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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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アルト公の想う者12


「うんしょ。うんしょ」


 それから数刻。


 照ノは風呂に入っていた。


 正確には、浴槽に浸かる前に、身を清めていた。


「一緒に入る!」


 と主張したのは、アルトの方で、照ノ自身も特に斟酌する事無く首肯し、現在この状況。


 結果、アルトが照ノの身体を清める仕事を請け負った。


「うんしょ。うんしょ」


 広い照ノの背中を擦って磨く。


 さすがの照ノも、前方は自分で処理した。


「にゃあよう」


 逆にアルトは照ノに磨かれた。


「華奢でやすなぁ」


「恵まれた存在だから」


 軋むような笑み。


 他に言葉は差し挟めなかった。


「いいんでやすがね」


 殊更、責めるでもなく、咎めるわけでもなく。


「照ノ兄様は女の子いっぱい」


「なりゆきでやす」


「僕とも?」


「浮世で出会うは袖擦り合ったからかもでやすな」


 アルト大公と、天常照ノ。


 孤独の王には、友達が作れなかった。


 ソレを助けたのが、天常照ノ。


 最強。


 不死身。


 何より理不尽。


 その程度の力を最低限持っていないと、アルト大公とは友達になれない。


 資格の問題ではない。


 視線の問題でもない。


 共有感覚も平等性も、この際、関係ない。


 単純に、「アルトといれば、面倒事に巻き込まれる」というだけの話。


 その点を加味して、生き残れる存在が、数えるほどしかいないのだ。


「えへへ」


 愛らしい御尊顔で、アルトは大いに照ノに懐いていた。


 お互い裸。


 全裸。


 照ノの胸板に、もちもちのほっぺたを擦りつける。


 至福そうだ。


「好きすぎでやしょ」


「大好きです!」


「うーむ」


 照ノ自身に、あまり自覚は無い。


 どちらかならば悪寄りだ。


 荒魂あらみたまに分類されるので、凶つ神であることは確かだが、ある種、最強に君臨する。


 国津神の悉くが、天津神に平定されても尚、テロリズムを止めなかった不撓不屈の凶神。


 収めるまでに、あらゆる神性が尽力した悪役。


 在る意味で、日本神話のラスボスだ。


「お前様はほんに可愛いでやすな」


「キスする?」


「してもいいでやすが、穢れやすよ?」


「じゃほっぺにチュー」


 軽いキスが為された。


「そっちの趣味でも?」


「無いとはいえない」


「小生の処女はあげやせんよ」


「僕の処女は?」


「いりやせん」


 ペシとチョップ。


「さて、夏休みはこっちにいる算段で?」


「ま、ね」


「此処にいれば万事無事でやすから」


「知ってる!」


 遁甲の陣を敷いている。


「兄様?」


「何か?」


「いっぱいベタベタしてください」


「下手に出られると弱いでやすなぁ」


「照ノ兄様はお優しいですから」


「あまり過大評価も身に余る」


「兄様にはオーラがあるよ」


「一応コレでも神聖な物で」


「大好きです!」


 ギュッと抱きしめられる。


「本気で犯すのも在りでやんすか?」


「精一杯受け止めます」


「これを本気で言いやすから……」


 嘆息。


「ま、アルト公には付き合いやすよ」


「大好きです!」


「恐悦至極」


 クシャリと金髪を撫でる。


「花火大会とか見たいです」


「当街の河川敷にでも行きやしょ」


「約束!」


「はいはい」


 互いのほっぺたにキスをする。


「ブリテンはどうでやすか?」


「ま、それなりにね」


「公が表に出られないのも……歯痒くはござんすが……」


「ううん。そんなことありません。皆さん良くしてくださっています」


「IRAも希に活発化すると聞きやしたが?」


「戦争が内乱に変わっただけ」


「言われてみればそうでやすな」


 視線を天井に上げて、


「ふむ」


 と納得。


 湯気が結露して、水滴となり、ピチョンと湯面で撥ねた。


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