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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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アルト公の想う者10


「ザ・メイド喫茶!」


 ――お帰りなさいませご主人様。


 からの、くだりだ。


 アルトは、照ノにエスコートして貰って、メイド喫茶を堪能していた。


 照ノはコーヒーのブラック。


 アルト紅茶のありあり。


「萌え萌え機運!」


 愛情たっぷり(?)のミルクティーを用意され、美味しいそうにアルトは飲んだ。


「メイドさん可愛いですね!」


「公におかれましては珍しくもないのでは?」


 紅茶とメイドの国だ。


 相応の文化はあろう。


「でも萌え萌えじゃないし」


「それでやすな」


 照ノも、理解はする。


 おばちゃんメイドと風俗喫茶のメイドは違う物で……この場合は日本のメイド感がガラパゴスなのだろうか?


「照ノ兄様は夏休みですよね?」


「有り難い事に」


 コックリと頷く照ノ……ではあるも普通に学校に通う必要はあまり無く、単なるクリスの付き添いの面が強い。


 あとはアリスとエリスの指導か。


「じゃあじゃあ、お泊まりしても」


「そのつもりでやすが」


「クリスさんにも会えますか?」


「嬢も喜ぶでしょうよ」


 胃液が強酸にもなりそうだが。


「えへへ。照ノ兄様」


 時折、アルトはよく分からない。


 VIPには違いないので、扱いはニトログリセリンより困難だ。


「同人誌でも買いやすか?」


「うん!」


 溌剌な笑顔だった。


 もちろん全年齢版オンリーだ。


「照ノ兄様と一緒なら何処でも良いけど」


「ラブホテルでも?」


「その……いいよ?」


 頬を赤らめて、少年は肯定した。


 深刻な国際事情が、照ノの背中を突き刺す。場合によっては日本と英国が纏めて震撼するはずだ。


「キリエ・エレイソン」


 十字を切る。


「とまぁ冗談は置いておき」


「えー」


 ――なぜ不満げなのか?


 知っていてすっ惚ける照ノだった。


 しばらく同人ショップで暇を潰す。


 全年齢版でも楽しめるのは、さすがのエンターテイメント。


「こういう情熱では日本人も凄いよね」


「まぁ変な方向に振り切る点で、大和民族は加熱しやすからな」


 宗教観が薄く、一定のモラルの範囲内でなら好き勝手するのが、あるいは日本人の業の深さかもしれなかった。


 同人誌を漁ってしばし。


 照ノは、アルトを自宅に招いた。


「おお。変わってないね」


「マイフェイバリットホームでやす由」


「建て替えてあげよっか? 僕なら叶うよ?」


「お気持ちだけ受け取りやんしょ」


 そんなこんなで、照ノは室内に入った。


 いつも通り、不気味な部屋模様だ。


 ヒョウと霊符がツルされている。


 床は遁甲の陣。


「さすが」


 とアルトだった。


 碧眼がキラキラ光っている。


「ま、安心しやせ」


 照ノはタバコに火を点ける。


 魔術だ。


 一応アルトもそっち側に理解を得ている人間。


「ミサイルでも振ってこない限り、安全は確保されやすので」


「それはいいね」


「でやしょ」


 肺に飲み込んだ煙を、フーッと外に吐き出す。


「夕食はどうする? 奢るよ?」


「では寿司でも」


「シースーだね! 僕も好き」


「小生も好きでやすよ」


「えへへ」


 少年の照れ笑い。


 そんなわけで寿司屋に。


 もちろん回っている方。


「ふわぁ! ふわぁ! ふわぁ!」


 瞳キラキラ。


 日本文化が一々新鮮に映るらしい。


「ま、グレートのお国ではマイノリティでやすな」


 とは照ノ談。


「何食べやす?」


「照ノ兄様と同じ物!」


「ようがす」


 照ノはハマチを頼んだ。


 次いでアジ、赤身、ホタテ、えんがわと続く。


 最後のシメは、赤エビだった。


「これは絶対譲れない」


 と照ノは信念を持っている。


「エビ美味しい!」


「そりゃようござんした」


 赤エビをアグリ。


 照ノも幸せ。


「それで来日の理由は?」


「あぶり出し」


 ――でやしょうな。


 心中嘆息する照ノさんでござった。


 本心から言えば……照ノは政治的な闘争に関わり合う気はサラサラなかった。


 とはいえここでアルトに「ハイサヨナラ」が通じないことも重々承知しているので、せめて杞憂と祈る程度に印を切る。


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