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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
傲慢の塔(プライドタワー)編
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そは堕天する人の業12


 数千年の貫録の中に、幼児の喜色が透けて見える。


 元より長い年月を歩んできた者。


 照ノとて……理解できないわけではない。


 久遠の時を渡り歩くには、娯楽が必要なのだ。


 照ノには、それがクリスのツンデレであり……玉藻御前には、それが今回の神罰魔術ということになる。


 無論、一神教でも異端も異端……カルト宗教結社アルトアイゼンの企みが神罰の具現で済む話なら、玉藻御前は力を貸したりしないだろう。


 つまり本番はこれから……ということになる。


 圧倒的熱量をもった光の柱がプライドタワーを蒸発させると、後に人型が残った。


 アルトアイゼンによってプライドタワーの内部へ移送されていたのだろう。


 頭部と四肢がある時点で、人型と断じるのは容易い。


 が、人ではない。


 人形と言って、なお遠い。


 素材は鉄。


 あるいは鋼。


 金光りする光沢は、先ほどの神罰魔術に、何ら影響を受けた様子は無い。


「ゴーレム……」


 アリスが呟く。


 照ノが、チラリと弟子に目をやれば、彼女は神勁を発動させていた。


 人修羅の如く、光のラインが全身を走り、神の調律の一端を、この場に顕現させている。


「なるほどでやんすなぁ」


 照ノも、だいたい把握していた。


「どういうことです照ノ?」


「パパ……わかったの?」


 むしろ、この母娘が、何故わからないのか……が照ノには不思議だったが。


「メタルゴーレムの起動エネルギーとして、神罰級の大魔術の熱量を必要としたってことでやんしょ……」


 そう。


 それで合っている。


 それが正解。


 アルトアイゼンは一神教派閥の異端宗教結社であると同時に、魔女的魔術結社の総称でもあるのだ。


 その目的は明朗かつ簡潔。


「最強のゴーレム製作」


 これに尽きる。


 聖書にて、人は土によって造られた。


 それがラッセル現象に基づくものだとしても、二次変換のモードに昇華されているため、現実世界では暫定事実の一つだ。


 証拠としてアリスがあげられる。


 アダマによって造られたアダムカドモンであり、神に近しい存在。


 似たり寄ったりなことを考えるのは製作の業だ。


 ただしアルトアイゼンは「人の身では至らない」と完結し、人型へと興味を移した。


 メタルゴーレム。


 文字通りだ。


 鉄で出来た人。


 最強の鋳型に鉄を流し込んで造られた人型。


 ただし問題があった。


 ブリアレーオの法則だ。


 世界を破滅させうる能力を持たせたメタルゴーレムは、そんじょそこらのエネルギーでは起動を可能としえなかった。


 何よりメタルゴーレムを造る事のみに特化したアルトアイゼンの使徒たちでは、ハードルが高すぎるにもほどがある。


 結論として、宇宙エレベータを介して神罰を執行しようとするプライドタワーのエネルギー演算が目にとまり、今回の運びとなったのである。


 かくして神の罰を一身に受けて、エネルギー炉を覚醒させたメタルゴーレムが駆動する。


「どうしやす。おい」


 照ノが痛む頭を押さえて玉藻御前に問う。


「滅ぼす他なかろう」


 玉藻御前の答えも端的だ。


「とは言いやすが……」


 天罰そのものをエネルギーとして吸収しているのだ。


 少なくとも出力面から云って不足という事態は有り得ないだろう。


「だからこそ暇潰しになる」


 断じる玉藻御前。


 そして玉藻御前は十二単を脱ぎ捨てた。


 全裸になる。


 そこそこ大きい乳房に肉付きの良い尻。


 その尾てい骨の辺りから秋のススキのような金色の尾っぽが揺れていた。


 変化は唐突だ。


 玉藻御前の全身から金色の毛が生え出たかと思うと、骨格が変形して四足歩行に適した姿になる。


 それに合わせて肉塊と云う質量が爆発的に増大したかと思うと、金色の九尾と白い面おもてを持つ妖狐の姿へと変貌した。


 白面金毛九尾の狐。


 全長は尻尾まで含めれば十メートルを超える巨大にして強大な霊狐だ。


 金属光に鈍く輝くメタルゴーレムとは対照的に、金色に眩く輝く玉藻御前。


 メタルゴーレムは、ソレを敵性存在と判断した。


 そうには違いないのだ。


 九尾の狐の姿となった玉藻御前と、メタルゴーレムとが、互いを認識する。


 奇跡の発動は同時。


 玉藻御前が、口から狐火を放つ。


 メタルゴーレムが、突き出した腕部からビームを放つ。


 どちらともに規格外。


 そして拮抗した。


 世界最強にして最恐にして最凶の狐火は核兵器すら霞む威力を持つ。


 メタルゴーレムのビームと拮抗したから結果は出なかったが、仮に無造作に放たれていれば、地平線の彼方までを焼け野原にして、大気圏を突破し、宇宙に熱量をばら撒いたであろう。


 それほどの威力だ。


 そしてソレは即ち「メタルゴーレムのビームが同等の力を持っている」という逆説的証明でもある。


「くは……! くはは!」


 幼子のように目を輝かせる玉藻御前。


 自身の強力性故に対抗する相手がいなかったため、強敵を求めていたのだろう。


 それが此度のアルトアイゼンの製作したメタルゴーレムというわけだ。


 ちなみに照ノも十二分に玉藻御前の遊び相手になるのだが、概燃によって不朽を得ているため玉藻御前を楽しませるかと云えば否となる。


「また難儀な……」


 深刻そうに照ノは状況を把握する。


 照ノ自身も理解はしているのだ。


 先のやり取りの深刻さを。


 照ノの魔術の中でも「まぁまぁの威力」を持つメギドの火と玉藻御前の狐火は同等だ。


 そしてイコールのイコールはイコールだ。


 即ち暁の星事件において十の大悪魔の属性を持つ魔術師たちを悉く滅した照ノのメギドの火と、メタルゴーレムの放つビームが同格であることを意味している。


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