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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
傲慢の塔(プライドタワー)編
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ヴァンパイアカプリッチオ05

 そしてムキムキマッチョの火と熱を纏った鬼が、照ノとソルの間に具現化する。


「シャア!」


 ソルは躊躇いなく、火鬼に攻撃をかける。


 狙うは心臓。


 武器は手刀。


 が、火鬼に触れた瞬間、ソルの手刀は蒸発した。


「……っ!」


 一旦、身を引くソル。


 焼き焦げて蒸発した手が、瞬時に再生する。


 この辺りは、セカンドヴァンパイアの面目躍如だ。


「パパ……」


 トリスが、照ノを呼ぶ。


「何でやしょ?」


 とりまソルの対応を火鬼に任せて、照ノは意識をクリスとトリスに割いた。


「ヒント!」


「頑張りやせ」


「照ノ!」


「クリス嬢もでやすか」


「魔術錠を解きなさい!」


「解呪は仕事の内には入りやせん」


 倭人神職会からの依頼は、


「プライドタワーの一角を制覇せよ」


 とのことだ。


 そして照ノは、それを忠実に守っている。


 それはクリスとトリスを敵に回す行為だが、元より気負いなぞに縁の無い照ノだ。


 飄々としていた。


 照ノにとっては、


「その程度のこと」


 に相違ない。


「頑張りやせ」


 再度そう言って、意識をソルに向ける。


 炎を全身に纏った火鬼に押されている。


「どうしやしたソル嬢? 小生を痛めつけるんではないでやすか?」


「卑怯ですわ!」


「何がでやんしょ?」


「吸血鬼に火を向けるなんてフェアじゃありませんわ!」


「あー……」


 照ノは思案する。


 答えはすぐ出た。


「しかして小生は炎の魔術しか得意でありやせん故……」


「卑怯ですわ!」


 再びソル。


「ま、星の巡りが悪かったということで」


 フーッと煙を吐く照ノ。


「召喚魔術ではなく生身で勝負なさい!」


「都合の良い……」


 くつくつとアリスが笑う。


 照ノも同じ気分だ。


「へぇへ」


 パチンと指を鳴らす。


 同時に火鬼が消えた。


 照ノが火鬼の維持を取りやめたのだ。


「真っ向勝負ですわ!」


 超常的な速度で襲い掛かるソル。


 が、


「おとといきやがれ」


 照ノは、カウンター気味に、ソルに一発入れた。


「ぐが……っ!」


 苦しむソル……ソルベ=ブラックモア。


 しかして序章だ。


 照ノは二次変換を行使する。


流星あまつきつね……!」


 全身に、炎のオーラを纏う。


 そして加速。


 あまりの速度に、炎が尾を引いて、文字通りの流星だ。


 ソルとの間合いなぞ、有って無いようなモノ。


 が、その刹那の時間に、ソルは確かに聞いた。


「ネット資格検定版あなたにも出来る八極拳奥義! 八修一極!」


 そんな照ノの必殺技の宣言を。


 流星による加速。


 震脚による踏み込み。


 突き出される拳は流れ星より、なお疾く。


 ソルの心臓を正確にとらえて、拳がふり抜かれる。


「が……っ!」


 そして、ソルが、照ノの拳をまともに受けて、盛大に吹っ飛んだ。


「吸血鬼は心臓が弱点だ」


 というのは良く聞く俗説だが、ぶっちゃけた話……生物で心臓が弱点でない存在を探す方が難しい。


 そういう意味では、ミミズだってオケラだってアメンボだって吸血鬼だってみんなみんな生きているため、心臓は弱点で当然だ。


 ソルは吐血して、しかして瞬時にダメージを修復させる。


「勝負あり……でやんすね?」


 照ノはニヤリと笑った。


 ネット検定の八極拳とはいえ、照ノの超常能力が、本気でさっきの一撃に加えられたならば心臓を撃つどころか心臓を貫いてソルの背中から突き出たであろうことはソルとて理解できていた。


 即ち、手加減されたのだ。


「本気なら殺されていた」


 という条件付きで。


「むぅ」


 認めざるを得ない。


 納得は出来ないが。


 そんな心情のソルではあったが、戦術級脅威力であるはずのセカンドヴァンパイアたる自身を、苦も無く一蹴する照ノの実力が…………どれほどのモノか?


 その一端を察するに不可ではなかった。


 なお照ノは炎の一極特化である一現ひとうつつを行使していないのだ。


 そこまでの計算は出来ないにしろ底深い人外能力(そもそもにして照ノは人間の定義からは少し外れるのだが)の氷山の一角くらいは理解できる。


「まいりましたわ」


 結局負けを認めるのだった。


 ちなみに、その間、クリスとトリスが、照ノの魔術錠を解こうと必死になっていたが、結果を語れば徒労に終わった。


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