エレクトロキネシス13
試験勉強をしながら、二人は魔術について議論していた。
「ぶっちゃけ何なのコレ?」
「でやすから二次変換……と」
「クリスは魔術師じゃないの?」
「当人談」
そこに突っつく必要も無い。
本人がいれば、からかうために突っついたろうが。
「ふぅん?」
バチッと、閃光火花が散った。
「普通に無詠唱で起動できるんでやすな」
「あ、やっぱり普通は呪文を?」
「ま、一般論を申せば……。意識のスイッチが自然に出来るのは天性の物でやしょうか? 出来ないより出来た方が良くはありやんすが」
照ノ自身も、あまりその手の「条件付け」には拘泥しない。
概燃も、自動で起動する。
「となると凄い雷魔術には、格好良い詠唱が必要ですよね!」
「お好きにどうぞ」
サラリと彼。
「それで、世界の神話も巡ったんです!」
「……………………」
ピタッ、と照ノ手が止まった。
「雷の神性って言ってもいっぱいあるんですね~!」
「そりゃ、ありやすよ」
天候の第一印象だ。
雷神。
菅原道真。
九天応元雷声普化天尊。
雷帝。
金剛夜叉。
東アジアだけでも、この程度は列挙される。
「九天応元雷声普化天尊って名前が格好良いですよね」
フンス。
鼻息荒く、興奮するエリスだった。
「ならソレを奥義にすれば良いのでは?」
「そうします」
「頑張りやっせ」
サラサラと問題を解いていく。
――しかし。
とは思う。
「雷の一現でやんすか」
元がエレクトロキネシス志望だ。
確かに合理的帰結ではある。
その観点に則せば、
「パイロキネシスト」
と照ノを定義できるだろう。
そんなレベルですらないことを、無視すれば……だが。
しかも火の神性を持つ照ノならともあれ、エリスは一般人だ。
適性が那辺にあるのか?
それもまた疑問を加速させる。
「例えば落雷は起こせやすか?」
「その気になれば」
「ふむ」
パンと「青天霹靂」と書かれた扇子を広げて扇ぐ。
空調は利いているが、二乗で涼しい。
「インフラ破壊にはうってつけでやんすな」
「そんなテロリズムを?」
「したら魔術結社に討伐命令が下りますよ? 小生も手加減しやせん」
「自重します」
彼女は、神妙に、状況を理解した。
「スマホの充電を気にしなくて良くなったのは嬉しいですけどね」
使い方が俗物だった。
だが、むしろそちらの方が、照ノには好ましい。
「しかし鬼は鬼を呼びやすよ」
「自衛くらいは出来た方が良いかなって」
「然もありなん」
それは照ノも同意だ。
超人検閲。
鬼は鬼を滅ぼそうとする。
御霊会。
以夷制夷。
鬼を以て鬼を制するのは、元来、日本の風趣だ。
「となると……」
鬼に襲われたこと。
短期間で二次変換を修得したこと。
それらは、
「何かの根拠有りきではないか?」
それが照ノの推論だった。
間違ってはいない。
口にしていないので、知ること能わないが、彼女……エリスは、相応の物を見て、信心深い家で育っていた。
「ふうむ」
バチバチと火花を散らす。
「驕らないよう配慮しやせ」
「まぁ人を殺すつもりもないけど」
――やろうと思えば出来る。
そんな裏の意図が見透かされる。
「クリス嬢は心穏やかでいられないでしょうや」
「クリスが?」
「一神教以外の魔術は、全て外法でありやんす」
「ははぁ」
それはそれは……との御様子。
「でもラミエルだって、強力だよね」
「うすら寒いほどに」
雷の神性。
それは聖書も同様だ。
神が鳴って雷。
その点で言えば、ゼウスもトールも似たような物だろう。
「そこの式間違ってやすよ」
試験勉強も並列して行なっていた。
「ありゃ」
清々しく勉強モードに入り、定期試験に備える二人だった。




