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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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命短し恋せよ乙女18


 そんなわけでこんなわけ。


 照ノたちは異界に居た。


 ジルの結界……レッドムーンと呼ばれる常夜の桃源郷……曰く「異世界」と呼ばれる場所……空間だ。


 ジルは闘争交渉を辞退した。


 破格の戦力は持っているが、それにしても他のメンツが人外に羅列されている。


 ジル……夜の眷属であるヴァンパイアすら鎧袖一触にする戦力は、悪夢でも白昼夢でもなく、毅然として存在する。


 結果、意思を押し通して命を棄てる愚は無かった。


 否定派はクリスとアリス。


 肯定派は玉藻とアルト。


 照ノとエリスは端からのんびり見学だ。


「さてそうなると……」


 玉藻はクリスに目をつけた。


 アルトはアリスに。


 相手方も、その意図は察したらしい。


「大丈夫かな?」


 エリスの心配。


「ま、玉藻もアルトも大人でやすし」


 全力を出して乙女を滅ぼす。


 その意図が無い事は、照ノのよく知るところだ。


「しっかし」


 フーッと紫煙を吐く。


 宇羅キセルには火が点いており、ゆらゆらと副流煙が立ちのぼる。


「気骨逞しいでやすな」


 キセルの刻みタバコに火を点けて喫煙している彼。


「では、参ります!」


「ちょっと痛い目にあってねー」


 クリスとアリスが開始のゴングを鳴らした。



 クリスは玉藻御前に仮想聖釘を投げつけた。


 サラリと御前は躱す。


 特別、誇る事でも無い。


 そもそも「この程度の速度」は脅威の範疇外だ。


「なんなら蔵物でも抜いたらどうじゃ?」


 挑発する様に笑う。


「大義の無い戦いには使えない物で」


 必要なときに必要な処置を為すために奇跡倉庫はある。


 であればディスカッション以上の意味を持たないこの戦いには奇跡倉庫は開かない。


「本人が良いなら良いんじゃがの」


 喝と閃光が奔った。


 狐火。


 火と親和性の高い妖狐の必殺技だ。


 地平線の彼方まで焼き尽くす、戦略概念。


 ここが結界内でなかったら、地図の書き換えが必要になる威力だ。


「――――――――」


 クリスの戦慄も真っ当だが、


「受け身では殺されるぞよ?」


 玉藻御前の意見も、また真っ当だった。


「くっ!」


 間断なく仮想聖釘を投げる。


 その全てを玉藻御前は無力化してのけた。


 灼熱が、聖釘を蒸発させる。


「威力使徒はその程度なりや?」


 完全に嫌味だ。


 そしてツンデレイオスは沸点が低い。


 照ノに対する一件が、ソレを証左とする。


「殺す!」


「良かろう。本気になろうとも」


 そして二人は激突した。



「それでー……アリスで良いのー?」


 アリスはアルトに声を掛けた。


 アルトの本質をアリスは知らない。


 けれど此処で覚る事でもないだろう。


「ま、勝負をするというのなら、たしかに隔絶はありますけれども」


 丁寧な不遜でアルトは返した。


「殺したらダメだよねー?」


「照ノ兄様が悲しむので」


「お兄ちゃんがー……」


 それはアリスも望んでいない。


「じゃあ、少し手加減するー」


 ヒュッ、とアリスが加速した。


 間合いが、まるで映像のコマ落としの様に消える。


 アリスは一瞬で、アルトの間合いに踏み込んだ。


「――――っ!」


 アリスの拳がアルトに埋め込まれる。


「っ?」


 その手応えに困惑したのは、アルトではなくアリスだった。


 まるでコンニャクを叩く様な感触。


 肋骨を折る気満々だった神速の一撃が、だが奇妙に鈍い。


「なるほど」


 アルトは、吹っ飛ばされながらも器用に身を翻して着地する。


「これは難敵ですね」


 特に痛痒も無く地面に立つ。


「では此方も」


 手の平から剣が飛び出す。


 太陽光を思わせる光の聖剣だ。


「それでは反撃といきましょうぞ」


 赤光が、奔った。


 光の斬撃。


 一瞬で躱すアリスの人外さ。


「如実に表れ申しますな」


「お互い決定打に欠けるー?」


「かもしれませんね」


 アルトは苦笑で答えた。


「大公は化け物だね」


「神勁使いが申しますか」


 結局どちらもが怪物染みているわけだった。



「ところで御流様の護衛は良いのでやしょうか?」


 少し怪訝に照ノが呟いた。


「脅威が迫ってるんだっけ?」


「政治的には……でやすな」


 こんな所で争っている場合でも、まさか無かった。


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