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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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命短し恋せよ乙女20


 覚醒は一瞬だった。


 まさに跳ね起きる。


 それそのままに照ノは上半身を立てた。


 隣には添い寝しているアルト。


 健やかに眠っている。


 とりあえず人中に一本拳を打って覚醒させる。


 式神に反応があったのだ。


 某所点在させた式神から、思念会話で情報が送られてくる。


 それを察知したわけだ。


「何ですか照ノ兄様?」


 人中を押さえながら、アルトが尋ねる。


「大公の出番でやすよ」


「というと」


「でやす」


 照ノは頷いた。


「お客様で」


 瞬く間に式神の信号が消えていく。


 その速度は空恐ろしいほどだ。


「照ノ!」


「玉藻」


 当然玉藻の方も感知したらしい。


「敵は?」


「三人じゃ」


「丁度良い塩梅でやすね」


「いいのかなぁ~?」


 ポヤポヤとアルト。


「他の連中は?」


「眠っておる。ジルとエリスは知らんがな」


 一々結界に入って確かめる事でもないわけだ。


「では参りやしょうか」


「車でも?」


「使いやせん」


 照ノと玉藻には別の移動法がある。


「それでは大公失礼しやして」


 立ち上がったアルトの足を払う。


 倒れたアルトをお姫様抱っこして、照ノは外に出た。


 玉藻も続く。


 そして魔術特性モードの発露。


 照ノは天津あまつ


 玉藻は狐。


「「流星あまつきつね」」


 ボッと炎が二人を纏う。


 だがお姫様抱っこされているアルトは火傷の一つもしていない。


 まず以て、傷つける事が不可能な無敵だが、それ以前のこの炎は象徴であって害性は含まれていない。


「では」


「じゃな」


 二人は流星となった。


 超音速で、駆け抜け、御流様を祭る禁足地に無断で入る。


「早っ!」


 今更だが、その新幹線より速い速度は、移動手段としては破滅的すぎる。


 それで筋力の過負荷も、グレーアウトも起こらないというのだから、


「何をかいわんや」


 がアルトの率直な感想だった。


「しかし強いでやすな。今回は」


 照ノのエレメンツ。


 炎の精霊を従えた使い魔。


 西洋風の式神だ。


 術式は根本から違うが、それは西洋と東洋の魔術特性モードの違いであって、一現ひとうつつには然程影響も無い。


 その点は一現のアドバンテージと呼べるだろう。


「じゃのう。管狐はわらわの眷属じゃ。討ち減らされてはたまらんの」


 玉藻は式神に撤収を命じた。


「また貴様らか」


 其処に声が掛かる。


 肉声ではない。


 ただ縦波ではあった。


 水のエレメンツ。


 御流様。


 大きな分類で括るところのエレメンツ。


 東アジアではミズチと呼ばれている。


「ちょっとお助けに」


「我をか」


「まぁ滅ぼそうと思えばエレメンツくらいどうにでもなるんでやすけどね」


 さらりと神を冒涜する。


 強がりでも侮りでもない。


 単純にして明快で、その手法を手に持っているだけだ。


 問題は害する理由が無いだけ。


 ぶっちゃけた話、


「政略レベルでの事案」


 と相成った。


「助けるのか?」


「結果論だけ申せばや」


 ヒラヒラと照ノは手を振る。


「そちらの御仁も?」


「じゃの」


 不敵に玉藻は笑んでみせる。


 不吉極まりないが、たしかに能力にケチは付けられない。


「御流様も嫌でやしょ? 魔導災害扱いは」


「我は欲する事をするのみだ」


「ま、そんなところでやんすね」


 殊に照ノは反駁しなかった。


 あくまで都合上なので、御流様は愚痴の対象にもならない。


「さて」


 ドドドと滝が降り注ぐ山間。


 夜の時分。


 太陽光にも似た光が照らされた。


 アルトの手に輝く聖剣が握られている。


 なるほどそれは、星の輝きであった。


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