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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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命短し恋せよ乙女12


 エリスが行方不明になった。


 それは肯定派と否定派の間で、激震となって伝播した。


「まさか此処で実行するとは」


 とが肯定派の意見で、


「正義は我に在り」


 とが否定派の意見だ。


「ふーん」


 照ノはキセルをくわえて、タバコを吸っていた。


 朝食を取って、プカプカと。


 行方不明の先手。


 警察に届け出をして、書類上エリスを殺す。


 ここで漸く、状況が動く。


「は、こちらのミスです! 申し訳ない限りで! 既に災害のカウンターが!? 本当ですか! ええ。ええ! 弁えております。どうかご英断を!」


 真駒の家はてんやわんやだった。


「どう思う?」


 焼酎の一升瓶に直接、口を付けて酒を飲み込む玉藻。


 ウワバミだ。


「さて。別にいつもエリス嬢を監視しているわけでありやせんからな」


「じゃの」


 焼酎を一気飲みする。


 照ノの方は、プカプカとタバコを吸っていた。


「楽しくなってきたのう」


 ニヤニヤと玉藻が笑った。


「嬉しそうでやすな」


「それはもう……じゃな」


 破顔する顔の禍々しさよ。


「相手方は分かってるので?」


「いや、むしろ聞いていない」


 素っ気ない言葉だった。


「かまわないんでやんすか?」


「問題ないじゃろ」


 最強の妖怪が、そう述べる。


「頭の痛い」


 頭痛を覚える照ノだった。


 実際問題として、エリスの失踪自体が、あまりに急で、根拠に基づかない話ではある。


「この神敵!」


 そこにクリスが現われた。


「また厄介なのが」


 心底徒労する照ノ。


「エリスをどうしました!」


「どうもしていやせん」


 それは事実ではある。


 言ってしまえばジルの暴走だ。


 そこまでは照ノも玉藻も関知しない。


「では申せども」


「そもそも何なのです! 教会協会から御流様の討伐に行けと!」


「でやしょうなぁ」


「何故です!? 魔導災害ですか!?」


「一口で申さば」


 フーッと紫煙を吐く。


「でしたら殺してきます!」


「やめやっせ」


「止めるんですかっ?」


「まず何を以て、御流様を悪と見やす?」


「ぐ……」


 そこは考えていなかったようだ。


 クリスらしいと言えばその通り。


 概ね……クリスティナ=アン=カイザーガットマンは、そんな少女にして神威装置の威力使徒に相違ない。


「さて、では兵力が派遣されるとして」


「地理的に二日……あるいは三日じゃな」


 焼酎を一升瓶の口づけで飲む玉藻。


「面倒でやんすが渡世の義理でもありやすか」


 照ノの嘆息。


「じゃの」


 嬉々として玉藻。


「タバコ吸って、酒飲んでる場合ですか!」


「別段、急ぐ事もないじゃ」


「でやんすね」


 二人は安穏としていた。


「ええ、わかりました。此方は此方で動きます」


 スマホを手に、情報収集に掛かるクリス。


 場を離れる。


「良かったのかや?」


「止めても止まりやせんよ。ツンデレコマンダーは」


「良いので?」


「酒の肴に丁度良いでやんす」


 照ノは苦笑した。


 まったくデレが生じないツンデレ。


 なのに、からかいたくなるのは、まるで小動物を相手にしているようでも……ない事はない。


「結界は張りやすか?」


「可能ならの」


「核兵器を持たない日本のジョーカーなんでやすが」


「きさんが言うか」


「ソレを言われれば耳に痛いでやんすな」


 カラカラと照ノは笑った。


「しかし何処に行ったのやら……」


「わらわは知らんぞ?」


「知っていやすよ」


 そこは事実だ。


「さりとて、抑止が忠告……入っていながら、エリス嬢が先んじるとは思えないのでやすが……」


「それは確かに」


「まぁおかげで否定派の暴走を活発化させたんでやんすが」


「それは然りじゃな」


 うんうん、と玉藻は頷いた。


 一升瓶に口を付けて、豪快に酒を飲む。


 これから都市開発の如何を背負う身としては、あまりに歓楽な、玉藻の言葉だった。


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