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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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命短し恋せよ乙女24


「では某の相手は其方か」


「じゃろうの」


 龍人……ベルと、玉藻御前。


「一瞬で終わらせる」


「奇遇じゃの」


 互いの口内から熱線が吐き出された。


 玉藻の狐火。


 ベルのドラゴンブレス。


 結果は互角だった。


「まさか某のドラゴンブレスと同等とは……!」


 ベルが戦慄する。


 玉藻は気にしなかった。


流星あまつきつね


 炎のオーラを纏う。


 接近は一瞬。


 殴打も一瞬だ。


 刹那の刹那で叩きつけられた玉藻の拳は……いったい如何な膂力だったのか……ベルを吹っ飛ばした。


「――――――――」


 悲鳴すら彼方に遠く……大樹を破壊して、地平線の彼方まで吹っ飛ばされるドラゴニュートの五尊体であり、なお打ち棄てられた孤児のようで。


「ドラゴンスケイルはまだ行けるじゃろう?」


 玉藻は追撃に掛かった。


 刹那の刹那で、狐火が辺りを凌辱する。


 ここは結界内で、だからこそ出来る御業。


 基準世界で事を為せば、地図の書き換えが必要になる。


 玉藻御前が、日本のジョーカーとなる所以だ。


「――――!」


 さらに光が吠える。


 ベルのドラゴンブレスだ。


「うむ。よいよい」


 心地よさそうな玉藻だった。


 金色の毛並みが熱量を遮断する。


 照ノをして、「敵わない」と言わしめる玉藻の耐熱防御だ。


「――くけけ!」


 雷撃が奔った。


 玉藻の二次変換だ。


 雷鳴が迸り、閃光が目を潰し……なお雷の一撃はタケミカヅチすら一蹴して尚輝かしき尊き概念でさえあった。


「が――っ!」


 ドラゴンスケイルも、電撃は躱せないし防げない。


「よくもまぁ」


 とは照ノの意見。


「まだまだ楽しませてくりゃれ!」


 玉藻は興奮していた。


 龍人。


 ドラゴニュート。


 西洋に於ける亜人の最強種。


 あるいはヴァンパイアすら凌駕する、自然の申し子。


 アジアを席巻した大妖怪……玉藻御前にも申し分ない相手だ。


「喝――!」


 ドラゴンブレスが襲う。


 瞬く間に延長線上を焼き払う。


「もっと! もっとだ!」


 喜悦に口の端を歪ませ、玉藻はドラゴンブレスを耐え抜いた。


 十二単は塵となり、全裸で吠える妖狐。


 その姿が、本当の妖狐に変わる。


 金毛白面九尾の狐。


 白面を持ち、金毛で身体を覆う大妖怪。


 九尾だ。


「――――――――」


 吠える様に炎を吐く。


 それは灼熱の濁流となって、空間を凌辱する。


「化け物……!」


 ベルの戦慄も然り。


 まるで天変地異を擬人化した様な威力だ。


 まず以て玉藻御前は、信仰の最たるを概念立脚の基礎としているのだが。


「さあ! さあ! 楽しむぞや!」


 喜悦に震える九尾の狐。


 雷撃が襲った。


 水流が襲った。


 瞬く間に奔流がベルを巻き込む。


 風の斬撃が、超密度の大気と為して、ベルの右腕を肩の付け根から切り跳ばす。


「が――ッ!」


 吐血するベル……ドラゴニュート。


「何をしている」


 鮮やかな声だった。


 遠足を待ちわびる幼児の様な興奮を、今の玉藻は感じている。


「たかが腕が千切れたくらいで何を慮る? 再生すれば良いことぞな!」


 ソレは有り得ない言葉だったろう。


 部位欠損を補填する。


 そんなものは神代の御業だ。


 医学ですら到達できない道標。


 それを「当然」と玉藻は言ってのけたのだ。


「怪物か……!」


 ベルの愚痴も相当だ。


 自分自身が化け物だ。


 その上で更に上の化け物が現われた。


 自身の怪我すら何とも思わず……対する敵を凌辱するに何とも思わず……単なる流血だけを求める概念は……理性の限界の振れ幅をあまりに多く大きく超えていた。


 それこそ悪夢と呼んで差し支えない。


「さあ! もっとわらわを楽しませろ!」


 お気に入りの玩具を手に入れた幼児の様。


 喜色満面の玉藻だった。


 その狐火は地平線を焼き払い、その金毛はあらゆる熱をシャットアウトする……ただソレだけのことと切り捨てるのは簡単でも、相手方には不条理に候ひて。


 不利業の塊。


 正に、


「正直に相手をするだけ馬鹿を見る」


 の典型だった。


 カッと閃光が迸り、質量の全てが灰燼と為す様は……いったい何に形容すべきかも惑うほど神秘にして魔術……即ち二次変換であった。


 南無八幡大菩薩。


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