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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Black Xmas

作者: 高月 満

初投稿です。

つけっぱなしのテレビからは浮かれたクリスマスソングが流れている。

けれど、私のこころはそれとは正反対に暗く沈んでいた。

数日前の、頭にこびりついて離れないあの光景のせいだ。


数日前、世間がクリスマス一色に染まっている中、私は1人イブに過ごす彼とのデートのための服を買いにきていた。

初めての彼氏と初めてのクリスマスデート

その事ばかり考えて1人でも、カップル達に負けないくらい浮かれまくっていた。

私のとなりを多くのカップルが通り過ぎる。

おそらく、ここの近くにあるイルミネーションを目当てにきているんだろう。

幸せそうなカップルとすれ違うたびに、自分もイブに同じように幸せになっているのだろうと口元が緩んだ。

(どうせならイルミネーションを見ていこうかな…いや、1人じゃさみしいか?)

そんなことを考えながら歩いていると、教会をもよおしたイルミネーションが見えてきた。

その周りは特にカップルが多かった。

(あれ…?)

多くのカップルの中の一組に見覚えのある人がいた。

それは、

彼だった。

しかも、1人ではなく、私の知らない女といる。

思わず私は立ち止まった。

そうして、呆然とする私の前で私の恋人は、私じゃない女とキスした。

およそ50メートル離れた場所で突っ立っている私に気がつかずに。

頭の中が無色になって、一瞬、自分がまわりに溶けて無くなってしまったように感じた。


彼は浮気をしていた。


それから3日たった。

彼とは会って無いしラインすら見ていない。というか見れない、見たくない。

「初彼と過ごす初めてのクリスマスシーズンがこれって最低でしょ」

誰もいない部屋で呟く。

その私の言葉が小さく反響した。

さんざん泣いて枯れたと思った涙がまた出てきた。

(もう、忘れちゃいたいよ)

あーあ、イブどうしよう。

こつりと、私は枕に頭を押し当てた。

意識がゆっくりと枕と一緒に沈んでいった。


(あれ…)

視界がぼんやりと霞んでいる。

(夢…かな…)

そんなことを思いながらまわりを見渡す。

後ろを向くと黒い姿のサンタさんがいた。

「君は何が欲しいかい?」

ニッコリと、不気味なほど優しく微笑んで。

サンタさんは私に尋ねた。

私はその問いに

「ー」


目を開けると見慣れた白い、天井だった。

(やっぱり夢か)


12月24日

私は鬱々した気持ちで待ち合わせ場所に向かった。

本当は行きたくはなかったけれど

ぼんやりとしながら歩く。

頭の中には相変わらずあの日の光景がいた。

待ち合わせ場所に着いて、私は彼とのラインのトーク画面を開いた。

そこには、

「ごめん、急用が入って今日行けなくなった。」



男は彼女へのラインを送信した。

「本当によかったの?」

男の腕に絡みついている女が尋ねる。

「大丈夫!行こ」

男は彼女とのデートを断ったことにこれっぽっちの罪悪感も抱いていなかった。

美人だけど物足りなくてつまらない。

それが男が今の彼女に抱いている気持ちだった。

今まで軽くて可愛い女の子としか付き合ったことのなかった男には合わなかったのだ。

(つまらない彼女とクリスマスを過ごすより、気軽にヤらせてくれるような軽い可愛い女の子の方がいいな)

そんなことを考えながら男は浮気相手と街へ遊びに出た。


12月25日

夜遅くまで遊んだ男と女は、ネットで予約していたホテルに入った。

「こちらのお部屋です。」

受付の係の店員が二人に鍵を渡した。

それを受け取ると、二人はその部屋に向かった。


「あれ、ここに置いておいた205号室のスペアキー知らない?」

ホテルの従業員がまわりに尋ねた。

「え、あれスペアだったんですか?今お客さんに渡してしまって…」

先程の受付係が答える。

「そうよ、そこの部屋もう別のお客さんが入ってるのよ。」


「一瞬で部屋に着いちゃえばいいのに」

エレベーターに乗っている時に女がアヒル口で言う。

「すぐに着くよ」

男はニヤニヤと笑って答えた。

そんな事を言っているうちにエレベーターは部屋のある階について、二人は部屋の前についた。

男は鍵を鍵穴に差し込んだ。

「あれ?」

開けたはずのドアが閉まってしまった。

(最初から開いてたのか…?)

男は少し不審に思ったが

「早く入ろうよー」

女に急かされてドアを開けた。

「…ねえ、なんか臭くない?」

女が言った。

確かにドアを開けた時に生臭いような、鉄臭いような匂いがむっとした。

「ちゃんと掃除してないんじゃね?」

そう言って男は部屋の中には入った。

「わあっ」

男は腰を抜かした。

「え、何…」

女は目を見開いてカタカタと震えた。

部屋の真ん中にあるどっしりとしたベッドの上には、

腹が割かれた女の死体が横たわっていた。

もちろん、この時二人は、

背後に生温かい濡れた包丁を持った男がいることに気がついていない。



12月24日

私は携帯の画面に映し出された一文を見て、笑った。

夢に出てきたサンタとの会話が浮かんだ。

「彼が私に2度と会えないようにして」

私はそう願った。

きっと今頃彼は浮気相手と一緒にいるんだろう。

私は彼の連絡先も、トーク履歴も、メールも、通話履歴も全て消した。

顔を上げると、澄んだ淡い色の冬の空が見えた。


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