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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
103/148

アルト公の想う者05


「ただいまでやんす」


「お帰りお兄ちゃん!」


 ガバッと飛びつく愛らしい少女。


 アリスだ。


 白いロングヘアーが揺れて、小動物的な御尊顔が崩壊している……ただそれだけで貴重なモノと思えた。


「えへへー。お兄ちゃんお兄ちゃんー」


「照ノはアリスを連れ込んでいるんですか?」


「人聞きの悪い……」


「あれー? エリスさんー?」


「ども」


 シュビッと敬礼。


 そして休め。


「で、今日は泊まることに」


「サンピー?」


「何処で覚えやす、そんな言葉……」


「インターネット」


「さいでやすか」


 情報化社会の荒波だ。


 普通にスマホも有する時代ではあるので、ネットで精神が擦れて耳年増になるのも一種の普遍と言える。


「サンピー……」


「エリス嬢も本気にしない」


「えー……」


「何故不満そうでやすか」


「乙女病」


「以下同文ー」


 二人の乙女は息ぴったりだった。


 というのも照ノも早々に悟っているが、二人の乙女……その意思の向かう先が那辺にあるかを知っているからだ。


「デートはどうだったー」


「面白かったでやすよ?」


「照ノが格好良かったです」


「むー」


 アリスの不本意そうな顔。


「何も抱いたわけではないでやす」


「こっちはウェルカムなんだけど……」


「黙りやっせ」


 ボッと炎が点った。


 照ノの指先から。


「では風呂にでも」


「一緒にっ?」


「別々に」


 サラリと流す。


「ところでこの部屋模様は?」


「ブドウ畑でやすな」


 あまり間違ってもいない。


 床には遁甲の陣。


 天上は赤い紐が縦横無尽に張り巡らされ、そこから短刀が伸びている。


 ヒョウと呼ばれるソレには、霊符が突き刺してあった。


 馬九李によるセキュリティだ。


「ははぁ」


 エリスも理解したのか否なのか。


 よくわからない独白だった。


「危なくないの?」


「危険域臨界点突破でやんすが」


 サラリと述べる。


「ま、魔術師らしいお部屋でやすな」


 あまり思うことも無いらしい。


「では先にお風呂をどうぞ」


「失礼」


 ヒラヒラーと手を振る照ノとアリスだった。


「でー、お兄ちゃんー?」


「へぇへ」


「泊めるのー?」


「いけやせんか?」


「むぅ」


「愛らしいでやすな」


「だったら行動で示してー」


 照ノはアリスの手の甲にキスをした。


「御機嫌伺いやす。お嬢様」


 キセルを片手に持って、そんな言の葉。


「いきなりイケメンになられてもー」


「おや、評価有り難く」


「自覚無いー?」


「さすがに、自分を格好良いと論じられるほど若くはありやせん」


「三千歳だっけー?」


「未満でやすがね」


「八百万の……」


「そんな処でやしょうか」


 特に、取り合わないときは……彼は徹底的に取り合わない。


 彼女の方は、そうもいかないが。


「こんなに美少女に囲まれてー」


「ソレは失礼をば」


 苦笑い。


「されども小生は、人間ではございやせんので」


「日本神話でもエッチはあるよー?」


「然りでやすな」


 それも事実だ。


 こと日本の古典は、在る意味でエロ本よりもエッチなこともある。


 性交信仰が形になるのは、人間の営みでは不可避とも言える。


 特に土着信仰は、その点で共通だ。


「アリスとー」


「しないでやんす」


「ケチー」


「で結構メリケン粉」


「きっとおっぱい大きくなるから-」


「ではそうなってから言ってくやさい」


「むー」


 難しい注文だ。


 アリスの寿命は千年。


 肉体と意識の流れに時差が存在した。


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