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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
125/148

命短し恋せよ乙女04


 広い屋敷に、一人一部屋。


 照ノは、襖で仕切られている廊下に出ていた。


 縁側だ。


 空には月。


 都会と違って、綺麗な星空だった。


 その輝きは満天で……とても純粋に綺麗と評せる。


 仮に純粋な魔術師ならば魔術特性モードに選ぶかも知れない……そう思わせる神秘に満ち満ちている。


「乙でやんすな」


 そんな夜……一人、月見酒を楽しんでいた。


「あ、照ノ……」


 そこに声が掛けられた。


 見れば鴉色の髪の乙女。


 真駒エリスだ。


「何してるの?」


「月見酒でやんす」


 サラリと答える。


 実際に他に適当な表現も見つからず……ついでに日本の神性は酒好きでも有名な御様子。


「隣、いい?」


「構いやせんよ」


「では失礼して」


 チョコンと、彼女が座る。


「良い景色でやんすな」


「うん。地元の自慢」


「良いところで生まれ育ったようで」


 ――少し羨ましい。


 口の中だけで、彼は呟いた。


「もう寝てるかと思っちゃった」


「酒がなくなれば寝やすよ。お手前は?」


「一緒に寝ていい?」


「男女七歳……」


「そーゆーのいーから」


 半眼でツッコまれた。


「そういうのは好きな奴とやりやっせ」


「私は照ノが良いの」


「何故でやす?」


「面白いから」


「過分な評価、痛みいりやすな」


「本気! 抱いて!」


「何を焦っていやす?」


「もう先が無いの!」


「おや」


 酒を飲む手が、ピタリと止まった。


 視線が、月からエリスへ。


 ――聞き捨てならない、といった具合に表情は変じるも、さすがに困惑の一つも混じるに吝かでない。


「どういった案件で?」


「人身御供」


「ほう」


「私が選ばれたの」


「そんな神楽が?」


「真駒の家は百年に一度、御流様みながれさまに人身御供を差し出すの。私は……その最右翼……」


「何とかならないので?」


「ならないので」


「でやすか」


 飲酒。


「御流様……ね」


 少し考える。


「家主の了解は取れているので?」


「うん……」


「しかしこれは魔導災害でやしょう?」


「そうなの?」


「人質を提供させるのでやすから」


「でも誰かが捧げられないと、祟りが」


「でやしょうな」


 別に照ノは擁護するつもりも無い。


 むしろ心情としては、神側だ。


「だから死ぬ前にお願い! 私を抱いて!」


「断りやす」


 簡潔に照ノは拒否した。


「何でよぉ」


 涙声。


「そんなことで救われるとは思っていやせん由」


 酒を飲む。


「乙女の最後の願いくらい聞いてもいいじゃない!」


「叫ばないでくださいやせ。時分、夜でやす」


「抱いてよ……お願いだから……」


 涙声の懇願。


 真摯な願いでは……まぁあった。


「とすると玉藻の案件もそこら辺かや?」


「御前?」


「でやす」


 ややこしい事になりそうだ。


 月を見て嘆息。


「照ノは残酷だよ」


「それなりに悪神なもので」


 此処で語る必要は無けれども。


「さて」


 酒がなくなった。


「寝やすか」


「一緒に?」


「何もしないと誓うなら、添い寝くらいは許しやしょ」


「サービス足りなくない?」


「元よりそんな腹もござんせんので」


 全く容赦という物が存在しない……照ノであった。


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