↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
89/148

エレクトロキネシス11


「むにゃ」


 スマホが鳴った。


 ラインだ。


「何でがしょ?」


 半分ほど眠りこけながら、スマホをタッチして、コメントを表示し、トクトクと文面読み上げる。


『起きてる?』


 が、その内容だった。


『今起きやした』


 コメントを返す。


 一瞬で、既読が付き、返信もマッハだ。


『勉強しようよ』


「優等生の鏡でやすなぁ」


 ボソリと呟く。


 今日は日曜日。


 もうすぐ定期試験だ。


 テスト対策は……たしかに普通は必要だろう。


 コメントは、他にもあった。


『出かけてきます』


 とアリスのラインによるコメント。


 さすがに休日まで、叩き起こす鬼畜性は持ち合わせなかったと見える。


 それはクリスも同様だろう。


「はて……」


 欠伸をして、身支度。


 いつも通りの服装だ。


 喪服に紅色の羽織……曼珠沙華の意匠が、あまりに鮮やかな、ある種の照ノのお気に入りでもあった。


 口にはおしゃぶり代わりに宇羅キセル。


 タバコを吸うつもりはなかった。


 ボロアパートを出て、隣の教会へ。


「マリア殿~」


 裏口から入る。


「あらぁ照ノちゃん」


 シスターマリアは相も変わらずぽわぽわした御仁だった。


 色々と不安になるほど。


「飯を恵んでくやさんせ」


「構わないけど。外で食べた方が美味しくない?」


「マリア殿の手料理に胃袋を掴まれおりやすれば」


「あら。嬉しい事言ってくれるじゃない」


「本心でやんす」


 そんなわけで遅めの朝食を取るのだった。


「クリス嬢は?」


「協会」


「アリス嬢は?」


「倭人神職会」


「よく御存知で」


「朝食の際に聞いたもの」


「ははぁ」


 美味しいハムエッグを、口内に放り込んで、咀嚼および嚥下することで幸せを噛みしめる。


 そこに人も神もないらしい。


「さて、それでは……」


 少し勘案する。


「エリス嬢の相手は小生一人でやすか……」


 殊更、恨みを買ったつもりもないので、そこはマイナス面の心配もしようがないものの、何となく珍しい形状ではあった。


 クリスやアリスは例外としても、照ノに学友はいない。


 偶然の産物とは言え、一緒に試験勉強……というのは、記憶に懐かしい。


「同期の桜……でやんすか」


「何の話?」


「ハムエッグが美味しゅうございやす」


「光栄よ」


 華やかにマリアは笑った。


「ジル嬢は?」


「結界に篭もってるんじゃない? 今日は、掃除するつもりだから、カーテンも全開だし。第三真祖の眷属としては、こっちに来れないで一票」


「得票率は高いでやすな」


 ハムエッグをもぐもぐ。


『市立図書館集合で良い?』


『構いやせんよ』


 食後のフレッシュジュースを飲みながら、照ノは返信した。


「今日はタバコ吸わないのね」


「学友にも迷惑が掛かりやすし」


「ふぅん?」


 マリアは、すっ惚けているのか、素なのか、曰く言い難い表情になっていた。


「馳走になりやした」


「お粗末様でした」


 ニコリと破顔。


 神職にある者の、洗練された笑み。


「これで主に操を捧げていなければ、いくらでも幸せはありやしょうに」


「好きでやっていることだから」


「小生を拝んでもいいでやすよ?」


「ま、気が向いたらね」


「フラれ申しましたな」


「照ノちゃんが嫌いなわけじゃないわよ?」


「念を押されなくとも疑っておりやせんが」


「それは重畳」


「朝食馳走」と書かれた扇子をパンと広げる。


 そよそよと風を自身に送る。


「しかし夏でやすな」


「暑いはね」


「どっかの神様が光あれって言ったせいで……」


「けれどおかげで自然法則は上手く回っているわ」


「それも然りでやすな」


 ククッと、照ノは笑った。


 彼自身も、元は太陽神だった身だ。


 なんとなく、


「カルマでやしょうか?」


 その程度の、自己矛盾は、形而上的に抱え持っている。


 とはいえ気後れしたり、自重したり……ということに縁が無いのも、彼の不貞不貞しさに一定の論拠を証明する物だったが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。