり前の日常を捨て
11/13

切花の黒い願い

 明け方のまだ暗い時間、切花はトボトボと歩いてきた。歩く時、足をあまり上げてないから、シャリシャリと小石を蹴ってしまっている。


 調査隊の人達の血を頭から浴びて、それが固まって、服は黒くなっている。

(何で、助けられると思いあがったんだろう)

 大落獣たいらくけもの禍津まがつは、私だけ殺さなかった。しかも最後に逃げる私を見て笑ったんだ。その歪んだ笑みが脳裏から離れない。

 伏魔師としてのプライドも外聞もなく必死に逃げた。

 逃げるだけしかできない自分が悔しかった。

(それでも、あいつは絶対殺す。どんな手を使っても絶対!)


(遅いなぁ……)

 ペンションの割り当てられた部屋で、窓枠に寄りかかりながら満は月を見ながら、切花を待っていた。

(……ん)

 僅かに漂ってきた匂いに満は反応する。

 確かめるようにもう一度臭いを嗅ぐ。間違いない。切花の匂いだ。

 すぐに窓枠から飛び降り、乱暴に扉を開けて、匂いのする外に飛び出した。


 たったったったっ……。

 軽快な足音を立て、切花の匂いのした林の中を一直線に走る。

(いた……)

 切花を見つけると速度を上げて駆け寄った。

「良かった。帰りが遅いから、心配したんだよ?」

 切花の肩に手を置いて、息を整える。

(あれ……?)

 返事がなくて、顔を上げると、切花の青ざめた顔。

「どう、したの……?」

「皆、死んだ。私の前で……」

 言われれば、確かに切花からは別の人の血の臭いもする。黒く固まっているのは、切花のいう皆の血だろう。

「まぁ、そうなるだろ」

「……え?」

 満の答えは、予想外のものだった。

「……何っ、それ?最初から、こうなるって、わかってた、の?」

「ん~別にこうなるって、わかってたわけじゃない。ただ隣の山から、あたしが匂い嫌な感じがするって相当だなって思っただけ。少なくてもB級怪異存在以上の相手だろ?なら仕方がないって」

「わかってたなら、何で止めなかったの!」

「止めたら、やめるのか」

 そこには嘘を許さない強い光を放つ瞳。

「それは……」

「だろ?」

 すぅ~っと頭が冷えていく。

 ふと、冷たく冷静な満を見て、満なら倒せないかと思った。僅かな可能性だが、思ってしまったら頭を離れない。

「満は倒せない?」

 窺うようにそっと、顔をのぞきながら尋ねる。

 満は空を仰いで月を見る。明け方なので、もう月は輝いていないが見えるのは半分と少し。

「今日は無理」

「今日は、って何?明日なら勝てるとでも言うの!?」

「無理。後5、6日ってとこ」

「バカにして、お前もあれと同じ化物のくせに」

 切花は自分が何を言ったか気づいて、はっとして口を押さえた。

「まぁ、一応見てみるよ。それで、できそうならどうにかするよ」

 できるなら、力になりたいとは思っている。

(けど、たぶん無理だ)

 それでもついて行くことにしたのは切花の身を案じたからだ。

「とりあえず、風呂に入ってこい」

「うん」

 血がついているのはまずいので行った満に切花は頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ