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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
102/148

アルト公の想う者04


「でもありがとね」


 ――お礼に夕餉を驕る。


 とエリスが言って、照ノを中華料理店に連れて行った。


 蟹がメインのコースだ。


 高級料理店だけあって味も確かだったし、高級を絵に描いた様な店内も何かと気分を高揚させてくれる。


 そこにこの言葉だ。


「なんでやす?」


「助けてくれて」


「鬼から?」


「ナンパから」


「ああ」


 昼の一件だ。


「殊更、紳士を振る舞うつもりもないでやすよ? こっちにも下世話な思惑の一つや二つはありやすからなぁ……」


「けど大事にされてるって思った」


「それはまぁ、淑女を放置しては男の子の名折れでやすから」


「それを紳士というのでは?」


「かもしれやせんな」


 苦笑が閃いた。


 あるいは苦笑いか。


「私じゃダメ?」


「定義を明確に」


「恋人候補」


「小生、エリスにそんな感情は持てやせん由」


「やっぱり可愛くない?」


「カワイイでやんすよ?」


 そこは照ノも否定能わず。


「単に趣味の問題でやす」


「趣味に合わないって事?」


「そう捉えて貰えても」


 別段、彼は否定もしない。


 残酷な台詞。


 正直を徳とも、思ってはいない……のだが、余計な感傷が入る前に、叩きのめしておくべきだった。


「好きなんだけどなぁ」


「罪深い男でやんす」


「照ノを責めてるわけじゃないけどね」


「ま、各々感じ方の違いがあるという事で」


「まぁね。それね」


 ガクッと、エリスは脱力した。


 鴉色の髪が揺れる。


「本当にクリスさんが好きなの?」


「さて、どうでやしょ」


 蟹を食べながら、照ノ。


 正直なところを申せば、照ノの意識は上海ガニの方に、そのラインの延長線上を向けていた。


「からかって面白いのは事実でやんすが」


「……………………」


 ジトーッと半眼のエリスだった。


「何か?」


「ぶっちゃけ有り得ない」


「捻くれてるのは否定しないでやすがね」


「照ノじゃないよ」


「では?」


「クリスは照ノの好意に甘えてると思う」


「乙女でやすから」


「照ノはソレで良いの?」


「別段セックスがしたくてクリス嬢を気に入っているわけでもなし」


「セック……ス……って……」


「この歳になると、中々」


「私ならしてあげるって言っても?」


「間に合ってやす」


 端的な照ノだった。


「それにしても上海ガニの美味しいこと」


「お気に入りの店」


「おや? 以前にも?」


「一応名家のお嬢様なので」


「真駒でやしたか?」


「ええ、田舎大名です」


「ははぁ」


「最近は国と争っていますけどね」


「そうなので?」


「つまらない話です」


 サラリとエリスは下流に流した。


「ちなみにアリスは?」


「血の繋がらない妹でやすね」


「神勁……だっけ?」


「アダムカドモン故でやすな」


 殊に気にする照ノでもない。


「私にはワンチャン無いの?」


「さて」


 蟹をはぐはぐ。


「惚れ薬でも作ったらどうでやすか?」


「惚れ薬……」


「飲むか飲まないかは、まぁ小生次第でやすが」


「愛人でも良いよ?」


「そんな不誠実は認めやせん」


「変なところに拘るね」


「別段、良識を持っていないわけでもありやせんし」


 肩をすくめる。


 蟹あぐあぐ。


「んー、難敵」


「よく言われやす」


 照ノが苦笑した。


 フカヒレのスープを飲む。


「本当に格好良いんだけど」


「吊り橋効果」


「かもしれないけどー」


「さて何でやしょ?」


「照ノくらいガツガツしていない男子は初めてで」


「エリス嬢は愛らしいでやんすからな」


「それをぬけぬけと言えるのが照ノくらい」


「小生は……まぁ、長生きなので」


「魔術師でしょ?」


「二次変換は出来やすよ?」


 蟹をアグリ。


「そ~ゆ~意味じゃないんだけど」


 どこまでも不満そうな彼女だった。


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