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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
101/148

アルト公の想う者03


 映画は、まずまず面白かった。


 視聴の後、照ノがトイレに引っ込んで、戻ってくると、


「えー、俺らとが良くない?」


「そんな奴、放っておいてさー」


「良い目に遭わせてやるって」


「マジマジ」


 エリスがナンパにあっていた。


 チンピラ風情の男が四人ほど、エリスを取り囲んでおり、誘う様に都合の良い言葉を並べ立てていた。


「いえ、でも」


 パチパチと、静電気が辺りを威嚇していた。


 エレクトロキネシス。


「はぁ……」


 溜め息。


 照ノはソッチに近付いた。


「はいはい。おにーさん。横槍は勘弁でやす」


 ポンポンと、肩を叩く。


「あ、照ノ!」


 パァッとエリスが笑った。


 それがどれほど至福な事か……それはエリスにしか分からないし、照ノとしても無理に強制するものでもない。


「なに? お前が彼氏?」


「でやすな」


 呼吸をするように虚偽を吐く。


「ダサい格好だな。恥ずかしくないわけ?」


「小生、歌舞伎者でやすから」


 キセルをピコピコ。


 カランコロンと下駄を鳴らす。


 曼珠沙華の意匠をあしらった紅羽織。


「照ノ……」


「ではデートと参りましょう」


「えと」


「てめぇ。無視してんじゃねえぞ!」


 殴りかかってくるチンピラ。


 サラリと避けて、鳩尾に拳を埋める。


 あまりに端的な、反撃だった。


「この……!」


「てめ……!」


「やろ……!」


 残り三人の怒りを買う。


 一瞬で沸騰したらしい。


「比熱が小さすぎるだろう」


 とは後の照ノ。


 掴みかかろうとしてくるチンピラに、照ノはスルリと動いた。


 掴まれた紅羽織は、既に脱いでいる。


 瞬間の瞬間。


 波動が駆け抜けた。


 気とも呼ぶ。


 何が起こったのか視察できたのは、衆人環視では一人もいない。


「が……っ!」


「ぐ……っ!」


「げ……っ!」


 突然嘔吐したチンピラ三人を無視して、飛沫に濡れないように羽織を取り返す。


 紅が翻った。


 映画に出てくる遊び人のように、鮮やかに羽織を纏う。


 それはまるで血色の羽のようで。


 鮮やかに過ぎ、空気を呑んだ。


「わお」


 とはエリスの言葉。


 そして、


「そこ!」


 警備員の出番。


「まーそーなりますよねー」


 そんなわけで、こんなわけ。


 一応映画館の、チケット売り場でのこと。


 衆人環視は、状況を見ていた…………ので、不利益は起こらなかった。


 チンピラたちの強引なナンパと、ソレに伴う激昂。


 正当防衛でファイナルアンサー。


「照ノは格好良いね」


「今更気付いたでやんすか?」


 苦笑。


「ううん。鬼から助けて貰ってから、知ってたよ」


「それはようがす」


「超好男子」と書かれた扇子を、広げて扇ぐ。


「それじゃデートの再開しよ?」


「構いやせんが……」


 警備員に呼び止められて、時間を食った。


 そろそろ食事時だ。


 夕餉の。


 シスターマリアに、


『夕餉は要らない』


 とメッセを送り、それからエリスに引っ張られる。


「なんで照ノはそんなに強いの?」


「自衛手段でやんす」


 気休めをぬけぬけとほざく。


 あながち間違ってもいないものだが……それでもその遍歴が異常を越えて異質であるのは照ノ自身も認めるところ。


「さっきのチンピラには……魔術?」


「単なる体術でやす」


 ソレも事実だ。


「ふぅん?」


 エリスは納得したのかしていないのか。


 どちらとも取れる……態度だった。


「とりあえず」


「えず?」


「えい」


 エリスは、照ノの腕に抱きついた。


「えへへ……」


 艶やかな声。


 一人の乙女が、其処にはいた。


 然れども、男の子は神様で、


「さぁて仮想聖釘が何処から飛んでくるものやら」


「クリス?」


「でやんす」


「どんな関係?」


「片恋慕」


「むぅ」


 一気にエリスが不機嫌になった。


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