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効率厨の職業案内

 『でけぇええ』


 『これはすごいなぁ』


 乗合馬車に揺られること15分、ようやく目的地『セントラル』の城壁が見えた。

 この町はβ時代最大の町であり、東西南北にそれぞれ通常の町の機能が丸ごと入っていたりする。

 そのうえ北西には城が存在し、この国『シルバランド』の王都という扱いになっていた。

 生産、採集施設がすべて周囲に存在し、現在見つかっている町で最多のサブクエストがあり、装備やアイテムも低級からハイエンドまで揃う。生産系のプレイヤーによる市もこの町が最も活気がある。

 あらゆる点で都合がよい町だ。

 外観は城壁で囲まれた城塞都市といった風情だ。MAPを見ればほぼ真円で、東西南北と城のある北西に大通りがあるのが特徴である。

 また、町の中央部には崩れた塔のような遺跡があり、二つの特徴的なダンジョンにつながっている。後述するが、そのうちの一つ『天覇の塔』の攻略が俺の最終目標だったりする。

 道と店の配置の関係で北側が最も活気があり、プレイヤーがもっとも多い地区だ。北門を抜けた外に広がる農園もプレイヤー管理のものが多い。

 逆に南側の一部はスラムのようになっており、この国唯一の盗賊ギルドもそこに存在していた。





 それからさらに5分かけて発着所へとたどり着くと、俺たちはクエストのため『イースの宿』へと足を運んだ。


 道中はそこまで込んではいなかったが、おそらくあと二、三日もすれば新規組みもここへと向かってくるだろう。


「うん、たしかに。これは報酬だよ」


≪クエストをクリアしました。≫

≪報酬:500G を獲得しました。≫

≪サブ職業:キャリアー に転職できます。≫


 出てきたYES/NOウィンドウのYESを押す。


≪サブ職業:キャリアー に転職しました≫


 さて、一度俺のステータスを見てみよう。


 ナナ/3Lv サモナー/キャリアー[][][][]

 STR10(+3)

 VIT1(+3)

 INT1

 AGI1

 DEX6

 MID1

 LUK15


 サブ職業の初期補正は5~10で、固有スキルが強力なキャリアーは補正値が低めだ。

 キャリアーが持つスキルの以下の1つだ。


≪荷物持ち:Lv1/10≫

パッシブスキル 所持重量制限+Lv×1000 STR+Lv×3 VIT+Lv×3


 サブ職業のスキルの熟練度上げは生産系なら生産で、採取系なら採取と戦闘以外を必要とするものが多い。

 しかしキャリアーはスキル補正なしの所持重量制限以上の重量を持つだけで黙っていても上げられる。これは破格といっていい上げやすさなのだ。

 無論、その代償なのか上限レベルは10と低目であり、最終的には他のより補正値が高い職に鞍替えするのがよいとされるが、促成を目指すなら取らない手はない。






『さてと、じゃあいったん解散だな。再集合は20時で』


『おっけー』


『了解だよ』


 現在時刻は17時を過ぎたところ、夕食などを差し引いてもかなり時間を空けた。

 当然することがあるからだ。


『ユウは≪ファイター≫と≪アドヴェンチャラー≫、シンは≪アルケミスト≫と≪アドヴェンチャラー≫、ちゃんととっておけよ』


『わかってるよ、行くだけでいいんだろ?』


『そうそう、メイン職業をサブで指定する場合はクエいらないから施設訪れるだけでOKだ』


 そう、サブ職業をそれぞれ2つ埋めるのだ。

 どの町にも最低一つ、この町には4つのメイン職用の施設が存在する。そこへ訪れることでサブ職業にメイン職業と同じものを指定することができるのだ。


 利点は、メイン職のスキルはどれもサブよりも性能が高いという点。

 例えば生産職メイン職≪ブラックスミス≫はスキル一つで≪鍛冶師≫と≪皮職人≫、≪服飾師≫の生産全部を行える。≪アルケミスト≫も≪練成師≫≪薬剤師≫≪人形使い≫の行える生産を全部行える。

 また攻撃スキルを取れば手数が増えるし、前衛でも魔法職をとれば魔法を使える。

 そのほか他の職では取れない有用なスキルや、いわゆる必殺技に近いスキルが増えるのがいい。


 欠点はまずスキルレベルの上限が1固定であること。このため熟練度を上げれば効果が劇的に上がるスキルは利用価値が下がってしまう。

 次にメイン職のスキルにはステータス補正が乗らないこと。これが一番大きい。

 無論メイン職のスキルの中にも≪物理攻撃力UP≫や≪魔法攻撃力UP≫といったパッシブで戦闘を有利にするスキルは存在する。しかし、それらはすべてパーセントで上昇するスキルとなっており、1レベルでは恩恵が薄い。

 サブ職業を鍛えていけば最終的に一つの職でステータスにトータルで100くらいの差が生じることになる。特に攻撃職においてはダメージに劇的な差ができやすい。


 故に、βではサブ職業を生産系1、採取系1、その他1、メイン職2が理想とされた。

 これはレベル上限が20のβだからで、上限が40まで上昇した正式オープンからはまた変わるのだろうが、上げやすさを考えればメイン職2つをサブに指定するのは間違っていないと思う。


 ユウが取ろうとしている≪ファイター≫は≪物理攻撃力UP≫や≪物理防御力UP≫、≪HPUP≫といった有用なパッシブスキルがそろっている上、≪パリィ≫、≪カウンター≫の他最終的には≪インヴァルネラブル≫といった強力な防御スキルがそろっている。そしてなんといって目玉である必殺スキル≪ファイナルストライク≫が強力だ。これがあるだけで狩り効率が大幅に変わるだろう。


 ≪アドヴェンチャラー≫のほうは移動ペナルティを軽減する≪局所移動≫やモンスターを調理できる≪ワイルドクック≫も強力だが、なんといっても目玉といえるのはターゲットを切ることができる≪死んだフリ≫だろう。生存率が上がるだけでなくいろいろといやらしい使い方ができるスキルだ。


 シンが取ろうとしている≪アルケミスト≫はこの場合銃を後から使うための代物だ。≪危険物取り扱い≫と≪リミッター解除≫による銃を含む爆発物ダメージUPと、≪クイックリペア≫による≪リミッター解除≫のペナルティの軽減と銃の使用コストの低減が狙える。

 銃を扱うならば定番ともいえる組み合わせだ。


 俺たちは宿屋でセーブをし(これをしないで死ぬと『ファイン』に飛ばされる)、そのまま分かれた。





 俺はそのままの足で教会へと出向き≪クレリック≫をサブ職業に入れる。そしてその隣、魔術師協会で≪ソーサラー≫をサブ職業に加えた。


 ≪クレリック≫は回復とバフをメインに扱える魔法職で、こっちは正直育成用だ。

 ≪ソーサラー≫は単体火力と手数に特化した魔法使いで、攻撃面ではレベルの上がらないサブでの起用の意味は薄い。だがしかし、一定時間HPダメージをMPダメージに移し変える≪マナコート≫や全職唯一のMP回復スキル≪アブソーブ≫など俺にとって有用となるスキルが多数揃っている。


 その後道具屋へと向かい≪薬草摘み≫のクエストを受ける。さらに隣の武器屋へと向かい≪鍛冶師≫と≪炭鉱夫≫のクエストを受けておいた。

 クエストはPTで共有されるため、これで後から二人ともクエスト依頼をクリアすればそのまま≪鍛冶師≫と≪炭鉱夫≫になれる。


 最後に俺は町の中央まで出向き、そこにいるピエロから依頼を受けた。


「それじゃあ、そこの子供たちを笑わせてみてよ!」


 俺はNPCの子供たちへと向き直ると定番のギャグを言い放った!


「ふとんがふっとんだー」


≪クエストに失敗しました≫


 あれ?

 ば、ばかな! βの時はこれでいけたはずだぞ!


「・・・もう一回やってみようよ」


 NPCピエロから声を掛けられる。どこか哀愁漂っている雰囲気があったけど気のせいだろう。

 クリアしたときのことを思い出す。オープンチャットでなんでもいいからギャグを言うだけのクエストだと思ってたんだけど、他になにか条件があったのか?


「ふとんがー、ふっとんだー」


 両手を振り下ろし、振り上げる。ジェスチャーを交えてみた。


≪クエストをクリアしました。≫

≪報酬:1G を獲得しました。≫

≪サブ職業:ピエロ に転職できます。≫


 ポップのYESを押す。ジェスチャーなんてしたっけかなと思い返してみたが、よく考えるとβで獲得したときはギルメンと馬鹿やりながらだったので、やっていたかもしれない。


≪サブ職業:ピエロ に転職しました。≫


 これで俺の方の準備は整った。夕食のために一回ログアウトする。

 いつの間にか周りのみんながこっちをみているのが恥ずかしかった。






 夕食のカレーは美味だった。多分明日の昼もカレーで夜もカレーだろうけど、そんなことは気にならない。

 どうやら俺が最後だったらしい。待ち合わせの南門にはすでに二人の姿があった。


『お待たせ』


『ああ、ちょっと待ってくれ』


『コンフィグいじって遊んでたんだよ』


 コンフィグは他のゲームと変わらない。解像度こそ設定できないが明暗は調整できるし、音量やUIなども設定できる。特にショートカットは無尽蔵に設定できる。βで1000まで試しても設定できてしまったのでそういうことになっている。

 ちなみにショートカットは意識するだけや視線、音声、動作でも発動することができる。意識だけのはトリガーがかなりゆるいので視線と音声が主流だ。魔法使いの中には音ゲーの筐体みたいに周りにボタンを並べたり、目の前でキーボードを打っているのと変わらないようなことをしている人もいたりする。


 唯一の例外は痛覚設定だろう。

 10%~90%で設定できるが、たとえ90%でも現実と比べるべくもないという話だ。

 キャラクターは現実より圧倒的に強靭だという設定なのだから。

 ちなみに俺は初期値の50%のままだ。上げたほうが手ごたえがしっくりくるという人もいるし、頭などへのクリティカルヒットによるノックダウンで強制ログアウトが発生するのを恐れて10%まで引き下げている人もいる。


『痛覚設定を90%に上げてみたぜ』


『痛くて泣き喚くなよ』


『あはは』


 軽口を叩きつつ、俺たちは南門をくぐった。






 『セントラル』の南側は山岳地帯となっている。さらに南に進めばレベル10ダンジョン『ハリム炭鉱』、『デザートヘル』へぶつかる。


 今日はまだそこまで行ったりはしない。その手前くらいが狩場となる。


『うし、ロックビートワームは無視、バットとウルフはユウがメインで戦う。俺とシンは遠距離からマンイーターをただひたすら狩る。もしもゴブリンがでたら、そのときだけはユウが壁で3人がかりだ。OK?』


『うし、ウルフともようやく戦えるのか』


『さっき死ぬとかいってたけど大丈夫?』


 シンの疑問に答える。


『ここは足場が悪いからな。草原のに比べると機動力半減ってところだ。ユウ、深追いは厳禁だぞ! 特に岩場の影に逃げたら一度引けよ。どうせタゲは切れてないから襲い掛かってくるし』


『OKOK』


『あとマンイーターとゴブリンはアクティブだから、特にマンイーターにタゲられたら即行で≪死んだフリ≫を使え! 多分5発くらいで死ぬからな』


 マンイーターは一定の範囲を遠隔攻撃してくるモンスターだ。本体は移動しないから遠距離職にはおいしい相手だが、その分攻撃力がレベル10で戦うモンスターよりも高かったりする。


 早速見つけたウルフを相手に悪戦苦闘するユウを尻目に、俺とシンは遠くに見えるマンイーターに的を絞った。


『≪ピアッシング≫!』


『≪マジックボルト≫!』


 俺が使ったのはサブで取った≪ソーサラー≫の初期スキル≪マジックボルト≫だ。これは無属性の魔法弾を飛ばす基本スキルになる。レベルが上がれば弾数が増えるため≪ソーサラー≫の他のスキルと相まって、侮れない火力になったりする。

 まぁ、俺はサブでとっただけなのでそこまでの恩恵はないが。


 俺とシンは次々とスキルを繰り出しているが、シンの攻撃はなかなかあたらない。遠距離武器はDEXによってある程度自動で追尾するのだが、まだレベルが低く、その補正も心もとない。

 俺のほうは必中なので低いダメージを補うべくガンガン当てていく。ついでに言うと魔法なら必中というわけではない。必中なのは≪マジックボルト≫の特性である。


 シンが10発目を当てたくらいでようやくマンイーターはおとなしくなった。


『おお、あが、った』


『一匹で必要経験地の20%くらいか』


『ここいらじゃかなりおいしい狩場だ』


 実際、狩り終わるまでに5組くらいのPTが遠巻きに見えた。まぁダンジョン目当てのPTもいるだろうが、競争率は高めだろう。


 ダンジョンに近い奥にいけばモンスターの数も増えるのだが、その分ゴブリンも増えるのでレベル5までは遠慮したい。


『移動するぞ≪マジックボルト≫』


『ぬお! 了解』


 ユウが戦っていたバットに≪マジックボルト≫をいれる。ひるんだ隙を逃さずユウがとどめを刺した。

 俺たちはそのままダンジョンへの直通ルートを迂回するように進んだ。

 道中のウルフやバットは3人がかりで倒していく。このゲームは一定ダメージで敵がひるむことが多いため、数の暴力が極めて有効だ。有効すぎて俺はユウのためにあえて1対1になるようにしているが、それでも鬼門となるモンスターはいる。


『やべ、ひっかかった』


 先行していたユウがゴブリンの索敵に引っかかったのだ。

 別のモンスターに手を出そうとしていたシンがあわてて戻ってくる。


『≪マジックボルト≫』


『ユウ、敵が俺をタゲったはずだから着たら間に入ってくれ! シンはユウが攻撃されてから後ろに回りこんで攻撃だ。他のモンスターを引っ掛けないように気をつけて!』


 俺の指示で二人が動く。先行気味のユウやシンを無視して案の定俺を狙ってきた。


『よっしゃこいやー! ≪クロススラッシュ≫!』


 ユウの一撃であっさりとタゲが切り替わる。ステータスもろくに上げていない≪マジックボルト≫なら初撃ということを差し引いてもタゲは移るだろう。

 そして定位置についたシンからの攻撃も始まる。


『ユウ、もうチョイ手を緩めろ。シンにタゲが移ってから全力でいい』


 そういいながらおれ自身も≪マジックボルト≫を連射する。この状況なら俺にタゲが来ることはない。

 言ったそばからシンの攻撃がゴブリンの頭に突き刺さった。軽快な破砕音が響く。クリティカルだ。

 その一撃を受けてゴブリンが振り返った。

 そして、そんな隙を逃がすわけがない。


『こっちむけやー! ≪バッシュ≫!≪クロススラッシュ≫!』


 ≪ファイター≫のスキルも使ってユウが畳み掛ける。

 だがしかし、その連撃は思いの外利きすぎた。

 ユウの攻撃を受け、ゴブリンがダウンしてしまったのだ。


『あ』


『げ』


 そこへシンの攻撃が飛ぶのだが、ダウンしたため当たらずそのままユウにあたってしまった。


 フレンドリーファイアがこのゲームにはある。正確にはダメージが入るわけではないので若干違うのだが、今のように味方とはいえ攻撃があたるとその衝撃が伝わってしまうのだ。


 シンの攻撃で尻餅をつくユウを無視してゴブリンは立ち上がると、シンへと向かっていった。


『≪死んだフリ≫だ! ≪死んだフリ≫!』


 次の瞬間、シンが胸を押さえてスローモーションで倒れる。

 ≪死んだフリ≫が発動したのだ。


 ターゲットを見失ったゴブリンは再び近場のユウへと向かおうとするが、そこに俺が割って入る。


『せーの』


 相変わらずのゴルフスイングでゴブリンの『急所』を狙う。

 快音が響く。クリティカルだ。


 その後うずくまったゴブリンを袋叩きにして戦闘は終了した。






『最初っからお前だけでも戦えたんじゃないか?』


『当たり前だろ。βテスターなめんな。前は前衛職だったしな』


 あれくらいの相手なら慣れれば初期レベルでも戦える。俺でもできるんだ。この二人ならもっと余裕だろう。


『というかユウはレベル5になったらアレと1対1だぞ?』


『え? マジかよ』


『マジだよ。≪パラディン≫ならレベル5で≪シールドバッシュ≫を覚えられるから、それあれば楽勝だぞ? まぁ、最終的にはなくても余裕になってもらうんだが』


 俺の台詞に二人は微妙な表情を浮かべる。

 このゲームの、特に人型のモンスターは多彩な動きと攻撃方法を繰り出してくるのでかなりの戦闘難易度になる。

 その中でゴブリンは最弱の部類に含まれるのだ。

 実はこいつ相手にユウをレベル10まで上げる予定だ。それくらい練習相手としては最適なのだ。


 ユウはいずれはレイドで壁役をこなすことになる。その難易度はこのゲームで最難関といっていい。たとえどれだけレベルを上げてもプレイヤースキルがなければ彼女であるサイトーさんと並んで立つことはできないのだ。


『まぁ、あきらめろ。サイトーさんと一緒にゲームをするんだろう?』


 その言葉にユウは真面目な顔を見せる。


『あの程度は雑魚か?』


『あの程度は雑魚だ』


『よっしゃ! 行ってくるぜ!』


 遠くに見えるゴブリンへと向かうユウ。

 シンもそれに続こうとするが、俺が待ったをかける。


『あー、シンはあっちな』


 少し行ったところにマンイーターが一体、さらに奥にもう一体がいる。


『大丈夫?』


『余裕。≪ヒール≫もあるしな』


 シンと違ってユウなら即死はしないし、俺もユウも回復スキルがある。

 そう、実は俺もユウも≪ヒール≫が使える。

 ユウは戦闘ごとにちょくちょく使っていたのだが、気づいてなかったようだ。

 二人掛かりなら喰らいながらでも回復量が上回るだろう。


 ユウはゴブリンに、シンはマンイーターに向かって攻撃を始める。

 俺はといえば、ユウを気に掛けながら中間距離でマンイーターに≪マジックボルト≫を飛ばす。


 マンイーターのほうは程なく片付いた。

 一方ゴブリンはといえば――。


『≪ヒール≫!』


 これで2回目の≪ヒール≫だ。そして、それから少ししてようやく片付く。


『うし!』


 ついでにレベルアップしてこれで5だ。

 それを確認して二匹目のマンイーターに取り掛かっていたシンを手伝ってくる。

 しかしその必要はなかったようだ。

 戻ってくるシンが見えて足を止める。

 最初に比べると格段に命中率が上がったためだろう。


『よし、とりあえず今日の目標のレベル5達成だ』


『新しいスキルが増えるんだっけ?』


『ユウは≪シールドバッシュ≫だっけ? スタン付きで強いんでしょ? 俺はやっぱり≪弱点看破≫かなぁ』


『まぁその二つが無難だと思うぞ』


 メイン職業はレベル5ごとに1段階上のスキルが開放される。スキルを習得するにはスキルポイントが必要で、レベル1のスキルは例外で全部1で取れる(アクティブスキル一つは初期で自動取得)。その後は5、15、25、35のレベルのものはスキルポイント5、10の倍数のレベルのものはスキルポイントが10必要となる。

 ちなみにスキルポイントは初期2ポイントで1レベル上昇で2ポイントずつもらえる。


 例えば俺を例に取ってみよう。≪サモナー≫のレベル1スキルである≪MPUP≫は1ポイントで覚えられる。レベル5スキルの≪エレメントの召喚≫は5、レベル10スキルの≪召喚時間拡大≫は10、レベル15の≪スタンビート≫はまた戻って5ポイント消費といった具合になる。


 このようにレベルアップだけだと非常にカツカツである。これ以上を習得したければ職業専用クエストを受けることでβテストではもう10ポイントを加算することができた。オープンではさらにクエストが増えているという情報だけは確認済みだ。


 ちなみにサブ職業のスキルポイントは全部クエストで手に入れなければならない。まぁ、サブのほうはレベル10にもなってない今はまだひつようないんだが。






 俺はスキル画面からレベル5スキル≪スケルトンの召喚≫と≪スケルトンの強化≫を選んで習得する。

 このために1レベルからすべてのポイントを残しておいたのだ。


 さっそく使ってみると、すぐに剣を持った骸骨が現れた。


『うおぅ!』


『びっくりした! それが新スキル?』


『そうそう、これでやっとサモナーらしく戦えるよ』


 今までサモナーなのに召喚してなかったからなぁ。

 俺はスケルトンに指示してさまざまな剣振りを行わせ、それをショートカットに登録していく。盾も同様だ。他にもバックステップやサイドステップ、ローリングなんかもやらせて登録する。


『なんかすげぇな』


『結構細かく指示できるんだね』


『ああ、ちょっと試してみるか。手出さないで見ててくれ』


 俺は近くにいたゴブリンに≪マジックボルト≫を飛ばした。

 やってくるゴブリンにカウンター気味に剣を入れさせる。それだけでタゲがスケルトンに移った。

 振り下ろされた棍棒は盾でしっかりと受けようとして失敗。ちょっとタイミングが早かった。

 だが、その後の剣の振り上げ、振り下ろしがいい感じに決まった。

 次の攻撃にはちゃんとタイミングよくバックステップが決まる。

 そしてその隙を逃さず横切りと縦切りの連撃が入り、あっさりとゴブリンを倒すことに成功した。


『いまの≪クロススラッシュ≫じゃねぇか! 普通に使えるのかよ!』


『いや、あくまで横縦で切っただけだから。スキルじゃないから』


『スケルトンって弱いって聞いてたんだけどなぁ』


『指示ださなきゃ多分半分削ったところでやられているよ。木偶の坊ってワケじゃないけどそこまで優秀でもない』


『くっそ、骨に負けてらんねぇ』


 そういってユウが立ち上がる。

 俺たちも続けて立ち上がる。


『目標はレベル10?』


『そうだな。明日の午前中には10まで行きたい。そっからダンジョンにクエストと忙しいぞ? 午後からはレイさんも入れてパワーレベリングだ』


『お手柔らかに頼むよ』


 こうして俺たちは狩りを再開し、結局寝るまでにレベル8にたどりついたのだ。

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